藍翼の鷹 -第三の理想郷-10コメント

1 玄冬 id:Jvqt9WO.

2011-09-21(水) 17:02:07 [削除依頼]

 主が三番目に創造した『第三の理想郷<テルセロ・ウトピア>』。
 この世界にはふたつ、大きな大陸がある。

 線対象のように、互いをひっくり返した形をしたそれらの大陸は、見ようによっては大きな翼を広げた形にも見えた。太陽が昇る方角にあるのが『狼国<ロボ・インペリオ>』の統べる、『銀色の右翼』と呼ばれる森と草原の大陸で、太陽が沈む方角にあるのが『鷲国<アギラ・インペリオ>』の統べる、『黄金の左翼』と呼ばれる山と峡谷の大陸だった。

 大陸を統べる二大国を取り囲むように、幾千の島々、国が存在する。大国に従じる国もあれば、小さいながらも真っ向から反発する国もあった。多くの国は大国の動向を恐れ気にしながら生活していたが、しかし、それでも強かに日々を生きていた。


 海には魚が跳ね、空には鳥が舞い、地には獣が駆けた。
 照らす太陽に花は咲乱れ、落つる雨に葉は濡れた。
 人は歌い、奏で、笑い、哀しんだ。
 
 
 
 『第三の理想郷』。
 そこは主の唯一の失敗作と謡われながらも、最も生命が輝いている世界だった。

 
  • 2 祈祷 彗月@レモン id:ZwG28C.1

    2011-09-21(水) 17:04:17 [削除依頼]
    理想郷!!
    響きが素敵な言葉ですね*
    そしてなんとも表現が美しすぎます!

    頑張ってください^^
  • 3 玄冬 id:Jvqt9WO.

    2011-09-21(水) 17:11:39 [削除依頼]
    はじめまして、こんにちは、それともこんばんは?
    自分が誰より大好きで、誰より大嫌いな玄冬です。
    ファンタジーな妄想が止まらないので書くことにします。
    学園祭ボケを直す、リハビリも兼ねています。
    最近、筆が進まなくて(- p -)筆じゃなくてボタンだけど。
    PSPから書き込んでますから←

    ※注意※
    宣伝、荒らしはスルーの方向でお願いします。
    絶対コメントに返信が欲しい! という方は、文頭に〈☆〉マークをつけて下さい。
    え、いや、いちいち返信するのが面倒とか、そういう訳じゃないんだからっ……
    いえ、まあ、☆なくても気が向けば返信します。


    それでは、このまま小説へれっつらごー
  • 4 玄冬 id:Jvqt9WO.

    2011-09-21(水) 17:15:59 [削除依頼]
    >>2 ツキさん、こんにちはノ 理想郷と聞くと、現実逃避がまず頭に浮かぶ私は駄目人間です え、理想郷を探しに行くとかただの現実逃避じゃないn(( まあ、頑張りまふ(・ω・`)
  • 5 玄冬 id:Jvqt9WO.

    2011-09-21(水) 22:02:02 [削除依頼]
    【一】
     蓮国<ロト・ナシオン>は、黄金の左翼より更に西へ行ったところにあるプランタ諸島の最西を形成する小さな国だ。主な産業は豊かな海で行われる漁業と、それと主島アレグリアで産出する希少鉱石『護石』の加工による貿易業も盛んである。
     蓮国の中でも一番西にある島に、グアルディアという港街があった。グアルディアは最東の島との交易の門としてそれなりに栄え、海上にまで広がった町は満潮時でなくとも道が海に沈んでおり、その様が何とも美しくもあったので観光名所としても名を馳せていた。『水の都グアルディア』。護石の首飾りが有名なみやげ物だ。
     エルは、そんな街に生まれた子供だった。潮騒に抱かれ、母なる海に護られて育った、海の子供だ。
  • 6 玄冬 id:Jvqt9WO.

    2011-09-21(水) 22:25:10 [削除依頼]
     西海域によく見られる青と緑の掛かった黒の髪は特別なものではなかったが、その黒糸の間から覗く尖った耳は異質だった。深く深く、真っ直ぐな星の光を灯した、孔雀色の瞳もまた、普通ではなかった。彼の父親はグアルディア生まれの漁師だったが、母は他からやってきた、少数民族エルファータの純血のオーラ弾きだったのだ。
     異種族間での婚姻は伝統的に避けられていたが、そんな鎖さえ振り切って添い合った両親を、エルはとても愛していた。両親もまた彼を愛していたので、家族の暮らしは豊かとはいえないが、とても幸せなものだった。
    「母さん、あのさ、またオーラを弾いてよ」
     陸風に揺れる家の中で、エルは母にせがんだ。幼い息子を見やり、母親は布を織る手を休めた。優しい手付きで頭を撫でると、目を細めて笑う。
    「ごめんなさいね、今日は出来ないわ。また明日じゃ駄目かしら」
    「えー……なんで? そうやって、昨日も弾いてくれなかったじゃん」
     頬を膨らまし、エルは不満気に喉を鳴らした。しかし母親にも、息子の願いに応えられない理由があったのだ。一週間後に、鎮海祭があるのである。鎮海祭は蓮国全土で四年に一度行われる大きな祭りで、とても大切な祭りなのだ。
  • 7 玄冬 id:Jvqt9WO.

