僕のオモチャ。4コメント

1 竜姫 ロウ id:ORQ.a4v/

2011-10-01(土) 21:46:58 [削除依頼]

暇なら僕の相手をしてよ。
――そこのメイドさん?
  • 2 竜姫 ロウ id:8vhyB4O0

    2011-10-01(土) 22:18:58 [削除依頼]

     坊ちゃん、とお呼びすると、私の小さなご主人様は、さも不快そうに眉をしかめます。この時「嗚呼、苦々しい顔も可愛らしい」なんてことは、間違っても思ってはいけません。
     愛らしい容姿に油断していると――

    「ねえ。……そこの豚(メイド)」

     はい、この通り。すぐに毒が飛んできます。

    「あの、坊ちゃ……レヴァイン様。私には“マシナ”という、ちゃんとした名前がございまして……」

    「そんなこと関係ないよ。僕にとっては、君がシナでもブタでも変わらないんだからさ」

    「私にとっては大きく変わるんですが……」

     私が初めて、このお屋敷に来た時。坊ちゃんこと、かのアールグレイス家当主がご子息、アールグレイス・レヴァイン様への対応には、本当に戸惑ったものでした。
     当時私は、田舎から出てきたばかりの十一歳の娘。知っていることよりも、知らないことの方が格段に多い無知な小娘で、そのくせ向上心だけは一丁前な。
     一言で言えば、希望しか見えていない子供でした。

     私の家は貧乏で、それはもうこの上なく貧しかった。けれどさる人のご縁あって、上流階級の貴族に属するアールグレイス家前当主のおじさまの元で、働くことを許されたのです。
     六年前、私が面会した時には、既にもうおじさまは病床に伏していて。一人ではろくに起き上がることもできないような状態で。けれど穏やかな笑顔を絶やさない。
     そんな素敵なおじさまでした。

     メイドに入って一年、まだまだ新人で、失敗ばかりだった私に、おじさまは言いました。
    「……私がいなくなった後、あの子を頼む」と。
     それがおじさまの、最後の言葉。
     私が心から尊敬していた、そして心から憧れていた、おじさまの。

     おじさまが残された――あの子。
     この世で唯一、おじさまの意思を継がれたその方こそが、私が現在お仕えする坊ちゃん、アールグレイス家現当主であります、レヴァイン様なのです。
  • 3 竜姫 ロウ id:qsuvMCh1

    2011-10-02(日) 02:43:03 [削除依頼]

     レヴァイン様は聡明で利口、勉学に長け、教養深く、それはもう聡いお方でいらっしゃいます。……えぇ、まあ貴族の当主としては、ね。
     高貴なお血筋がそのまま具現されたかのような、天使の外見に隠されたその心は、まさに悪魔。メイドや召使をことごとく奴隷扱いし、時には豚扱いする、何とも躾の悪いガキ……もといお坊ちゃまでありまして。
     十七歳にして私――コーラルウシュ・マシナは、美しくも五歳年下の御主人様に、労を強いられる生活を日々送っているのでした。

     昼食が気に入らなかったのか、今日のレヴァイン様はとかく機嫌が悪く、目につく者すべてに何かしら当たっておりました。
     私が豚と呼ばれるのはいつものこと。他のメイドや召使や執事たちに比べれば、私への仕打ちなどまだいい方でしょう。そうでも思っておかなくては、到底ここじゃやっていけません。私はそれをこの六年の間で学んだのです。
     しかし阿呆な私が学び取れることなど、所詮はこの膨大な屋敷内の、ほんのわずかなことだけ。住み込みで働く屋敷の中のことさえ、やっと大まかなことを学んだばかりぐらいです。
     それがレヴァイン様のこととなれば、なおさらよく分からない。
     私は坊ちゃんの、専属付きのメイドでありますのに、分かることの方が少ないほどです。

     そんな私の心情を読み取ったかのように、レヴァイン様は書物に埋めていた端正な顔を

    「……ねえ」

    名前を呼ぶでもない言葉と共に、私に向けられました。
     こういう時は背筋が凍ります。体に不安が走ります。何かしでかしてしまったのか、お気に召さないことを気付かぬ内にしてしまったのか、と。それは大抵、杞憂では終わらないのですが。

    「はい、坊ちゃ……レヴァイン様。な、何でございましょう?」

     十二歳の男の子にはいささか大きすぎるオーダーメイドの椅子を、坊ちゃんは何の気なしにくるりと回す。そのサインで私はすぐに分かりました。
     無表情なうえ寡黙な坊ちゃんの無言のサインは、分かりにくいものばかり。ですが、これは私でも理解できる数少ないサインの内の一つなのです。
     私は了解、の意を込めて小さく会釈します。これが、私のサインです。
     レヴァイン様は、椅子の手すりに肘をつき、頬杖をついて私を見る。その目は金色、どんな宝石にも勝る瞳です。
  • 4 竜姫 ロウ id:qsuvMCh1

    2011-10-02(日) 03:08:59 [削除依頼]

    「僕のサインが分かった?」

     相変わらずの無表情で、硝子細工のような瞳を私に向ける坊ちゃん。私は再度頷いてみせました。けれど坊ちゃんは、そんなことは目に入っていないかのように、私を見据え続けます。
     普段は私になど目もくれず、まるで空気のようにしか扱って下さらないというのに。レヴァイン様の目に穏やかさがないことを除いても、こんなにじろじろと見つめられたのは、思い返してみても初めてのことかもしれません。
     本来ならたかが召使の私になど、当主御自ら声をかけてくださることすらも光栄というもの。けれど普段が普段だけに私はそのうち、見つめられることの高揚感よりも、不安の方が大きくなっていくのが自分でも分かりました。
     そういう意味合いでもって考えてみると……見つめているというか、睨んでいるような……。
     一抹の不安が胸をよぎりました。

     と、その時。

     ――突然、私の目の前に、黒いものが。

    「え……?」

     これは、まさか。まさか。まさか……?

    「見て。蜘蛛」

    「……い、いやああぁぁぁっ!」

     蜘蛛!くも!クモ!kumo!

     私は一目散にその場を離れ、広い書斎の中を走り回った末、分厚いカシミアのカーテンの裏に隠れました。もう必死で。
     そんな私の醜態を、さっきまでの能面顔が嘘か幻だったかのような満面の笑みを浮かべて、観察するレヴァイン様。
     油断していました。――この方が“超ド級”のサディストだってこと、十分に分かっていたはずでしたのに……。

    「そんなに怖がらなくてもいいじゃん。大丈夫。毒なんかないし、噛みついたりもしないよ?」

    「そ、そういう問題じゃないんですぅ!」

    「ほら、シナも見てごらんよ。近くでよく見てみると、意外と可愛いよ?蜘蛛って」

    「可愛くないっ。可愛くなんかないっ」

    「ふふふ……大丈夫だって。ほら、おいでよ……」

     黒い未確認生物を片手に携えて、ジリジリとにじりよってくる坊ちゃんに、私は本気で泣き喚きたくなりました。
     年上とはいえ、仮にも女の子に虫を近づけて反応を楽しむなんて。こういうところは、年相応に幼いと、いつも泣きながら思います。
     そう、いつも。これをやられたのは、今回が初めてではないのです。
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