ヴィントミューレの廻る世界.24コメント

1 玄冬 id:8VFctU4/

2011-09-04(日) 16:25:57 [削除依頼]
 
「君を殺したのは本当に、彼女だったのかな」
 
 
 ひとつの問いは水面に落ちた石のように、その波紋をどこまでも広げていく。
 
 
 
  “ヴィントミューレの踊る世界”より
  • 5 玄冬 id:snipAtw.

    2011-09-05(月) 01:57:08 [削除依頼]
     木製の扉の向こう側でがさごそと物音がしたかとおもうと、すぐに着替えを終えた愁が飛び出してきた。どこもかしこも白ばかりの巫女の服だった。たった一カ所、色彩を求められる部位があるとすれば、それは前がはだけないようにするために存在する腰布だ。手のひらを広げたぐらいの幅をもつそれは淡い青色をしており、取り付けられた控えめな飾りには、瑠璃色の小さな石がきらめいていた。その装束が愁に似合うことといったら言葉に表せないくらいだった。
    「お腹空いた……禊ぎの前にご飯食べる時間、まだあるかな?」
     今日も愁は可愛いな、などと兄ばかっぷりな思考をしながら、憂は空を仰ぎ頷く。
    「うん……ない、かも」
     あくまでも笑顔の切り替えしに、愁は口を閉ざさずにはいられなかった。
    「あ……そう」
     起きなかった私が悪いんだよねきっとそうだよねうん分かります。
     愁は心なし歩調を早めて、廊下を歩いていった。板張りの廊下に面した庭では、すでに小鳥がさえずりを始めていた。朝日は、もうすぐそこまでやってきているのだ。
     
     
     
     
     
  • 6 玄冬 id:P7i8Z.Z.

    2011-09-06(火) 00:20:09 [削除依頼]
    ----------

     秋口の早朝に浴びる湧き水は、冬に積もる雪より尚、冷たいものに感じられた。霊峰に降り注いだ雨水が長い時間をかけて地下を巡り力を蓄え、麓にある井戸に湧いた霊水だ。愁のような巫女、また、憂のような巫女に連なる血筋の者は、こういった自然に宿った霊力を己に取り込むことが出来た。それは、禊ぎをする意味というのひとつでもある。ひとつでもあるということは、他にもあるのだということだ。
     愁や憂が身を寄せる神殿の井戸から湧く霊水は、普通の霊水と比べて霊力を多量に蓄えられている。脆弱な器が下手に触れれば、指が爛れてしまうであろう程に強大な霊力だ。愁は強い力を持つ巫女だったので、水に触れるどころか浴びたって平気だった。
     愁が霊水を浴びると、彼女の力は鋭さを増していくのだ。
     例えるなら、愁は刃。霊水は砥石だった。
     愁は神殿でも、とくに神の寵愛を受けた巫女だった。彼女の力の質が高まるにつれて、益々神も彼女を気に入り、十数年前には荒れ果てていたこの地は、今では緑豊かな門前町が発展していっていた。愁が禊ぎをするのは、彼女から神の愛が逸れないようにするためだったのだ。
  • 7 夢梅@←の発音は「みかん」の発音と同じです。 id:6hCqYXK1

    2011-09-06(火) 21:47:03 [削除依頼]

    あら、玄冬じゃないか。
    題名の響きが好きだわーw

    ファンタジックな感じかな? と思ったら……
    こういう雰囲気もまたいいね。

    また見に来るね!
    更新頑張って下さい(^ω^)
  • 8 玄冬 id:P7i8Z.Z.

