ライン45コメント

1 夏蜜柑 id:SC4Uu7./

2011-09-05(月) 22:25:37 [削除依頼]



もしも世界を愛してるとするなら、


.


  • 26 夢梅 id:7RTrEG9.

    2011-09-25(日) 04:54:03 [削除依頼]

    おおおおお!!
    なっちゃんの新作ではないか(^ω^)

    よしっ今から読んで追いつこー★←

    更新がんばって*
  • 27 夏蜜柑@ぽよよ id:UQ8z.98/

    2011-09-25(日) 09:59:25 [削除依頼]

    ごん姉さん>

    地味なタイトルですからねー´`
    双頭の緋龍って、あまりのネーミングセンスの無さにorzってなったやつですが、褒めていただけて光栄です
    面白いかとか、自分ではよくわからないのでそう言っていただけると励みになりますね

    コメントありがとうございました!

    真土際 俗さん>

    はじめまして、ですね。ご来訪ありがとうございます*
    しっかりしてますか?よかったです。ただでさえ文章に落ち着きが無いもので私。
    才能とか、才能とか欲しいですよ!!どこからか降ってくるのを待ってるんですよ!!

    コメントありがとうございました!

    むーめ>

    おおおおおお!!←
    暇すぎてどーしよーもないときくらいでええで、私の小説読むとかw

    うん頑張る。コメントありがとなノシ
  • 28 夏蜜柑@ぽよよ id:UQ8z.98/

    2011-09-25(日) 19:30:27 [削除依頼]

     すらりとした長身に、黒曜石色の髪と、揃いの目を持つ彼女の名を、マオといった。普段こそふわふわと捉えどころの無い、奇想天外な悪戯ばかりしてはヒョリムに叱られているものの、その存在は『緋』にとっては絶対的である。ヒョリムの補佐に徹しながら、誰よりも冷静に状況を見極め分析しする明晰な頭脳と、長い手足を自在に操る体術の右に出る者は、この『緋』にはいない。ヒョリムの唯一無二の片腕であり、心を許しあった友人であるマオは、ある意味この組織の影のボスとも言える。

    「こんな朝方駆り出して悪かったな、冷えたやろ」

     ぐりぐりと二人の頭を撫で繰り回しながら穏やかに笑った彼女の白い顔には、深い隈が落ちていた。昨日も、先程のようなストリートギャングの奇襲があった所為で彼女は上手く眠れていないらしい。

    「……最近、増えましたね。大丈夫ですか」

     それまでずっと神妙な顔をして黙りこくっていたジヨンが、ぼそりと呟いて、目線だけでマオを見遣った。気遣わしげな低い声に、マオは困ったように長い黒髪を掻き毟りながら溜息をつく。昨日と、今日。『碧』の人間ではないことははっきりしているのだ。悔しいことに、『碧』組織の人間は一蹴りお見舞いしただけで泡を吹くようなヤワな体は持っていないはずだ。現に、昨日奇襲をかけてきたのも、無名のストリートギャングだったらしい。

    「うちは大丈夫なんよ。……ただ、最近こんなことが増えたんはレガリアが原因やとは思う」

     いつもは気丈なマオの目が、きゅっと痛みを堪えるように細くなった。
  • 29 夏蜜柑@ぽよよ id:2Rk.wZS/

    2011-09-26(月) 23:52:34 [削除依頼]

    二話 歪みゆくアルカディア 


     レガリア――年中白く薫る花が咲き誇り、水晶のごとく透き通った清純な水が流れる、豊かで外観の美しい都市である。聖都と称えられるだけあって、立派な聖堂が都市の中央に君臨し、その周りに円状に政客や貴族の屋敷や商人、平民などの住まいが連なるようにして広がっている。地質にも資源にも恵まれ、戦乱も無い平穏な街の姿は、一見すればそれは理想郷といっても過言ではない。現に、はるばる海を旅してレガリアにやってくる者も絶えないのだという。あそここそが理想郷なのだと、熱に浮かされた子供のように、できすぎた聖都を信じて疑わないのだ。
     何の不自由の無い幸福な民。満ち足りた政。そんな絵に描いたかのように完璧な聖都のすぐ傍では、下卑たネオンが煌々とちらつくネオン街や、絶えず銃声の響くナハトが今日も眠れない夜を過ごしている。そのうちの半数以上の人間はレガリアから流れ出てきたものだといわれていた。

