モノクロの世界の中で、23コメント

1  まり id:W9Kgt6Z0

2011-10-09(日) 22:00:53 [削除依頼]
青く美しい空が、 僕には灰色の空に見えている。 >2登場人物 >3作者挨拶
  • 4  まり id:W9Kgt6Z0

    2011-10-09(日) 22:26:29 [削除依頼]
    五年前、僕の視界には、
    この世のものとは思えない光景が入ってきた。

    「小型飛行機墜落事故の現場です。
     負傷者、死亡者も現在確認出来ていない状況です」

    雨が降る中テレビカメラを抱えた、
    大人たちが呆然とする僕の周りにいる。
    約三十人の人が救急車に乗せられたり、
    手当てされている前で、
    無傷の人たちが悲惨そうな目を向ける。

    「きっ……京。
     ありがと……ね」

    微かに微笑みながら、
    僕の母は最期に言った。
    左の目から涙を流しながら。

    その隣では、
    僕と同じように親を亡くしたのか、
    僕と同い年くらいの女の子が、
    涙を流しながら座り込んでいる


    このとき僕は思った。
    自分のことしか考えてない大人たちなんて、
    全て……全ていなくなればいいのに。
  • 5  まり id:W9Kgt6Z0

    2011-10-09(日) 22:39:34 [削除依頼]
    「風早さん、
     新ドラマ決定おめでとうございます!」

    たくさんのフラッシュを浴びながら、
    新しく始まるドラマの衣装を着て
    僕は大勢のカメラマンの前に立っている。
    俳優、風早京。
    本名、黒坂京。
    あの五年前の小型飛行機墜落事故の被害者の一人だ。

    「俳優として人気が急上昇してきましたが、
     今後タレント活動のご予定はありますか?」

    紺色のスーツを着た中年男性が、
    僕にマイクを向けた。
    中年男性が僕に質問なんかして、
    面白いわけないよな、所詮仕事だろ。
    まぁ、僕も人のこと言えないけど。

    「僕は俳優活動に専念すると、
     決めているんで……」

    僕は仕事用の笑顔で、
    その中年男性の記者の質問に答えた。
    僕はタレントになんてならない。
    僕は俳優業しかしない。
    バラエティーなんかに出たくない。
    面白くもない芸人のギャグで笑って、
    美味しくもない料理に感想を言い、
    可愛くもない女性に媚を売り、
    そんな見苦しいことをしたくはない。
  • 6  まり id:W9Kgt6Z0

    2011-10-09(日) 22:59:08 [削除依頼]
    「新ドラマへの意気込みをお願いします」

    さっきの中年男性の隣にいた、
    中年女性が目をハートにして、
    僕に向かって質問をした。
    この記者……僕と話したいだけだよな。

    「以前の役柄とは、
     全く違う役柄を演じています。
     なので新しい″風早京″を、
     見ていただければ光栄です!」

    僕は最高級の笑顔で、
    記者に向かって笑った。
    僕が笑うとともに、
    会場はカメラのフラッシュ音と拍手が響き渡った。
    僕はその場で一礼すると、
    マネージャーに連れられステージから降りた。
  • 7  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 17:15:51 [削除依頼]
    「京、本当にタレントにはならないんだな?」

    煙草を吸いながら、
    お堅いスーツを着た、
    僕の事務所の社長が言った。
    僕はあまり緊張しなかったが、
    隣に座っているマネージャーの小林は、
    何故か緊張して固まっている。

    「はい。
     僕は俳優として、
     活動して行こうと思うので……」

    僕は愛想笑いをしながら、
    社長に向かって言った。
    社長は考え込むように、
    煙草の煙を吐き、
    質問を進めた。


     
  • 8  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 17:23:38 [削除依頼]
    「番宣では出るのか?」

    番宣―番組宣伝。
    新ドラマや近日公開の映画の
    宣伝のために俳優や女優が、
    バラエティー番組に出る。

    「……必要最低限は出ます」

    僕は愛想笑いを苦笑いに変えて答えた。
    本当はバラエティーなんて、
    出たくないんだけどな……。
    だって、一番演じるのが難しいのは、
    殺人犯役でも被害者役でも、
    教師役でも生徒役でもない。
    俳優、風早京だからだ……。

    「小林はどう思うんだ?」

    社長は煙草の煙を消すと、
    今度は緊張している小林に話を振った。

    「はっはい!
     ぼっ、僕は京に任せたいと思います……」

    小林は額から冷や汗を流しながら、
    社長の問いに答えた。
    ″京に任せたい″
    ……意外とよく出来たマネージャーだな。
  • 9  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 17:31:35 [削除依頼]
    あれから話はすぐ終わり、
    僕は俳優業を中心に活動することになった。
    いまは、小林の車の中。
    僕の家へと向かっている。

