道化の国73コメント

1 夏風 id:bEXjz0./

2011-08-29(月) 13:28:35 [削除依頼]



       私を助けて


    そう、僕を呼ぶ声がして


      気が付けば僕は


/道化の国
  • 54 夏風 id:ST3VhCv1

    2011-09-21(水) 08:25:07 [削除依頼]



    *

    「通せよ」


    俺は、思いっきり低い声を出してみた。
    低い声は、どこか人を威嚇する力があるから。
    でも、俺にこいつを威嚇できる力があるかは別物だ。
    だから怖かった。こいつを威嚇しようとしてる俺が、怖かった。


    「通さない」


    フユーも、一言で片づけた。
    低い声で……。
    両方が両方を威嚇する。
    この威嚇勝負に負けた方が、敗北する。

    そんなの、フユーが思ってるかなんてわからない。
    でも、多分思ってる。
    フユーは、そういう風に思って、俺を潰しに来てる。

    負けるわけにはいかないんだ。
    俺が負けたら、彼方がどうなるかわからない。
    一刻も早く、彼方のもとへ行かなければ……。


    「早く通せ」

    「イヤだね」


    フユーの声に、心が俺そうになる。
    こいつは平気なのか?
    俺の威嚇は、まったくきいていないのか?

    そんなはずない。
    俺と同じように、平気なふりをしてるだけだ。
    大丈夫。大丈夫だ。
    俺は勝てる。


    「通せ」

    「イヤだ」

    「通せ」

    「無理」

    「通せ」

    「ハァ……」


    三回目の通せ。
    全体では5回目で、フユーはため息をついた。

    何だ?
    何でため息なんか……。
    ひょっとして、俺が勝った……?


    「イヤだって言ってんじゃん」


    フユーは、もとの奇怪な声に戻った。
    何で?
    何で戻す必要があるんだ?


    「言ったこと、一回で理解してよ。日本語、わからないの?」


    バカにしたように聞いてくるフユー。
    これは挑発だ。
    のったらいけない。

    だけど俺は、我慢できなかった。
    そういう風にバカにされることが、我慢できなかった。

    ふいに、俺の裾を引っ張る小さな手が見えた。
    振り向くと、それはやっぱりルイノだった。

    ルイノは、俺の目を見ていた。
    いつもの、真っすぐな目だ。


    「ダメだよ」


    たった一言だった。
    でも、俺には分かった。
    あぁ、まただ。
    また、俺は10の女の子に……。

    ――止められてしまった


    *
  • 55 夏風 id:XLDtjDv1

    2011-09-21(水) 14:16:23 [削除依頼]



    *

    小さく、フユーが舌打ちをした。
    それに、俺の裾が震えた。ルイノが、震えた。
    俺はできるだけ優しく、ルイノの髪をなでた。

    大丈夫だから。
    そう、語りかけるように。
    ルイノに伝わらなくてもいい。
    自己満足でいい。
    それで俺は、自分を奮い立たせることができるんだから。
    ルイノを守ることで、俺は、自分を奮い立たせることができるんだから。


    「そこ、どけよ」


    力強く言った。
    低い声とか、もうどうでもいい。
    いざとなったら強行突破するくらいの覚悟は、もうできてる。


    「退散だ」


    フユーが呟いた。
    今まで、聞いたこともない声だった。
    奇怪な声でもなければ、1トーン低い声でもない。
    普通の男の声。
    多分、これがフユーの本当の声なんだろう。
    確証は何もないが、多分そうだ。

    フユーの声にこたえるように、黒仮面、黒マントの奴らはサーッと散って行った。
    いつの間に、というほど素早く姿を消してしまった。


    「彼方っ!!」


    彼方は、真中にうずくまっていた。
    よかった。連れ去られていなかった。


    「大丈夫か?」


    俺とルイノは、彼方のそばにかけよった。
    彼方の身体は全然傷ついていなかった。

    フェイクか……。


    「痛い!! 痛い!!」

    「どこが?」

    「心が!!」

    「そのまま痛んでろ」

    「はい、グサァ!!」


    お気楽だな、こいつは。
    うらやましい。
    こいつの前じゃ絶対認めたくないけど、うらやましい。

    俺も、全てのことにお気楽でありたい。
    そんなの、無理だってわかってるけど。
    これが彼方の天性で、俺にはない物だってわかってるから。
    わかってる、わかってる、わかってる……。

