それは真か偽りか17コメント

1 ぬぬ id:.KYYvjH1

2011-09-24(土) 21:45:34 [削除依頼]

「愛しているよ」

確かに彼はそう言った。


だが、彼の中に渦巻くものを私は知らない。
  • 2 ぬぬ id:.KYYvjH1

    2011-09-24(土) 21:48:19 [削除依頼]

    初投稿になります。ぬぬです。
    足りないものだらけですが、どうぞ宜しくお願い致します。
  • 3 ぬぬ id:.KYYvjH1

    2011-09-24(土) 21:52:28 [削除依頼]


    彼は可笑しかった。

    正確に言えば、病んでいた。

    突然叫び出しては、存在しない痛みに苦しみ、
    無いはずのものに怯えて泣きじゃくる。


    まるで何かが壊れたかのように、以前では考えられないほどに
    冷静さを失っていて、弱々しかった。


    “精神不安定”

    そんな言葉が妥当だろうか。


    兎にも角にも、昔の彼はもういない。
  • 4 ぬぬ id:.KYYvjH1

    2011-09-24(土) 22:13:35 [削除依頼]

    彼は言った。昔の話だ。


    「俺はお前なんか、絶対好きになれないよ」

    と。

    酷く落ち着いた声で、嫌味な笑顔を浮かべて、
    真っ直ぐに、私を見てそう言い放った。


    私は今でも、その時のことをよく覚えている。

    彼は整った顔を歪めて、人を見下すような目で
    私を見据えては、どこか遠くを見るような目をしていた。

    でも、そんな彼の瞳は冷ややかで、嫌悪と軽蔑の色が混じっている。
    そしてその瞳に映る私も、彼を見詰めて怒りを露わにしていた。

    「そんなこと言われなくても知ってる。
     私もあんたは好きになれない。大っ嫌いだから」

    そんな言葉が、怒りの熱を纏いながら、屋上に吹く
    秋を感じさせる寒い北風に乗せられる。

    その風により、私の長い黒髪は揺れ、
    彼の短めの茶髪は、僅かに振れた。


    自分の髪から零れたシャンプーの匂いが、鼻を掠める。


    何故だかは知らない。
    どうしてだか覚えていない。

    私と彼は、とてつもなく仲が悪かった。
    互いを軽蔑し、相手の全てを隅々まで嫌っていた。


    顔を合わせれば、大惨事になるとも言われる私たちが
    こんな肌寒い屋上で2人、面と向かって話していることは
    周りにいる誰もが想像できない事実だ。

    そしてこれが、私と彼がまともに話した最初で最後。

    本当は最後かどうか、なんて分からない。
    でも少なくとも、今の彼とは無理だと思う。

    完全なる闇に落ちてしまった彼とは……。
  • 5 ☆りお☆ id:rYWQL0I/

    2011-09-24(土) 22:16:09 [削除依頼]
    こんにちゎ!読ませてぃただきまする!

    なんか文章とか表現がすっごぃ上手ですッ!
    尊敬です♪

    がんばってくださぃませ!
  • 6 ぬぬ id:.KYYvjH1

    2011-09-24(土) 22:30:35 [削除依頼]
    >りお様
    嬉しいお言葉、ありがとうございます。
    尊敬だなんて!とんでもないです(笑

    ありがとうございます。
    頑張ります!
  • 7 ぬぬ id:.KYYvjH1

    2011-09-24(土) 23:00:03 [削除依頼]


    「うああああああぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

    今日もそんな声が聞こえた。
    どこまでも澄んでいて美しかった声は、今となっては
    奇声にしか聞こえない。

    つんざくような声は、放って置けば2時間は止まないだろう。
    だけど生憎、それを止める術を私は持ち合わせていない。
    だから刺激しないように、彼の近くで、ただただその様子を見守る。


    いつからか、私たちは奇妙な関係になっていた。

    彼は成人して、この東京で自己経営をしている……否、していた。
    それは薬剤師という仕事。
    簡素に説明すれば、薬学の研究や医薬を調合する人間。

    だが、決して彼のその仕事は、表向きなものではなかった。
    それこそ、一定の資格は持っていたものの、作る薬は
    体に害を与えたり、人を殺したりするもの。

