空ノ中カラ105コメント

1 丁 id:NDX4Hzk1

2011-08-02(火) 18:36:22 [削除依頼]



この空が奪われるのならば 私はもう躊躇などしない
  • 86 丁 id:hn6GFYg/

    2011-10-28(金) 20:17:27 [削除依頼]
    あの鼻に突く硝煙の鋭い匂いで、私は意識を取り戻した。
    徐々に聴覚がはっきりし、腹の底を蹴りあげるような乾いた音が断続的に鼓膜を叩く。
    重い目蓋を開き状況を知ろうと辺りを見渡した。
    どうやら横倒しになったトラックの影に隠れているらしい。
    彼らが頭を低くしながら話し合っている。
    「IED攻撃を受け、敵は周囲に展開している模様!!
     軽機関銃は12時の方向です!」
    「バディー(2人1組)を組んで、交互に援護しながら後退する。
     決して敵に囲まれるな!」
    「サー!!」
    息を絶え絶えに視線を落とすと、目の前に
    こめかみから血を垂れ流しているあの軍人の冷たい顔が横たわっていた。
    「ひっ!」
    反射的に身体を後ずさりさせた。
    ガソリン混じりの泥がぐにゃりと手に絡み、髪が泥水に浸かる。
    「エストランディル!」
    すると私の小さな叫び声を聞いて彼が声を掛けてきた。
    こんな状況下にも関わらず、たぶん会ってから初めてだろう。
    目と目が合ってしまった。
    私は瞬間的に目線をずらす。
    …なんか気まずいので大丈夫と言おうとすると、
    彼は私の腕を握ると、肩車の要領で持ち上げた。
    「後退する!」
    持ち上げたまま、彼は歩き始めた。
    速さは早いのにも関わらず、安定している。
    私は再度トラックの方を見ると、
    残っている2人が何かを森の中へと投げている。
    しばらくすれば銃撃音の最中、幾つもの爆発音が空気を揺らし、
    地面から灰色の煙が立ち込める。
  • 87 丁 id:hn6GFYg/

    2011-10-28(金) 20:21:34 [削除依頼]
    銃撃はまだ続いている。
    敵の弾丸が空気を切り裂く音が耳を貫き、苔むした木々の幹をえぐる。
    「リンクス、今だ!」
    200mほど後退すると彼は突然しゃがみ、1人の男に命令した。
    するとその男は先程から右手に持っていた小型無線機のチャンネルをいじると、
    一度辺りを見渡し、送信ボタンを押す。
    刹那、放棄したトラックから火球が夜空へと現れ、追撃してきた敵もろとも木々を吹き飛ばし
    森に焦げた円を刻んだ。
    衝撃で折れた枝や小石が地面に臥している私達の背中に飛んでくる。
    「走れ。Go,Go,Go!」
    バディーで交互に制圧射撃を行いつつ、私達は深い闇に紛れながら森の奥へと向かう。
  • 88 丁 id:hn6GFYg/

    2011-10-28(金) 20:22:53 [削除依頼]
    地図に描かれていない鍾乳洞の入り口を見つけた。
    そこで休憩する事になり、私は石灰岩でできた大きな石筍にもたれかかるように座っている。
    彼らは手前のライフルの不具合をチェックし、弾薬の残りを数えている。
    鍾乳洞の入口は意外にも暖かかったが、中は水が滴れているため身体が濡れ冷えてしまう。
    銀色の防寒シートを貰い、身体に巻いて暖をとる
  • 89 丁 id:hn6GFYg/

