御伽話の逆襲12コメント

1 ‐‐‐キリトリ‐‐‐ id:ez-7pCYjQy1

2011-09-04(日) 10:26:48 [削除依頼]

【proloooog!!】


 お姫様は生まれた時から悪魔の住む塔に幽閉されていました。

 少年は生えた獣耳が不吉だと村から追放されてしまいました。

 御伽話は始まります。多少の屈折率をみせながら――。
  • 2 ‐‐‐キリトリ‐‐‐ id:ez-7pCYjQy1

    2011-09-04(日) 11:15:44 [削除依頼]

    【001】

     小声で失礼します。ただいまノワールの塔に侵入したばかりなんで、化け物に感づかれるとマズいんで。こうして石柱の影からの挨拶となりました。
     僕、名前をルセルと言います。意味は「なんぞこれ(気持ち悪い)」です。こんなん役所が受理しねぇよと思うかも知れませんが、僕が生まれた村には区役所も市役所もないんで問題無いんですね。いや、大問題だけども。
     でも仕方ないんです。なにしろ僕の頭には狐みたいな耳が生えているんですから。生まれたての羊水にまみれた耳が生えた赤子を見ればも母親思わず、

    「うわ、何これルセルなんですけどーっ」

     位は口走ってしまうでしょう。そんな訳で僕の名前はルセルなんです。
  • 3 ‐‐‐キリトリ‐‐‐ id:ez-7pCYjQy1

    2011-09-04(日) 11:37:11 [削除依頼]
     僕の名前はいいとして……。
     僕がなんでこんな危険な所に、外ではドラゴンが飛び交い、中ではオークやらシャドウやらが騒いでいるような塔に忍び込んだのか。その経緯をお話しする方のが物語の進行上、よろしい様です。スタッフから「いらん、アドリブいらん」とのカンペがきましたのでさっさと進めます。

     村には僕が生まれた時には既にこんな話が伝わっていました。

    「ノワールの塔に住む魔法使いのご主人は、DVがエスカレートしてとうとうダークサイドに堕ちたらしいよ」

     DV、ドメスティックバイオレンス。つまり家庭内暴力のことですね。
     日々酷くなる夫のDVにいよいよ命の危険を感じた妻は、産まれたばかりの我が子に眠りと封印の魔法を掛け、その直後に力尽きたらしいです。結局ダークサイドに堕ちて我が身を滅ぼした夫もドラゴンやらオークやらに食べられてしまったそうな。それからはノワールの塔に化け物は住み着いてしまったのですが、妻が守った子供だけは今でも塔の天辺で眠っているそうです。
     こうして絵に描いたような捕らわれの姫の噂が流れたのです。
  • 4 ‐‐‐キリトリ‐‐‐ id:ez-ds2z6hf/

    2011-09-05(月) 17:28:55 [削除依頼]
     気分は捕らわれの姫を助ける勇者だ。いや、本当に塔の天辺に行って助ける事が出来れば正真正銘勇者だろう。たとえその道のりがカッコ悪いとしても、だ。
     狐耳―頭の上に生えている方の耳をそう呼んでいた―をピクピクと動かして、周囲に化け物がいないか注意を払う。村では気持ち悪るがられたこの耳も、こういった時には大いに役立つ。何しろ僕の狐耳はエルフの耳よりも優れているのだから。

    「何もいない……よな?」

     石柱から首から上だけ出してみる。暗闇に浮かぶ松明が、廊下のずーっと奥の方まで続いていた。
     僕は出来るだけ壁際を、普段の三倍速位の歩きで進んだ。音を立てないようにしていると自然と姿勢が良くなる。それはもう無駄に良い姿勢になる。
     全体が石造りのノワールの塔は常に曇天の下に立っている。外は何匹ものドラゴンが吐き出す炎で火山の火口のようだけれども、塔内に入ると不気味な位に冷たくじめじめしていた。壁の所々には緑色の血痕や、剣や斧で付けられた傷なんかがあり、僕の恐怖メーターはぐんぐん上昇していく。
  • 5 ‐‐‐キリトリ‐‐‐ id:ez-ds2z6hf/