    本当は、分かってないんだ。
    俺だけじゃない。
    きっと誰だって、わかってないんだ。


    *
  • 56 夏風 id:XLDtjDv1

    2011-09-21(水) 17:22:36 [削除依頼]



    *

    「とりあえずさ、どっか行こう」


    いつの間に立ち直ったのか、彼方が俺の横に来て言った。


    「どこに?」

    「さっきルイノちゃんから聞いたんだけどさ、最初小屋にいたんだろ?」

    「でも、見つかった」


    俺がそういうと、彼方は考え込むように腕を組んだ。


    「でもさ、とりあえず雨風しのげるところに……」

    「じゃあ、探すか」


    俺がそういうと、彼方じゃなくてルイノが顔を輝かせた。
    あぁ、これは彼方じゃなくてルイノが望んでいたんだ。

    俺、何にもできてねぇなぁ……。


    「よーっし!! じゃあ、探しに行こうぜ」


    そう言って、彼方はさっさと歩いて行った。
    その後を追うように、自然と俺とルイノが並んで歩くことになった。


    「さっきさ」


    ルイノが口を開いた。
    ちょっと、重苦しく。
    どうしたんだ……?


    「……カズキって、言われてたよね?」

    「……へっ?」


    それが、どうかしたのだろうか?
    俺の名前は和輝だ。
    それ以外の、何者でもない。


    「……名前、アランじゃないの?」


    思いだした。
    俺は、アランだと教えていたんだ。
    ルイノにではなく、ルイノにからんでいた男達に。
    そして、それを聞いていたルイノは俺がアランだと思っていた。
    今まで、ずっと。


    「ウソ、ついてたの?」


    大人っぽいとはいえ、まだ10歳。
    ウソ付かれたのは、ショックなんだな。
    ウソついていたわけじゃないけど、何て言えばいいかわからなかった。


    「名前、和輝っていうんだ。アランは、違う」


    重い口を開いて、それだけ言った。
    ウソついてたのっていう質問には、触れなかった。
    触れられなかった。


    「そっか」


    ルイノはそれだけ言った。
    俺とルイノの周りの空気が、とてつもなく重く感じられた。


    *
  • 57 夏風 id:XLDtjDv1

    2011-09-21(水) 17:36:28 [削除依頼]



    *

    彼方が立ち止まり、振り返った。
    俺達を目でとらえ、大声で叫ぶ。


    「早く来いよー」


    俺達はどちらからともなく走った。
    でも、彼方のもとへたどりついても、まだ森だった。
    森以外の景色は、見えなかった。


    「何もないじゃん」

    「あるから呼んだんじゃないもん」


    子供みたいに彼方は言い返す。
    まぁ、そうだろうけどさ……。


    「私、期待してたな」


    ポツリと、ルイノは言った。
    下を向きながら。

    俺は、ルイノの手をそっと握った。
    何で握ったのかは、よくわからない。
    だけど、握った。

    安心しろ。
    すぐ見つかるから。

    少なくとも、そういう思いはあった。
    と、いうことにしておこう。


    *
  • 58 夏風 id:XLDtjDv1

    2011-09-21(水) 22:07:39 [削除依頼]


    あげます
  • 59 夏風 id:m5OSGlY/

    2011-09-24(土) 11:43:44 [削除依頼]



