向日葵の咲いた冬30コメント

1 叶恋 id:YCz9Y6L.

2011-09-27(火) 17:46:44 [削除依頼]
よく晴れた日だった。

その日はちょうど、入学式だった。

『ねぇ、名前、なんていうの??』

そういって笑いかける彼女の笑顔が

太陽みたいに眩しくて・・・。
  • 11 C id:vFs9swn0

    2011-09-28(水) 06:55:38 [削除依頼]
    教室はすでに賑やかなもので、

    俺が入った瞬間、とびついてくる奴がいた。

    こいつの名前は松田健太。

    ちっさくて、アホな奴。

    だけど、バスケ部に入ってて、背なんか

    関係なしに、強い。

    バスケをやってるときが一番

    マシな健太をみられる。

    「はよっす☆!
     な〜直樹ぃ。こいつらひでぇの!」

    「朝っぱらからなんだよ」

    「叶多がなぁ!サッカーボール
     俺の頭!痛い。わかるかぁ!?」

    全然分らん。こいつは日本語までおかしい。

    だけど、フランス語、英語は超得意。

    帰国子女らしいけど・・・。不明。

    横でボールを抱えて笑ってるのが小林叶多。

    俺と同じサッカー部で、チャラい奴。

    だけど、みんなの前では猫を被っていい奴きどり。

    叶多のする愛想笑いは可笑しい。

    「うす。直樹」

    「ッス。蓮」

    こいつは俺の親友、速水蓮。

    茶髪で耳にピアスなんかしてるけど、

    これでも陸上部期待のエース。

    速水の走る姿は格好いい。

    速水には何も言わなくても伝わる。

    要領のいい最高のダチなんだ。

    「ちょっと、健太ぁ!
     朝練来いっていったでしょぉ!?」

    勢いよく飛び出してきたのは西内真里。

    「駄目だよ。真里。もう少し優しく・・」

    後ろからひょっこり顔を出す西内絵里。

    この2人は一卵性双生児の双子。

    だけど性格は正反対。

    姉の真里は気が強くて男勝り。

    妹の絵里は優しいお嬢様風な女の子。

    この正反対な性格なのに、顔はそっくり。

    以上が俺の、つるんでいるメンバーだ。

    俺は日常茶飯事の一騒ぎをききながら

    机に突っ伏して居眠りを始めた。
  • 12 C id:vFs9swn0

    2011-09-28(水) 15:20:29 [削除依頼]
    「起きろ!!古城!!」

    大きな声とともに頭に衝撃が走った。担任が出席簿を持ってたっていた。

    「ってぇー」

    頭を押さえる。角はなしだろ。角は・・・。

    「人の話きいてんのか?」

    「はぁ。一応・・」

    適当に返事をする。こういうときは

    適当に交わすのがいちばんいいんだ。

    「ほう。じゃあ、何の話だったかいってみろ」

    「・・・・」

    放課後のSHL・・。放課後、放課後・・・。

    「サッカーの時間!」

    そういって教室を飛び出す俺。それに続いて

    クラスの奴等もみんなが飛び出す。女子でさえも・・・。

    「おらぁ!!古城!いい加減にしろよ!!」

    担任の叫び声が廊下に響いて消えていった。

    俺はHLなんて受けてる暇はねぇ。

    いち早く練習場にたどり着いて、

    やらなければならない。

    「おせーぞ。カナ」

    小林叶多。通称“カナ”

