月攫いdazzlin41コメント

1 ももくり id:e2LxFGK.

2011-10-06(木) 19:56:45 [削除依頼]
月光を背中に、銀の髪は冴えて。
部屋の薔薇が散らばって、私は思わず息を呑む。

「貴方は……誰?」

開けっ放しにされた窓から、風。
それは目の前の彼の匂いを運ぶ。
嗅いだことのない、異国の香り。

「月を攫いに来た怪盗ですよ、お姫様」
  • 22 ももくり id:O1S8KyP.

    2011-10-22(土) 14:21:51 [削除依頼]
    そんな事を、ひっそりと思った時だった。

    「へー、姫ってこんな豪華な部屋に住んでんだね」

    孤独な部屋に、変化が起きた。
    初めて聞く声が窓の辺りから聞こえて、私は反射的に振り向く。

    「……え?」

    立っていたのは、一人の男。
    開けっ放しにされた窓から、一筋の風が吹く。それは嗅いだ事のない不思議な匂いを運んだ。甘く綺麗な新しい匂い。

    「此処っ……窓から入って来たの?」

    やがて、何とも言えない驚きに、私は椅子から落ちそうになった。
    此処は塔の一番上、天辺、頂点。だけど彼は確かに窓から入って来て、そして何食わぬ顔で立っている。

    何が、起こっている?
  • 23 ゆな id:ez-yFYO5ET1

    2011-10-22(土) 14:24:24 [削除依頼]
    凄く上手です!!
    これからも頑張って下さい、
    応援しています!!
  • 24 ももくり id:O1S8KyP.

    2011-10-22(土) 14:38:03 [削除依頼]
    「あっ……侵入者……!」

    こういう時の対処法が分からず、私は戸惑いを隠せない。声が出なくて、叫ぶことなど絶対に不可能。
    ――怖い。
    だけどそれは、背筋がぞっと凍りつくのとは違う方向のものだった。奇妙な魔法に掛かったみたいに、くらくらと不安定。魂が持って行かれたように、魅せられて――

    ――そんな私の頭に浮かんだのは、ベル。
    深霧が壁に取り付けてくれた、緊急用のベル。ドレッサーの隣のベル。
    思い立った瞬間、私は走り出す。
    そして震える拳で、力一杯に押した――が。

    「え……何で……」

    ――音が鳴らない。
    いや、違う。正確には、壁に取り付けてあったはずのベルが、無い。

    「悪いけど、兵士が来たら面倒だから。外させてもらったよ」

    考えるよりも早く、体が動いた。
    私の視線の先で、男はにっこりと笑ってみせる。

    「ほら」

    白の手袋をした男の手の中に、あのベルが見えた。
  • 25 ももくり id:O1S8KyP.

    2011-10-22(土) 14:41:02 [削除依頼]
    ゆなさん>

    ありがとうございます!(´ω`)
    書いていて不安になるので、褒めていただけるとほっとします←
    よかったよかった!ってなります←
    これからも楽しんで書きますね(^^)
  • 26 ももくり id:O1S8KyP.

    2011-10-22(土) 14:56:19 [削除依頼]
    ――嘘。
    私が知らない間に、ベルを外したというの?私が知らない間に、窓から侵入したというの?
    困惑が一秒ごとに増していく中、彼は躊躇なく私に近づく。
    ――どうしよう。
    隠せない心臓の音が、部屋の中に凛と響いた。

    銀の髪に、響く足音。
    彼は、まるで手品師が着るような黒の服を纏っていた。ひらりとした裾に、銀の色で不思議なマークが塗られてある。それは月光を軽く跳ねて、少しの眩しさを運んだ。
    そして少し口元は吊り上げて、いかにも楽しそうに。

    私はその姿から、一つの答えを導いてしまった。
    パズルのピースを一つ一つ埋めた末路。
    大臣が噂していた人物。その姿が見事にリンクした。
    私はまるで、決まりのように聞いてしまった。

    「貴方は……誰?」

    すると彼は、やっぱり決まりのように答えた。
    それはそれは自信満々に。

    「月を攫いに来た怪盗ですよ、お姫様」
  • 27 ももくり id:AXLOgux/

    2011-10-23(日) 15:41:57 [削除依頼]
    次の瞬間、手と手が触れ合う。
    彼は私の手を掬い上げ、顔を近づけた。
    そして、挨拶代わりのキス。