    「京、本当にバラエティーは……」

    信号待ちになったとき、
    小林はバックミラー越しに、
    僕の表情を伺いながら尋ねてきた。

    「僕は俳優業に専念します。
     バラエティーにまで出れるほど、
     僕は器用じゃないんで……」

    僕は苦笑いしながら言った。
    もう終わった話なんだから、
    いちいち尋ねてくるなよ。

    「……分かった」

    小林も苦笑いしながら言った。
    その瞬間信号が青に変わり、
    小林はアクセルを踏んだ。
  • 10  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 17:40:02 [削除依頼]
    「明日は朝六時半に迎えに来るからな。
     ちゃんと起きて準備して待ってろよ」

    僕の家の目の前に着くと、
    小林はスケジュール帳を確認しながら言った。
    明日の朝一の仕事はCM撮影らしい。

    「はい、じゃあ小林さんも気をつけて」

    僕は小林に向かって笑いながら、
    軽く会釈した。
    小林はゆっくりと頷くと、
    車の窓を少し閉めた。
    途中で何かを思い出したのか、
    「京!」と叫んで、
    僕を引き止めた。

    「どうしたんですか?」

    僕が慌てた顔で尋ねると、
    小林は何とも言いにくそうな顔でこう言った。

    「そろそろ金銭的にも問題ないだろ?
     だから……その……。
     オートロック式のところに、
     引っ越さないのか?」

    小林は僕の住んでいる、
    アパートを眺めながら言った。
    築五十年。
    風呂とトイレは、
    各部屋にちゃんとあるものの、
    部屋数は一部屋。
    それも八畳ほどの広さだ。

    「僕はまだここがいいんで」

    僕は笑いながら小林にそう言うと、
    一礼をして、
    ギシギシと軋む音が聞こえる、
    階段を上がり二階の一番奥の部屋へと入った。
  • 11  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 17:52:54 [削除依頼]
    「……ただいま」

    時刻は夜の一時を少し過ぎたところ。
    八畳の部屋の隅には、
    敷布団の上でスヤスヤと寝息をたてて、
    寝ている僕と同い年の女がいる。
    柚月藍、僕の彼女でも家族でもない、
    ただの同居人。
    しいて言うなら、
    僕と同じあの事故で、
    両親を亡くした被害者だっていうこと。

    「んー……。
     あ、京おかえり」

    さっきまで寝ていた藍が、
    気配で気づいたのか目を覚ました。
    白い肌にハニーブラウンの長い髪。
    二重の大きな目。
    はっきり言ってそこらへんのモデルより可愛い。
  • 12  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 18:01:38 [削除依頼]
    「あ、ごめん起こした?」

    僕は藍に謝ると、
    布団の隣に座り、
    仕事場では絶対吸わない、
    煙草を口に咥えて先端に、
    ライターで火を付けた。

    「あー……うん。 
     京に起こされたー」

    藍は笑いながらゆっくりと起き上がり、
    僕の隣に置いた煙草を手にし、
    僕と同様煙草を咥え、
    先端に火を付けた。

    「仕事どうなの?」

    藍は口から煙草の煙を、
    吐き出すと僕に向かってそう尋ねた。
    「どうなの」って……。

    「いい感じ?」

    僕はハハッと笑いながら、
    そう答えた。
    まあこんなこと、
    人生計画にはなかったからな。
  • 13  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 18:12:44 [削除依頼]
    「京がここまで人気出るとはね」

    藍が馬鹿にしたような目で、
    僕の顔を見た。

    「そーだな……」

    僕はそう思う。
    僕の将来は医者。
    幼い頃からそう言い聞かせられた。
    小型飛行機遊覧は、
    家族で気分転換にと、
    父が言い出した。
    だが……あの事故で両親は死んだ。
    両親が病院長だった、
    病院は副病院長が受け継ぎ、
    十七歳だった僕は行き場がなくなった。
    そしてフラフラと街を歩いていると、
    僕と同じように、
    泣いていた少女―藍に出逢った。

    藍の家は今僕たちが住んでいる場所。
    僕とは真逆の暮らしだったそうだ。
    両親との三人暮らし。
    母は病気がちで働けない。
    父は働きもせずにギャンブル三昧。
    あの小型飛行機遊覧は、
    近所のくじであたったそうだ。
  • 14  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 18:14:29 [削除依頼]
    >13訂正 ×僕はそう思う。 ○僕もそう思う。
  • 15  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 18:38:24 [削除依頼]
    「お前は?
     最近どんな感じ?」

    僕は煙草を一本吸い終わると、
    藍に向かって尋ねた。
    藍も僕と同時に煙草を吸い終わると、
    ゆっくりと僕の隣に来た。

    「京ってさー。
     落ち着くんだよね」

    笑いながら藍はそう言った。
    僕は吸い終わった煙草を、
    灰皿に入れ、
    藍の頭を撫でた。

    僕たちに恋愛感情……ないと思う。
    ただ、お互いに慰めあい、
    温めあうだけの関係。
  • 16  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 18:48:37 [削除依頼]
    「京とあたしがさ、
     一緒に住んでるってバレたら、
     ヤバいんじゃない?
     なんつーの、スキャンダル的な」