    2011-09-06(火) 22:44:46 [削除依頼]
    日本語は勿論ドイツ語とかフランス語とかラテン語の響きが好きな玄冬ですノ
    の割に英語はあまり好きじゃない。という。

    夢梅の応援を糧に、今夜もあとで更新しようと思います。
  • 9 玄冬 id:2/xAkmf/

    2011-09-11(日) 00:05:29 [削除依頼]
     
     
     
     
     
     
     愁を禊ぎの水場に送り届けた後、憂はひとり、側にある庭で刀の素振りをしている。ひとつひとつの型を確認するようにゆっくりと始めて、それを少しずつ早めて繰り返し、最後には風を切るほどに素早く。憂の動きには一切の無駄がなかった。
     巫女(みこ)である愁に対し、憂には護人(もりと)という役割があった。護人とはひとりの巫女にひとりつく、片方が死ぬまでの相棒となる存在だ。巫女は純粋なまま、汚れてはいけないとされている。力が衰えてしまうからだ。人が他人を傷つければ、人の魂は汚れてしまう。だから、巫女は他人を傷つけてはいけない。故に自己防衛のままならない巫女たちの代わりに彼女らの身を守るのが、護人だ。
     いうまでもなく、憂は愁の護人だ。大切な半身を守るため、憂は鍛錬を怠りはしない。
     
  • 10 玄冬 id:rq0UcQ8.

    2011-09-20(火) 22:49:41 [削除依頼]
     大地を踏みしめるたび、足元で敷き詰められた灰色の小さな砂利が鳴る。綺麗な流線を見せる松の枝に、鵯が留まり、さえずる。鶯のように素晴らしいとは言い難いが、それでも彼らの歌には、朝を知るのに欠けたものはなかった。新たな日を迎える喜び、生きていることの嬉しさが、歌には詰まっていた。
     憂が再び、刀を降ろす。銀の残像が虚空に揺らめいた。
     ふう、と一息ついていると、ぱちぱちと控えめな拍手が背後から送られてきた。巫女が禊ぎを行うこの場所まで近づける者は限られている。憂はそれが誰かを予想し、振り返る。
    「やっぱり君か……」
     はぁ、と呆れたような吐息と共に刀を収めながら。憂は、その人物と視線を交える。
    「君の巫女は、何処にいるの……蓮」
     最後にひとつ、手のひらを叩き、蓮と呼ばれた人物は口を開いた。
    「椿はもう仕事に行ったよ。彼女はしっかりしてるから手が掛からない」
     無表情に細められた瞳に悪意はない。が、憂はこの蓮という男が嫌いだった。異国の血を引くのか、月光に翳せば星のように煌めく銀糸の髪に、淡い紫水晶の双眸。整いすぎた容姿は、畏ろしかった。
     蓮は、憂と同じ護人の役に就いていた。彼の護る巫女は、椿というらしい。
  • 11 玄冬 id:rq0UcQ8.

    2011-09-20(火) 23:03:09 [削除依頼]
    「前の巫女は」
     前、といっても一月もまえだったが、蓮の巫女は違う名の者だったのでは、と憂は首を傾げた。
    「杜若のことか」
    「そんな名前だったっけ」
    「名前くらいは覚えている。あいつは死んだよ」
    「…………そう……か」
     いっそすがすがしい程に淡々と事実のみを告げる蓮に、憂は背筋を震わせた。巫女が死ぬ、ということ自体はさして珍しくもないのだ。平均して、人間の寿命も長い訳ではない。ただ、憂は蓮の無情さに恐怖した。意図的ではなく無意識なのが、また質が悪い。一時は相棒であったはずの相手の死を、まるで他人ごとのように語る口は機械のようだった。
     愁が死んだら、憂は自分も死ぬつもりでいた。唯一無二の片割、半身だ。亡くせば、憂は天涯孤独。愁を喪ったとして、この世に留まるにふさわしいまでの未練は憂にはなかった。
     そんな憂だから、よけいに蓮が理解出来なかったのだ。巫女を、自らの護るべきものを喪ったはずの蓮の、冷静さが。
  • 12 玄冬 id:6ubW8YL.

