捨て猫と僕18コメント

1 玄冬 id:nF2INMl.

2011-08-08(月) 10:46:45 [削除依頼]

 僕が雨の日に拾ったのは。

 それはそれは大きな、
  • 2 玄冬 id:nF2INMl.

    2011-08-08(月) 10:57:01 [削除依頼]
    .

     これは無視をして通り過ぎるべきなのか。
     偽善ぶった救いの手を差し伸べるべきなのか。

     とりあえず僕は立ち止まった。

     傘を不規則なリズムで叩く、大きな雨粒の音は絶える気配がない。
     肩から下げた通学鞄は横から吹く雨に既にびしょ濡れになっていた。

     足元の水溜まり。そこから視線を数メートル先に進めると。
     そこに、“居る”のだ。

     このまま見捨てて帰れば僕は人間として最低なのだろうか。
     いや、大抵の人が見て見ぬフリをするだろうから、構わないかもしれない。

     でも……、と。
     僕は進みかけた足を止めた。

     ここで見捨てて帰れば、僕はきっと後悔する。
     それで、本当にいいのか。

     答えの出ない自問自答。

     ヤケクソになり、僕はそれに近づいていった。


     僕の気配を感じ取ったのか、それは薄く目を開いた。
     覗く瞳は深い青色で、雨の日でも黒と見紛えないそれを、綺麗だと思った。

     僕はしゃがみ込み、それと目を合わす。
  • 3 玄冬 id:nF2INMl.

    2011-08-08(月) 11:03:44 [削除依頼]
    「行くところがないなら、」


     ああ、また母さんに怒られるな、と心の端で思いながら。


    「僕の家に来ませんか」


     そう、問うた。
     それの返事は、ニャアなどという可愛らしいものではなく。

     予想通りの、しかし掠れたテノールボイスで。


    「誰が……行くか…………」


     差し伸べた手を払いのけられたのだ。
     ただの比喩だけれど。実際に手は差し出していない。
     言葉を掛けただけだ。

     ただ、そう言った彼は、その後力尽きてしまったようで。
     つついても起きやしなかったものだから。

     置いて行くには少々忍びなく。

     僕は彼を背負い、家に向かって歩みを進めたのだった。


     重かった。
  • 4 玄冬 id:j0WLTUI/

    2011-08-09(火) 10:49:11 [削除依頼]
    .

     運のいいことに母さんは外出中だった。
     道の途中で倒れていた彼は、あたりまえだけれど全身濡れていて。
     僕と似た体格だったから、乾いた僕の服に着替えさせた。

     からすの濡れ羽のようにしっとりとした髪を、指で梳く。
     体が冷えていたから暖かいタオルで拭いてみたけれど、彼の体はまだ冷たいままだった。
     目を覚ましてくれれば風呂に入れられるのに、と考え、そしてすぐに苦笑いが浮かぶ。

     目を覚ましたら、この男はそのまま出ていってしまうかもしれない。
     彼の青い瞳は人を寄せ付けない、警戒心の強い獣の光を持っていた。
     手を酷くひっかかれるかもしれないな、と僕は彼の額に軽くデコピンをくらわせてみた。

     彼は少し身じろいだだけで目を覚まさない。


    「君は」


     眠る顔は、安らかであどけなく。


    「一体、何者なんですか」


     閉じられた瞼もそのままで。
     閉ざされた唇も開かずに。
     返事は勿論返ってきはしない。
  • 5 玄冬 id:j0WLTUI/

    2011-08-09(火) 11:03:03 [削除依頼]
     彼が何故あんなにも他者を警戒するのかが知りたかった。
     今、そんな彼が大人しく、と言っては何だが眠り続けている理由も。

     それだけ疲れているということだろうか。

     彼はきっと、ひとりでしか寝られないタイプだろう。
     眠っているときは、とても襲われやすいから。
     睡眠時、外敵に襲われないために、獣たちはいろんな技を本能に刻みつけている。
     海豚は片脳ずつ眠るなんて器用なことをするし、狼は微かな気配でもすぐに目を覚ます。

     彼も、人間のくせにそういった力を身につけていそうな気がしたんだけれど。
     さすがに海豚の真似は無理そうだから、後者のような睡眠の浅さを。

     僕は彼の目の下にある隈を見た。

     眠れて、いなかったのかもしれない。

     理由は知らない。何も、知らない。
     僕のベッドで眠る彼のことを、何一つ知りやしない。

     それでも何か、懐かしさがあるような気がした。
     胸の底、脳を悲しく刺激するような何かがある。

     僕は再度、眠る男に問うた。


    「本当……何者なんですか……」


     この疼きが。衝動が。
     記憶していない記憶が、君を知っているような感覚。

     その理由を君は知っているのだろうか。
  • 6 玄冬 id:j0WLTUI/

    2011-08-09(火) 13:09:40 [削除依頼]
    .