    つまりは、闇医者ならぬ闇薬剤師であった。

    裏の世界に足を踏み入れることも多かった、というか
    裏にしか足を踏み入れていなかった彼は、裏ならではの
    恨みを相当買っていたようで、命を狙われることも多々あったようだ。

    証拠に何故かこうして、彼の事務所と言える家に居座っていると、
    時々電話が鳴っては、裏組織と思われる連中に
    「例の件での恨みは計り知れないぞ」と言われることがある。


    そうした脅しからだろうか、彼はこんなにも変わってしまった。

    まるで別人だった。
    だからかもしれない、だから私はこうして彼の傍に居て
    世話を焼いているのかもしれない。

    そうとさえ、私が思ってしまうほどに。
  • 8 ☆りお☆ id:rYWQL0I/

    2011-09-24(土) 23:03:35 [削除依頼]
    なんだそれ!

    男の責任ぢゃなぃか!

    自業自得だゾ!?ぉ前!
  • 9 ぬぬ id:.KYYvjH1

    2011-09-24(土) 23:11:11 [削除依頼]
    >りお様

    確かに、そうなんですよね(笑
  • 10 ぬぬ id:.KYYvjH1

    2011-09-24(土) 23:29:08 [削除依頼]


    「あ゛あ゛あぁぁぁぁっ」

    今も尚、あの奇声は続いていた。
    もう1時間はゆうに越えている。

    それでも、奇声は鳴り止まないのだ。

    段々声は枯れてきて、聞いているこっちが辛い。

    このまま続ければ、喉が潰れるのがオチだ。
    まぁ、それはそれで、暫く声が出なくなるからいいんだけど。

    そう思いながらも、呆然と彼を見ていた。

    ペタンと、白い絨毯に座り込む彼の足もとにあるのは、
    液体状の薬品が入っていると思われる小さなビン。
    そして、そのビンの近くには、長い針を突き出す注射器が転がっていた。

    それを見て、どうしてこうなったか容易に推測できる。
    それこそ初めて見た時は、薬物乱用でもしているのかと焦ったが、
    実際のところ、そんな物騒なものではなかった。

    この薬品は、精神安定剤。
    急激に不安定になる彼は、その具合を見計らって
    まだマシな時に、それを投与しようとするのだ。

    もちろん、成功すれば大分落ち着いていられるのだが、
    間に合わないと、このような状態になる。

    私が直接、注射器でやってあげられれば一番いいのだが、
    人間不信となった今の彼に、針一本を突き立てようものなら、
    彼はまた狂ったように叫びだす。


    所詮私も他人だ。

    いくらなんでも、彼の心情なんか分からない。


    それが最も面倒で、私の悩みの種であった。
  • 11 利代 id:i-UPcDQu//

    2011-09-25(日) 22:23:38 [削除依頼]
    ストーリーが面白いです♪こんなストーリー作れるなんて尊敬しますよ〜、(お世辞じゃないです。マヂです。)
  • 12 ぬぬ id:p4kGbtv0

    2011-09-25(日) 22:50:26 [削除依頼]
    >利代様
    そう言って頂けると嬉しいです!
    ありがとうございます!(嬉
  • 13 ぬぬ id:p4kGbtv0

    2011-09-25(日) 23:12:12 [削除依頼]


    「あぁぁぁ……ぁっ、けほっ、ぅ……はっ……」

    叫びだしてから、約2時間。
    流石に喉の負担には敵わないようで、徐々に落ち着いていく。
    というか、声が出なくなってきていた。

    普通の人なら、ここで慌てて水を出すだろう。
    だけど、これに慣れてしまった私は、よくここまで続いたなぁ、
    なんて思いながら彼を見るのだ。

    水を出しても、飲まない事なんて分かっている。

    最近知ったことだった。
    食事も水分も自分が欲しい時に、より細かく言えば
    限界の時にした口にしない。

    餓死寸前といっても過言ではない時に、彼は必要最低限のものを口にする。


    だから私は、それに合わせて死なないようにしてやるのだ。
    例えば麦茶なら砂糖を入れる。美味しくはないだろうし、
    余計に喉が渇くが、そうでもしなければ彼は死んでしまうだろう。