    「うちはレガリアのことよう知ってる訳や無い。うちは此処で生まれて、此処で育ったからな。ヒョリムもそうや」

     思いつめるように伏した瞼がひどく重たい。リーシーはあの荘厳ともいえるレガリアを瞼の裏に思い描いてみる。だけど思い描いたはずの理想郷は輪郭すら曖昧で、思い出すのも面倒になってやめてしまった。射撃訓練でも集中力が無い、とよくジヨンにたしなめられる。隣を見遣れば、妙に真剣な目をした彼と目が合った。それに気付いたのか、マオは強張った表情を柔らかく崩すと、むに、とリーシーの頬の肉を軽くつまんだ。

    「何するんですか」
    「……そっか、キミたちはレガリアから来たんやっけな」
    「いいですよ別に」

     よく覚えてないし、と唇を尖らせれば、反対側の頬もジヨンにつままれた。その目は心配していたより動揺してはいないみたいだった。
     人より体も大きくて、リーシーと同じ十六歳だというのに大人びていて、だけどその内面は人より脆く傷付きやすい。リーシーは、そんな彼のことをいつも心配していた。


     
  • 30 夏蜜柑@ぽよよ id:e9IJBJm1

    2011-09-29(木) 22:38:29 [削除依頼]

    「リーシーは覚えてへんやろな、メシと戦闘のことしか考えてへんねんもん」

     少し重くなった空気を打ち消すように、マオはからかうように形の良い唇に弧を描いた。まだ少しひりつく頬を擦りながら、リーシーは不本意そうに唇を尖らせる。確かに、食や戦闘にかける欲は組織内では彼の右に出る者はいないかもしれない。食べることは生きること。戦うことは生きること。生きるために食べて、戦うのだ。彼の貪欲なまでの生への執念を、マオは気に入っている。だが、それに対してジヨンは生きることへの執着が無さすぎる。自己を犠牲にすることを全く厭わないのだ。凛と戦場に立つ長身が妙に儚げに見えるのはその所為だろう。そんな彼が、逞しい胸にかけられた古びた銀のロザリオを自らの拠り所であるかのように握り締めて、祈りを捧げる姿を見かけたことがある。マオは、少しだけリーシーに同情したことがあった。あんなに傍にいるのに、ジヨンはどうしてリーシーにその身をもたせかけることができないのだろう。そう思っていた。

    「んなこと無いっすよ」

     目をうろうろと泳がせながら、リーシーは言い訳するように言った。その語尾にはいつもの勢いがなく、へろへろと尻すぼみに小さくなっている。

    「……今日も腹減ったってそればっかり」
    「余計なこと言うなジヨン!」
     
     人が悪そうにニヤつくジヨンの頭を軽く叩くと、彼は悪戯が成功した子供のように喉を震わせて笑う。顔も恰好も全く違う二人だけど、笑ったときに糸のように目が細くなる顔は、血のつながった兄弟のようにそっくりだ。それこそ、兄弟のように二人で生きてきたのだろう。大怪我をしながら二人、支え合いながらこの塔に初めて転がり込んできた幼い顔を思い出して、マオは微笑んだ。普段は凍った仮面をかぶったようにポーカーフェイスを貫くジヨンも、リーシーといると乏しい表情が少しだけ柔らかくほぐれているのが解る。

    「……でも、ジヨンがレガリアのことをよく覚えてへんのはちょっと意外やわ」

     ふと、思い浮かんだ言葉をぽつりと吐き出してみる。すると、すっとジヨンの朗らかな笑みが失せた。何か都合の悪いことを言ってしまっただろうか。すると、沈黙が沈黙にならないうちに、リーシーが明るい声をあげた。