    2011-09-23(金) 13:54:20 [削除依頼]
     巫女を護るという仕事は、彼にとって、女が機織りをするような単調な仕事でしかないのだろうか。憂はそう考えると、急に寂しさに襲われた。胸の温もりを虫に食われてしまったかのような虚ろさに、今すぐ愁に会いたいと願った。
    「……杜若は、どうして?」
     憂は訊ねた。
    「癒呪が、杜若を喰らった」
    「《水尽き》か。蓮、止めなかったのか」
    「止めたさ。だけど、杜若はやると言って聞かなかったから」
     水尽き。巫女に宿る霊力が尽きることを指す言葉だ。霊力は、命の力。尽きれば命を落としてしまうくらいに、巫女にとっては大切なもの。水尽きになってしまわないように巫女を止めるのも護人の役目なのだが、強制してでも止めなかった蓮の考えはわかる気がした。
    「癒呪で病の人を治したのか。だけど、お前は癒宮の長を護る護人だろう。杜若は、癒宮の長なはず……配下の者では力が及ないくらいの病だったのか」
    「血斑病に犯された小さな赤子だった。母親がうるさく泣き喚いていてな、赤子は静かでよかった。彼岸の匂いが、鼻についたが……血斑病を患えば、助からなければ殺すしかないからな、杜若は赤子を死なせたくなかったのだろうよ」
  • 13 玄冬 id:Gv67kUW/

    2011-09-24(土) 23:45:33 [削除依頼]
     血斑病は、別名《紅花弁(べにはなびら)》と呼ばれる病だ。はじめに全身に鮮やかな紅色の痣が浮かび上がり、それが広がり全身を多い尽くすと、病人は氷細工を落としたときのように砕け散る。この広い門前町の中でも年に一人、二人がかかるかわからない珍しい病だが、致死率は十割に等しかった。その症状の奇特さも手伝い、発祥率に比べて知名度は格段に高い。道行く人に聞けば、誰でも知るような病だった。
     死へ至るまでの苦しみは尋常ではないらしく、発症者はこぞって安楽 死を望む。理性を無くした末期患者の親族も、それを望むことがほとんどだった。憂には杜若という癒呪を用いる巫女長の気持ちはわからなかったが、しかし赤子を自ら葬るのが躊躇われるヒトの気持ちは理解できた。幼く、まだ未来も長い子供の芽を摘んでしまうのは、ひどく悲しい行為だ。たとえ仕方のなかったものだとしても。
     癒宮の巫女は、怪我人や病人を癒す癒呪を使う癒巫女と呼ばれる。傷つけるということは、彼女らの存在意義に反する行為なのだ。まして杜若は癒巫女の長。
  • 14 玄冬 id:t0AHqtn0

    2011-09-25(日) 12:07:01 [削除依頼]
     己が命に代えても赤子を助けたいという衝動が、理由が、あったのだろう。それは長としての誇りかもしれないし、彼女の女としての本能だったかもしれない。癒し、他者を救うために在る癒巫女(いやしのみこ)は傷つけ、見捨てることをなによりも忌み、恐れるから。
    「杜若は、癒巫女としての責を全うしたのか……立派な御仁だったに違いない」
    「やめろというのに聞きもしない、自分の残力も測れない愚かな巫女だった」
     瞬きをするよりも短いくらいだったが、蓮の言葉の端に僅かな哀しみが差した気がした。憂は思う。蓮は杜若に思い入れこそなかったが、きっとその愚かさを悲しみはしたのだろうと。愚かで、それでも自分の信じることのために進み続けた、癒巫女。死んでしまう前に、一度くらい会ってみればよかったかもしれない。
     愁以外の巫女のことなんて眼中にもなかったから、大巫女に連なる宮の巫女長の名さえ、憂は今まで知りもしていなかった。
  • 15 玄冬 id:t0AHqtn0

    2011-09-25(日) 12:29:20 [削除依頼]
     
     
     
     
     
     
     陽は高く南中を越え、祈鳥の鳴き声は穏やかな昼下がりを優しく包み込んでいた。縁側に腰掛け塩の加減が絶妙な握り飯を食べながら、憂はひとり、青い青い空を見上げる。柱に預けた背に体重をかけ、欠伸をひとつ。屋根に半分だけ隠された空は明るすぎて、室内の暗さに慣れた目に優しくなかった。
     彼の大事な妹は、傍らで眠っていた。朝の禊ぎが終わってから昼までずっと祈りをしていたが、今日の仕事はもう終わりだった。大巫女である愁が仕える神は、今は留守にしているのだ。各宮の神の世話が主な仕事となる巫女長と大巫女は、神がいなければ休みとなる。
     神が留守にする理由を問うても、愁は憂にそれを教えてはくれなかった。神は許した者にしかその姿を見せず、言葉を与えない。愁以外に、その理由を知る者はいなかった。
  • 16 夢梅 id:7RTrEG9.