    *

    どれだけ歩いても、森だ。
    ずーっと奥の方まで、緑しか見えない。

    俺とルイノの手は、ずーっとつないだままだった。
    離れることなく、ずっと……。


    「疲れた」


    彼方がそう言って、座り込んだ。


    「立て。そして歩け」


    ルイノが頑張ってるのに、こいつという男は……。
    彼方は、頬をふくらませて、


    「ルイノちゃんも疲れてるよな?」


    と、ルイノに話を振った。
    うつむくルイノ。
    それだけでわかった。
    ルイノも、やっぱり疲れてるんだ。

    やっぱり俺、無理させてばっかりだな。

    俺は彼方の向かいに座った。
    ルイノの顔を見ると、驚いたように目を見開いている。


    「俺も、疲れたし」


    そういうと、ルイノはコクリと頷き俺の隣に座った。


    「やっぱり和輝も疲れてんじゃん」


    彼方はニヤニヤ笑いを浮かべてくる。


    「黙れ。さっさと休憩していくぞ。
     もしかしたら、雨が降ってくるかもしれないだろ」


    その途端、ザーッと雨が降り出した。
    一瞬にして、身体がぬれる。
    彼方もルイノも、ビショビショだった。


    「な、何でいきなり!?」


    彼方は一人で慌てふためいていた。
    俺はルイノをおんぶした。
    表情はわからないが、身体が強張るのがわかる。


    「彼方、俺の荷物持って。走るぞ」

    「おぅ!」


    彼方はニッと笑って俺の荷物を持った。
    そして、俺達は走りだした。
    一刻も早く、雨宿りをするために。


    「ってか、和輝の方が軽いの持ってない?」

    「うるさい」


    *
  • 60 来夏(元えま) id:iD6yFoZ.

    2011-09-24(土) 11:48:18 [削除依頼]
    小6私の恋と楽しぃ最高ないじめと小6ツンデれの恋がナリデ書かれています。

    削除依頼に協力してください
  • 61 夏風 id:m5OSGlY/

    2011-09-24(土) 11:55:25 [削除依頼]
    >60 来夏(元えま)さん 削除依頼は一人分で足りると思いますよ? 多分ですけど。
  • 62 夏風 id:YXYYC84/

    2011-09-25(日) 20:38:04 [削除依頼]



    *

    雨はいっこうにやまず、気付けば視界が霞んでいた。
    雨のせいなのか、自分が風邪をひいたのか、わからない。
    どこまで走っても緑しか見えず、心も身体も限界の域に達していた。
    それでも走る。前が見えなくても、走る。
    ルイノが風邪をひかないように、彼方は……ひいてもいいか。

    いきなり、緑が消えた。


    *
  • 63 夏風 id:YXYYC84/

    2011-09-25(日) 20:56:03 [削除依頼]



    *

    「和輝ー!? 和輝ー!!」


    光が見えた。
    すごくすごく、眩しい光。

    その光を背中から受けて、彼方がいた。


    「……彼方」

    「和輝!? 起きたんだね! よかったー」

    「……近い」


    彼方と俺の距離は約30センチ。
    誰かに何かを疑われそうな距離だ。
    まったく……、こんなところをルイノに見られたら……。


    「ほらね、和輝君、絶対そうやって言うと思ったもん」


    ……見られてた。
    一気に顔が熱くなる。


    「あっ、和輝君、顔赤いよ。彼方君、濡れ雑巾もってきて」


    俺の顔の赤いのを熱のせいだと勘違いしたらしく、急いで彼方に命令するルイノが面白くて、可愛くて、思わずクスリと笑ってしまった。


    「何か、面白いことあった?」


    まさか自分だとは思っていないだろうルイノが、ニコリと微笑みながら聞いてきた。


    「いや、何もないよ。それより、ここは……」


    そう言いながら、起き上ろうとした俺を、ルイノが止めた。


    「まだ起きないで」


    そういうので、仕方なく顔だけ動かして辺りを見回す。
    白い壁。ナチュラルホワイトって感じじゃなくて、本当にホワイト。真っ白。
    机の上に、ろうそくが一本だけ立っていた。
    でも、この明りはろうそくじゃなくて、上についているシャンデリアだ。

    ……シャンデリア?


    「ルイノ、ここどこ?」

    「お城だよ」

    「お城って、どこの?」

    「道化の国の」


    ……道化の国?
    道化の国には、フユーがいるんじゃないのか?