    2011-10-28(金) 20:23:36 [削除依頼]
    リディア=リトヴァク
    聞いた覚えがない名前だった。
    それが自分の名前なのだろうか。
    私は心に溜まっている問いを再度彼らに問いかけた。
    「ねえ、何故私はここに居て、殺されそうになるの?」
    ホルダーから拳銃を取り出し、フレームの歪みの有無を確認してから彼が答えた。
    「フィードポイント作戦中だ。
     君はニノ―チェ軍のバイパー(F16)に撃墜され緊急脱出装置で南洋へと着水した。
     その後敵に救助され酷い尋問を1週間にわたり受け続けた…」
    私がうつろながらも覚えている記憶、
    私の黒髪をその手で掴み、弱っていくのをニヤつきながら見ていたあの男の事だ。
    罵声を浴びせられ続けた気がする。
    思い出しただけで心の底からどす黒いモノが浮かび上がってきた。
    私は少し張り詰めた声で問いかけを続ける。
    「貴方達は、誰?」
    「我々は君を敵から救う為に編成された救助チーム。
     私はこの最高のチームを率いるフォーリー軍曹だ」
    フォーリー…彼は初めて自分の名を明かした。
    「じゃあ、フォーリー軍曹、私は敵に殺されそうになったのね」
    「若干だが違う。
     敵は、敵に捕まった君からとある情報を聞き出そうとした。
     そしてそれに成功した。
     でも我々が突入し証拠を君以外の全て消した。
     だから敵は生きた証人である君を奪い返そうと追ってきたのが正解だ」
    「そう…私にはわからないわ」
    「…にしても君は回復が早いな」
    すると彼は微笑しながら言った。
    「私も尋問を受けた事があったが、2週間は他人と口を利けなかったぞ。
     さすがは空軍パイロットだ」
    「パイロット…?」
    「言っただろう?
     君は帝政ヴィンテールの戦闘機乗りだ。
     空の事とか覚えていないか?」
    空……
    私は入口の方を向き、そこから差し込む星明かりを眺める。
    月明かりがないからこそ、星達がどこまでも黒い夜空を彩り、踊りだす。
    綺麗な光だ。
  • 90 丁 id:hn6GFYg/

    2011-10-28(金) 20:23:58 [削除依頼]



    (戦おう…)


    「!?」
    「どうした?」
    唐突だった。
    誰なのか分からない。
    でも、懐かしいと感じられた声が私の脳裏をよぎった。
    「いえ、なんでもありません」
    「そうか。
     一応打撲傷しか外傷はないが、もしかしたら…」

    『ロミオ、こちらタンゴ』

    フォーリーの胸に提げられている無線機に無線が入った。
    彼は無線機を取ると、スピーカーを口に寄せる。
    「タンゴ、こちらロミオ、送れ」
    彼は既に2名の隊員を選抜し、入口から200メートルの場所に偵察させていた。
    ロミオとはその偵察グループのコールサインだ。
    『こちらタンゴ、敵の追撃部隊を確認』
    偵察からの敵発見の報告、瞬時に隊員達に緊張が走った。
    それぞれがライフルを構え、ヘルメットに暗視ゴーグルを装着する。
    銃口はまだ地面に向けられたままだ。
    『数は5、おそらく先程一戦交えた小隊です。
     敵は射程内、指示を請う、送れ』
    「こちらロミオ、敵の損傷は少なかったかあるいは増援と合流したかだ。
     やりすごせるのであればそっとしておこう。
     あまり位置を教えたくない。
     様子に変化があったら報告を頼む、オーバー」
    無線機を元の位置に戻すと、彼は口元に真っ直ぐに伸ばした人差し指を寄せ、
    静かにというジェスチャーをする。
    そして私の目の前に右手を差し出してきた。
    私はその手を握り、支えにとして立ち上がったら鍾乳洞の奥へと身を隠す為に誘導される。
  • 91 丁 id:hn6GFYg/

    2011-10-28(金) 20:29:29 [削除依頼]
    『ロミオ、こちらタンゴ。
     目標アルファが洞窟を発見した模様。
     突入態勢に入っています、オーバー』

    敵は分隊規模で音もなく侵入してきた。
    ライトは点けていない為、おそらく暗視ゴーグルを装備している。
    私達は鍾乳洞の奥で敵を迎え撃つ為息を潜め続ける。

    一定の緩やかなリズムで水の滴る音が壁に幾度も反響する。
    地上の光の追従を許さないこの静寂な地下世界に、泥と砂を踏む足音が聞こえてきた。
    こちらにゆっくりと、殺気を発しながら…。
    今、1人がこちらに気付かずに横を通り過ぎて行った。
    …次も……そのまた次。
    銃と布が擦れ合う音が耳元のそばで鳴っている。
    私は口を手で覆いかぶせ、息の音を聞かれないようにする。
    …次の瞬間だ。
    フッという空を切る音が後ろの空間から発せられる。
    そして液体が辺り一面に飛び散った音がすると、私の左頬にも生温かい何かが付いた。
    頬についた液体を指で絡み取る。
  • 92 丁 id:hn6GFYg/