    2011-09-25(日) 16:17:08 [削除依頼]

    ドイツ語とかわかるわーあたしはわりと英語も国語もすきです←
    でも得意じゃないんだよw

    日本の神系(?)のお話は読んだことないから新鮮ー!
    あれ、前も言ったっけ((ry

    更新頑張って!
    逃亡の方の更新もたのしみにしてます密かにw
  • 17 玄冬 id:.roDIlF/

    2011-09-25(日) 17:12:30 [削除依頼]
    夢梅>>
    わかるw好きなのに得意になれないもどかしさったら。
    好きなのに好きなのにどうして?! って。

    日本っぽい世界の神とでも捉えて下さいな。
    まあ、例によって例のごとくファンタジーという。

    更新がんばるよ!
    と、逃亡のほうも…っ!
  • 18 玄冬 id:O7SObPi.

    2011-12-05(月) 00:03:11 [削除依頼]
     ん、と小さく息をこぼし、愁が猫のように体を縮みこめた。髪を細かく揺らし、追い鬼でもして遊んでいるかのように風が楽しげに吹いてゆく。わずかに冷たさをはらんだ風は眠っているひとには寒いのかと思い、憂は羽織を脱いで愁の体を覆うように被せた。
     いつもと変わらない退屈で平坦で、されど愛しき日常。
     こんな平和がいつまでも続いていけばよいのにと、憂は願う。それが叶わぬことだとは、彼とて重々承知していたのだったが。それでも願わずにはいられないのが人間の悲しい性だと、憂はかぶりを振った。人間はなにより聡く賢い生き物だと思いたいという気持ちは大きく、しかし理性はそれを否定していた。
    「この頃よく、神は遠方へ行かれるようですね……“白”さま」
     愁にかぶせた羽織が再び吹いた風に揺れ、憂は人間でない気配を感じ顔をあげた。それが何の気配であるかは分かっていたので、姿を確認する前から声を発する。
     案の定、いつのまにか目の前に人間離れした容姿の青年が立っていた。
    「理由が知りたいか、憂よ」
     燃え上がるというには黄が強すぎる赤の髪は、夕暮れ色と表せばしっくりする。彼の瞳もまた赤く、こちらは躯に流れる血のように鮮やかだった。
  • 19 玄冬 id:O7SObPi.

    2011-12-05(月) 00:16:32 [削除依頼]
    「いえ、愁が言わないのなら、私が知らなくともよいことなのでしょう」
    「わからぬぞ。そやつは神の御言葉さえも偽る小娘なのだから」
     そんなことをしていたのか。
     憂は驚きに目を見開き、週に視線を向けた。あどけない寝顔からは想像できない剛胆さが、妹の中にはあるのだ。神の言葉を偽るとは、我が妹ながらなんて命知らずなのだろうか。憂はなんとも言えない思いに駆られ、白を見上げた。
    「……神は、」
    「愁は神の一番の気に入りの巫女。多少の粗相はみないふりをしているそうだ」
    「そうか。今度礼を言っておいてはくれませんか」
     承知した、と白は頷く。
     白は大巫女である愁が仕える大神に連なるものだった。神に劣らずとも、勝らず。下位でもなく上位でもなく。白は己を「鬼」だと言っていた。神と丁度正反対に立つ存在である、と。かといって敵対しているということはなく、それどころか時たま酒を酌み交わす程の仲だという。
     白は愁と会ったことがない。なぜかこうして、愁が眠っているときを見計らい、憂に会いに来るのだ。
  • 20 玄冬 id:1BmpIVG.