    「早鷹……また何か拾って来たでしょ」
    「え……あ……」

     帰宅した母さんが洗面所に入り、そして僕を呼びつけてそう言った。
     母さんの手にあるのは放置しっぱなしだった異様に泥に汚れたタオルだ。
     言い逃れが出来ない状況に、僕は観念した。

    「うん……拾った。落ちてたんだからしょうがないだろ」
    「……全く、今回は何拾ったの。ちゃんと飼い主みつけるのよ」
    「あ、それは無理だよ母さん」
    「なんでよ」

     だって、彼はどう見たって。

    「人間だもの」320。

     は? と、一瞬停止する母さん。
     それで、僕はもう一度言う。

    「だから、人間なんだって」

     母さんの目が大きく見開かれた。
     それはもう、ウルメイワシのように。
  • 7 玄冬 id:j0WLTUI/

    2011-08-09(火) 13:20:09 [削除依頼]
    「今は僕の部屋で寝てる。結構てか大分イケメンだよ」
    「は、早鷹っ。元の場所に置いてきなさいっ!」
    「……なにとち狂ったこと言ってんの。人間って説明しただろ」
    「イケメンが道端に倒れてるなんて、ヤのつく職業の方かもしれないでしょ!」
    「どんな偏見だよ、母さん……」


     とりあえず変な妄想が始まった母さんを放っておいて。
     彼の様子でも見に行こうと回れ右をした僕は、驚きのあまり硬直した。

     だってさ、寝てた彼が起きて、すぐ後ろにいたんだから。
     そりゃ、驚くでしょうよ。


    「っ、と……起きたのですか」
    「……おいチビ、腹減った」


     彼は返事もせずに、偉そうに言い放った。
     顔は白っぽく、表情は若干ダルそうだ。

     まあ、予想はしてたけれども。
     これまた、我ながら厄介なものを拾ってしまったと思った。

     それに僕はチビではない。
     ……四捨五入すれば170cmだ。
  • 8 月 id:661F9By1

    2011-08-20(土) 23:28:30 [削除依頼]
    続きプリーズ!!w

    続き 気になるわー
  • 9 玄冬 id:T2BAki50

    2011-08-21(日) 11:31:17 [削除依頼]
     あ、コメントありがとうございます。
     久々にみてみたら書き込みがあってビックリしました←
     ちまちま更新していく予定ですので(・ω・`)
  • 10 玄冬 id:T2BAki50

    2011-08-21(日) 11:47:02 [削除依頼]


     何とも失礼なものを拾ってしまったなどと、僕は溜め息をついた。
     うん、体格は似てると思ったよ。最初こそはね。

     僕の服、横幅はぴったりなのに丈が短いってどうよ。

     悶々と考えながら、かしゃかしゃと箸で卵をといている僕。
     フライパンに入れて、かき混ぜながらスクランブルエッグを作る。
     僕と拾った彼の夕食を作っているのだ。

     母さんは食べてきたらしく、今は居間で彼と話をしている。
     ……駄洒落ではない。決して。

     母さんの弾む声から推測するに、どうやら打ち解けたようだった。
     
     
     
     皿に卵とレタスと、暖めた鳥肉を盛りつける。
     ご飯と味噌汁をよそって完成だ。
     和と洋混じってるとか文句言われたら、食わせないつもりだ。

     
     料理をテーブルにセットする。
     すると匂いを嗅ぎつけたのか、すぐに彼がやってきた。


     動物か。
  • 11 玄冬 id:T2BAki50

    2011-08-21(日) 11:58:27 [削除依頼]
    「君の名前はなんですか」

    「……」

     くしゃくしゃと、レタスを食む音。

    「どこから来たとかわかりますか」
    「……」

     すず、と味噌汁を啜る音。

    「何故あそこで倒れていたんですか」
    「……」

     かちゃ、と箸が滑り皿に降れた音。
     返事がないというのが、こんなに虚しいものとは。

     新発見だ。
     したくなかったけど。
     
     
    「……美味しいですか」
    「……」

     少しの沈黙。
     そして、

    「まあまあだ」

     上から目線の返答。
     ……返事をしてくれただけ、ましか。
     
     
     
     奇妙に静かな食卓に、夜も静かにふけていく。
  • 12 月 id:sgdKb6r1

    2011-08-21(日) 15:35:21 [削除依頼]
    お! 更新されとる!  

