ゼウス-砂原の摩天楼- ?24コメント

1 つるを id:9yaTFv71

2011-09-25(日) 15:15:40 [削除依頼]
イルカンダ大陸の西に広がる広大な砂漠「レアラ」
その果て無き砂原の中に、突如として現れる摩天楼「ラウニの塔」
その塔には、果て無き光を放つ宝石と、進入者を拒む魔物と、悲しみの習慣が残っていた。
 
  • 5 つるを id:9yaTFv71

    2011-09-25(日) 23:31:00 [削除依頼]
    「お、おい! 大丈夫か!?」

     トーマは少女の華奢な肩を持ち上げ、揺さぶった。持ち上げたとき微かなぬくもりを感じることが出来た。まだ生きている。
     少女の首はトーマが揺さぶるたびに力なくブラブラとしていたが、少し続けると少女の目がゆっくりと開かれた。薄暗い中でもはっきりとわかる青い瞳がトーマの目に入った。

    「大丈夫か!?」

     もう一度、トーマが呼びかける。すると少女はか細い声で「……誰?」と一言。
     トーマは戸惑った。それはこっちが聞きたい。お前は一体誰だ? 何でここにいるんだ? 何で倒れていたんだ?

    「……俺はトーマって言うんだけど」

     トーマがそう答えると、少女は困った顔をした。こっちだってそうしたい、という主張は飲み込みトーマは更に言葉を続けた。
     
    「お前は何でこんな所で独り倒れていたんだ?」

     トーマが訊ねた。

    「待っていたの……」
    「待っていた? 何をだ?」
    「多分……あなた」

     ハァ? トーマは顔を顰めた。思わず、少女の肩から手を離してしまった。少女の体が床へと放り出される。
  • 6 つるを id:8ZBdQ8p0

    2011-09-26(月) 18:48:41 [削除依頼]
    「す、すまん。大丈夫か?」
    「大丈夫……です」

     少女は震えながらも立ち上がった。立ち上がってはっきりしたが、この少女は酷くやせている。先ほど、手を離してしまった衝撃で割れてしまってもおかしくないと思うほどに細かった。
     
    「俺を待っていたって、どういうことだよ」

     少女に倣ってトーマも立ち上がる。少し口調が荒かったせいかもしれないし、立ち上がって上からものをいわれたせいかもしれないが、少女は幾分か後ずさった。
     それを見て、トーマはまたやってしまった、と思った。

    「すまん。別に脅す気はない」
    「……待っていろ。と言われたんです」

     その言葉を聞いて少女は俯きながら話始めた。

    「村の人達に、ラウニの塔に少しの間だけいてもらいたいってお願いされたんです。留守番みたいな物だよ、と村の人達は言っていました。いずれ迎えが来るから、それまできちんと塔の中で、それもこの場所できちんと留守番しておくんだよ。って言われたんです。私も意味の分からないままここに連れてこられたんですけど……その迎えが来るからって事でずっとここで待っていたんです」

     トーマは首を傾げた。

    「その、迎えってのが俺のことか? それでお前は迎えが来るまでずっとここにいたのか?」

     そう言うと、少女は力なくコクリと頷いた。
     
    「おかしいな……俺はおそらく、その村の人って訳でもないし、別段"お前を迎えに来たわけでもない"んだが」
  • 7 つるを id:qKrXq181

    2011-09-27(火) 00:20:00 [削除依頼]
     顎に手を当て、考え込むトーマ。
     すると、少女が酷く落ち込んでいるのが目に入った。何か、期待していたものが裏切られたような感じの落ち込み方だった。
     
    (そうか、"お前を迎えに来たわけでもない"って所がいけなかったのか……)

     トーマは心の中で合点をした。……と、しかしこういう時にはどうすればいいのだろう。
    "あの人"から、こういう場合のアドバイスは聞いていなかった。
     とりあえずトーマは、乏しい語彙力とコミュニケーション能力を駆使して、何とか言葉を絞り出した。