    俺と同じサッカー部で見た目がチャラい。

    いつもは温厚な奴だけど、たまに、何考えてっかわかんねぇ時がある。

    「直樹が早いんだよ・・」

    そう、ここから始まるんだ。

    俺らのPK戦が。
  • 13 C id:vFs9swn0

    2011-09-28(水) 15:54:36 [削除依頼]
    「くっそー。また負けたぁ!!」

    俺はその場に倒れこんだ。

    これで54連敗中。

    叶多が涼しい顔をしてタオルで汗を拭う。

    「はぁ。サッカー下手くそだな俺」

    「なんだよ。PKだろ?弱いのは。
     お前は試合になったらすごいんだから」

    叶多がムッとしながらいった。

    「下手だよ。頭悪ィからなぁ・・」

    「今日も30分以上たったな」

    「ああ・・・・」

    この練習場に、全員が集まったことはない。

    かつては有名な強豪校だったのに・・・。

    今はただの弱小サッカー部だ。

    決して弱いわけではないはずなんだ。

    それなのに、ここは弱小チームなんだ。

    それは、メンバーの不足。

    「おーい。お前等!」

    顧問の三村が走ってくる。

    三村賢治。数学教師でサッカー部の顧問。

    少し若くて女子生徒に人気のある奴。

    三村は顔を曇らせて口を開いた。

    「実は、今日も・・・」

    「わかってる。わかってるよ」

    三村の言葉を制してため息ををつく。

    そう。奴らはこない。

    おれらよりも、1つ、2つも上のくせに。
  • 14 C id:vFs9swn0

    2011-09-28(水) 16:17:59 [削除依頼]
    「直樹・・今日もサッカー、できなかったな」

    帰り道、叶多が呟いた。

    俺はそれに応えずに、空を見上げた。

    「明日、曇りそうだな・・。サッカー、
     できっかな・・」

    「ちょっ!聞けって!
     お前がやる気をみせればいいことでも
     ないんだぞ」

    「わかってるよ〜」

    「分ってないだろ!?
     人数がいなきゃ話になんねぇんだって」

    知ってる。

    知ってるよ。そんなこと。とっくの昔に・・。

    だけど、しかたねぇよな。

    サッカー、したくてしたくて

    たまんねぇんだもんよ・・。

    「おい、あれ・・岡野じゃね?」

    叶多が呟く。指をさした方向に目をやる。

    そこには岡野たちがたまっていて、

    タバコをふかして馬鹿騒ぎをしていた。

    岡野―。

    岡野光喜。3年のサッカー部主将。

    その隣にいるのは真嶋竜也。2年のサッカー部員。

    「あいつら・・・」

    昔のことが蘇る。

    俺が中学1年のときだった。

    俺は確かに、あの岡野の側にいたんだ・・。
  • 15 C id:vFs9swn0

    2011-09-28(水) 16:25:53 [削除依頼]
    『光喜先輩。俺、ボール洗ってきます!』

    中学1年。まだ俺が幼い餓鬼で、

    糞真面目だった頃の話・・。


    泥まみれになった俺は水道まで走った。

    汗を拭いながら蛇口を回す。

    『貸せ。半分やるから』

    『いいっすよ。1年の仕事っすから』

    『サッカーやるのに1年も3年もねぇよ。
     いいからそっちのボール洗え。バーカ』

    岡野はそういって笑った。

    隣で一生懸命ボールの汚れをとる岡野。

    俺はその姿をいつも目にしていた。

    岡野は中学でもキャプテンで、

    周りの後輩からも、同学年からも好かれる

    憧れの存在だった。

    偉ぶらず、平等に接してくれる。

    俺は岡野を気に入っていた。

    岡野も俺を弟のように扱ってくれた。

    『直樹、来いよ』

    いつも俺は先輩たちの中に入って遊んでた。

    毎日が、楽しい日々。

    それが、一気に崩れ始めたんだ。


    あの出来事で。
  • 16 C id:vFs9swn0

