-白と黒の協奏曲- (リレー小説)20コメント

1 夜の ツキ id:cpibErf1

2011-08-01(月) 17:31:38 [削除依頼]

 武力衝突が絶えない緊迫した状態である二つの種族――天使と悪魔。
 争いは争いを生み出し、憎しみや悲しみしか残らない。
 戦場へと足を踏み入れては逝ってしまう仲間達。
 嗚呼、終わりは訪れないのだろうか――……。


 リレー小説、始まります。
 メンバーは既に決まっており、追加募集等はしていません。
 少しでも興味がある方は是非読んでみてください。
  • 2 シュナイダー@やったるぜ! id:1qGHdTA0

    2011-08-02(火) 17:18:39 [削除依頼]
    「ルナ……」
     天使の住む天界、悪魔が蔓延る魔界。その中間に位置する冥界は天使や悪魔が死に、行き着く先としての場所として知られている。
    群青と深紅が入り混じった空の下に広がる荒野を見渡す一人の悪魔がいた。胸部と腰部、腕と足に漆黒の鎧を装備し、銀白色の長髪に白めの肌、紅い瞳、そして天使と同じ翼を持つ悪魔――ルシフェル。
     彼女は一枚の純白の羽を手にし、何かを悲しんでいる様子でいた。
    「ルシフェル、どうした?」
    「ジャンキス……?」
     彼女に声を掛けてきたのは白髪の青年悪魔――ジャンキス。黒色の鎧に外套を纏った彼は何気ない様子で彼女に近づいた。
    「何でもないわ……」
    「そうか。なら良いが……」
     ジャンキスはルシフェルが素直に答えないことにもどかしさを感じてはいたが、顔には出さずにすぐに話を切り替えた。
    「ルシフェル。俺たちの目的を忘れてはいないな?」
    「……本当にここにいる霊たちを“奴ら”の支配から解放するの?」
    「ああ、それが俺たちの大義だ」
    「…………」
     ルシフェルは黙り込み、荒野の先へと見やった。彼女の視線の先には気高く佇む冥界の門があった。この門を越えた先には冥界の支配者たる冥王、そして多くの行くべき道を失った霊体が彷徨っている。
    「……ジャンキス」
    「何だ?」
    「抵抗する奴は斬っていいの?」
     ルシフェルは紅い瞳の奥に多大なる殺意と狂気を潜めていた。ジャンキスは多少それに威圧されたが、気を乱すことなく、
    「お前が判断するんだ」
    と、言うだけだった。
     だが、それで十分だった。ルシフェルは羽を懐に隠し、代わりに右手に巨大な長柄の鎌を手にしていた。
    「あたしは……あたしのためだけに戦う……」
    そう言い残し、その場から飛び去った。
    「ルシフェル……」
     ジャンキスは彼女に哀れみの目を向けながら突っ立っていた。そこに、二人の悪魔がジャンキスを探して現れた。
  • 3 hina id:vFEVEYD1

    2011-08-03(水) 23:01:25 [削除依頼]
    「あ、いたいた。ジャンキスー」

     黒髪で緑色の瞳を持ち、褐色の肌をした小柄な悪魔――グリスは、翼を片側しか持っていないという特異な背中を見とめると、この場にそぐわぬ快活な声で彼の名を呼んだ。
     ジャンキスの背には片翼しか残っていない。しかしその不均衡さは庇護欲をかきたてるようなものでは決してなく、むしろ思わずひれ伏したくなるような荘厳な雰囲気を演出している。凛としたもの、気高く美しいもの好きなグリスは、その異質な容姿に今日も見とれた。が、それも一瞬の楽しみ。
     ジャンキスの近くまで来ると、グリスは言った。

    「ねえ、僕のお酒知らない?奮発して戸棚の奥の奥から持ってきた、とっておきの葡萄酒なんだけど。いつのまにかどっかに消えちゃってて、ちょっと今ブルーなんだよね」
    「……お前ってやつは。この大事な時に、酔っ払うつもりか」
    「違う違う。戦の前に一杯やっておかないと、こう、何ていうか気分が盛り上がらないんだよ」

     グリスは大酒飲みである。戦の前にまず一杯、戦が終わってからは盛大に祝杯、というのが彼お決まりのパターンだった。
     しかし外見はそれとは裏腹に、華奢で小柄で童顔で、声も男にしてはいささか高めなのでやけに子供っぽい。ほとんどの悪魔が鎧を着ている中で、黒の長ズボンに同じく黒のタンクトップというグリスの軽装は、逆に目立っていた。
     武器もいったいどこに隠し持っているというのか、確認できる金属といえば左耳に光る銀色のピアスくらいである。