    「いや、ただここで一人いるのは人間の良心って物が痛む。お前を迎えに来たわけではないけど助けてやろう……いや、助けてさしあげよう……いや……」

     いまいち、この場で人を安心させる言葉が見つからなかったトーマだった。しかし、少女は笑顔になった。トーマはその笑顔に一瞬怯んだ。
     が、これで良かったのかと、胸をなで下ろした。

    「じゃあ、さっさとこの塔を出て、お前の村へ帰ってみるか」

     塔の探索はその後だ、それよりはまずこの少女の笑顔に応えなければ。

    (人の信頼……そうだな、人の笑顔には必ずこたえてやらにゃあいかん)
     
     胸の内に深く刻まれた言葉が蘇った。
  • 8 つるを id:qKrXq181

    2011-09-27(火) 14:31:34 [削除依頼]
    「はい、ありがとうございます」

     少女は丁寧にお辞儀をした。トーマはその言葉でまたも怯んだ。「いや、いいさ」と怯みを隠すため少女に背を向ける。
     そして、ついてこいと後ろの少女に手で合図をした。少女もそれに従い、足を一歩踏み出した
     その瞬間だった。上から手のひらサイズの石が、トーマの正面へと落下してきた。トーマがそれに気づいて上を見上げてみると、大小様々な石が絶え間なく降ってきた。
     妙に地面が揺れ始た。それに呼応するように、石が上から降ってくる。塔全体が蠢いているのを感じた。
     
    「……何だこれ」

     トーマは振り向き、後ろの少女を見た。少女は焦りの表情を浮かべていた。上から降ってくる石から身を守るために、両手を頭の上にかぶせている。恐らくは少女にも、この塔が揺れ出した原因は分からないのだろう。
     すると、少女がさっきまで倒れていた場所から、赤い光が突然にして現れた。魔法を注ぎすぎた発光石と、同等の光を放っているそれに、トーマは思わず目をつぶった。それは幾許かの間、強烈な光を放っていたかと思うと、唐突に分裂し広間の四方へ広がっていった。何かを描こうことしているかの様に、複雑な動きを見せている。
     ……何かの模様か?
     トーマは何の確証もない予想を打ち立てた。

    (それもこの場所できちんと留守番しておくんだよ)

     トーマは先ほどの少女の説明を思い出した。もしかしたら、少女をあの赤い光がわき出る場所から動かしてはいけなかったのではないか。

     少女は何かの枷? 
     
     自分の足下を赤い光が通りすぎていき、後方へと伸びていった。少女の倒れていた場所を中心として、明らかに何かが描かれていくのが分かった。
     薄暗かった広間はだんだんと明るくなり始め、赤い光も複雑な模様を描きながら広間の四隅へと伸びていく。
  • 9 つるを id:qKrXq181

    2011-09-27(火) 23:02:28 [削除依頼]
    「走れ!」

     トーマは直感で少女へ命令した。さっき、自分がこの広間へやってきた狭い狭い通路を指差す。何かが起こる。そう感じた。
     少女も何かの危険を感じ取ったらしい。広がってゆく赤い光を確認すると、一目散に、石が降り注ぐ中を出口であろう通路へとかけだした。トーマもそれについていった。
     自分達と競争するように赤い光は広間を飾り始めていた。完成すれば間違いなく何かが起こる。太陽の赤ではない、血の色だ。狂気の赤だ。
     少女が、通路に辿り着く。しかし、幾分か戸惑った様子だった。
     「ここを行くの?」という瞳がトーマに訴えかける。トーマは後ろを振り向いて、赤い光の状態を確かめる。それは自分の背後でうねっていた。完成はもうすぐそこなのではないだろうか。

    「急げ! 這って進め! ちょっと痛いが、ここであの赤い光に何かされるよりはマシだ!」

     トーマの檄に反応したのか、少女は決心したようにその通路へと入っていった。
     トーマもそれに続こうと、地面へうつ伏せになった。その瞬間だった。あの赤い光が広間の壁へと到達したらしい。うつ伏せになったトーマの下には赤い光があった。
     突然、赤い光は弱まった。党全体の揺れも収まった。"完了の合図"だろうか。
     すると、トーマの後方。おそらくはこの広間の中心部から何かのうめき声が聞こえてきた。獣の声とも取れるが、人間が死に苦しむ際の声にも似ていた。
     