    「そうらしいんですよねー、こいつの頭の中は神さまと讃美歌のことばっかりですよ多分」

     一気にそう捲し立てると、それより、とジヨンは表情を変えた。

    「レガリアが原因って、何でですか?」

     


     
  • 31 夏蜜柑@ぽよよ id:vRp1yFo/

    2011-10-05(水) 21:47:28 [削除依頼]

    「これ、見てみ」

     と、彼女はローテーブルの上に何度も読まれた形跡の残る新聞を広げた。リーシーは殆ど文字なんて読むことが無いので、ぎっしりとつめこまれた活字に目がチカチカとして仕方がない。時折やってくる情報屋から、マオはいつもレガリアで発行される新聞を買う。ボロボロになるまで読み込まれたそれは、何処か古びた匂いのする紙上にある秩序を、一文字も欠くことのないまま彼女の書庫に保存される。らしい。もっとも、リーシー及びジヨンも、彼女の書庫に出入りすることは許されていないのだが。
     マオが紙面のある場所をトントンと黒く彩られた爪で叩いた。紙面の中でも、比較的大々的に取り扱われている記事だった。

    「……レガリア、に、……うん?」
    「レガリアに不作が続いてる」

     文字を読むことに慣れていないからか、眉根を寄せて不機嫌そうに首を傾げるリーシーの横から、ジヨンがぼそぼそと見出しの内容を読み上げた。腕組みをしながら、マオは紙面に目を落とした。その表情は無く、何を考えているのか、二人には到底図りかねた。
  • 32 夏蜜柑@火星語 id:tXVhnXZ.

    2011-11-02(水) 00:28:42 [削除依頼]


    「でも、この年は雨が降りませんでしたよね? レガリアの不作は珍しくても、決して無いことじゃ……」
    「そうやな。あそこの人間がキミほど頭が良ければ混乱なんてせんで済むんやけどな」

     怪訝な顔で首を傾げるジヨンに、マオは溜息混じりでそう呟いた。一方で、リーシーは全く話を飲み込めていないようだ。つまらなさそうに唇を尖らせて、ぼんやりと話を聞き流している様はまだまだ子供っぽい。ふいに、その姿が誰かと重なった気がして、マオの目尻が僅かに緩む。しかし、今はそんな彼に茶々を入れてる場合ではないと、マオはもう一度ジヨンに向き直った。ジヨンの深い茶色の目が、痛いくらい真っ直ぐに突き刺さる。一寸の誤魔化しも許されないような、強い視線。どこかで見たような気がする、どこだったか。

    「レガリアの住人はな、もう随分前に『知ること』をやめてるんやと思う」
    「……どういう意味ですか」
    「そのまんまや。農民や貧民層はそもそも知る権利すら与えられてへんらしいしな」

     詳しくはよう知らん、と悔しそうに奥歯を噛みつぶすマオに、一瞬ぎくりとぎこちなくリーシーの心臓が跳ねた。蘇る、記憶。随分と色褪せて、だけどそれはひどく生々しい。足りない何か。つめたい格子の窓。表情を喪っていく、ジヨンの白い頬――。