    「あー。でもそろそろ時間か」

     グリスは視線を、ジャンキスから別の方へと移す。
     荒野の先に佇む冥界の門。あの先には、数多の霊体、怨念が渦巻いている。混沌の世界。楽しいだろうなぁ。想像しただけで不気味な微笑が浮かぶ。

    「仕方ない。お酒は諦めよう。ま、これが終わったらぱぁーっとやればいいさ。ね、ルイ?」

     そう言ってグリスは振り返り、やや距離を置いて立っているもう一人の悪魔に笑いかけた。
  • 4 遙 id:vWantgI/

    2011-08-06(土) 12:10:06 [削除依頼]
     もう一人の悪魔――ルイは急に話を振られ、銀色の瞳に戸惑いの色を浮かべる。

    「そう、ですね……」
     
     その返事は実にたどたどしく、悪魔の中でも上位に立つ「指揮官」に分類される人物だとは実に思えない。外見も華奢であり、まだ十を過ぎた少年にしか見えなかった。

    「ごめんごめん、そんな申し訳なさそうな顔しないでよ」
     
     隣で快活に笑みを零すグリスに、彼は更に眉をひそめた。少し長めの黒髪が、申し訳なさそうに風に揺れる。
     そんな二人のやり取りをジャンキスは微笑ましげに眺めているのだが――ルシフェルは未だ彼らとは一言も言葉を交わさず、ただただ外を見つめるだけであった。ルイは彼女が戦にかける思いを知っているが、その必要以上に他人に対して干渉しない性格ゆえまだ理解は出来ずにいた。おそらく、この状況でルシフェルの緊張を言葉でほぐせるのは、ジャンキスしかいないとルイは思う。実際にルイとグリスが来る前に二人きりだったのだ。そのような話をしていたのであろうと安易に想像がついた。
     グリスとジャンキスが酒の飲み方についてしばし怒鳴ったり怒鳴られたりしている間、ルイは自然とルシフェルを見つめていた。虚空を眺める彼女の瞳には緊張と覚悟と――ルイの知らない何かが宿っていた。
     彼は彼女の目線を追ってみる。そこには冥土の門がその存在感を放っていた。あの門を見るとルイは体の中から普段感じない熱いものがこみ上げてくる。表面上は何も変わらない無表情だとしても、心の中では興奮しきってしまうのだ。
     ――これも、ぼくら悪魔の運命なのかもしれませんね。
     この感情を抱いているのは自分以外ではない、と彼は直感する。やはり悪魔という物体は、永遠にあの方――魔王に支配されるものなのだろう。
     ふとルシフェルが振り返り、ルイと目が合う。彼は気まずい何かを感じ、それは相手も同じようで、また彼女は視線を外へ移した。何か言いたげな横顔だったが、ルイは見なかったことにした。
  • 5 シュナイダー@やったるぜ! id:aoAUjst/

    2011-08-06(土) 17:35:13 [削除依頼]
     冥界の門にはたった一人の番人が腕組みをして堂々と構えている。青き髪の筋肉質の男――ケルベロス。冥王の忠実な部下である。
     そんな彼の前に天使の翼を持った女が現れた。長柄の鎌を手にしながら。

    「む、ここに何用だ!?」
    「…………」

     沈黙を保つ相手にケルベロスは只ならぬ殺気を感じた。

    「て、天使か!?いや……」

     天使なのか、悪魔のなのかも分からない相手に戸惑っていた。だからといって、追い払っては冥王の大事な客であった時に困ることになる。そのために相手を見定めようと必死だった。
     だが、そんなケルベロスに体を貫くような言葉が放たれた。

    「どけ……」

     その瞬間、ケルベロスは客でも何でもない、侵略者という判断ができた。

    「ま、まさか!?おのれっ!!!」

     ケルベロスはすぐに姿を変え、四足の巨大な番犬となった。だが、変身した時には四肢を全て切断されていた。その相手が鎌で、すれ違い様に斬り捨てていた。

    「ぐぎゃああぁぁっーーー!!!」

     断末魔が響く中、相手は恐ろしい眼差しで地に蠢くケルベロスに言ってきた。

    「邪魔する奴は……容赦しない……」
    「!?」

     ケルベロスに大鎌が振り下ろされ、彼の肉体を無惨にも真っ二つに切り裂いた。
     すると、彼女の背後から多数の武装した悪魔達が現れた――ジャンキス、グリス、ルイの率いる悪魔の精鋭部隊が。