    「さすがお姫様。やっぱりキスくらいでは靡いてくれないか」

    くすくすと小さな笑い声を上げ、彼は言った。
    じんわりとした温もりが手の甲に広がり、先程までの涙が嘘のように思えた。
    深霧に決して劣らない、整った顔。どこか猫を感じさせる瞳が、闇に放浪している。
    私が思い描いていた怪盗は、もっと卑猥で薄汚くて。そのイメージを、完璧に逆転させられた。

    「いっ……いつまで触ってるのよ!」
    「おっと」

    窓からの風で我に戻り、ぱっと手を払い除けた。
    彼の目を覗き込むのは止めにしよう、と自分に言い聞かせる。初めての種類のその瞳は、まるで世界の全てを知っているように働くから。何もかもを見透かされそうで――用心しなければ。

    「何?この城から宝石や王冠を盗むつもり?だとしたら私はっ……」
    「違うよ」

    彼は、人差し指を私の唇に押し当てた。
    そして、相変わらずの妖しい笑みを浮かべ、言う。

    「俺は姫を攫いに来たんだよ」
  • 28 御坂 紫音 id:4JUN6KH/

    2011-10-23(日) 15:43:49 [削除依頼]
    さらわれたい←オイ
    何か相変わらず素敵な恋愛をさらりと綺麗にかけるももくりはすごいな←

    あ、で久々にコメントなのにこんなこと言うのは申し訳ないんだが、リレーのほうデレそうかな?
    忙しいって言うならいいんだけどね←
    ちょこっとそれだけおしえておくんなんし。
  • 29 ももくり id:AXLOgux/

    2011-10-23(日) 19:58:18 [削除依頼]
    紫音>

    そんなん言ったら、私だってさらわれたい←
    私だってさらわれt((繰り返し←

    リレーのこと伝えてくれてありがとう(><)
    準備板の方に書き込みました!
    見放さないでくれて、本当にありがとうね(^^)
  • 30 ももくり id:AXLOgux/

    2011-10-23(日) 20:14:43 [削除依頼]
    私は不覚にも、その言葉にあからさまに反応して、食いついた。

    「私を……攫う?」

    言うと、彼は「そう」とゆっくり頷いた。
    ぎゅっと己のドレスの裾を掴んだ。自己制御のつもりだった。

    「つ……月を攫うって。貴方、さっきそう言ったじゃない」
    「そう」

    同じように彼は頷いて、そして「その通りだよ」と付け加える。
    私は馬鹿にされているの?そう思うのは当たり前の事で、じっと彼を睨みつけた。
    だけど、逆にその瞳に吸い込まれそうになって、目を反らしてしまう。素直に、恥ずかしかった。

    「貴方は……何なの?私を攫って、そしてどうするつもり?」

    何が可笑しいのか、彼はくすくすと笑う。くすくすくすくす、本当に煩く。
    その態度に苛立ちを覚えながらも、私は俯いて返事を待った。目を合わせるのが怖くて、俯いて。

    「狭い世界しか知らない君に、知らない世界を教えてあげる。それだけ、だよ」

    ――この怪盗は、一体私の何を知っているというの?
    彼の言葉が鼓膜に焼き付いて、絶対に離れない。
  • 31 ももくり id:4tFTuHt.

    2011-10-31(月) 21:26:29 [削除依頼]
    きっと、大声を出せば深霧はすぐにでも駆けつけてくれる。

    分かってる。さすがにそんな事くらい、ちゃんと分かってる。
    だけど、夜の世界では何もかもが虚ろに見えて――くらくら、する。
    目の前の怪盗の手の中で、きらりと輝くベル。それが私の中の不安定なものを後押しする。全身が心臓になってみたいに脈打った。
    気が付いてしまったから。

    ――私、さっきベルを作動させようとした。
    深霧を呼ぼうとした。
    いつも「外に行きたい、自由になりたい」なんて夢見ていた癖に。あんなに叫んでいた癖に。いざとなると深霧に頼ろうとしたんだ。外の世界を拒もうとしたんだ。

    『私は、国王様に仕えている身なので』

    彼は、そう言ったのに。そう言って、私のことを突き放したのに。
    私の事なんて、何とも思っていないのに。

    「……貴方は、私の味方なの?」

    怪盗に向かって、聞く。
    きっとこれはルール違反。色んな意味で、聞いてはいけない事。
    だけど彼は、ふ、と口元を緩めた。

    「はい、勿論」
  • 32 ももくり id:4tFTuHt.