    俺の疑問を察したように、ルイノが口を開いた。


    「大丈夫だよ。隠し部屋だから」


    大丈夫じゃないよな?
    そう言いたいのを懸命にこらえる。
    ルイノが大丈夫って言うなら大丈夫。
    どっかの小学生のようだけど、気にしないでおこう。


    *
  • 64 夏風 id:Ij4UZN21

    2011-09-25(日) 22:12:22 [削除依頼]



    *

    しばらくして、彼方が雑巾を持ってきた。


    「濡らしてきたよ!」


    彼方は慌てて俺の額に雑巾をのせた。
    ヒヤリと冷たくて、気持ちいい。


    「ありがとな」

    「和輝、死ぬなよー」


    泣き真似を始める彼方。
    とりあえず無視しとく。
    すごくうれしいけど、ウザい。


    「無視するなよー」


    それもスルーして、俺はルイノの方を見た。


    「俺、何でここにいるの?」

    「森を抜けたと思ったら、和輝君倒れちゃったの。
     そしたら、目の前にお城があって、ここまで来たの」

    「彼方が、運んでくれたのか」

    「そうだよ」


    ニコッと微笑むルイノ。
    その笑顔がうれしくて、俺もつい微笑んでしまう。
    辛い思いをしているはずのルイノ。
    心から笑わせてあげれる日は、いつか来るのだろうか?

    俺は、彼方の方を向いた。


    「ありがとな、運んでくれて」

    「いいってことよ!」


    歯を見せて、ニッと笑う彼方。
    ――救われる。
    ルイノも、きっと彼方の笑顔を見て救われてるはずだ。
    彼方の笑顔には、何かそういう力がある。

    救ってやれるやつが、俺でありたかった。
    そんなこと、嘆いてもしょうがないのだけれど、やはり考えてしまう。


    「寝ても、いいか?」

    「いいよ」


    ルイノに許可を取って、目を閉じる。
    何も考えないように努力しながら。
    しばらくして、俺は眠りに就いた。


    *
  • 65 夏風 id:3.whrYd1

    2011-09-26(月) 18:15:46 [削除依頼]


    あげます
  • 66 夏風 id:3.whrYd1

    2011-09-26(月) 21:08:09 [削除依頼]



    *

    暗い。
    周りが真っ黒だ。
    その真ん中で、俺は叫んでいる。


    「助けて! 助けて!」


    どうして叫んでいるのだろう……?
    理由は、もう忘れた。
    それでも、俺は叫び続けた。
    助けて、助けて……。

    突然、目の前にルイノが現れた。
    ルイノの後ろから、光がさす。

    助けに来てくれた……。

    そう思うと、ルイノは消え、光も消えた。
    襲う孤独感。

    そしたら、彼方が現れた。
    あの満面の笑みが、光におおわれる。
    心の中が、温かくなった。
    でも、消えた。
    襲う恐怖感。

    最後に、紫のオーラをまとったヤツが遠くから現れた。


    「フユー……」


    思わずつぶやく。
    フユーはニヤリと笑い、懐からナイフを取り出した。


    「死ね」


    フユーは、俺に向かって突進してきた。


    *
  • 67 夏風 id:3.whrYd1

    2011-09-26(月) 21:58:23 [削除依頼]



    *

    目を開けると、白い光が視界いっぱいに飛び込んできた。
    続いて、俺を心配そうにのぞきこむルイノと彼方の顔。


    「あ……」

    「和輝、大丈夫か? お前、すげぇうなされてたぞ」


    全身汗だくで、気持ちが悪い。
    彼方の話もそこそこに、俺はルイノに向き直った。


    「着替え、ある?」

    「ちょっと待ってて」


    ルイノはそう言って、どこかに走って行った。
    彼方と顔の位置が同じくらいになるように、俺は起き上った。
    起き上ると、部屋全体がよく見渡せる。

    右手には、大きなクローゼットがある。そこで、ルイノが服を出していた。
    左手には、古びた扉。茶色くて、すこし煤けている。
    正面には、鏡。俺の身体が見える。
    汗だくだくで、みっともない俺の身体が……。
    そしてベッドの横。机には、相変わらずろうそくがあった。

    それ以外には何もない、殺風景な部屋だ。


    「はい」


    ルイノは、俺に服を差し出した。


    「ありがとう」


    俺はそう言って、着替えた。


    *
  • 68 夏風 id:8k9waTz0

    2011-09-27(火) 18:31:24 [削除依頼]


    あげます
  • 69 夏風 id:yAkKOA3.