    そんな少しの栄養だけで、彼は何とか生き延びているのだから。


    確か彼が最後に口にしたのは、2週間前。
    砂糖入りの麦茶をコップ1杯と、パンを一口。
    そう、それだけだ。

    決して、空腹は満たされないその量を口にして、彼はまた
    狂ったように叫んだ。

    悲痛な叫び声は、いつもと変わらなくて、
    でもその時の私には、嬉しく感じたことを覚えている。

    僅かだが、ちゃんと食べてくれた。
    “また生きられる日が伸びたのだ”と……。

    自分でも可笑しいと思う。
    あんなに嫌っていて、時には死んでしまえばいいと思っていた彼を、
    自らの手で生かし、それに安堵しているなんて。

    どうかしている。
  • 14 ぬぬ id:q22GQ3m0

    2011-10-18(火) 21:41:43 [削除依頼]

    久々にあげ
    亀更新です。すいません。
  • 15 ぬぬ id:q22GQ3m0

    2011-10-18(火) 22:14:33 [削除依頼]


    とうとう声が出なくなった彼は、ひゅーひゅーと
    変な音を立てながら、浅い呼吸を繰り返していた。

    私はそれを見つめる。

    変に刺激はしない。
    それが唯一、私がここに来て学んだことであった。

    疲れ切った彼は、絨毯に両手をついて俯く。
    ここの距離からだと、彼の表情は確認できなかったが、
    白いTシャツを纏った細身の体は、呼吸のリズムに合わせて
    上下していた。


    「……り」

    枯れた声で彼は何かを呟いた。

    まだ声が出るのか、と変に感心しながらも
    言葉が聞き取れなくて聞き返す。

    「なに?」

    普段と変わりない口調で答えた。

    多分ここは優しい口調で言うべきなのだが、
    そんなことでも彼は反応し、不安を覚える。

    そう知っていた私は、なるべく他の人と同様に振舞った。


    それに少し安心したのか、彼は比較的冷静に答えを紡ぐ。

    「く、すり……」

    絞り出したような声だった。
    今にも消え入りそうな声は、辛うじて聞き取ることができた。


    くすり。

    その一言で全てを承知した私は、「わかった」とだけ言って
    足早にその部屋を後にした。

    向かった先は、キッチン。

    ここに彼の言う“くすり”が置いてある。
    いつも食器棚の引き出しに入ったそれは、白い袋に入れられた
    黄色いカプセル状のものだ。

    どんな薬剤なのかは知らないが、精神に関わるもののようで
    発狂した後、彼は毎回これを飲む。

    もちろん、どんなものなのか具体的に知りたいという
    気持ちもあるが、今の彼に深入りすれば症状が悪化することは
    目に見えていたので、あえて聞かないでいる。


    いずれ分かる。

    そう信じて、くすりを飲むための水に、砂糖ではなく、
    サプリメントを粉状にまですり潰したものを溶かし入れた。
  • 16 ぬぬ id:MI1Y2321

    2011-10-23(日) 21:22:28 [削除依頼]

    あげ
  • 17 ぬぬ id:MI1Y2321

    2011-10-23(日) 21:39:18 [削除依頼]


    サプリメント入りの水の入ったコップとくすりをお盆に乗せて、
    早歩きで長いフローリングの廊下を歩き、
    突き当りにある先ほどの部屋へ向かった。

    そこには変わらず、絨毯の上に力なく座る彼の姿があって、
    心のどこかでそれに安堵しながら、速度を落として
    ゆっくりと近づく。

    彼はその姿を横目で確認すると、そこに置いてと言うかのように、
    自分の脇の絨毯上に視線を向けた。


    私はそれに頷いて、視線の先にお盆ごと置く。
    すると彼はすぐに、くすりに手を伸ばした。

    そして小さな白い紙袋から、何粒もの黄色いカプセル状の薬が
    1つずつ並べられる、表面はプラスチックで作られ、
    裏面はアルミが張られている容器を手に取り、
    そこから器用に2錠分の薬を出す。


    それを勢いに一気に口に含んで、例の水を流し込んだ。

    一瞬、水に違うものが混じっていることに硬直した彼だが、
    徐々にくすりが溶けてきたのか、躊躇いながらもゴクリと
    全て飲み込んだ。
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