    2011-09-28(水) 17:06:32 [削除依頼]
    「き・・・。直樹?どした?」


    「へ?・・いや、何でもない・・」

    我に返ってあわてて返事をした。

    叶多が俺を少し一瞥してから歩き始めた。

    叶多、時々俺を変な目でみることがある。

    俺の考えすぎだと思うけど、

    時々目が、冷たいんだ。

    叶多はそれからすぐにいつもの叶多に戻った。

    「んじゃ、またな」

    「おう・・・」

    家に入った俺はリビングに向かう。

    「お帰り」

    母さんがいた。洗物をしていた手を少し止めて、

    俺を見た。それからすぐに手を忙しそうに動かす。

    俺は2階の部屋にいき、自室にこもった。

    息がつまりそうになる。この家にいると・・・。

    「はぁ・・・」

    母さんとは必要最低限のことしか話さない。

    父さんが1年前に亡くなってから、

    俺と母さんは話さなくなった。

    どうしてからは分らない。ただ、なんとなく。

    原因があるとすれば、俺だ。

    教科書が入ったかばんを投げ捨て、ベッドに寝転がる。

    天井の明りをみてボーっとする。

    俺はふと、ベッドのしたにあるものを手に取った。

    それは、懐かしい、前に書いていた日記だった。

    確か、岡野が日記を書きとめておくと強くなれる。

    そういってくれたものだった。

    俺はページを開いて読み始めた。
  • 17 C id:vFs9swn0

    2011-09-28(水) 17:13:49 [削除依頼]
    7月3日

    『今日も光喜先輩にサッカーを教えてもらった。
     俺も早く光喜先輩みたいな
     サッカーをしたい』

    少しまた、ページをめくる。10月11日


    『今日は雨で、部活が無かった。
     だけど、友達と一緒に遊んだ。
     サッカーのテレビも見た。
     明日も雨らしい。うっとうしいよな』

    俺、岡野と友達と、

    サッカーのことしか書いてない。

    そして、またページをめくると、2年の秋

    『引退した光喜先輩が遊びに来た。
     俺が次期部長だっていってくれた』

    そうだ。俺、あれから主将になったっけ。

    懐かしいな。

    そして、中3の夏。

    『明日は試合だ。
     この日を待ち望んできた。
     やっとメンバーに選ばれたんだ。
     明日も活躍したい。
     明日はきっと、晴れる!!』


    そし・・・。この日記を境に、

    つぎからのページは白紙だった。

    そう。ちょうどこの次の日、

    父さんが死んだんだ。

    その日は、

    突き刺さるような雨だった。
  • 18 C id:vFs9swn0

    2011-09-28(水) 17:25:33 [削除依頼]
    父さんは威厳のあるすばらしい人で、

    俺はいつも尊敬していた。

    思春期に差し掛かっても、

    父さんにだけは何でも話せていた。

    父さんはいつも笑ってくれた。

    父さんはいつだって

    俺が話しかけると、答えてくれた。

    どんなくだらない話でも。

    それなのに・・・。

    あの日、目の前に横たわる父のは違った。

    きちんと寝かせてあるその姿は、

    あまりにも残酷すぎて、

    目をそらしたくなったんだ。

    顔の上にかぶせてあった白布を取る。

    『あっ・・・』

    息をのんだんだ。そこにあったのは、

    いつも優しく笑いかけてくれた父の顔ではない。

    張り詰めたような顔。決してその口角が

    あがることのない、冷たい顔。

    『父さん・・・』

    静かに問いかける俺。

    『父さん。今日は・・っ今日は
     サッカーの試合だったんだ・・』

    眉一つ動かない、静かな父。

    『でも、サッカーよりも、父さん。
     俺は父さんをえらんだよ。それなのに、
     どうしてだよ。
     俺は・・。
     こんな父さんを見にきたんじゃないんだよ!』