    「ア……アア」

     背後で何かが起こってるかは分からなかった。しかしこれだけは分かった。何かとてつもない恐怖が現れている。
     トーマはハッとした。何を固まっているんだ俺は。速く逃げなければ。
     そう思い、トーマは通路へと滑り込んだ。その際、背中を天井で擦ったがどうでもよかった。

    「アアアアアアアアアア!!!!」

     突然、うめき声が発狂となり、通路へと入っていくトーマに襲いかかった。背後からナイフを突きつけられた様な感覚だった。いや、既に刺さっている。確実に心の臓を貫いている。
     トーマは必死に進んだ。恐らくは前の少女も必死になっているに違いない。
     狭い通路を抜け出し、少し広くなった通路へと脱出しても、まだその発狂は二人の耳に届いていた。少女の手を掴んで引っ張り、トーマは来た道を全力で戻り始めた。
     どこまで言っても、悲痛な叫びは二人の耳に届き、そして心へと進入していった。
    何なんだよこれは……
     意味が分からないまま走り続けていたトーマだが、恐ろしい事をしてしまったことだけは分かった。
     しかし、あの叫びの中に、何か、一種の、悲しみが、宿っているような気がしてならなかった。
  • 10 つるを id:PHIfrJW1

    2011-09-28(水) 22:29:22 [削除依頼]
     ****

     二人は気づかぬ間にラウニの塔を脱出していた。辺りには果てない砂漠が広がり、向こうの方で風が吹き、砂が舞っている。
     真上から手加減なしに照りつける太陽だったが、それが逆に安心感を与えてくれる。
     トーマは肩を上下に大きく揺らして大きく呼吸をしていた。少し落ち着くと、後ろを振り向き、ラウニの塔を見上げた。どこまでも高く、上の方には霞がかかっている。見つめていると、あのうめき声がまた聞こえてきそうで、トーマはラウニの塔から視線を外した。

    「そういえば、名前は?」

     まだ、名前を聞いていなかった事を思い出し少女に訊ねてみた。
     
    「……クラリスです」

     少女は息を整えつつ、答えた。
     
    「クラリス……ね。それで、クラリスの村はどっちの方向にあるんだ?」

     トーマは更に訊ねた。クラリスはしばらく呼吸を整えていた様子だったが、突然何かに気づいたように呼吸を止めた。

    「……分かりません」
    「え?」
    「連れてこられたときは目隠しをされていたので……分かりません」
    「え?」
    「……ごめんなさい」

     いや、謝ることはない。と言おうとしたが、さすがにこれはまずいと思った。砂漠の中心にある塔なので、村の位置が分からなければ、砂漠をあても無しに歩き続ける事となってしまう。
     いや、それよりも――目隠しとはどういう事なのだろうか。脱出する気を起こさせないための対策? いや、それよりも異常なのは少女をあの空間で一人にする村人の心だ。あれは到底留守番と呼べる物ではなかった。
  • 11 妹狼 id:ARRdBks0

    2011-09-29(木) 18:56:12 [削除依頼]

    とっても面白い小説ですね!
    どんどん惹き込まれてしまいました。
    更新を期待しています。

    頑張って下さいね!
  • 12 つるを id:k049j3f.

    2011-09-29(木) 22:51:09 [削除依頼]
    >11 ありがとうございますー ゆっくりですが地道に更新していくつもりです どうぞごゆるりと
  • 13 つるを id:k049j3f.