    「リーシー? どうかしたんか?」

     ひら、と目の前を舞うマオの指先に、途端に現実に引き戻された。二、三度瞬きすると、ジヨンとマオの、呆れたような顔が見えた。

    「寝てたのか」
    「え、いや、聞いてた聞いてた! ジヨンの頭が良いって話!」

     へらっと笑って慌ててその場を取り繕おうとするリーシーに、んな話してへん! と、すかさずマオの拳が飛ぶ。

    「もーええ、戻ってええで。お疲れさんアホども!」
    「こいつと一緒にしないでください」
    「おっま……! 表出ろ!」

     喚くリーシーの首根っこをつかんで、律儀にマオに一礼してから立ち去るジヨンに、マオはひらひらと片手を振りかえす。ばーか、と楽しそうにリーシーをからかうジヨンの背中は、普段とは違って充分に年相応であり、恐らく自分の前ではあんな風に声を出して笑うことは無いのだろうと、マオは漠然と思った。
     リーシーに、同情したことがあった。どうしてジヨンは彼にその身をもたせかけることができないのかと。だけど、今なら何となく理解できる。彼は彼なりにリーシーにその背を預けているらしい。彼に向けられる、悪戯っぽい少年の笑顔も、縋るような視線も、呼吸も。自分とヒョリムは、果たしてあんな風に支え合うことができているだろうか。
     
     カサ、と放置された新聞を手に取る。さっきジヨンに言いそびれたことを思い返しながら。

     ――これは、緻密に仕組まれた闇なのではないか。その闇がなんなのか、マオは図りかねた。なんせ、足がかりが少なすぎる。


    「……嫌なニオイがする」


     それがただの杞憂で済めばいいのだが。ゆっくりと柔らかいソファにその身を沈ませて、マオは静かに目を瞑った。
  • 33 夏蜜柑@火星語 id:8vFt1Z91

    2011-11-03(木) 13:50:02 [削除依頼]

     
     開けっ放しにされた窓辺に立って、彼は歌っていた。さらさらとなびく、銀色の長い髪が朝のつめたい風に煌めいて、それはまるで一枚の絵画のようにうつくしい風景だった。もっとも、ソヌは絵画などの芸術の類など目にしたためしがないのだが。なるべく静かにドアを後ろ手に閉めて、室内に入ると、細く紡がれていた旋律がぷつりと途絶えた。ちょうど、サビに差し掛かる前だった。

    「またソんなトこロニ立って……、撃たレても知りマせンよ」

     困ったように表情を曇らせて窘めるソヌの言葉にようやく、彼はゆったりと振り向く。その顔立ちは女かと見紛うほど儚げで、大きな碧眼が重たげに瞬くたびに、この顔に騙されるのだと観念にも似た感情を覚える。俯く姿は純白の薔薇のはなびらよりもうつくしいが、本性は鋭い棘よりも凄まじい。

    「ソヌが護ってくれるんだろ」
    「私だっテ、人間ですかラ。出来ルことト、出来なイこトがあリます。手ガ届かナイなラ、貴方を護れない――ジオ」
    「笑わせんなよ」

     唇に完璧な弧を描くジオの、揶揄するような口調にぞくりと背筋が粟立った。まるで世界さえその手中におさめているかのような、高慢で、気高い笑顔。それでいい。『碧』を背負って立つ人間なら。初めて出会った時から変わらない、勝気で壮絶な目は時に硝子細工より脆いことをソヌは知っていた。そんな矛盾すら彼の前では意味をなさなくなる。
     無防備に開けた窓はそのままに、ワイン色のカーペットに無造作に散らばった封筒を拾い上げる。どうやら夜明けの街を眺めるのは飽きたらしい。冷えた空気とともに舞い込む香のはいつもと何ら変わらぬ戦場の匂い。煌びやかなラグジュアリーよりも、赤ワインの香りよりも、それは彼によく似合った。

    「決戦は近いよ、たぶん」

     ビリビリと鋏も使わずに素手で封を破きながら、ジオは楽しそうに微笑んだ。数枚の写真を蜂蜜色の灯りにひらひらと翳す。そこに映っているのは長くに渡って『碧』が敵対している『緋』の主要人物の写真だった。ソヌは何も言わなかった。
     そのままくるりと踵を返すと、ジオは白い薔薇の生けられた豪奢な花瓶をいつの間にやら懐から取り出した銃で撃ち抜く。耳に心地よい破壊音と共に転がり出てきたのは何てことない、――盗聴器。まったく迷いの無い行動だった。先程撃ち抜いた花瓶は彼の母親の形見だった。ガガ、と不明瞭な音を発しながらこと切れたそれを、つまらなさそうに眺める。誰がやったのだろう。そんなことはどうでもいい。こんなところにまで蔓延る裏切りの手に、ジオが心を痛めていないといい、とソヌは思った。どっちにしろこいつを仕掛けた誰かは明日にはこの世にいない。