    いつもは、黙って話を聴いてくれて、

    そのあとにすぐ、父の声が返って来てた。

    今はいくら叫んだって、返してはくれない。

    父さんは死んだ。

    俺はそれを深く実感した。

    父さんはもういない。

    俺のたった一人の理解者である、

    実の父親は、もういない。

    普通の人間なら、ここで泣くんだろうか。

    でも、俺は泣かない。なけないんだ。

    その安らかな顔を見て、誓った。

    俺は、誰にも頼らない。

    自分の話なんかしない。

    そうやってどんどん、塞ぎこんでいくんだ。

    『父さん・・。雨だよ・・・』

    雨だよ――。父さん――。
  • 19 C id:vFs9swn0

    2011-09-28(水) 17:40:29 [削除依頼]
    気付くと朝になっていた。

    俺は座ったまま、そこにいた。

    その日記帳を机の奥底にしまった。

    リビングへ降りていくと、

    母さんの姿は無かった。

    食パンを食べながらふと、隣の部屋に目をやる。

    そこは仏間。

    そこには母さんがいた。

    仏壇の前で眠っていた。

    母さんは今も、まだ父の死から

    立ち直れていない。

    俺は母さんに毛布をかけてやると

    玄関を出た。

    家族が崩壊した。

    父さんが他界して、母さんは

    いつもうつろな目をしていて、

    俺は、道を踏み外した。

    中3のあの日から、

    暴力ばっか起こして、

    他人と、自分を傷つけていった。

    今は押さえているけど、

    いつまた人を傷つけるか分らない。

    嫌なんだ。自分が。

    足元の石ころを思い切り蹴飛ばす。

    「いったぁ!」

    思いがけない声にびっくりする。

    目の前で頭を抱えてしゃがみ込む女の子。

    「すんませ・・・」

    「あ、ナオ!」

    「日向井!?」

    それは葵唯だった。

    葵唯はにっこり微笑んで駆け寄った。

    「ナオ!一緒に行こう」

    「はぁ。何で俺が・・」

    「途中で倒れたらどーすんのよ」

    俺は構わず歩き出した。

    そんなの、俺とは何の関係もな・・

    「いっちゃおうかな。
     今朝、どっかの誰かさんに
     石を投げつけられましたーって」

    「・・・っさっさとしねぇとおいてくぞ!」

    「さっすがナオ!優しいじゃん」

    「よれ、やめろよいい加減」

    俺がいうと、葵唯は駆け出した。

    少し先にいったところで振り返った。

    「ナオ。今日は晴れるよ」

    「??」
  • 20 C id:vFs9swn0

    2011-09-28(水) 17:50:00 [削除依頼]
    今日の一日を俺は覚えていない。

    なぜかって?今無性に腹がたってるから。

    だから、SHLまですっぱり

    覚えていない。

    現在放課後。

    俺は練習場に立っていた。

    向かいに立つのは岡野たち。

    「おい、何だその目は」

    俺をみて岡野がいう。

    俺は黙って岡野を睨みつけた。

    そもそも岡野が悪い。

    俺と叶多がPKをやっている最中だった。

    別の場所からいきなりボールが飛んできた。

    それは赤く塗りつぶされたサッカーボール。

    俺はそれをみて限界が来てしまった。

    笑い転げていた岡野に近寄り、

    思い切り殴った。

    それが原因で岡野が切れたのだった。

    「お前、誰に向かって
     そんな態度とってんだぁ??」

    岡野がにらみ返してきた。

    「ろくでもねぇあんたらにだよ」

    「いうじゃねぇか。だいたいよぉ。
     お前をそこまで成長させたのは誰だ?
     この俺だよなぁ!?」

    そこで笑い転げる岡野。

    俺にはもう岡野を慕う心などなかった。

    だってそれは俺の知らない岡野だから。

    あんなにいい先輩だったのに、

    こんなにも堕ちてしまったから。

    そして、今地面に転がるボールを見て、

    自分自身でも手が付けられないほど

    怒りたけっている。

    「直樹。やめろよ」

    叶多が止めに入った。

    真嶋に叶多が殴られる。

    「叶多は関係ねぇだろーが!!」

    「うっせぇなぁ。お前は黙れよ」

    岡野が再び殴ろうとしたとき、

    「こらぁ!!お前等ぁ!何やってんだぁ!」

    三村が叫んだ。
  • 21 C id:vFs9swn0

    2011-09-28(水) 17:58:03 [削除依頼]
    「古城。我慢しろ。もう少し」

    叶多と俺に手当てをしながら三村がいう。

    岡野たちは三村が泊めに入ったおかげで

    逃げ出していった。

    「嫌だね。あんなやつら・・」

    「おい、サッカーできなくなっても
     お前はいいのか?」

    三村が真剣な顔でいう。

    「とにかく、俺がいないときは
     練習場にいくな。分ったな?」

    「・・・・」

    俺は無言で叶多を見た。

    さっきから様子がおかしい。

    俯いたまま、床をじっと見つめている。

    怒ったかな。俺が巻き込んだから。

    「ってぇなぁ!さわんじゃねぇよ」

    消毒が傷に染みる。

    危なかった。

    また、取り返しのつかないことを

    してしまうところだった。

    少しでも、岡野が最低な奴でも、

    俺は人を殴ってしまった。

    また、あの時の感覚が蘇ってくる。

    「・・・てぇ」

    その日、俺と叶多は別々に帰った。

    叶多が先に帰ったから。

    俺は1人、帰り道を歩く。

    そういえば、今日は晴れていた。

    葵唯もそんなこといってたっけ。

    傷が染みる。

    ぬるい風が傷の痛みを増していった
  • 22 C id:08GTBsH1

    2011-09-29(木) 14:18:42 [削除依頼]
    朝になってもいまだに痛む傷。

    洗面台の鏡の前で顔をしかめる。

    俺は迷っていた。

    今日の部活、出るか出ないか。

    昨日の今日っていうこともあって

    正直戸惑った。

    昨日は三村に自分を抑えろっていわれたけど、

    今の俺だったら顔を見ただけで

    岡野たちをぶっ飛ばしそうで・・・。

    「直樹。あなたの部屋にあったんだけど、
     コレ・・。なんなの?」

    母さんが手にしていたのは岡野にもらった日記帳。

    眉間にしわがよる。どうしてだ?