    2011-12-12(月) 18:40:57 [削除依頼]
    「それはそうと白さま。今日は、如何されましたか」
    「いや、なに。特に立てるべき理由もないが、憂の顔が見たくなってだな」
    「要するに暇だったんですね……」
    「神とは違い、鬼だからな。下手に動けば、厄災を引き起こしかねん」
     じゃあ、ここにも来ないで下さい。
     愁をかばうようにして、憂は視線でそう言った。目は口ほどにものをいうとは良く言ったものだ。正にそのとおり。ふーふーと、毛を逆立てる猫の幻覚を見そうだと、白は面白そうに口端を緩める。黒い着物の袖が揺れ、からん、と下駄を鳴らして白は憂に近づいた。
    「そう威嚇するな、護人にみえるぞ」
    「護人ですから」
    「そんなことは知っている」
     憂は目を細めた。呆れか、警戒か。
     おそらくは両方によって、だ。
    「警戒せずともよい、憂も疲れることだろうて」
     白が言えば、憂は少しだけ警戒を解いた。
     少なくとも、剣の柄から手を離すくらいには。
    「ここはあやつの力に護られている……たやすく、私に影響されたりはしない」
  • 21 玄冬 id:MlDsyY2/

    2011-12-17(土) 22:21:42 [削除依頼]
     何かを思う様子で、寂しげに眇められた赤の双眸。憂はそれに感化され、目の奥がじんと痛み、少しばかり悲しくなると同時に驚きを覚えた。
     白さまでも、こんな表情をするのか。と。
    「おや、どうした、憂」
     意識が飛んでいた憂は、びくりと肩を震わせた。そして小さく顔を横に振り、否定を示す。
    「……いえ、なんでもありません」
    「……怪しい」
    「本当に……なにもありませんから」
     まあいいが、と白は言い、憂は胸をなで下ろした。変にいじっぱりなところのある白に理由を説明すれば、やっかいなことになるに違いなかったからだ。やっかいなことにならずとも「余計なことに気を回すな」と、ひとつ頭を叩かれただろう。
     なんとなく憂が空を見上げれば、ざざぁ、と木の葉が大きく揺れ、音をたてた。
     白が憂と同じように空を見上げ、唇を動かした。
    「楽」
     応えるように再度、風が巻き起こる。
     憂は袖で顔を覆った。砂粒が当たり、痒むように痛かったのだ。
     一枚の葉が、くるりと円を描いて青い空へと舞い上がる。
     一瞬のうちにつむじ風が出来たと思ったら、次に瞬きをした後には消えていた。
    「楽さま……」
     憂はどこか面倒臭そうに額に皺を寄せる。
  • 22 玄冬 id:AL/1FhX0

    2012-01-07(土) 15:13:13 [削除依頼]
    新年もあけまして七日目です。
    巫女バイト、時給千円に惹かれてやってみましたが、
    なかなかに地獄でした。寒いし足痛いし寒いし。
    似非和風ファンタジー“ヴィントミューレの廻る世界”。
    鈍行ですが、今年もよろしくお願いします。
  • 23 鬼灯 id:LEAY2Sb.

    2012-07-05(木) 20:41:28 [削除依頼]
     この男といい白といい、人でなしのものはそんなにも暇なのだろうか。つむじ風の消えた場所に立つ男を、憂は呆れたような半目で見やった。
     白と対になるかのように、彼の髪は夜に沈む空の藍色をしている。目は、爛々と金に輝いている。男はその名を楽といった。白の級友であり、悪友である。
     楽は山隠りの修行僧のような格好をしており、漆塗りの鬼の面(めん)を頭に掛けていた。楽曰く、面は白からの送り物らしい。背中からは対の鷹の翼が生えていた。
     白が鬼と名乗るのならば、楽は天狗と呼ばれる存在だった。神格に近い白とは違い、寧ろ、獣に近いあやかしの類なのである。長い長い年月を生きた獣はやがて人型を持つようになり、森と意識を共有し、深い思考と精神を得る。
     もともとは鷹であったらしい楽は、あやかしの中でもとびきり長生きをしているらしい。
     白もいつ出会ったのか覚えていないほど昔から居るらしく、この世でもっとも古いあやかしのうちの一人なのではないのかと憂は考えていた。  
  • 24 鬼灯 id:LEAY2Sb.

    2012-07-05(木) 20:43:13 [削除依頼]
    級友→旧友 です
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