    「よくやった、ルシフェル……」
    「…………」

     ジャンキスの言葉に反応することなく、ルシフェルは巨大な門の前に立っていた。そして、いきなり鎌から黒紫色のオーラを出し始めた。

    「……こんなもの……いらないっ!!!」

     ルシフェルは鎌を勢いよく振るい、鎌から真空の刃を放った。その刃は門に命中するや否や、大爆発を起こして尽く粉砕した。その門の先には一大事にたじろぐ霊、冥界の兵士達が恐怖に苛まれていた。
     そして、ルシフェルは有無を言わさずに中へと突入していった。ジャンキス達は彼女の大胆さに唖然としつつも、すぐに得物を手にした。

    「ルシフェルに続け……俺たちの戦いを始めるぞ!」

     ジャンキスは長剣を抜き、門の中へと乗り込んでいくのだった。

     ルシフェルは霊達には目もくれず、立ちはだかる兵士を次々に斬り刻んでいった。斬って、斬って、冥王の居場所を探していた。
     冥界にある冥府は宮殿のような仕様で、中は非常に複雑に入り組んでいる。その中には何百人もの冥王を護衛する兵士達が存在していた。

    「て、敵襲だーー!!!」

     兵士達が必死に叫ぶが、その声は瞬く間に悲鳴と悲痛な呻きにかき消されていく。ルシフェルに出会うこと自体が死を意味していた。

    「冥王は……どこにいるの……?」

     ルシフェルは死骸の山とした冥府の一角で、足を切断した一人の兵士の頭を踏みつけて尋問していた。

    「し、しら……た、たすけっ……」

     無用と見なしたルシフェルは慈悲も見せずに兵士の頭をそのまま踏み潰した。

    「下らない……奴らと変わらないっ……!!」

     一方、冥王はまさかの事態に部下のヘレナと共にいた。赤の装束を纏う冥王は兵士達の悲鳴に怯えるヘレナを包み込むようにして抱き、励ましていた。

    「大丈夫、安心しなさい。そなたには手を出させぬ」
    「で、でもっ!!」

     そんな二人の部屋の強固な扉の向こうから、生々しい斬撃音と兵士の叫びが聞こえた。ヘレナは冥王にしがみ付いた。
     さらに、その扉を何度も攻撃して破壊しようとする者がいるのも分かった。扉がミシミシと音を立てて揺れていた。

    「仕方があるまい……。そなたが天界へ赴き、天使達に助けを請うのだ」
    「そ、そんな!?」
    「そなたしか頼れぬ。ケルベロスは死んだ。そなたしかいないのだ」

    冥王はヘレナを引き離すと、彼女の足元に魔方陣を召喚した。彼女を天界へ転送しようとしていた。
  • 6 シュナイダー@やったるぜ! id:aoAUjst/

    2011-08-06(土) 17:43:22 [削除依頼]
     「冥王様!!」
     「そなたに全てを託す。行くのだ、ヘレナ!!」
     「冥王様ぁっーーー!!!」

     ヘレナの姿は一瞬にして消えた。それと同時に扉が吹き飛ばされた。そこにはたった一人の悪魔が立っていた。

    「見つけた……」
    「そ、そなたは……!?」

     冥王がそう驚く前に、首元に鎌の刃が突きつけれていた。そして、その持ち主の紅い瞳の眼光に威圧されて。

    「降伏しろ……さもないと、斬る……」
    「な、何故だ!?そなたは……」

     だが、刃が立てられ、さらに睨み付けれた。

    「あたしは昔のあたしとは違う……」

     その言葉を聞いた途端、冥王の目に入った――扉の方に大勢の悪魔が控えているのを。
     冥王は完全に冥界を制圧されたことを悟った……。
  • 7 男 id:vk-O1i64V9.