    あれは机の引き出し奥深く、しまいこんだはずなのに、

    今、その日記帳が母さんの手の上にある。

    「返せよ。なんだっていいだろ・・」

    「中、みちゃっちゃったのよ。
     最後のページなんだけど・・・」

    「勝手に見てんじゃねぇよ」

    そう冷たく言い放ち、にらみつけた。

    「いつもこんな風に思ってたのね??
     お母さんはあなたにとって一体何なのよ」

    「うるせえな」

    俺は急いで家を出た。

    ここから、俺にとって最悪なことが

    重なるなんて思ってもみなかった。
  • 23 C id:08GTBsH1

    2011-09-29(木) 15:36:46 [削除依頼]
    学校について、ため息をつく。

    今朝から母さんにイラついてた。

    父さんが死んだあの日以来

    俺は母さんと話さなくなってた。

    母さんはいつも仏間の部屋でないてた。

    でもそれは悲しいとか

    まだ父さんの死を引きずっていたわけじゃない。

    母さんは俺を恨んでんだ。

    なぜかって?

    俺のせいで父さんが死んだっていうんだ。

    俺がいなかったら父さんは死ななかったって

    そう、仏壇の前で呟いてたのを聞いた。

    つい、昨日のこと。

    今まで、気付かなかった。

    俺が母さんを嫌ってたんじゃなくて、

    俺が母さんに嫌われてたんだ。

    「くそっ・・」

    手にした日記帳をぐしゃぐしゃにする。

    校門の脇に捨てて俺は校内に入った。
  • 24 C id:08GTBsH1

    2011-09-29(木) 16:10:57 [削除依頼]
    購買でパンを買って階段を上る。

    一段一段、いちいち重たく感じる。

    教室のドアに手をかけたとき、

    「直樹・・」

    誰かに呼ばれて手を止めた。後ろを振り返る。

    「カナ・・・??」

    叶多が後ろに立っていた。

    「どしたよ?」

    俺は叶多に向き直って聞いた。

    叶多はしばらく下を向いていた。

    そしていった。

    「今日、今から朝練、あるらしい」

    「そうなのか!?いくいく」

    俺は練習が出来ると思うと嬉しくて

    叶多にいった。

    叶多は先にいっててくれといった。

    「じゃあ、お前も早く来いよ!」

    俺は練習場まで走った。

    やっぱり、どんなにひねくれようが

    どんなに意地を張ろうが

    サッカーにかける思いは

    サッカーを始めて知ったときと

    何一つ変わらないんだ。
  • 25 C id:08GTBsH1

    2011-09-29(木) 17:16:03 [削除依頼]
    「はっ?」

    練習場には誰もいなくて、顧問の三村さえも

    そこに姿はなかった。

    「直樹、今日練習あんのか?」

    「蓮・・・」

    陸上部の練習が始まる中、俺はただ

    その場に突っ立っていた。

    「ってぇ!?」

    頭に衝撃が走る。頭を押さえて振り返ると

    そこには岡野たちが立っていた。

    岡野、真嶋、そして、

    何人かの3年。サッカー部じゃない奴等。

    「なんすか」

    俺は短くいった。岡野が少しだけ笑う。

    「練習、参加すんだよ。悪いか??」

    「別に・・・」

    俺は岡野を見て返事をした。

    「ボール。持ってきますか?」

    俺は静かに聴いた。部室へと向かおとする。

    「おいおい、ボールはいらねぇよ」

    「は?」

    真嶋がいった。俺はその言葉に耳を疑った。

    「なんつったよ?」

    「古城、お前に教えてやるよ。
     新しい練習法」

    そういい終わる前に、不良の1人が殴りかかってきた。

    「っつぅ・・」

    「5分間の忍耐トレーニングだ」

    日が反射して岡野の顔が見えなかった。

    だけど、俺は一瞬だけ

    ものすごく強大な恐怖感に襲われた。
  • 26 C id:08GTBsH1

    2011-09-29(木) 17:27:38 [削除依頼]
    「おらぁ!!」

    どのくらいたったか。

    今何分だ?

    腹、胸、背中、次々に痛みが飛び交う。

    「どーした?昨日の威勢はどこにいったよ?」

    「がはっ・・・」

    「まだ2分と少しだぞ?くたばりそうじゃねぇか」

    意識が朦朧とする中、

    微かに耳にした。

    「・・直樹!!」

    「かはっ・・れ、ん」

    速水が駆けつけた。俺と岡野を交互に見る。

    そして岡野にいった。

    「何してんすか!?こんなこと・・
     やりすぎッスよ!?」

    岡野が速水を睨みつけた。

    速水はそれにひるむことも無く俺に駆け寄る。

    「直樹、大丈夫か!?それより・・・」


    それより・・・。

    何だよ。

    「お前のおばさん、病院に運ばれたって!!」


    は?