    2011-09-05(月) 17:52:09 [削除依頼]
     廊下全体が暗かったせいか、僕はそいつが目の前に現れるまで全く気づかなかった。

    「うわぁっ!」

     目の前のそいつは僕に驚いて間抜けな声をあげる。
     そいつは僕にそっくりな耳と、体格と、顔付きと服装だった。ほとんど僕みたいだ。アレ、ていうか僕だ。反転した僕です。廊下はずーっと続いていたのでなく、廊下に鏡があったようです。つまり、目の前で間抜けな声を上げたのは反射した僕ということになるわけで……。

    「オイ、今人間の声がしなかったか?」
    「あぁ確かに」
    「侵入者だぁぁああ!! 食うのは捕まえた奴の早い者勝ちだそぉお!!」
    「おぉぉおぉ!!」

     絶望。絶体絶命の前にそんな諦めの二文字が浮かんでしまった事が更に絶望感を高めます。顔は既に引きつりまくり。
     とりあえずこの場から動かなきゃと思うけれど、前方は鏡の壁、後方からは生命力溢れる雄叫びとスピーディーな足音が響いているので合流するわけにはいかないでしょう。くそう、渋い語り口調で「格好いいノワールの塔侵入劇」をしよう。なんて慣れない事をしようとしたばっかりに前方不注意になるとは……!
  • 6 祈祷 彗月 id:PwUrMgX.

    2011-09-05(月) 18:34:40 [削除依頼]
     初めまして。
     獣耳大好きなんです!←
     ルセルの仕草(?)がツボりました(笑)

     更新楽しみにしてますb
     
  • 7 綾香 id:mXP6Cmr.

    2011-09-05(月) 18:40:14 [削除依頼]
    面白いです!
    読者になっていいですか?
    ルセル君....可哀想な名前だね...(笑)
    頑張ってください!
  • 8 ‐‐‐キリトリ‐‐‐ id:ez-4yI2E0K0

    2011-09-06(火) 18:39:28 [削除依頼]
     皆さん、生のオークを見たことがありますか?
     僕は噂で聞いた事しかないんですが、その噂がこれまたどれも凄いんです。だからそのオークもう間近に来てるってことでドキドキしてます……って感じの「ホントにホントにライオンだ」的なサファリパーク的なノリなら良かったんですけど、ちょっと今は「近過ぎちゃってどうしよう」じゃ済まなそうですね。死活問題だっつーの!
     複数の足音はそのペースを落とすことなく着実に近づいています。オークほど着実という言葉が似合わない生物もいないだろうに。
     前後に行き場を無くした僕はその足音に恐れおののきつつ、なんとかやり過ごす方法を捜します。が、左右の壁や床面に都合良く抜け道の類は存在したりはせず、いよいよ追い込まれた僕は一休さん張りのトンチでやり過ごそうとする始末。

    「謝ったら帰してくれるんじゃ」

     一周してわけの分からない結論に達しました。確実に言えるのはトンチじゃないよね、コレ。第一、僕に帰る場所なんてないですし。
     あ、思い出しました。僕がノワールの塔の姫を助け出す事になった経緯を話していた途中でした。姫がノワールの塔に封印された理由は話しましたね。だったらその姫を助けるのがなんで、村でも鈍臭いと評判だった僕なのか。その理由を話さなければ。でもオークが迫って来ている今話すことなんだろうか。まあいいや。理由、いや原因は簡単なんです。全ての原因はこの狐耳なのでした。
  • 9 ‐‐‐キリトリ‐‐‐ id:ez-4yI2E0K0

    2011-09-06(火) 18:46:25 [削除依頼]
    >6+7 おあぁ、有難う御座います! 嬉しいです! そうなんですよ。可哀想な奴なんです。でもドジだけど素直で一生懸命で狐耳でいい奴なんですよ。 今後>1で出た「多少の屈折率」ってやつが読者様を裏切るかも知れませんが、どうかそれが良い意味での裏切りでありますように……。
  • 10 ‐‐‐キリトリ‐‐‐ id:ez-3uf9BkR1