    2011-09-28(水) 19:16:20 [削除依頼]



    *

    「あはははははっ!!」


    着替え終わった後、彼方は俺を見て爆笑した。
    ルイノは、うつむいている。


    「ご、ごめんなさい……」


    震えた、小さな声。
    あぁ、ルイノも笑いをおさえている。

    俺の恰好は、フユーと一緒だった。
    違うのは、オレンジと緑ではなく、黄色と紫ってところ。
    模様とかは、全部同じだ。
    すなわち――道化師。


    「化粧もするか?」


    目の涙を拭きながら、彼方が言った。
    すかさず、拳骨をお見舞いする。


    「だれがするか」


    この衣装だけでもイヤなのに、誰が化粧なんか……。
    でも、この衣装のおかげでルイノが笑ってくれている。
    そう思うと、別にいいかな……なんて。

    この格好をしてたら、みんなを笑顔にできるかな?


    *
  • 70 夏風 id:WfLtys30

    2011-09-29(木) 12:48:18 [削除依頼]


    あげます
  • 71 夏風 id:4GVCJJP0

    2011-10-02(日) 11:51:36 [削除依頼]


    あげます
  • 72 夏風 id:4GVCJJP0

    2011-10-02(日) 12:36:24 [削除依頼]



    *

    「それにしてもさ」


    彼方が笑いながら口を開いた。
    目には、涙が浮かんでいる。
    イラつく。けど、イラつかない。
    どっちつかずの気持ちに、俺は混乱していた。


    「俺達って、いつ帰れるんだろうね?」


    一瞬、時間が止まったような気がした。
    ルイノが、俺達の間でしきりに顔を動かしている。


    「帰るって、どういうこと? 私は、帰る場所がないんだけど……」


    ルイノの返答に、彼方が目を見張る。
    そして、俺の方をその表情のまま見た。


    「和輝、話してないのか?」


    俺は首を振った。
    話してないし、話すつもりもなかった。

    彼方は変な顔をした。
    やってしまった、みたいな落ち込んだ顔。
    眉間にはしわがより、目はつむっていた。

    ルイノは、そんな俺達の会話がわからずに、目をキョロキョロさせていた。
    そんなルイノを、俺はベッドに座らせ、俺も横に腰掛けた。


    「今から話すこと、よく聞いとけよ」


    ルイノはコクリと頷いた。
    俺の目をしっかりと見据えて、頷いた。
    俺に向けられたルイノの目は、何故か悲しげに見えた。


    *
  • 73 夏風 id:/L/0r091

    2011-10-31(月) 15:35:49 [削除依頼]



    *

    「俺は、この世界の住人じゃないんだ」


    ルイノは目を見開き、俺と彼方の顔を交互に見た。


    「本当だよ」


    彼方が念を押すように言った。
    ルイノは首をかしげ、目を閉じた。
    その姿が愛しくて、今すぐにでも抱きしめたくなった。

    しばらくして、ルイノは目を開けた。
    そして、俺の目をじっと見据えた。
    強い、決意に満ちた目で――


    「わかった」

    「えっ?」

    「協力する」

    「……えっ?」


    突然のことに驚いて、俺は彼方の方を見た。
    彼方も訳がわからないと言った顔で、俺の顔を凝視している。


    「だから、私が帰してあげる。待ってて」

    「帰り方、わかるの?」


    そう聞くと、ルイノは少し黙った。


    「どうやって、来たの?」


    逆に質問をされても、戸惑ってしまう。
    彼方を見る。彼方は頷いた。
    何の頷きだ。


    「本から」

    「なるほど。ここは本の世界なのね」


    一言でここまでわかってしまうルイノを、俺は尊敬する。


    *
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