    「来年の今頃にはすべてが終わる。そしたらおまえ、どうする?」
    「……アズミの淹レたエスプレッソでも飲ンで、ゆっクりしタイですね。貴方ト」
    「それもいい」

     甘えるように首に回された腕から香ったのは、バニラと微かな煙草の香り。ラグジュアリーよりも赤ワインよりも戦場よりも、名前も知らない香水の香りが一番彼に似合っていると思った。それを伝えようとしても、上手く言葉にできなくていつも諦めてしまう。もうちょっと言葉を勉強したほうがいいのかな、なんてことを考えながら折れそうに細い腰を抱き締めた。
     
    「アズミに、エスプレッソでモ淹レて貰いマしょウか」
    「……ん、」

     もしかすると、不安だったのかもしれない。ソヌの存在を確かめるようにきつくその肩に額を押し付けて何も言わないジオの体を抱いたまま、ゆっくり揺り籠のように揺れてみる。ひとときの間だけでも、彼自身でも気付かずに無理をしがちなジオが、こうして甘えてくれるのが嬉しかった。

     
     
  • 34 夏蜜柑@火星語 id:8vFt1Z91

    2011-11-03(木) 14:01:40 [削除依頼]


    ◆知らなくてもいいこと

    バニラとタバコの匂いの香水はホントにあります。トバコトスカーナっていう香水です。
    エスプレッソは私が大好きで。趣味です。ググっていただければ分かるのですが「急速」という意味の他に「貴方のためだけに」「特別に」みたいな意味もあります。相変わらず要らん設定好きな私。ほっとけ!!((((
    ソヌの口調が文字化けっぽいですが文字化けではないです。

    もっとこう……かっけえタイトルにすべきだったなと今更←
    地味すぎますよねハハン。
    そんでやっぱりラストしかキッチリ決めてないのでちゃんと終わるか不安すぎる件←←←


    カタコトのカッコイイおっさんが銃ぶっ放してるの書きたかっただけどか言えない……!!
  • 35 夏蜜柑@火星語 id:8vFt1Z91

    2011-11-03(木) 18:58:31 [削除依頼]

    *

     微かな蒸気音とともに、香ばしい香りが漂っている。マシンからコポコポ、と音がし始める前にアズミは弱火にしていた火を止めると、静かに息をついた。エスプレッソが飲みたい! おまえの淹れたやつ! と騒いだジオに便乗して、ソヌやミリョ、セトの分まで淹れる破目になった。はなから断る気など無かったが、憧れのソヌに申し訳なさそうに頼まれては、俄然作業に慎重になる。カップに浮かんだ黄金の泡を眺めて満足そうに微笑むと、アズミはカップを持ってピョコンとキッチンから顔を出した。

    「エスプレッソ入りましたよーぅ」

     楽しげに弾んだボーイソプラノに、各々寛いでいた幹部たちが顔を上げる。この嬉しそうな顔が好きだ。銃もナイフも体術も使えないが、こうして一杯のコーヒーで笑ってくれる顔を見ると、自分の存在意義が少しだけ見えるような気がする。記憶も定かでない頃に、セトの気まぐれで拾われたらしいアズミは、戦闘においてはまったくの無能だった。なのにこうして此処に置いて、家族だと頭を撫ぜてくれるのがアズミは何となく居た堪れなかった。自分の傷一つない白い腕を見るたび、見覚えのある顔に白い布をかけていくたび。戦うためにおまえがいる訳じゃないとセトは言う。存在意義だなんて莫迦らしいと言う。
     