    2011-10-28(金) 20:33:40 [削除依頼]
    敵はまだ何もしてこない。
    いや…我々への恐怖で動けない。
    床に倒れ、どんどんと温感がなくなっていく味方の身体を見ているだろう。
    この冷えた洞窟は我々の殺傷範囲だ。
    前方50センチ、上10センチ先から震え、脅える敵の息が聞こえている。
    俺は握っているナイフの切っ先を大きく敵の目の前まで背後から回し、
    喉元を狙い突き刺した。
    気付いた時は既に遅く、空気が喉元からヒューヒューと出入りする。
    敵はろくに最後の抵抗もできず、俺の方へ倒れ掛る。
    …20秒後、他の仲間が同様に敵の掃討をしていくのを音で確認すると
    ペンライトのスイッチを入れた。


    濡れた服の袖を掴み、私はうずくまり震えている。
    ライトの光が点いたと同時に手が紅い鮮血で染まっていた。
    同時に衝撃が走り、嗚咽が止まらない。
    背筋が冷たくなり、誰に向けられたのか分からない憎悪や、心を空ける虚しさ、
    それに高揚感までもがどうしても胸の奥底からこみ上げてくる。
    わからない。
    私は何なのか?
    ここは一体どこなのか?
    どうしてこうなっているのか?
    わからない。
    「すまないがもう少し我慢してくれ。
     あと1つ、山を越えれば味方が待っている手筈だ。
     さあ…戻ろう」
    フォーリー軍曹はそう言ってグローブをはずすと、私の右手を握りしめた。
    じんわりと伝わるその暖かさが手の震えを和らげる。
    私はただ、その光にすがり寄るしか他になかった。
  • 93 丁 id:hn6GFYg/

    2011-10-28(金) 20:51:04 [削除依頼]
    〜ここで一言〜

     何かもうつっぱしって書いてます。
    そんなこんなでとうとう空戦主体に!!
    スカイレーダーからホーネットまでと戦闘機の時代は
    まじでバラバラですが、一体どうなるのやら。

     最後に、ここ間違っているよというご指摘があらばどうぞ
    教えてやってください。
    初めて書く空戦では色々と問題大ありで……

    これかもガンバリマス!
  • 94 丁 id:hn6GFYg/

    2011-10-28(金) 21:00:40 [削除依頼]



    2年後……


    コックピットの外には訓練空域を峰で切り裂くようにそびえ立つ白い山脈と凍てついて透明度をさらに増した大空が見渡す限りに広がる。
    雲1つ無いこの蒼空で、Su-27の2機がその翼を悠々と広げて飛翔している。
    機首から尾翼へと流れるような流線形。
    迷彩のセルビアンブルーとスカイブルーはこの空によく溶け込んでいて、
    ノーズコーンが太陽光を反射して白く輝く。
    『こちらグレイス、後方9000フィート攻撃位置に着いた』
    無線から僚機であるグレイスから準備完了の報告が届いた。
    この空中戦訓練は防御態勢を整えた機体の後方9000フィートに攻撃態勢の戦闘機を置く「9K」と呼ばれるものだ。
    地上で訓練を監視する要撃管制官の合図と共に、訓練は開始される。
    『戦闘開始!』
    まずは左手で握り締めているスロットルを押し出し、出力を上げ、操縦桿を引き、機体の旋回半径が最少になるコーナー速度でブレイクターンを行った。
    操作パネルの左下にあるG加速度メーターの赤い針が瞬く間にはね上がり、最高値、7Gを指し示す。
    腹に力を込め、対G呼吸を行う。
    グレイスの機体を視認する為にひねった首に遠心力が重くのしかかり、すぐに痛くなった。
    私は赤外線誘導ミサイルへの予防策として赤外線欺瞞に使われるフレアを放出する。
    『グレイス、FOX2!!』
    すぐさま空対空赤外線誘導ミサイルR-73「アーチャ―」をシュミレート上で発射してきた。
    私は出力を落とし、機体をひねりながらフレアの放出を続ける。
    10発程、閃光に包まれながら空に軌跡を残しながらフレアが落ちていくのが風防上のバックミラーで見て取れた。
    おそらく発射されたミサイルは間違った目標を追撃していると思われる。
    『フレイア、ミサイルをかわしたぞ!
     敵機は8時方向、300mに接近している』
    300m以内でミサイルを発射すると爆風で自機もやられる可能性がある為、たとえ短射程ミサイルでも発射許可は出ず、グレイスは機関砲で狩るしか方法がない。
  • 95 103回目のベイルアウト id:omY0rFt0

