恋煩い.15コメント

1 焚緒 id:5ZItGHh1

2011-08-09(火) 17:32:45 [削除依頼]

 
  それはあまく、ちくりといたみ

 けっしてゆるされぬ心としりながら

  なす術もなくそだってゆくもの


      ―恋煩い.―
  • 2 焚緒 id:5ZItGHh1

    2011-08-09(火) 17:41:56 [削除依頼]

    ひとつ. 【立春】


    ――生贄なんかじゃない。

    少女はそう信じていた。信じていたかった。
    生まれてからずっと過ごしてきたこの村のためだと。
    大好きな村のみんなを守るためなのだと。

    けっして、嫌われているわけではないのだと。

    籠の中、運ばれている間そればかり考えていた。
    下唇をきゅっと噛みしめ、熱くなる目元を感じながら。
    孤独と恐怖に必死で耐えていた。


    少女は今宵で7つになる。


    毎年春がくるころに行われるしきたりが村にはあった。
    「山神様」と呼ばれる妖怪に生贄を差し出すこと。
    条件は満7歳になる村の娘。そしてカオルは選ばれた。


    カオルは村が大好きだった。
    村のみんなもカオルのことを好きだと思っていた。

    でも、そう思っていたのは哀れな少女だけなのだ。
  • 3 焚緒 id:5ZItGHh1

    2011-08-09(火) 17:50:39 [削除依頼]

    カオルには父も母もいない。
    7年前、まだほんの赤子だったカオルはその村に捨てられた。
    貧しい村だったから、本当は養うつもりなどなかった。

    生贄の儀式がなければの話。

    村では毎年、どの家の子を生贄に差し出すか揉める。
    あたりまえだろう。どんな親だって、大切なわが子を得体のしれない化け物に差し出すことなどできるわけがない。

    かつて村長は、幼いカオルを見つめていった。

    この子のために泣く親はいない、と。

    全ては7年後の生贄の儀式を速やかに行うため。
    村でカオルを養うことを決めたのだ。
    カオルが喜んでその身を捧げるように、からっぽで偽りの愛を与え続けていた。


    カオルが消えれば、そのぶん食いぶちが増える。


    ちっぽけ。でも、大きなこと。
    村は貧しい。今日明日生きていけるかもわからない。
    山神様は唯一の心のよりどころ、唯一すがれるものだった。


    まちがいなく、カオルは愛されてなどいなかった。


    ただの村の道具。邪魔な、もの。
  • 4 焚緒 id:5ZItGHh1

    2011-08-09(火) 18:01:11 [削除依頼]

    月夜に銀の鈴が鳴り響く。
    鈴が鳴るたび、カオルを運ぶ一行は祠へ近づく。

    シャララン……。
    シャララン……。

    籠の隙間から月明かりが差し込んだ。
    柔らかくて、冷たい銀色の光。

    生贄ってどうなるの。
    痛いのかな、苦しいのかな。

    幼い少女には、あまりに重く残酷な運命。

    それでもカオルは泣かなかった。泣かないと誓った。


    月明かりが消えた。
    籠が地に置かれ、鈴の音がやんだ。

    まっくら。

    此処はもう祠の中。
    籠を運んできた者達の足音が遠ざかっていく。


    重々しい金属音と共に、闇の中に閉ざされた。


    籠の中、カオルは小さな肩を抱いて震えた。

    寒い、ひもじい、怖い、寂しい。


    たすけて


    わかっていたはずなのに。
    もう、此処から抜け出すことはできないと。
    誰も助けてなどくれないことを。
  • 5 紅 id:004VUqw.

    2011-08-09(火) 18:01:16 [削除依頼]
    うわあぁぁ!
    文章力ヤバいですね!!

    私も小説書いてるけど
    文章力全然ないから
    羨ましいです

    更新頑張って下さい☆
  • 6 焚緒 id:5ZItGHh1

    2011-08-09(火) 18:16:41 [削除依頼]
    >紅さん

    うれしいです^^
    何て言う小説ですか??

    更新がんばります!
  • 7 焚緒 id:5ZItGHh1

    2011-08-09(火) 18:31:18 [削除依頼]

    どれくらいの時がすぎたのだろう。
    まだ幼いゆえか、カオルは深い眠りへと落ちていた。
    寒さと寂しさに身を縮めている姿はあまりに不憫だ。


    ふと、青白いぼんやりとした明りが灯った。
    かすかな眩しさにカオルは瞼を擦り目を開けた。

    籠の中から恐る恐る祠の床へ足をつける。
    脚の裏からひんやりと感じる冷たさに震えた。
    青白い明りは、曖昧なものから次第に何かを形作っていく。

    カオルは息を殺し、瞬きもせずにそれを見つめていた。


    「あ……」


    思わずカオルの口から声が零れた。
    光はやがてひとりの青年を形作り、輝きを放つのをやめた。
    光がなくなった途端、青年はその場に崩れ込んだ。


    祠は再び静けさをとりもどした。
  • 8 紅 id:004VUqw.