    「あリがとウござイます、アズミ」

     ニコニコといつも通りの穏やかな笑みを浮かべて、ソヌは褒めるようにアズミの頭を撫ぜた。その手からふわりと香ったのは、硝煙だなんて物騒な匂いではなく、バニラと煙草のような甘い香り。どこかで嗅いだことがある気がする。ふたりぶんのカップを手に取って、ミリョやセトとは少し離れたところで突っ伏しているジオの隣で腰掛ける後姿を見ながら、ぱっと閃くように思い出した。

    (ジオさんの香水の香りだ)

     カップを無愛想に受け取って、こちらに気怠そうな視線を投げたジオに、アズミは少しだけ肩をすくめる。ア、リ、ガ、ト、とその形の良い唇が動いて、ジオが一瞬だけやさしく微笑んで見せた。
     何だか気付いてはいけないものに気付いてしまったのかもしれない、とぼんやり考えながら、アズミも自分のために淹れたカプチーノに口を付けた。
     
    「アズミはバリスタにもなれるぞこりゃ」
    「バリスタどころか。何処に嫁に出しても恥ずかしくないわよ」

     いかにもいい加減なセトの言葉に、ミリョが悪ノリをする。不服そうに唇を尖らせて、僕は男ですと拗ねるアズミを面白そうに突っつきまわす二人は、彼をからかって遊ぶのが大好きなようだ。


     
     
     
  • 36 夏蜜柑@火星語 id:8vFt1Z91

    2011-11-03(木) 20:04:59 [削除依頼]
    ◆訂正(今更) >2のプロローグでまさかのミス。 × 機械人形のように無情に標的を狙い撃っていく彼のは〜 ↓ ○ 機械人形のように無情に標的を狙い撃っていく彼は〜 のはってなんだのはって。 プロローグで訂正とかありえませんよね推敲不足でした。
  • 37 能天気 id:vyqEJiB/

    2011-11-05(土) 12:03:49 [削除依頼]

    すごい(д´!!
    色んなとこから夏蜜柑さんの小説が面白いと聞いたので、やってきました。
    あ、初めまして、能天気といいます,

    描写が初心者の私と比べ物にならない……
    リボルバーのシーン、すごいカッコいいですね。
    今、戦争系の小説を書いているんですが、こんな風に書けたら理想です(笑)

    良ければタメでいいですよ,
  • 38 夏蜜柑@火星語 id:bDIi8Hj.

    2011-11-06(日) 10:31:14 [削除依頼]

    能天気さん>

    おっと…とうとうコメントからは見放されたかと思ってましたので心臓に悪いですよもう(デレデレ)
    はじめまして夏蜜柑と申します。そのソースは何処からですかΣ

    わおわお、ありがとうございます。そんなこと無いですよ私もまだまだ未熟ですから´`
    リボルバー…セトとソヌのシーンでしょうか。銃に関しては殆ど知識が無いもので、そう言っていただけて光栄です。
    わーお、戦争系ですか。いや、こんなの理想になんて勿体無いですよぅ。
    あ、いきなりタメだと私が申し訳ないのでスミマセン。

    コメントありがとうございました!
  • 39 夏蜜柑@火星語 id:dUN5JSX0

    2011-11-06(日) 20:05:45 [削除依頼]

     
    「おい、ちょっと注目ー」

     と、ジオが声をあげたのは、猫舌な彼が、冷ましたエスプレッソをようやく飲み終わった頃だった。マシンとカップを洗うアズミも、ちらりと視線を上げる。もしかしたら席を外した方がいいかもしれない。そう思ってこっそり部屋を出ようとすると、不機嫌そうなジオの声が鋭く飛ぶ。

    「おまえもココに座るんだよ馬鹿」

     美人が怒ると怖いというのは、どうやら男にも当て嵌まる文句らしい。

    「はいっ、すみませんっ」
    「悪くも無ぇのに容易く謝んな!」
    「すみません!」

     あたふたと頭を下げながら、縮こまってセトの隣に滑り込んだアズミに、ジオが諦めたように重い溜息を吐いた。それをニヤニヤと眺めていたミリョとセトが、堪えきれずに吹き出す。