    2011-10-29(土) 20:38:21 [削除依頼]
    首をひねりグレイスの機体を視認すると、身体の姿勢をそのままに、フルアフターバーナーで操縦桿を軽く押し高度を下げつつ水平方向に旋回を開始する。
    グレイス機は接近している為、相対速度が速い。
    よって速度で旋回半径に差をつけ旋回戦に持ち込めば良いが、そうはいかない。
    グレイスがハイGヨーヨー機動を行い、見事にこちらの旋回半径内に詰めてきたのだ。
    高度を上げ、速度を落とし、旋回半径を縮めてくる。
    『グレイス、ガンだ、ガン!』
    目視距離は機関砲とミサイルの五分五分な位置だ。
    勘でフレアを散布しつつ、ラダーを蹴りながら切り返して機体を反転させる。
    ミサイルを抱えた翼がしなり、両機の翼端が雲を引き合う。
    アフターバーナ―の炎を噴き上げるグレイス機の銃口が向けられた。
    再度機体を切り返し、ロールを素早く行い空気との摩擦で減速させグレイス機のオーバーシュートを誘う。
    一瞬に距離が縮まるものの、グレイスはロールをせずに推力を落として負けじと急激に減速してくる。
    しかしそれは位置・速度エネルギーを失う事となる。
    思わず口元が綻んだ。
    私の機体はフルアフターバーナ―のまま、機首を引き上げ垂直方向の旋回へと移る。
    グレイスも意地で機首を引き上げるが、エネルギー不足でどうなるか…
    「グレイスに失速警告!」
    『わかってるわよ!』
    グレイス機の失速警告音が声と共に無線から聞こえてくる。
    バックミラーには旋回を諦め、下降するSu-27のシルエットが雪山と重なった。
    攻守が逆転したのだ。
  • 96 103回目のベイルアウト id:omY0rFt0

    2011-10-29(土) 20:38:49 [削除依頼]
    『フレイア、目標は2時方向1000m、高度3500m!』
    機体を加速させ、グレイス機の後方に占位する。
    彼女は引き起こしを続け、アスペクト(角度)をきつくしようとするので
    私は一歩下がり、ラグ追跡で一気に後ろに回り込んだ。
    次にSu-27の格闘戦の火器管制モードの1つである、「バーティカル・スキャンモード」を選択する。
    するとHUD中央部に幅がある縦線2本が表示された。
    その縦線の間にグレイス機の機影をおさめると、瞬時にミサイルのシーカーと連動している
    赤外線追尾センサーがエンジンの赤外線をロックオンする。
    『フレイアがロックオン!』
    そしてリサールコーン(致命的円錐)内に入ったのを確認すると要撃管制官に発射コールを言い放つ。
    「フレイア、FOX2!!」
    それを聞いたグレイス機はバレルロール機動を行いながらフレアを放射状に散布を続ける。
    フレアは幾筋もの白い軌跡を残しながら重力に従って落ちていき、数秒後……
    『フレイア、グッドキル!!』
    要撃管制官は一際甲高い声でグレイスに撃墜判定を突きつけた。
    私もマイクスイッチを切ってからガッツポーズを取る。
    「うっしゃ!」
    するとシュミレート上で撃墜されたグレイス機は機動をやめると、水平飛行に移った。
    『こちらイーグル、訓練は終了だ。
     編隊飛行に戻り基地に帰還せよ』
    「ウィルコ(了解した、実行する)」
    私は大人しくなったグレイス機へと後方から接近する。
    そして9時方向にグレイスの肩を落とした姿を見ると、翼を上下に振りながら少しばかりからかう。
    「我二続ケ」
  • 97 103回目のベイルアウト id:sKfKfvE0

    2011-11-03(木) 22:14:41 [削除依頼]
    なあ〜にが『我二続ケ』よ!
     こっちは国籍不明の領空侵犯機じゃないんだから!!」
    「うるっさいわね!
     編隊長について来ない方が悪いんでしょう!」
    「ついて来ないからってあんな通告の仕方ってある!?
     無線で言いなさいよ!」
    「無線機のふ・ちょ・う!」
    「耳抜きの忘れで聞こえなかっただけよ!
     いいから謝りなさい!」
    「そっちこそ編隊を乱しておいて!」
    「報告書に書いてやる!」
    「書かせるものですか!」
    アレイ基地ランプ、ヘルメットの跡が頬に残る私とグレイスは火花を散らせながらブリーフィングルームへと足を進めている…。
    いつものように。
  • 98 103回目のベイルアウト id:sKfKfvE0