    2011-09-29(木) 22:54:16 [削除依頼]
    「村の名前は何だ?」

     聞いたことのある村だと言うことを願ってトーマは訊ねた。
     すると、クラリスはまたも申し訳なさそうに俯いた。黙ったまま答えようとしない。

    「覚えてない……とか?」
     
     少し失礼だとも思ったが、どうやら違う様だ。クラリスは少し間を置いて決心したように答えた。

    「無いんです。私の村は名前が無いんです」
    「―――無い?」

     クラリスは頷いた。

    「けれど、村の人達は自分達の住んでいる村を"永忌の村"と―――そう呼んでいます」
    「……永遠の忌」
    「―――はい」

     残念ながら、聞いたこともない村だった。砂漠に入る前、旅人の酒場でレアラ砂漠近辺の村の情報は掴んでいたが、"永遠の忌"だなんて物騒な名前の村は聞いたことがなかった。
  • 14 つるを id:YL8Pbgg/

    2011-10-01(土) 00:53:17 [削除依頼]
     トーマはポーチの中から何かを取りだした。それは何かの羽毛だった。触れれば火傷してしまいそうなほどに紅かった。大きさはトーマの腕と同じくらいの大きさだろうか。クラリスは珍しげにそれを眺めた。

    「ドラゴンの羽毛なんだ」

     トーマはクラリスに説明をした。過去に、竜哭の島という所で手に入れた物だった。
     ドラゴンの羽毛は、トレジャーハンターにとっては必涎もののレアアイテムだった。当然入手する経緯は、とても至難な物である。
     トーマはそれを3つ持っていたが、その内の一つを使うことにしたのであった。砂漠の中で途方に暮れて干からびるのはどうしても避けたいところだった。
     トーマはクラリスの方へ右手を差し出した。クラリスは不思議そうにその差し出された右手を見つめる。

    「……繋いで」

     恥ずかしそうに言った。そうするととクラリスは素直に、華奢で白いその手をトーマの手に重ねた。
     
    「離すなよ!」

     そう言って、トーマはもう片方の手でドラゴンの羽毛を空へと放り投げた。ひらひらとその羽毛は空に舞っていく。
     すると、突然二人の体が宙へと浮き始めた。ふわりふわりと、まるで下から風に押し上げられているかのように、上昇していく。最初はゆっくりと上昇していたが、だんだんと上昇する速度が加速していき、いっきに二人は天へと上っていった。
     しばらくすると、上昇の勢いは止まった。下を見ると、足がすくむほどに、全てが小さくなっていった。強いかぜが二人の髪や服を揺らす。広大な砂漠も果てが確認できた。もう少し向こうを見ると海が見えた。ラウニの塔も自分達の下で悔しそうに佇んでいた。
     トーマは真下を見てみた。見なければよかったと思うほどに、遙か下に砂原が広がっていた。この高さから見下ろせば、広大な砂漠もただの黄色い絨毯である。横のクラリスもこの高さに怯んでいる様子だった。繋いだ手から震えが伝わってきている。
     トーマは少しだけ手を強く握り「大丈夫だ」と言った。
  • 15 つるを id:1QKR33s1

    2011-10-02(日) 22:39:43 [削除依頼]
    「お前の村。ここから分かるかな?」

     落ち着いたクラリスに聞いてみる。クラリスは、四方をぐるりと見渡した。すると気がついたように、あるところを指差した。
     砂漠の黄色がずっと続いてる中に、一つポツリと緑が存在している。オアシスだろうか。その周辺ではボンヤリとだがいくつか建物が立っているのが分かった。

    「あそこが永忌の村か?」

     クラリスは自信なさげに頷いた。
     そうか、砂漠の近辺にある村は調べたが、砂漠の中にある村の情報は調べていなかった。知らなくても当然という物か。
     ―――それでも。トーマはクラリスが指差した場所を見つめた。あの村はなんだか「外」を拒絶するようにひっそりと佇んでいるように見える。永遠の忌。まさにその名が相応しいようだった。

    「よし。距離も案外遠くは無さそうだな。とりあえずの所は一安心だ。違ってたとしても、あの村で休息をとって、それでまた探せばいい」
    「……ありがとうございます」

     握った手に力がこもった気がした。
     クラリスがこちらにほほ笑みを投げかける。

    「……いや、いいさ」

     トーマはクラリスの笑顔から思わず顔を背けた。
     目のやりどころに困ったのでとりあえず、下に広がる世界を見渡してみた。とてつもなく広いこの景色だが、ここから見える物が世界の全てではない。ただ、あちこちに見える街や村が小さく見えると、全ての世界を手に入れた気がした。
     
  • 16 つるを id:Ln9IPgp0

    2011-10-05(水) 23:59:36 [削除依頼]
    (ゼウスを手に入れたら、お前はなんてお願いをするんだ?)