    「馬鹿よねぇ、ホント」

     未だ状況が判断できずに不思議そうな顔をする彼に、ミリョが呆れたように呟いた。ソヌも困ったように眉を下げて笑いながら、しぃ、と唇に長い指を当てて、静寂をうながす。

    「随分情報屋のカラスの奴が焦らして来た」

     その陶器の如く白い手が懐から取り出したのは、少し皺の寄れた茶封筒。

    「来たのね?」

     ミリョが紅い唇をふてぶてしく吊り上げる。既に封を切られたそれを乱暴にも逆さまにひっくり返すと、中から出てきたのは六枚の写真と、お世辞にも奇麗とは言えない字で走り書かれたメモが一枚だった。ジオは四枚の写真を手に取ると、ひどくたおやかな手つきで写真を並べた。


     
  • 40 夏蜜柑@火星語 id:XAbIyKD.

    2011-11-13(日) 00:30:35 [削除依頼]

     
     最初に指差したのは、下段に置いた二枚の写真。楽しそうに身を乗り出すセトに押されるように、アズミも写真を覗き込む。左側に映っているのはオレンジ色に染め抜かれた髪が眩しい、比較的華奢な少年だった。戦闘中に撮られたものらしく、自分より二回りほど大きな相手を前に不敵に笑みを浮かべる姿はさながら玩具を与えられた子供のようだ。その大きな人工的な紫の目は面白くてたまらないとでもいう風に細められて、そこには狂気すら感じられる。右側に置かれた写真には、先程の彼よりも頭ひとつと半分ほど大きな少年が映っている。丹精な顔に、短く刈りこんだ黒髪。凛と前を見据えるその目は深く、何処か悲しげでもあった。対照的なふたりに共通しているのは、肩から手の甲までを埋めるように彫られた緋色の龍の刺青だ。

    「こいつらが、噂の『双頭の緋龍』だ。チビの方がラウ・リーシー、デカいのがファン・ジヨン。チビは持ち前の素早さを生かした接近戦、デカいのはオールラウンダー。未知数。んで、……ん? どちらも成長期のため大食い? 知るかよ」

     なんだこのメモ、とイライラしたように舌打ちしながら、ジオは中段に置かれた次に写真を指差した。

    「この女が幹部のマオ。主にボスのサポートと司令塔に徹する。頭脳派かと思えば武闘派でもあるらしい、リーチを生かした体術で右に出るモンはいない、と。ニックネームのマオは偽名の可能性アリ、スリーサイズは……何書いてんだ、カラスの奴」
    「おいそこもうちょっと詳しく」
    「テメェ黙れ」

     見えない何かを見定めるように目を細めたセトに、すかさずジオの冷ややかな眼光が飛ぶ。確かにその中に映る彼女は目鼻立ちも整っていて、切れ長の目が知的さを漂わせている。黒髪を高い位置でひとつに束ね、写真を見る限りは彼女は女人にしては随分大柄だ。
     ぼんやりと、並べられた写真を眺める。これはジオやセトたちにとっての、いわば殺害対象なのだとようやくまとめた結論を飲み下そうとしても、何だか現実味が無かった。ちらりと上目でジオの隣に座るソヌを伺う。だが、その視線にはいつもの生真面目さはどこにも無く、周りに合わせて写真を『見て』いるだけのように見える。飄々と常にいい加減に立ち振る舞うセトや、無精で自分の気の向いたこと以外はやりたがらないミリョとは違い、何事にも全力を尽くすソヌのそんな一面は今まで見たことが無かった。


     
  • 41 夏蜜柑@火星語 id:eOiI7rX0

    2011-11-18(金) 22:18:55 [削除依頼]

    あげついでに

    ◆知らなくてもいいこと&報告

    「マオ」はハワイ語でミドリの意味です。
    緑は赤の補色なんですよね。そして彼女のスリーサイズはアナタのご想像にお任せ致しますよ

    *

    この「ライン」、今度改定しまくってちょっと某ライトノベル賞に出してみようかと思っています。評価貰えるかなー
    あとあと、元々亀だった更新速度は多分もっと落ちます。冬休みは恐らく息抜き程度にしかパソ仔に触れないので。
    ついでにもうすぐテストゆえに更新ストップします(;ω;)