    2011-11-03(木) 22:15:06 [削除依頼]
    「以上…デブリーフィングを終える」
    目の前に、今回の訓練を分析し、色々と問い詰めた厳つい教官の一言で訓練は終わった。
    「起立!……礼!」
    頭を下げ、教官が立ち去るまでそのままの姿勢でいる。
    「ああ、それとだな」
    教官は突然立ち止まり、私達の方に顔を向けた。
    「ランプ上で口喧嘩をした様だな」
    「「こいつの責任です」」
    「……2人で外周を2周してこい。
     遅い奴に担当域の便所掃除を命ずる」
    「「了解!」」
    最後に敬礼を交わし、教官は足早に部屋から去って行った…。
  • 99 丁[103回目の(ry] id:sKfKfvE0

    2011-11-03(木) 22:16:14 [削除依頼]
    ヴィンテール空軍第24教育飛行団本拠地でもあるアレイ基地は常に航空学生でごったがえしている。
    広い領土を持つ帝政ヴィンテールは慢性的なパイロットの人材不足に悩まされている。
    機体アビオニクスを誰でも使いやすいようにしたりと教育に掛る手間と時間を省いてきたが、
    まだ時間は掛るとの見通しだ。
    この教育飛行団の航空学生において女性の比率は40人中の5%…私とグレイスの2人しかいない。
    男性に比べ女性は体重が軽い為、Gに強い…はずだが、未だに空は野郎のものだ。
    戦闘機に乗る度胸なんてないと言われた事があるが、
    対等に見てくれる人なんてほとんどいないと学んでいるのでお構いなし。
    教官達も私達の訓練方法を手探りで考え出している状態だ。
  • 100 丁[103回目の(ry] id:K1pFAxH0

    2011-11-11(金) 20:30:57 [削除依頼]
    午後4時過ぎ、冬の太陽が傾き山脈を虹色に映し出す空を背景に、複座のMig-29の2機編隊が
    編隊を保ったまま滑走路に飛び込みフレア(機首上げ)をかけ、後輪を接地した。
    ジェット・エンジン音が急激に低くなりながら周囲に響く。
    私とグレイスは教官に言われた通りに基地の周辺を廻る環状道路を走っている。
    姿勢を正しく同じテンポで足を前へ前へと押し出す。
    あのエンジン音が消えると、鳥の鳴き声と2人の足音だけが聞こえてきた。
    影の黒さがより深くなる。
    「今晩か明日には雪か雨が降るわね」
    突如、並んで走っているグレイスがこう切り出してきた。
    「何故そう思うの?」
    「鳥が低く飛んでいる」
    そう言われて基地の西側に広がる防風林の方へ目を向けると、確かに鳥が木々のぎりぎりの高さを飛んでいる。
    「餌になる虫の羽が湿気を吸って餌が高く飛べないからよ」
    「…そうなんだ」
    私は足を止めずに空返事で答えた。
  • 101 丁[103回目の(ry] id:K1pFAxH0

    2011-11-11(金) 20:31:21 [削除依頼]
    そしてまた同じように鳥が戯れる鳴き声と足音だけの時間が訪れる。
    何か…何か喋らないといけない気がしてくる。
    でも何について喋るか?
    教官への愚痴、食事に対する不満…
    色々ある中で、私は一番気にしている事を話すと決めた。
    まだ息は荒くない。
    「ねぇグレイス…自分の過去の記憶がないなんt」
    私の言葉を遮ってジェット・エンジン音が高く響きわたり、輸送機が頭上を通過する。
    「えっ?
     今なんて!?」
    「もういい……」
    そのまま基地直上を飛び抜けていったあの輸送機の後ろ姿を睨みつけた。
    しばらくして、視線をそのまま基地へと下す。
    一歩離れた所からフェンス越しで基地を見ると、何か閉鎖的なコンクリート壁と捉えてしまう。
    あまり心地良い場所ではないし、生きている実感が湧かない。
    フォーリー軍曹に会う前からの記憶が思い出せないからだ。
    私は戦闘機パイロットをしていたと言うが…
    すると、こちらをじろじろと見てくる野郎3人が視界に入った。
    まあ無理もないか…。
  • 102 丁[103回目の(ry] id:K1pFAxH0

    2011-11-11(金) 20:44:02 [削除依頼]
    「おい、フレイア!
     お前らまた居残り訓練か?」
    ちくしょう、フェンス越しだがあいつらに絡まれた。
    「るっさい、さっさと部屋に戻れ」
    「東部のどこぞの尼が空戦ってか?!
     笑わせるなよ」
    私は立ち止り、あいつらへと身体を向いた。
  • 103 丁[103回目の(ry] id:K1pFAxH0