    藍はそう言いながら、
    僕の膝に頭を置いた。
    うーん。
    言われてみれば一大事だな。
    いま大人気の俳優と、
    同じ年の美女(?)が同居……、
    してるんだもんな。

    「バレないだろ……多分」

    僕は藍を膝に乗せたまま、
    床に寝ころがった。
    万が一バレたとしても、
    どうにかなるだろ。
  • 17 ゆう id:ez-VHd8N441

    2011-10-10(月) 19:32:41 [削除依頼]
    面白いです!
    頑張ってください!
  • 18  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 21:14:18 [削除依頼]
    >17 *ゆうsama* ありがとうございます(^ω^)! がんばりますbb
  • 19  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 21:22:00 [削除依頼]
    眩しい朝陽が僕の顔に当たる……。

    「あー。
     あのまま寝てたんだ」

    僕が目を覚ますと、
    昨日の夜と同じ格好で、
    同じ形で寝ていた。
    ″ドンドンッ″
    僕がもう一度、
    眠ろうとすると、
    古い木のドアを叩く音が聞こえた。

    「京ー?
     起きてろって言ったよな」

    ……やべぇ。
    いま何時だ?
    僕はポケットから携帯電話を取り出し、
    時刻を確認した。
    ″AM6:42″
    十二分も遅れている。
  • 20  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 21:28:32 [削除依頼]
    「京ー!?
     開けるぞー?」

    小林がドアを叩きながら言う。
    確か……小林は合鍵を持っている……。
    僕は!?
    昨日と同じ格好で、
    膝の上には美人な女の人が!!

    「やっべぇ……」

    そう呟いた瞬間、
    ドアが開いた音がした……。

    「京!?
     入っても「小林さん待って!!」

    僕は小林が言い終わる前に、
    藍を起こさないようにずらしながら、
    叫んだ。
    そして携帯だけを手にして、
    小林のもとへ向かった。
    この際、昨日と同じ服装だろうが関係ない。
  • 21  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 21:35:52 [削除依頼]
    「京、遅かったなー」

    小林は少し呆れた顔で笑っている。
    僕の服装など覚えてないみたいだ。
    風呂は昨日、
    事務所でシャワー浴びたからいいや。

    「小林さん、CM撮影ですよね?
     共演者は誰ですか?」

    僕は車の後部座席から小林に尋ねた。
    共演者は……楽な人がいいなー。

    「えっーと。
     いま大人気アイドルの咲野詩織さんだよ」

    咲野詩織……。
    日本を代表するニュースリポーター咲野歩の娘。
    咲野歩はあの事件のリポーターもしていた。
    ……ちょうどいい。
    咲野詩織か……。
  • 22  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 21:44:57 [削除依頼]
    三十分ほどすると、
    撮影スタジオに着いた。
    すでに咲野詩織は来ていた。

    「初めましてぇー、咲野詩織でぇーす!」

    馬鹿みたいな話し方で、
    僕に挨拶をしてきた。

    「初めまして、風早京です。
     本日はよろしくお願いします」

    僕は最高の営業スマイルで挨拶をした。
    すると、咲野詩織は僕に体を近づけ、
    ばっちりメイクした目で上目遣いをし、
    胸元を見せ付けるように話しながらこう言った。

    「よかったらメ.ア.ド教えてくれませんか?
     私……風早さんの大ファンなんですよねぇ……」

    多分、彼女の中では世界一可愛い顔かもしれないが、
    はっきり言って藍の方が可愛い。
    だが、咲野歩の娘なら話は別だ。

    「えぇ、是非。
     今度、二人でお食事にでも」

    僕はニッコリ微笑むと、
    メー.ルア.ドレスを書いた紙を咲野詩織に渡した。
    なんて物事が上手く進むのだろう。
  • 23  まり id:cZ0Nk./0

    2011-10-10(月) 21:54:49 [削除依頼]
    今日の仕事は珍しくCM撮影だけ。
    咲野詩織もそうらしい。
    僕たちは撮影のあと二人で逢うことになった。

    「京くんっ」

    大都市の中心のカフェで待ち合わせ。
    僕はサングラスだけという格好なのに、
    咲野詩織は伊達メガネに深く被った帽子。
    それに、呼び方が、
    ″風早さん″から″京くん″になっている。

    「詩織さん、こんにちわ」

    僕はサングラスを外しながら挨拶をした。
    僕がサングラスを外すと、
    周りにいた人たちが騒ぎ出した。
    「あれって風早京!?」「かっこいい」
    など口々に言っている。

    「ちょっと、京くん!?」

    咲野詩織は焦った顔をしている。
    だが、僕はそれを気にせずに、
    咲野詩織の帽子を外した。

    「しおりたんだ!」「何で二人一緒なの!?」
    僕のときと同様周りにいた人は騒いでいる。


    作戦通り。
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