    あうあう勉強なんて嫌いだ!!!!
  • 42 夏蜜柑@あまったさーん id:b0C72oP0

    2011-12-21(水) 00:12:14 [削除依頼]


    (興味、無いのかな)

     思い返してみれば、彼が自ら進んで戦場に出たことは一度も無かったように思えた。いつだってジオに命じられるままに動き、ジオを護り、ジオのためにならその身を捧げる覚悟はできていると前にぽつりと聞かされたことがあった。フワフワとつかみどころが無いように見えて、頭の切れるソヌは、容易に他人のてのひらの上で転がされるような器では無いし、何かに依存するようなタチにも見えなかったから、ひどく吃驚したのを覚えている。
     もしかしたら――、とアズミはふと思い当った。ソヌはナハトにも『碧』にも、ナハトの中の所詮ささやかな革命や勝利にも、執着など持っていないのかもしれない。本当は、人の手で人を殺めるこの戦争を心苦しく思っているのかもしれない。

    『ジオがそレを望むかラ、私ハ傍にいル。持ってタ物ハすべて棄テた。ジオがそレを望んダかラ』

     そう言って、彼はいつものように微笑った。何の後悔もしていない清々しい顔をして。
     ソヌとジオの間にある奇妙な主従関係がちらりと垣間見えるたび、アズミはどうしていいのか分からなくなった。目を逸らせばいいのか、知らないふりをすればいいのか、セトやミリョのように飄々と受け入れればいいのか。

    「――、おいアズミ、聞いてんのか」

     随分と深いところまで落ちていた思考が、ふいに引き戻された。ぱちくりと瞬きすると、不機嫌そうに眉根を寄せるジオの鋭い視線に姿勢を慌てて正す。

    「えっ、あ、すすすすみませんっ!」
    「あのなぁ。オマエにとっても他人事じゃねぇんだぞ。双頭の緋龍の二人はオマエと同い年なんだから」
    「は……っ?」
  • 43 夏蜜柑@あまったさーん id:b0C72oP0

    2011-12-21(水) 22:42:59 [削除依頼]


     思わず間抜けな声がもれて、アズミはさっと頬を赤らめる。さっき流し見たジヨンとリーシーの写真をもう一度くいいるように凝視した。何度見たって荒々しく、同時に美しいその写真の中で悠々と舞うその顔は、大人びていた。人を殴り、時にはその命を奪い去ることの重みを知っている顔だ。いつまでたっても人の血に慣れないアズミとは違う。
     だんだんと情けなく萎れていくアズミに気付いたのか、ジオがぎょっと目を剥いた。

    「おい、勘違いすんなよ。コイツらとオマエが同い年だからとかいって、オマエが役立たずとかそーいうんじゃないんだからな」
    「ジオさん、それ墓穴だから」

     
  • 44 さをり id:SBzpSCv/

    2011-12-29(木) 17:23:17 [削除依頼]
    ひさしぶりっ。
    覚えてるかな、一年ぶりくらいにキャスフィきたよ。
    高校2年生になったよ!
    夏蜜柑の小説久しぶりに読んで、泣きそうになった(笑)
    前にもまして大人っぽい文章書くようになったね。
    本当に凄いよ。
    私もまたキャスフィで小説書いてみる。
    更新頑張ってね!
  • 45 夏蜜柑@あまったさーん id:0qYKwmm0

    2012-01-02(月) 12:38:12 [削除依頼]


    さをり>


    わおわお、久しぶり!!もうキャス来ないのかなーって思ってたよー、コメント返信遅れてスミマセン´`
    私は受験生です。もうすぐ高校生やで〜
    わー、もう何から何まで勿体ない言葉だよー、ありがとう\(^o^)/
    うん、楽しみにしてる。お互いに頑張りましょー♪
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