彼方は、私の前から姿を消した。17コメント

1 АRUMОN id:fz6fwhE/

2011-10-11(火) 16:58:20 [削除依頼]



兄は、いつも言っていた。
「海のような存在になりたい」と。

口癖のように、毎日毎日言っていた。
「雄大な心を持ち、大切な人を包み込むような、
護ってやれる海のような存在に。」
そう、微笑んで。


義兄は、いつも言っていた。

「妻を、護りたい」とー……。
  • 2 АRUMОN id:fz6fwhE/

    2011-10-11(火) 17:27:52 [削除依頼]



    「ひーかぁーりっ!!ご飯食べよー!!」

    長い黒髪の女子が、笑顔を浮かべながら
    私に抱きついてきた。
     その反動で、椅子から転げ落ちる私……。

    「う、ぅおっ!?」

    見事に、頭が床に激突した。
    ガン、という鈍い音を一瞬立てて。

    「だいじょーぶ?誹駈」

    抱きついてきた女子は、私を下敷きにしているため、
    人事のように問う。
     私は少し苛立ち、その女子を払いのける。

    「ったく!いい加減やめんか、馬,鹿者!!
    毎日毎日、弁当の時抱きつくのは!」

    「いいじゃん。ひーちゃんカッコいいし」

    「理由になっておらん!!」


    私は文句を言いながら立ち上がり、
    机の下に椅子をしまい、鞄からオレンジ色の弁当箱を
    取り出す。

    女子は、「なにさ」とでも言うように
    頬を膨らます。
    まるで、胡桃を頬に詰め込んだ、リスのようだ。

    「……で、今日は何処で食べるのだ?優子。」


    私が「優子」と呼んだ女子は、
    共に食べる許可を得たと思ったのか、急に
    顔が明るくなった。

    「じゃあね、屋上!」
    優子は笑顔満々に上を指差す。

    「馬,鹿者。真冬なのに外で食べる奴いるか!」
    私は、自分の弁当箱で優子の頭を殴る。


    「大丈夫だもん。ひーちゃんにくっついてれば
    温かいもん」

    優子は先ほどと同じ様に、私を抱き締める。
    ……人をアルパカみたいに言いおって。


    文句や納得ならない所はあるが、正真正銘、
    彼女は……、伶閨優子は、私の幼なじみ兼大親友
    なのである。 
  • 3 АRUMОN id:fz6fwhE/

    2011-10-11(火) 17:53:41 [削除依頼]


    押しの強い優子に負け、結局は屋上で
    弁当を食べる事になってしまった。

    「物好きな奴もいるんだな。こんな真冬に……」

    私は、優子に聞こえぬように小さな声で
    愚痴を漏らす。

    しかし、冷えた廊下は、人一人の声がよく響きー……、

    「全部聞こえてるっつの!!」

    「えっ?!ま、誠か!」

    「誠ですぅ」

    優子は、怒ったように目尻を吊り上げ、
    ぷいっとそっぽを向いてしまった。

    でも、私には罪悪感はなく、可愛らしく思えた。


    宝石のような輝きを放つ黒髪、小動物のような仕草、
    ほっそりとしてスリムな体形、愛らしい顔つき。
    優子を見掛ける度に、こう生まれたかったと
    自分を見つめなおす。

    その点、私なんて……

    昔っぽい、変な喋り方。
    平凡以下な顔つき。太っても細くもない体形。
    おまけに、いつも面白い事言えなくて……


    私は、眼を細めて下を俯いた。
    右隣から、透き通るような歌声が耳に入ってくる。

    優子は、歌も上手い。人柄もいい。親も女優だ。

    全てを持っている完璧な者の親友なんて……、
    こっちが、侘しいだけなんだが……

    こいつは、なぜだか憎めない。

    「……ひーちゃん?どしたの?」

    優子は眉を下がらせ、私の顔を除きこむ。
     私はぎょっとして、なんでもないと首を振る。

    「……そっか、≪あの人≫の事考えてたんだよね……」

    優子は急に声を萎ませ、顔を引っ込める。


    ≪あの人≫……か。
    そういえば、思い出してしまったな。
    ……学校では、忘れようとしていたが……

    私はそのことを答えずに、静かに屋上への
    階段を上る。

    「……辛い、よね。まさかひーちゃんがおと……」
    「優子ッ!!」


    話を進める優子に、私はとっさに大声を張り上げた。
    ーと、瞬間に、はっとなり、また顔を下に向ける。
     優子はさっきよりも眉を下げ、驚きつつ、今にも
    泣き出しそうな瞳をしていた。