    母さんが?

    何いってんだこいつ。
  • 27 C id:08GTBsH1

    2011-09-29(木) 17:36:46 [削除依頼]
    「・・・なんていえばいいのか・・
     こんなこと、俺がいうのも変だけど、
     担任からお前を探せって・・・」

    息を整える。静かに速水の声を聴く。

    「おばさん、なんでも・・
     胸に、ナイフを刺したみたいなんだ・・」

    ・・・・・は?

    ナイフ?ナイフって何でだよ。

    自分で刺したっていうのか?

    そんなこと、普通するか?

    いくら誤ったからって、

    そんなことあるわけない。

    あるわけ・・・・ある。

    一つだけ。心当たりが。

    「ちょっ、何処行くんだ!?」

    「病院に決まってんだろ・・」

    俺はふらふらと立ち上がった。

    よろけながら歩く。殴られた箇所が多すぎてふらついてしまう。

    岡野を押しのけて進む。さすがの岡野もひるんでいるらしく

    素直にその道を許した。

    病院まで、歩く。

    痛む足を動かして走り出す。

    早く病院につかなければいけない。

    早く、早く・・・。
  • 28 C id:08GTBsH1

    2011-09-29(木) 17:48:41 [削除依頼]
    病院ではもうすでに警察と、

    誰だかわからないおばさんがいた。

    俺が歩み寄ると、二人は驚いた顔をした。

    「君、その怪我は??」

    警察に聞かれる。いろいろと面倒だから

    転んだといった。

    だましきれてないけど、警察沙汰はご免だ。

    「君、奥さんの息子さん??」

    知らないおばさんに尋ねられ、首を縦に振る。

    誰だろうか・・。

    隣のおばちゃんではない。

    「誰・・・?」

    俺は乱暴に問いかけた。

    「ああ、私、近くに最近引っ越してたもので、
     挨拶にいったらこんなことに・・」

    なるほど。そうだたのか。

    じゃあ、この人がいなかったら

    母さんはもしかしたら・・・。

    「あの、事情をお聞きしたいのですが・・」

    警察が改まって話しかけてきた。

    「なんですか?」

    「君のお母さんはどうやら自分で刺したよう
     なんですが、心あたりはありますか?」

    心あたり?そんなの、一つしかねぇよな。

    原因は今朝の喧嘩。

    少し気をつければこの出来事、止められたはず。

    玄関をでるとき、気付くべきだった。

    放心状態になっていた母の姿に・・・。
  • 29 C id:08GTBsH1

    2011-09-29(木) 17:56:37 [削除依頼]
    俺は病室に入ることが出来ずに屋上に向かった。

    病院の廊下は静寂さであふれていて、

    冷たい空気が流れている。

    多分、病院という建物が

    一番人の別れに近い場所になっているんだろう。

    息が詰まりそうになりながら、

    廊下をゆっくり歩いていた。

    とりあえず、一命をとりとめたみたいだ。

    でも、まだ、顔は合わせられない。

    俺は、間接的に人を傷つけたのか・・・?


    「なんだ・・??」

    何かが聞こえた。

    歌???

    誰かが、

    少女の声。

    少女が何かを歌っている。

    きいたことがある。この歌。

    確か、つい最近にも聞いた。

    どこで??

    学校で。

    今はどこから聞こえている?

    歩くたびに大きくなる。

    俺は、学校のドアとは対照的な軽いドアを開けた。

    「・・・・・」
  • 30 C id:08GTBsH1

    2011-09-29(木) 18:15:50 [削除依頼]
    初めて来た病院の屋上で、

    聞き覚えのある歌と、

    見覚えのある人にあった。

    その子は短い髪を風に任せて、一点をみて歌っていた。

    名前、忘れたけど、この曲は覚えている。

    うっすらと、どこかで聞いたことがあるんだ。

    その子は何度も何度も歌い続けた。

    俺は思った。

    なんて綺麗なんだろうか。

    俺は思った。

    どうして苦しい気持ちになるんだろうか。

    俺は思った。

    このこみ上げてくるものはなんだ?

    俺は思った。

    ああ、これは・・・・この頬を伝うものは、

    俺は、ないてるのか??

    少女は歌い終えたように一つ息をつく。

    「ナオ・・・」

    葵唯が笑いかけた。
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