     ふと、胸の内にあの人の言葉がよみがえった。随分昔のことだったが、その後、俺がどう答えたかははっきりと憶えている。

     ――野心家なら、世界を手に入れる。貪欲な奴なら、ありったけの金。女好きなら、毎日女をとっかえひっかえすることが出来る環境。
     でも違う、俺が手に入れたいのは……

    「あの……」

     突然クラリスが、手を強く握ってきた。

    「何?」

     先ほどの考え事を、急遽打ち切った。

    「これ、どうやって降りるんですか?」
    「…………」

     トーマは下を見てみた。そして、確かにそうだな、と思った。
     ドラゴンの羽毛が、天へ上る使い道があることは知っていたが、その後"どうやって地上へ降りる"のかは知らなかった。
     両者とも大事な情報ではあるが、後者を聞き逃すとはなんたる失態。
     トーマはしばらくの間、いろんな方法を模索してみた。強く念じてみたり、ふわふわと浮かぶ足場を強く踏んづけてみたりした。
     しかし、一向にこの足場が消えうせる様子はなく、トーマ達は高い高い空の上で置き去りの状態となっていた。
     しばらくの間トーマは方法を模索していた所

    「……とりあえず適当に。うわっ!」

     突然、先ほどまでふわふわとしていた足場が突然消え失せた。
     二人は抵抗する事もままならずぐんぐんと地上へ急降下していった。
  • 17 G id:F6jSKmX/

    2011-10-06(木) 16:49:36 [削除依頼]
    面白いですね!
    しかも上手い!

    続きが気になります^ ^
  • 18 つるを id:/H.Txw90

    2011-10-08(土) 23:33:30 [削除依頼]
    >17 ありがとうございますー ゆっくり更新ですがどうぞよろしく
  • 19 つるを id:/H.Txw90

    2011-10-08(土) 23:41:00 [削除依頼]
    「……!?」

     声にならない悲鳴が口からあふれ出る。風を切っていく音が耳をつんざく。クラリスの長い髪が風に強くなびき、こちらに襲いかかってくる。
     見える視界が小さくなっていく代わりに世界はどんどんと大きくなっていった。

    (ま、頼りになる奴ってのはいかなる時でも落ち着いてるんだよな)

     風が轟々と鳴っている中トーマは"あの人"の言葉を思い出した。

    (これは無理……)

     案外冷静に、その言葉へ突っ込んだ。

     地上へ落下していく間の時間は長かった。死ぬときは世界がスローモーションになるというのを聞いたことがあったが、本当にそうらしい。
     クラリスは、落下してる最中もトーマの手を離さなかった。トーマもそれに応えて、強く握り返した。
     どんどんと地上が近づいてくる。もう駄目だ。ゼウスを見つける前にまさかこんなことになるなんて思ってもみなかった。一人前のトレジャーハンターは情報をきちんと整理する。情報をきちんと把握しきれなかった、俺の失態だ。
     もう地上は目と鼻の先だった。トーマは目を瞑りクラリスの手をさらにきつく握った。

    「……!!」
  • 20 つるを id:7mJROOR.

    2011-10-13(木) 23:31:09 [削除依頼]
     終わった。
     
     そう思ったその瞬間ふわりとした感覚が足に蘇った。そして、次にはゆっくりと自分の足が砂漠の砂を踏みしめたのが分かった。ざくっと砂の鳴る音が聞こえた。下を見てみると黄色い砂の大地が足元にあった。
     
    (助かった……のか?)
     