    「ー……あの、す、すまぬ……」

    私は一言告げると、優子より先に階段を登っていった。


    優子は追いかけてこなかったが、きっと、
    追いかけられなかったのだろう。

    ー私を、一人にしてやりたかったのだろう。


    優子は、そういう奴なんだ。
     
  • 4 АRUMОN id:GtOKMyG/

    2011-10-12(水) 17:18:32 [削除依頼]
    私は階段を登りきり、黒く、重い、屋上の扉の
    前まで辿り着いた。

    優子の気配は、未だに感じられないけれどー……。

    「……」私は無言で、ドアノブを回した。

    ーと同時に、冷風が顔全体に飛び込んでくる。
    瞬間に眼を閉じるが、風に当たった顔の皮膚は、
    悲鳴を上げている様にじんじんとする。

    「やはり、11月の屋上は無理がある……」

    肌の乾燥を気にしながらも、溜息混じりに言う私。


    そして、再度真正面を向いた。
     風が、体全体に突き刺さる。

    私は弁当箱を屋上の扉の横に置き、緑色のフェンスへと
    足を運ぶ。
    踏みしめている床からも、冷気を感じる。


    フェンスに辿り着く前に、私は屋上のど真ん中で
    足をぴたりと止めた。

    急に、頭に横切ったんだ。
    ーさっきの優子の言葉をー……
      『≪あの人≫の事を考えていたんだよね』ー……


    少し、ほんの少しだけ、心の中で優子を怨んだ。

    忘れかけていたのに。
    思い出さずにいたのに。
    そんな事思って無いのに。

    一瞬だけ、優子の言葉を威嚇してしまった。
     正しいのは、優子の方だった。

    100%、優子の方だった。

    私はただ、そう思ってないと感じたかっただけ……。
     鎖をただ、引き離したかっただけだ。


    あの人と会って、何年の月日が経ったものかー……。

    私は今も、あの人を引きずっている。


    ー5年前ー

    私が、9歳の頃だった。
    父が何らかの事情でいなくなり、母は毎晩泣いていた。
    私が何度事情を問いても、事情は、教えてはくれなかった。

    でも、代わりに、30代後半くらいの若い男の人が、
    毎日毎日、家に来ていた。

    その人は、母を慰めてくれる、優しい心の持ち主。

    暇だった私にも、笑顔を絶やさず遊んでくれる。

    冷血漢で、口数の少ない父より、何倍も何十倍も何百倍も、
    大好きだった。父親になって欲しいと願った。
  • 5 АRUMОN id:.O.GRZY.

    2011-10-16(日) 12:34:03 [削除依頼]

    そんな感じの生活が、4〜5ヶ月続いて、お母さんは
    私に、「あの人と結婚がしたい」という、相談が増えた。

    私の答えは、もちろん大賛成だった。

    優しくて、かっこよくて、笑顔を絶やさない父親。
    私の授業参観などに来てくれたら、友達にも自慢できる。
    「うちのお父さんだよ」って、満面の笑みで言える。

    前のお父さんは、一度たりとも来てくれなかったから。


    賛成した私に、お母さんは優しそうに笑みを浮かべていた。
    やっと幸せになれる。もう、毎晩泣かなくていい。
    そういうお母さんの気持ちが、薄らとわかった。


    そしてその後、1ヶ月も経たぬ合間に、二人は結婚の話を進めてた。
    私も話を聞いてみると、新しいお父さんには、「日影」という
    息子さんが居る事がわかった。

    私より、7歳も年上のお義兄さん……。


    私はその時から、「日影」兄さんに興味を示していたのだろう。

    あった瞬間、私は兄さんに恋をしてしまったー……。


    茶髪で、パーマのかかった髪。
    猫のような愛らしさで、イケメンとしか言えないかっこ良さ。
    少し大人っぽいけど、新しいお父さんにそっくりだった。

    ジャニーズとしてテレビに出ても、おかしくないくらいー……。


    でも、日影兄さんを好きになった理由は、ルックスでは無かった。
    イケメンや美少年など、街にも学校にもゴロゴロいる。

    理由は、居心地の良さだった。

    真っ白い歯を見せて笑いかけ、頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
    近くで不審者などが出たとき、一緒に下校してくれた。
    いつもいつも、真剣な顔で相談に乗ってくれた。


    私は一瞬で、ずっと傍にいたいと感じてしまったのだ。


    不覚にも、恋をしてしまったのだ。
    7歳も年上の、高校生に。
  • 6 АRUMОN id:.O.GRZY.