    まぁ 頑張れや ←上から目線w
  • 13 玄冬 id:tHl9iLK1

    2011-08-24(水) 23:57:05 [削除依頼]


     向かい合って机を挟み、ソファに座る。
     僕と母さん、イケメンの彼、と分かれている。

     テレビは消えていて、音がない。


    「俺の名前は山田太郎。出身は伊賀の里で、俺を狙う輩に追われて逃げる途中だ」


     そんな中、食事中の質問と同じ内容の問いに対して、彼はしっかり答えてくれた。

     だがしかし。


    「嘘でしょう」

     そんなファンタジーな話、あってたまるか。

    「……ああ、嘘だ」

    「まじでか」


     ていうか、やっぱり。信じる奴いるのかって感じだけど。


    「本当のこと言ってくださいよ」

    「……」


     とたんに口を噤むイケメン。
     正直さっさと言っちゃって欲しい。

     時間がもったいないんだよ、このにゃろう。


    「……花田喜一、年齢は黙秘、出身は名古屋。家出中、寝不足で倒れていた」
  • 14 月 id:XJE9Tok/

    2011-08-26(金) 22:13:56 [削除依頼]
    寝不足で倒れる イケメーン!w
  • 15 月 id:fznhaJ5/

    2011-08-29(月) 20:30:41 [削除依頼]
    ほら 頑張れ! 
  • 16 早蕨 野菊 id:Q9yfLMG/

    2011-10-29(土) 21:48:57 [削除依頼]
    「花田喜一というのですか。花ちゃんですね」

    「殴.るぞこのやろう」


     言いながらも、手が出ないあたり躾が行き届いてる。
     そこらのチンピラではないようだ。……死語とかいうな。

     花ちゃんという呼び方には抵抗があるのだろう。
     同じ男として、その気持ちはよくわかる。

     だがしかし、変えてはやらない。
     忘れるな、さっき貴様は僕をチビ呼ばわりしたのだから。
     むしろ、これくらいで済んで良かったと感謝しろ。


    「まあ、そんなことはどうでもいいのです」

    「よかねえぞ」

    「少し黙ってて下さい」

    「…………」


     少しムッとしたのか、花田の眉間に皺が寄る。
     が、やはり手は出ない。

     代わりにか、伏せた不機嫌な猫の耳がみえる。
     いや、もちろん幻覚。例え話だけど。
  • 17 玄冬 id:MDH3QAA1

    2011-11-20(日) 20:19:00 [削除依頼]
    「出身は名古屋といいましたね。では、ここらは地元なのですか?」

    「いや、俺は八事日赤のほうだ」

    「名城線を使うのですね。僕は東山線と桜通線以外、滅多に使わないもので」


     と、まあ。地元民しかわからないような地下鉄の話は置いといて。
     
     
    「チンピラが家出などと、笑えますね」

    「……悪いかよ」

    「親御さんが心配しますよ」


     そう言えば、花田は黙り込んでしまった。
     はて、地雷でも踏んでしまったのだろうか。
     否。爆発はしていないから違うだろう。

     いつのまにか母さんはいなくなっていて、耳をすませばシャワーの音が聞こえた。
     マイペース。自由な人だ。


    「……ぇよ」

    「何か言いました?」


     花田が何か言ったようだったが、聞き取れなかった。
     もう一度聞き返せば、こんどはちゃんと言葉を発してくれた。
     しっかり、はっきりと。

    「あの人たちは心配なんかしねえよ」


     僕は口を噤んだ。
     言いたいことは腐るほどある。

     しかしそれらは、彼の抱えているであろう傷に対する同情などではない。
     むしろ心情としては、花田をけちょんけちょんに貶.してしまいたい程だ。

     
  • 18 月 id:fSO4V/w1

    2011-12-02(金) 17:34:58 [削除依頼]
    いつの間にか 更新されとる!!
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