    2011-09-21(水) 22:37:43 [削除依頼]
     母親はそれまでに、エルの父がその日に着る衣装を仕立て上げなくてはいけないのだ。祭りでは、前に開催された祭りからの四年の間、最も優れていたとされる人たちが代表となって祝福される。漁師、猟師、癒師、工師、攻師、護師、司師の中から一人ずつ選ばれるのだ。エルの父は、グアルディアでの優秀な漁師として選ばれたのである。それはとても立派なことで、大衆の前に出ても恥じない衣装を作り上げようと、母はもう一月もそれにかかりっきりになっていた。
     エルにだって、理解出来てはいた。ただ、もうとうの昔に大体の衣装は出来上がっていたのだ。それはもう、すばらしいものが。母が今織っているのは、それに付け加える為の飾り布だった。母はまだまだと息巻いているが、エルはもう十分だと思っていたのだ。むしろこれ以上飾りを増やせば、くどくなるのではないかと危ぶんでさえいた。
     
  • 8 玄冬 id:6MdWVN91

    2011-09-22(木) 00:27:29 [削除依頼]
    「……母さん、もう十分じゃない? 父さんの服、綺麗だよ」
    「いいえ、まだまだよ。この布で最後だけど、模様が難しいの」
     母親は、そう言って息子を抱き上げた。小柄なエルはすっぽりと母の腕の中に収まり、織りかけのその布を見つめた。それは、不思議な模様だった。太めの糸で隙間なく、ごわついているかと思いきや、表面は滑らかな光沢を放っていた。何で染めたのか、翠と碧の色彩が美しい。巧みに操られた糸が描きだすものは、波に踊る魚のようにも、雲に乗る鳥のようにもみえた。
    「こんな布、みたことない。母さん凄いね!」
    「……これはね、エルファータの秘伝の布なの。母さんの母さんに教えてもらったのよ。模様は、古代の命を表しているらしいわ。エルファータは古代の血脈を受けているから、この模様はエルと私。……エルファータの魂よ」
    「凄いね、きれい。エルファータって凄いね」
     すっ、とエルが布に手をのばすと、母はその手を優しく止めた。その綺麗さに魅せられていたが、織りかけの布に触れてはいけないという言いつけを思いだし、エルは手を引っ込める。触っていけないのは、せっかく織りあげた模様の形を崩してしまうかもしれないからだった。
  • 9 玄冬 id:VMjpks7.

    2011-09-23(金) 11:36:14 [削除依頼]
     凄い凄い、と褒めたたえるエルに、母親は慈愛に満ちた笑みをこぼした。
    「エルファータは血統をとても大事にしているから、他と交わる者を嫌うの。お母さんも、お父さんと連れ添うって決めたときに町を追い出されてしまったのよ。二度と帰ってくるな、って。だからエルをエルファータの町へ連れていくことは出来ないけれど、私は……」
     膝に乗せた息子を、母親は少しばかり強く抱いた。不思議そうに首を回し母を見上げるエルの瞳は、晴れの海の碧色に澄んでいた。まだ、大人の難しいしがらみなど理解できない、幼い子供ならではの純粋な輝きだった。
    「エル、私はね、あなたにエルファータとしての誇りを忘れないでいて欲しいの。半血(エルファーラン)だからって、何も恥じることはない。エルは、私たちに望まれて生まれてきたのだから」
     
  • 10 玄冬 id:Gv67kUW/

    2011-09-24(土) 10:41:16 [削除依頼]
    「ほこり?」
     ひょい、と首を傾げる、純然な仕草。母親は、こみ上げてくる溢れんばかりの愛しさに、己が子を抱く腕に一層力を込めた。自分の無力さがたまらなく悔しく、《混血》を排する傾向がある社会の仕組みが、たまらなく憎くなった。
     息子を子として生んだことを後悔する日は、いくら時を経たって来ないと断言することが出来た。しかし、こんな世の中に生んでしまったこと、自らに流れる血のせいで課せてしまった事柄を、悲しむのには事欠かなかった。エルファータであることを恥じたことはなかったが、母親はいつだって考えていたのだ。自分が大陸人であれば、どれだけ良かったか、と。
     エルファータを娶ったから、彼女の夫は、取引で不利になる。
     エルファータを母に持つから、彼女の子は、身に覚えのない悪意を向けられるだろう。
    「ごめんなさい……ごめんなさい……エル」
     それでも、強く生きて欲しい。
     彼女がつぶやいた言葉は、エルの尖り耳を掠めて霧散した。
     
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