    2011-10-16(日) 12:54:29 [削除依頼]

    ギイィィイィ……

    鉄でできた屋上の扉が、苦々しい音を立てながら
    開いた。

    私は振り返って誰なのか確認せず、フェンスの
    向こうの景色を、これでもかと見つめてる。

    扉を開けたものは、ゆっくりと近づく。


    「……ひーちゃん。……ごめん」

    可愛らしく、女の子っぽい声が、私の耳に入った。
    その言葉と声で、誰なのかを確信する。
    薄ら、眼に涙を浮かべているのも確信する。


    「弁当食うか。……優子。」
    「……うん!」

    私は振り返って、優子の顔を見つめた。

    元気な声とは裏腹に、眼を赤くし、悲しい顔をしている。

    「優子。」

    私は彼女を元気付けようと、彼女の名前を口にする。

    「うん?」

    優子も、どんな言葉も受け入れるかのように、
    返事をした。

    「前に、話したろう。……日影兄さんのことを。」

    「……え……」内心、驚いているであろう優子の声。

    「日影兄さんが、先月婚約をしたと。」

    私は話を進めるが、優子の返事は返ってこない。

    「兄さんは……同学年の女の方と……婚約した。
    私の適わない、優子のような美少女と。」

    さらさらのロングヘアに、大きな黒目……。
    兄さんが見せてくれた写真が、嫌と言うほど
    眼に焼きついている。

    「来年の3月に、式を挙げるようだ。」

    「えっ……」

    「私も、招待されてしまった。……妹として、家族と
    して。己の幸せを見て欲しいと言う様に、
    招待を……」
  • 7 АRUMОN id:.O.GRZY.

    2011-10-16(日) 12:55:22 [削除依頼]
    落ちます。^^
    思ったけど、意外と進んでない……
    この小説。
  • 8 るか(*^^)v id:Bo6zFoz/

    2011-10-16(日) 13:04:28 [削除依頼]
    がんばってネ^^
  • 9 ARMОN id:.O.GRZY.

    2011-10-16(日) 13:22:10 [削除依頼]
    わぁぁぁぁ!!
    は、初めてのお客様!じゃなくて読者様!!
    うわ、めっちゃ嬉しい///ヵァ…
    るかお嬢様って呼ばせて下さいまs(殴)
    るか様の作品も読みにいきます!!
    題名教えてくださいませッ!
  • 10 ARMОN id:.O.GRZY.

    2011-10-16(日) 14:12:21 [削除依頼]

    キーンコーンカーン……

    私が最後まで言い終える前に、
    昼休み終了の鐘が鳴った。

    「……あ……」

    優子は、ポツリと声を漏らす。

    私の所為で、弁当を食べ損ねてしまったんだ。
    責めてくれても、何も文句は言わない。
    ……逆に、文句は言えない……。

    「すまぬ、優子。私の所為で……」

    「ううん。いいんだよ、ひーちゃん。それより……
    続き話してよ。……さっきの話。」

    優子は、塵一つも、私の所為とは思っては無いように、
    口の口角を上げて言った。

    優子の許しを得て、私は口を開く。

    「……優子。私は行った方が良いのだろうか……」
    「え?結婚式に……?」

    少し予想外の質問に、優子は目を見開いて再度聞く。
    多分、≪兄さんが結婚をする≫という事を……私が
    悲しんでいると思ったのだろう。

    優子は少し俯き、目を細めた。

    私も、優子から眼を離す。
    改めて、フェンスの向こうの景色を見つめた。

    「……私には、わからない……」

    先に口を開いたのは、私だった。

    「5年もの間奴を想い、私は気持ちを伝える事も無く、
    奴は私の気持ちに気付く事も無く、他の者と
    一緒になった。」

    「……うん。」

    「……奴も、もう21だ。私の気持ちなど、ただの
    憧れとして見る。」

    もう、21歳だ。
    背や経験は変わっても、いつまでも
    性格と顔は変わらない。

    でも、21歳だ。
    中学生が大学生に片思いをするなど、
    有り得ないと勝手に判断する。

    奴ももう、大人なのだ。

    「……私は、ひーちゃんの幸せを優先するよ。」

    優子が、ポツリと私に呟いた。

    「悲しむのなら、行かなくていい。
    それでもいいのなら、行った方がいい。
    ーそう、思うよ。」

    数十分前に見せていた、向日葵のような笑顔で、
    優子は顔を輝かせた。
     それは、一点の曇りも無い青空。
    私の事を考えてくれてるのだと、すぐに感じた。


    ピーッピーッピーッ……

    「何の音?」

    優子が、音の矛先を確かめる。

    私の紺色のスカートから、音は出ていた。
    携帯でもない、何か甲高い音が屋上に響く。

    私は何だろうと感じつつ、ポケットから物を出す。
  • 11 АRUMОN id:.O.GRZY.