    2011-10-31(月) 21:38:57 [削除依頼]
    ぎゅ、と拳に力を入れる。
    堂々と胸を張って、真っ直ぐに怪盗を見据えた。
    そして、頭のティアラをゆっくりと外す。

    私に残された道は、本当に限られている。
    『このまま操り人形として生涯を終える』か『見ず知らずの怪盗に攫われる』か。
    言ってしまえば、賭けだった。
    私はこの怪盗に、今から全てを預ける。彼が私の期待を裏切ったなら、もうそこで物語はおしまい。
    でも、もしも、彼が私に予想以上のものを与えてくれるなら。私の味方でいてくれるなら。

    「こんな素敵な物語はないわ」

    ティアラが床に落ちる音と、私の声。二つが重なって、物語は始まる。
    警戒心と好奇心。
    きっと私は今日の事を、生涯忘れない。

    「私を攫って」
  • 33 ももくり id:iw6wZaq0

    2011-11-03(木) 22:06:25 [削除依頼]
    怪盗が何も言わずに微笑むと、そこからの展開は速かった。
    彼は私を音も立てずに持ち上げた。ひょい、と。言葉の通り、ひょい、と。
    やっぱり香った彼の匂いが、心を刺激する。
    私の鼻の先の、銀の短い髪。それは悪戯に小さく揺れて、惑わそうとする。
    深霧以外の人に抱き上げられたのは――初めて、だろうか。

    「……え、やっぱり窓から出るの?」

    平然と窓から身を乗り出した怪盗。
    私は思わずその胸元を引っ張った。
    此処は塔の一番上、天辺、頂点。それなりの高さから見えた景色は、暗かった。遥か下に見える庭が、びゅううと風を吸い込む。背筋を人差し指で撫でられたみたいに、思わず仰け反る。

    「何?怖い?」

    銀の髪を揺らして、彼は覗き込む。
    ばっちりと目が合って、言い訳を考える時間が無かった。おまけに高所の恐怖が襲ってきて、言葉を噛みそうになる。

    「ち……違うっけど!別にそういう意味で言ったわけじゃなくてっ」
    「じゃ、問題ないよな」

    ――風。

    感じたのは、風。
    彼は容赦無く、体を宙に投げ出した。
  • 34 ももくり id:iw6wZaq0

    2011-11-03(木) 22:15:19 [削除依頼]
    「やっ……やだっ!」

    落ちる――!
    浮遊感が体中の感覚を奪う。それはもう無理矢理に。
    ぎゅ、と生まれて初めてこんなに力一杯に目を瞑った。

    「大丈夫だって。目、開けて?」

    彼の言葉を聞いて、すぐに目を開ける事はできなかった。
    だけど、次第に変化に気が付いていく。
    先程まで震えていた、落下する感覚。それはとっくに無くなっていて、代わりに前進していく風の音が鳴っていた。

    「宙に……浮いてるの?」
    「ああ、靴に細工をしてあるんだ。ゆっくりと降下しつつも、前に進んでる」

    「そうなの」と私は安心した声を出す。
    いや、安心したと言ったら嘘だけど、とりあえず少しは落ち着く事ができた。
  • 35 みょ id:ez-WPWGdQ31

    2011-11-03(木) 22:24:21 [削除依頼]
    うわああああっ//
    とてつもなく上手いです!!
  • 36 ももくり id:7VItJ/c/

    2011-11-04(金) 09:44:37 [削除依頼]
    みょさん>

    ありがとうございます(^^)
    いえ、私なんてまだまだです!!
    キャスで面白い作品を見つけたら、羨ましくて尊敬して妬みます←

    コメント嬉しいです(*´ω`*)
  • 37 ももくり id:7VItJ/c/

    2011-11-04(金) 10:06:12 [削除依頼]
    今この世界に存在する音は、一つだけ。たった一つだけ。
    頬を掠める、風の音。

    平行感覚、遠近感覚。もうそういう類のものは、とうに機能しなくなってしまった。
    眼下に広がる世界には、灯りがぽつぽつと見える。広場の噴水が一人で活動している。だけど、その周りにバザールテントは見えなくて。
    私は、未知の領域に入ったらしい。
    この世界の全てのものが、幻想的に、好奇心を引きずり出した。