    2011-08-07(日) 10:13:49 [削除依頼]
    辛い事や、悲しい事があった時。そんな時は、紅い雲の海に漂う夕陽を見る。遠い空の彼方へ、真紅に燃える太陽が沈みゆく様子を眺めながら、薄れゆく桃色の光の隙間に、幾重もの星の瞬きを認めた時、今日の自分と別れた後は、また明日の自分に出会う為、帰るべき場所へと、再び歩み出す。

    「ん……」

    薄いカーテンの隙間から、真っ白な光の束が漏れる。視界を覆う真っ黒な世界を、その真っ白な光が染める時、白昼夢はやがてその形を失い、代わりに今の自分を取り巻く現実が、意識の目覚めと共に露わとなる。

    「ここは……」

    それは、今日の自分との、出会いの証でもある。穏やかな風が、大きな純白の翼を小さく揺り動かし、黒くしなやかな髪を、その風が優しく撫でる時、ああ、自分は生きているのだと、そう、実感を得る。

    「……」

    しかし、その実感も、確かな証拠が伴わなければ、それはやがて、大きな不安となって、自らを押し潰そうとする。

    「私は……」

    ベッドから起き上がった彼女は、目の前の大きなカーテンを開き、バルコニーに出た。どこまでも広がる緑色の大地と、地平線の彼方に向かって広がる、青々とした大空を瞳に写した時、彼女はそれが、自分の住む世界の姿なのだと理解した。

    「そうだ。ここは……天界。そして、ここは、天宮……」

    彼女は思い出した。そう、ここは、彼女に与えられた部屋。天宮という、この世界の全てを司る王が座する宮殿の、天兵を務める天使たちにのみ与えられる、小さな一室。そして眼前にあるのは、その天宮だけが佇む、広大な、王の為の領地。

    「ああ、そうか。私は、私の名前は、ガランドウ……」

    しかし、それが彼女の得た真実の全てであった。幾ら頭の中にかかる霧を振り払おうにも、一向に彼女の求める答は見えて来ない。
    そうして、彼女は悟った。自分は今、記憶を喪失しているのだと。

    「……」

    このままではいけない。何とかしなければ。しかし、そう思いつつも、本来の自分を失った今の彼女では、何をどうすればいいのか、一向に解決の糸口は見出だせない。

    「王……最高神……そうだ、最高神に会えば……」

    にわかに閃いた王の存在に、少しばかり、彼女は安堵した。どうやら、完全に記憶を棄て去ったわけではなさそうである。最高神。この宮殿の王にして、この天界そのものと崇められる神。簡単に会えるはずもないだろうが、このまま何も行動しないよりかは、余程ましかもしれない。

    「……行こう」

    部屋に向かって振り返り、彼女は自室を出ようと、一歩を踏み出した。とその時だった。突然、下界から、強烈な突風が、彼女に向かって吹きつけた。

    「な、何……?」

    激しく巻き上げられる髪を咄嗟に押さえながら、彼女が再び外界を向く。その瞬間、今度は彼女の目の前を、何か大きな影のようなものが飛び去った。

    「あれは……天使?」

    草花を空中に舞い上げ、粉々にひきちぎっては、青空をまるで貫くようにして飛んで行く謎の影。もしあれが天使だとしたら、それは天宮の領内に迷い込んだはぐれ天使に他ならない。早朝の時間、天兵も含め、天宮にいる天使たちが外へ出ることはないはずだった。

    「……そうだ」

    不意に、彼女は思いついた。そうだ、あの影のことを口実にしよう。はぐれ天使であれ何であれ、影のことは最高神に報告すべきであろう。
    彼女は自室に戻ると、そのまま真っ直ぐ扉を開き、部屋の外へと出た。
  • 8 祈祷 彗月@ツキ id:wT5EHO50

    2011-08-08(月) 13:05:48 [削除依頼]
     底が見えるほど透明な水をした小さな泉。
     銀の短髪を風に揺らしながら碧眼の天使――エレイはその泉へと大量の花びらを撒いていた。
     この泉は周りが草木に囲まれており、仲間たちに見つかる確率はきわめて低い。
     そのためエレイにとってはお気に入りの場所であった。

     「とりゃっ!」

     両手を高くあげ、気が済むまで花びらを泉へと落とす。
     あらかじめ準備しておいた花びらを全て入れ終わるとその泉へと自分の素足を慎重に入れる。
     つま先から水の冷たさが伝わってくる。
     じゃぶじゃぶと水しぶきをあげて楽しんでいると頭上を何かが飛んで言ったような気がした。

     「ん?なんだろ……」

     一旦手を止め、上を見上げる。見れば天使らしき者が空を飛んでいるではないか。
     口を半開きにしたまま見つめるエレイ。
     
     (なんだろ?こんな早朝から天宮抜け出すような天使っていたかな……?)