    2011-11-11(金) 20:45:00 [削除依頼]
    「てめえらのさっきの魂胆見え見えだからな。
     容赦しないよ。
     ていうか一世代古い考えだっつうの!」
    「なっ、黙れ!
     お前らみ.たいな奴が戦闘機乗りの誇りに泥を塗る!」
    「埃まみれのすっとこどっこい!」
    「いい度胸じゃねえか、黒女」
    ガルルルル……

    「はいはい、そるじゃまたね」
    グレイスが私の奥襟を引き千切る握力で引っ張っり身体ごと引きづッた。
    ずずずずずと土埃を上げて奴らから遠ざかっていく。
    「良い様だ、黒女!」
    「グレイス放して!
     あいつらとは決着をつけないと……」
    「あと500mで2周目が終わるけど。
     私が先にゴールして、あなたが便所掃除するのならどうぞ」
    「……はい、すみません」
    まだ笑っているあの3人を尻目に、またさきほどと同じように走り始める。
    太陽はもう沈みかけで、東の空には既に星が輝いていた。
    これから夜間戦闘訓練に備えて複数の戦闘機がランプ上に留めらている。
    基地の照明も灯された。
    影が幾重にも重なり、次々と後ろへ消えては前から現れていく。
    ゴールの正門まで残り100m……あっ、そうだ。
    「ねえ、グレイス」
    「何?」
    「同着なら勝ち負けなんて存在しないよね?」

    「不可能」

    直後、笑顔でラストスパートを掛けられた事は言うまでもない。
  • 104 丁[103回目の(ry] id:K1pFAxH0

    2011-11-11(金) 20:47:29 [削除依頼]


    「ざまあないわね」

    私は半ばやけくそでオレンジ色のトレイにハッシュドポテトを次々と皿に盛る。
    「まったく、お人好しね」
    盛り付ける速度が段々とハイペースになっていく。
    隣でグレイスは好かした顔で食事係の兵士に飲み物の注文する。
    「あっ、水でお願い!
     …それよりもあんた、そんなに食えるの?」
    私の皿に盛りつけられ、ただのジャガイモの塊と化したハッシュドポテトを覗きこんできたので
    カップを彼女の額めがけて突き立てた。
    「あんたの心無い行動のおかげで晩飯前にトイレ掃除をやらされたんだから…
     私の代わりにこれ、食べてね?」
    グレイスのトレイに塊を乗せた皿を滑り込ませる。
    「ちょっ、ふざけんじゃないわよ…」
    「大人しく食・べ・な・さ・い…」
    両者一歩も譲らず押し問答が続くが、それに痺れを切らした炊飯兵が私の肩を軽く叩いてきた。
    「飲み物は何にするんだ、東洋人?」
    「えっ、何って……グレイス?!」
    私の隙を見るや否や、グレイスは皿を押し戻し席へと小走りに行ってしまう。
    「うそ……」
    見れば、塊のハッシュドポテト、そしてその残骸がトレイに散在している。
    「で、飲み物は何にするんだい?」
    「オレンジジュース……」
    グレイスの鼻歌が食堂にいる学生達のざわめきで消えていく……
  • 105 丁[103回目の(ry] id:.I17Oxn1

    2011-11-18(金) 21:05:57 [削除依頼]
    オレンジジュースでポテトを胃に流し込み、何とか食べ続けられている。
    悠々と食事を済まし、からかってくるグレイスの空皿になんとかポテトを移そうとするが、
    なかなかうまくいかない。
    『リディア=リトヴァク二等空兵、至.急面会室まで来られたし』
    「へっ?」
    突如壁に掛けられているスピーカーから呑気なチャイムが鳴り、私の招集を告げた。
    「あら、またあの人じゃない」
    「またか……」
    するとグレイスが身を乗り出し、私の鼻先をつついてきた。
    「ねえねえ、いつできるの?」
    !!!
    「るっさい!」
    勢いよく立ち上がり、席から離れる。
    背後でグレイスの抑え気味の笑い声が聞こえてきた。
    …あれ?そういえば……
    「ハッシュドポテトの残り、食べてね〜」
    「いいわよ〜って、ちょっ!」
    そそくさとグレイスとハッシュドポテトを食堂に後にした。
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