    2011-08-09(火) 18:36:36 [削除依頼]
    面白いですねー
    不思議感が漂ってていいですね〜

    私のは
    ミオが黒猫を拾ったそうです
    っていうヤツです
  • 9 焚緒 id:5ZItGHh1

    2011-08-09(火) 19:01:13 [削除依頼]
    >8 紅さん 嬉しいです^^ 読みに行きますね!!
  • 10 紅 id:004VUqw.

    2011-08-09(火) 19:43:46 [削除依頼]
    ありがとうございます

    更新楽しみです☆
  • 11 焚緒 id:5ZItGHh1

    2011-08-09(火) 19:58:19 [削除依頼]

    カオルは青年に半歩、近づいた。


    その刹那。


    「う、あ゛……ぁ……!!」


    己の二の腕を掴み、青年は呻いた。
    苦しそうに体を捩じらせ、蒼い目をカッと開いている。

    カオルは、無意識に手を伸ばしていた。

    あと少しで触れそうになった途端、青年はカオルの姿をとらえ獣のような悲鳴とともに威嚇した。
    カオルの体がビクッと大きく跳ね上がり、すぐさま後ずさった。

    カオルが離れると、青年は再び痛みにもがき出す。


    ――たすけなきゃ。


    カオルは再び青年に近づいた。
  • 12 焚緒 id:5ZItGHh1

    2011-08-09(火) 21:53:27 [削除依頼]

    青年はかなり弱っていた。
    抑えている二の腕は、深く切りつけられ傷は骨にまで達している。
    とめどなく流れる血は、床に赤黒い水たまりを作っていた。
    それよりもひどいのは胸の穴だ。
    小さいながらも、肺に風穴が開いていた。

    カオルはその傷を理解すると少し脅えた。
    助けようとしたはいいが、祠の中には何もない。
    オロオロしている暇はないと、カオルは自らの衣を破った。

    薄汚れた布を、暴れる青年の二の腕に巻きつけていく。
    青年はカオルに触れられていることにも気付かないのか呻き続けていた。
    肺に穴があいてるため、呼吸すらも想像を絶する苦痛だろう。
    このまま暴れ続けてたら、きっと命はない。


    「大丈夫だよ!!だからっ、静かにして……!!!」


    気づけばカオルは青年に向かって叫んでいた。
    青年はその声に驚いたのか、小さなカオルの体を振り払った。
    あっけなくその場に崩れ込む。


    「ダメだよ……死んじゃ、う……よ」


    青年の動きが止まった。
    先ほどの敵意に満ちたまなざしとは違う、何か珍しいことでも起こったのかのように目を見開いている。
    カオルのまっすぐな視線とぶつかった。
    その後しばらくして、青年は瞼を閉じた。


    ――眠ったの……?


    カオルは青年のそばまできた。
    人間とは思えないほどに美しい顔、先の鋭い耳とその何倍も鋭い爪。
    白く透明に近い程透きとおった肌と、流れるような黒い髪。

    安らかな寝息。


    カオルは息をのんだ。
    まちがいなく、村で語り継がれし「山神様」の姿だった。
  • 13 紅 id:004VUqw.

    2011-08-09(火) 22:51:57 [削除依頼]
    山神様登場!
    怪我は大丈夫か!?
                 
    私の小説読んでくれて嬉しいです
  • 14 焚緒 id:HfBWl9J0

    2011-08-10(水) 07:12:40 [削除依頼]
    >13 紅さん 山神様なので大丈夫です(オイ 紅さんの小説、すっごく面白かったです!!
  • 15 紅 id:NPksiIL1

    2011-08-10(水) 16:52:07 [削除依頼]
    14

    面白いだなんて・・
    ありがとうございます!

    この小説も超面白いです☆

    山神様だから大丈夫って・・
    すごいですね WW
コメントを投稿する
名前必須

投稿内容必須

残り文字

投稿前の確認事項
  • 掲示板ガイドを守っていますか?
  • 個人特定できるような内容ではありませんか?
  • 他人を不快にさせる内容ではありませんか?

このスレッドの更新通知を受け取ろう!

ログインしてお気に入りに登録すると、
このスレッドの更新通知が受け取れます。

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません

閲覧履歴

  • 最近見たスレッドはありません

キャスフィへのご意見・ご感想

貴重なご意見
ありがとうございました!

今後ともキャスフィを
よろしくお願い申し上げます。

※こちらから削除依頼は受け付けておりません。ご了承ください。もし依頼された場合、こちらからの削除対応はいたしかねます。
※また大変恐縮ではございますが、個々のご意見にお返事できないことを予めご了承ください。

ログイン

会員登録するとお気に入りに登録したスレッドの更新通知をメールで受け取ることができます。

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません
閲覧履歴
  • 最近見たスレッドはありません