    「……時計塔が見えるわ」

    城の窓から何度も眺めてきた、立派な時計塔。
    それは天に向かって真っ直ぐに聳え建つ。誇らしげな大きな時計が、周りとは違う迫力を生む。
    この街で、きっと城の次に背の高い建物だろう。
    古い匂いが、落ち着きと安らぎを与える。
    まるで初めて実物を見たような気分になって、優しい溜息が零れた。

    「あれは、教会としての役割も成しているんだ」
    「じゃあ、昼には沢山の人がやって来るのね」

    すると彼は「今夜だけは特別」と笑った。
    私は特別の意味が理解できずに、首を傾げる。

    「今宵は、沢山の人が俺達の為に集まってくれたよ」
  • 38 ももくり id:7VItJ/c/

    2011-11-04(金) 10:21:24 [削除依頼]
    まったく飲み込めていない私に向かい、彼はもう一度笑い掛ける。
    それは子供っぽい無邪気さに、大人の自信を兼ね揃えた、何とも不思議な笑顔だった。
    これが彼の笑い方なんだろう。先程から何度も見てきた。私はそろそろ悟って、だけど笑顔は返さなかった。

    「今から其処で、楽しいゲームが始まるよ」
    「時計塔に行くつもり……?私が姫だとばれたら、たちまち城に連れ戻されてしまうわよ」
    「大丈夫。誰も君には触れられない」
    「どういう事?」

    疑問と不安。
    彼は私の胸に沈むそれらを救い上げるように、言った。

    「俺が君の味方だからだよ」

    ――ぐん、と体が不安定に傾く。再び生まれた浮遊感に、体を小さくした。
    怪盗は「大丈夫、降下しているだけだよ」と背中を擦った。
    私はその扱いが恥ずかしくて、少しだけ意地を張る。

    「ゲームって何よ?」
    「ん?知りたい?」

    焦らす時間が気になって「当たり前よ」と声を荒げた。
    相変わらずの浮遊感の中に、彼の声が聞こえる。

    「俺と君は怪盗だよ。あの時計塔の月を攫いに行くんだ」
  • 39 wwwwwwww id:RoEkRsp.

    2011-11-04(金) 16:48:23 [削除依頼]
    おもしろすぎます。
    この小説に尊敬の念を覚えましたね。ええ。
    応援してます。がんばってください。
  • 40 ももくり id:ECPMZS..

    2011-11-05(土) 20:19:47 [削除依頼]
    wwwwwwwwさん>

    そ尊敬の念!!
    そんなの言われたのは初めてなので、嬉しくて対応に困ります!←
    わーいわーい♪(^ω^)←黙
    がんばりますね^^
  • 41 ももくり id:ECPMZS..

    2011-11-05(土) 20:38:30 [削除依頼]
    ――月を攫う、怪盗。

    この二つの言葉には聞き覚えがあった。
    反射的に、私は勢い良く顔を上げた。当然、彼と目が完璧に合う。
    きっと私の目は、落ち着き無く揺れているだろう。ぞくぞくと、それはもう激しく。自分でそんな自覚をするくらいに、とにかく私は心を揺さぶられていた。
    何となく、少しずつ。話が見えてきたから。

    「私を……怪盗にさせる気?」

    真剣な瞳でそれを問うけど、彼はやっぱり一段上の笑みで返す。
    だけど、その二秒後に、彼は改まって真顔を作ってみせた。
    私は少しだけ驚いて、彼の声に耳を傾ける。

    「そうだよ、君の解釈は正解だ。俺の欲しいものは、君無しでは手に入らないから」
    「欲しいもの?」
    「そう。あの時計塔に隠されている『夢月石』」
    「ゆめつきいし?」

    降下と前進を続け、確実に近づきつつある時計塔。
    怪盗が浮かべた笑みを、まともに見る事ができなかった。
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