     どうやらドラゴンの羽毛は、地上へと自動で降ろしてくれるものだったらしい。
     しばらく二人は手を繋いだままポカンとしていた。

    「……待ってれば自然に地上へ降ろしてくれるん……だぜ」

     しばらくしてトーマはクラリスの手を離してそう言った。クラリスは何だか少し笑ったように顔を伏せた。

    「さ、さっさと行こうぜ。確か方角はあっちだったかな。ほらちゃんとついてこいよ」

     トーマは先ほど空の上から見つけた永忌の村の方角へ向けて歩き出した。クラリスもそれに従い歩き出した。
     以降、自分を見るクラリスの目が少しばかり和んでいる様な気がしてならないトーマだった。
  • 21 つるを id:f8ZkaC4.

    2011-10-16(日) 18:26:25 [削除依頼]
    ****

     砂丘を一つ乗り越え丘の頂上部分から遠くを見ると、永忌の村らしきものが見えてきた。日は大分傾きはじめており、落陽に照らされた砂漠が、朱色に染まり始めていた。
     
    「あれが、永忌の村か?」

     トーマは遠くを指差し、クラリスに訪ねた。
     緑の木々が集まっている場所に、太陽から隠れるように家屋が並んでいる。クラリスは自信なさげに頷いた。
     おそらくは、この様な遠くから村を眺めたことがないのだろう。

    「よし、後もう少しだな。最後の最後で干からびるなよ」

     トーマはそう言って、砂丘を滑り降りてゆく。クラリスも、それに倣い中々上手に砂丘を下っていった。
     
  • 22 G id:7aJZkJl1

    2011-10-16(日) 18:53:48 [削除依頼]
    更新待ってました!

    頑張って下さい(^ ^ゞ
  • 23 つるを id:KQFLQFI1

    2011-10-22(土) 15:47:39 [削除依頼]

     近づくにつれ永忌の村の雰囲気が大体分かってきた。夕刻だというのにこの村では灯りが一つとしてついていない。点けるものが無いのか、それとも点けようともしないのか。
     村の区切りはどうやら黒い壁らしい。遠くから見ると分からなかったが、近づいてみるとその異様な雰囲気を放つ建造物が目について離れなかった。本当に外界から来た物を拒絶するようだった。

     黒い壁に沿って歩いていくと、村の入り口らしき所に辿り着いた。アーチの様な物はなく、ただ黒い壁に突如として穴が空いたような物だった。
     クラリスは中を覗くと安心したような顔つきになった。どうやらここは間違いなく永忌の村らしい。

    「ありがとうございます……あの、お礼といったら難ですけど私の家にいらっしゃいませんか?」

     クラリスは礼儀良くお辞儀をした。トーマは、驚いた。誰かから誘われるなど滅多にない経験だった。

    「いいのか?」
    「もちろんです!」

     クラリスはこれまでにない笑顔を見せた。そして、さあどうぞ、とトーマを永忌の村へと招き入れた。
  • 24 つるを id:KQFLQFI1

    2011-10-22(土) 15:47:39 [削除依頼]

     近づくにつれ永忌の村の雰囲気が大体分かってきた。夕刻だというのにこの村では灯りが一つとしてついていない。点けるものが無いのか、それとも点けようともしないのか。
     村の区切りはどうやら黒い壁らしい。遠くから見ると分からなかったが、近づいてみるとその異様な雰囲気を放つ建造物が目について離れなかった。本当に外界から来た物を拒絶するようだった。

     黒い壁に沿って歩いていくと、村の入り口らしき所に辿り着いた。アーチの様な物はなく、ただ黒い壁に突如として穴が空いたような物だった。
     クラリスは中を覗くと安心したような顔つきになった。どうやらここは間違いなく永忌の村らしい。

    「ありがとうございます……あの、お礼といったら難ですけど私の家にいらっしゃいませんか?」

     クラリスは礼儀良くお辞儀をした。トーマは、驚いた。誰かから誘われるなど滅多にない経験だった。

    「いいのか?」
    「もちろんです!」

     クラリスはこれまでにない笑顔を見せた。そして、さあどうぞ、とトーマを永忌の村へと招き入れた。
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