    2011-09-11(日) 13:35:24 [削除依頼]
     村の人々はいくら不気味がっているとはいえ、幼い僕を追い出すようなことはしませんでした。しかし、十歳を過ぎた辺りから追い出すきっかけを探していたのは感じていました。
     洗濯物を取り込むのが遅れて濡れてしまえば「お.前のような役立たずは村にはいらん」。市場で野菜を売っていれば「村に居させているだけでも有り難いと思え。だから半値にしろ」なんて無茶を言われます。もし僕が何か失敗でもすればすぐに村から追い出されていたでしょう。
     それでも僕は十四歳になるあの日まではなんとか耐えていました。
     運命って言うんでしょうか。家族以外は知らないであろう僕の誕生日のことです。村で最年長の占いオババが、普段は寝た切りの占いオババが、もう何年も占っていなかった占いオババが、常時閉じたっきりの目をカッと見開いて叫びました。

    「もうすぐこの村に災いが降りかかる……災いから逃れる為には災いの化身を振り払わねばならぬぅぅう……っ!!」

     それだけ言うとオババはまたスヤスヤと眠りについたそうな。
     僕の名前は出ていません。オババは災いの化身が誰、または何なのかを言ってませんが、この村で災い、不吉、化物と言えばそれはイコール僕なのです。満場一致。家族ですら、いやむしろ僕自身も振り払うべきは僕、ルセルなのだと判断しました。
  • 11 ‐‐‐キリトリ‐‐‐ id:ez-3uf9BkR1

    2011-09-11(日) 15:21:20 [削除依頼]
     最低限の旅の荷物を持たされ、僕は誕生日の翌日に村を発ちました。いってらっしゃいもサヨナラも無い、静かで虚しい旅立ちでした。
     僕はもう村人も、家族の顔さえみるのが怖くて、ただただ真っ直ぐに進みました。が、すぐに気付いたのです。どこにも行く場所が無いことに。
     どうしよう。何をしよう。
     自分を嫌い、虐げてきた人達から別れ、ある意味自由になった僕でしたが、何も持ってない、何の力もない僕に「生きる気力」なんてものが残っている分けがなかった。既に生きる意味も理由もなかった。

    「よ、よっしゃーっ、アレだ。ノワールの塔にでも突撃して一発逆転じゃーい」

     無論、ヤケクソです。これ以上生きるつもりはない。どうせ死ぬなら見たことも無いような凄いモノをみて死.のう。どうせなら自.殺じゃなくて勇者みたいにカッコ良く……みたいな、そんな感じでした。
  • 12 ‐‐‐キリトリ‐‐‐ id:ez-3uf9BkR1

    2011-09-11(日) 22:16:08 [削除依頼]
     幸いと言うかなんというか、ノワールの塔の空はいつも暗いので、村から遠くともなんとか目指すことが可能でした。小動物のように隠れながら、上空を舞うドラゴン達の目をかいくぐって何とか塔内部に入り込み、今に至るわけですが……。
     「おぉぉぉ」という唸りはいよいよ大きくなります。そこで僕は考える。

    「オークよりドラゴンに殺される方がカッコ良くないか?」

     始めから死ぬ気なのですが、どうせならカッコ良く死.にたい。というか、オークなんて臭い連中には殺されたくない。僕にもそれくらいのプライドはありました。我ながらなんてしょぼいプライドなんだろうか。それにここまで来たからには、やっぱりお姫様には会ってみたいというのもありますし。
     さて、無事に回想も終わった事だし、物語の進行上、オークと僕はいよいよ対峙する事になる分けです。が、前に述べた通り、オークが向かってくる後方以外、前上下左右の全方向が塞がっています。
     どうすんだろう。これはホントにどうすんだろう。
     スタッフさんのカンペには「どうにかしろ」とありますが、どうにか出来るならとっくにしてるんですが。役に立たないスタッフです。まぁ僕の脳内スタッフなんで仕方ありませんが。
     ネガティブ思考が高まると、ついこんな考えが浮かびます。捕まったらどうなるんだろう。オークは人間よりやや知性が劣り、残虐だと聞きますが、捕まった瞬間に頭からガブリとやられてしまうんでしょうか。それともダシを聞かせたこだわりスープを作ったりするんでしょうか。

    「補食……料理……これだっ!」

     トンチ……じゃないけど、浮かびました。延命措置!
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