    2011-10-16(日) 15:49:33 [削除依頼]
    音を鳴らしていたのは、ピンク色に身を包んだ、
    傷一つ無いポケベルだった。

    「ポケベル?うわァ、懐かしい……」

    優子が、物珍しそうにポケベルをがん見。

    ポケベルなんて、ずっと昔に流行ってた物なのに……。
    買った覚えもないし、ポケットに入れた覚えも
    全く無い。……誰だ、入れたの。

    「何かメッセージが届いたの?」

    優子は、少し頬を染めながらポケベルを見る。
     きっと、好奇心が沸いているのだろう。

    「多分……そうなのではないか?」

    私は、出鱈目にポケベルを操作する。
     何しろ、ポケベルなんて触ったこともないし、
    私は……機械オンチだし……。

    ずっとボタンを押していると、一件のメッセージが
    画面に映った。

    「あ、出た。」

    少し驚いて、画面を見つめる私と優子。

    メッセージの内容は……、

    【ヒカリ キョウイッショニカエラナイカ】

    全てカタカナで埋め尽くされた、
    【誹駈 今日一緒に帰らないか】の文字だった。


    「ひ、ひーちゃん、これって……」

    「……あぁ。噂をすれば影と言う事だな……。」

    帰ろうなんて言ってくる人は、ただ一人しかいない。
    昔のポケベルをこんなに綺麗に取って置いてる人は、
    ただ一人しかいない。

    「……日影、兄さんだ……」

    「やっぱり、お兄さん……?」

    私は、少し苦々しく眉間にしわを寄せる。
    優子の顔を見ると、優子は少し曇った顔をしていた。
     さっきの笑顔とは、正反対で。

    「……愚か者!なんでお前がそんな顔しておる!
    お前は無防備に笑って居る方がめんこいぞ!!」

    私は優子の頭をくしゃくしゃと撫で、
    笑顔でそう言った。

    優子は、滅茶苦茶になった髪を直しながら、
    「でも……」と、心配そうな顔つきで私を見つめる。

    「だから、そんな顔をするな!」

    作り笑いなのか、本当の笑顔なのか、自分でも
    わからない。
    ただ、わかっているのは、【優子に心配かけたくない】。

    ただ、それだけだった。
  • 12 コロン id:our.nsW/

    2011-10-16(日) 21:33:57 [削除依頼]
    間違ってたらすみませんが……
    АRUMОNさんは空一ですか?
  • 13 АRUMОN id:.O.GRZY.

    2011-10-16(日) 22:23:00 [削除依頼]


    ……やっと来たかの、コロン……
    待ちくたびれておったぞ!!

    よく見つけたのォ。
    二つ目のヒントが鍵だったかもじゃな。
    そうじゃ。わしが空一じゃ!!
  • 14 コロン id:wkz.Pj60

    2011-10-17(月) 17:59:15 [削除依頼]
    おぉ!
    やっぱそうだったのか♪

    ちゃっかり読ませて
    いただきましたよっ!←
    めっちゃ文才あるって!
    私のと比べ物にならんww

    あ、明日の
    5時頃の話なんだけど……。
    私、部活が5時半におわって
    帰るのが今くらいの時間帯に
    なっちゃうんだよね……;;;

    5時はちょっとむりです……;
    本当にごめんね…………。
  • 15 空一 id:kN7Hp1D.

    2011-10-17(月) 18:22:30 [削除依頼]
    コロン

    あぁ、全然いいぞ!!
    自分が書きたいキャラ考えて、すぐに落ちちゃったし!
    ストーリーも、三人で考えようって事になったのじゃ^^

    コロンも、キャラ考えておいてくれ!
    できれば二人。
  • 16 コロン id:9jX6QVD0

    2011-10-17(月) 20:04:24 [削除依頼]
    >15 ありがとう♪ ほんとにごめんね……; 帰ったらそく 材料集めのトコに行きますw 分かった! あ、男と女でもいい??
  • 17 コロン id:8O.45pr1

    2011-11-01(火) 20:36:34 [削除依頼]
    age
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