     心当たりがないエレイは顎に手を当て考える。
     自分でも自覚はあるのだ。こんな朝っぱらから遊んでいる天使なんて少数だと。
     そう考えるとあの謎の天使に興味が出てきた。何処へ行くのだろうか。一体誰なのだろうか。
     好奇心がふつふつと湧き上ったエレイは追いかけてみることにした。
  • 9 百鬼夜行 id:kgYJ0FN0

    2011-08-13(土) 16:44:55 [削除依頼]
    彼は規格の中に収められるのを酷く嫌った。
    天使は常に模範でなければならないと言う。だから、彼はその規格から外れることを選んだ。

    彼の部屋は狭く、天井まで乱雑に積まれた本や散らかる衣服のせいで薄暗い。唯一の空間は彼の居る窓辺とドア付近だけと言っても過言ではない。そのドアの近くには使いこまれた形跡はあるものの埃を被った刀と以前はドアに付けられていたであろう"ダルフ"というこの部屋の持ち主の名が刻まれたネームプレートが無造作に散らばっていた。
    そんな部屋にある窓から入る光で新聞を読んでいた彼は小さく


    「チッ」


    と舌打ちをした。キセルを咥えながらのその行動はとても器用であった。
    彼はキセルを口から離し、遠心力だけで灰皿に灰を落とすと、灰皿の側にコトリと丁寧にキセルを置いた。そして、持っていた新聞を手に取り彼は迷うことなく縦半分に新聞を切り裂いた。
    破って二つになった紙片を重ね、再び破り、四つになった紙片をまた重ね破り……そうすることで粉々になった紙片を部屋の中に乱雑に投げ捨てる。投げられた紙片は粉雪の様にハラハラと舞いながら積まれた本の上に鎮座し。ゴミとなった。


    「てめぇの言ってることと悪魔のやってることなんざ大して変わりゃしねぇじゃねぇか」


    クソが。
    と最後に吐き捨てようとしたが、紙片相手に怒鳴り散らしても虚しいだけだと気づき、黙って己の黒髪をかきあげる。
    新聞には、天界と敵対している悪魔どもを一人残らず殲滅すべきだと言う過激な煽り文句が書かれていた。そういう文を見る度に彼は文句を言わずには居られないたちであった。

    その時、彼は自分の部屋に有る、ある物の変化に目を止めた。
    一輪の花が咲く小さな植木鉢である。
    昔の友人がくれたもので、この部屋で唯一瑞々しいものでもあった。
    そこに咲く花が彼の目の前で朝顔からリンゴの花へと変わっていったのだ。
    しかし、彼は驚くことなく積み上げられた本から一冊の本を探し出しめくる。
    それは花図鑑であった。
    この植木鉢をくれた友人が一緒にくれたのである。
    彼はそこから朝顔とリンゴのページを探し出し、そして些か目を見開いた。

    その植木鉢は咲く花の花言葉によって今の現状を伝えると言う特殊なものであった。
    なぜ友人がこんな物を己にくれたのかは分らなかったが、助かっていることに変わりはないのでこの植木鉢だけは綺麗に飾り、水やりも欠かしたことはなかった。
    その植木鉢の花が変わったということは、これから何かが起きると言うことに間違いない。
    どうせいつものようにピンク色の小さな花を付けたデルフィニウムが咲いてエレイが来ることを知らせるのかと思えば、咲いたのはリンゴの花。
    彼は花はわりかし好きだが、花言葉は正直よくわからない。だから図鑑をめくる必要があったのだ。
    そして、リンゴの花の指す花言葉は。


    「選択? 何を選択するってぇんだ?」


    朝顔は平静。ピンクのデルフィニウムは移り気と言った具合にいつも咲く花言葉の意味はわかりやすい。
    だが、今回は違った。
    選択といっても何と何を選択するのかすらわからない。
    それとも。
    そろそろ己の持病のことについて選択する時期が来たとこの花は言いたいのだろうか。
    最近はいくらか咳もなくていい調子かと思っていたが、もしかしてそれは嵐の前の静けさだったのだろうか。
    などと彼が考えていた時だった。

    窓の外を黒い影が横切った。
    彼は驚いて窓辺に近寄り、外を見る。それは天使の様な形をしていた。
    そしてそれは最高神の住居である天宮へと向かって行く。敵かと思い服の中にある短剣を握り締めるが、それを飛ばす魔力の大きさに断念する。
    同時に彼は悟った。選択の意味を。
    彼は迷うことなく己の家を飛び出し、天宮へ向かった。
    埃を被った刀に視線を向けることはなかった。
  • 10 \_ヘ(ω`●){みきてぃん☆卒業生! id:xI9B.0p1

    2011-08-13(土) 16:50:50 [削除依頼]



    ツキ?w
  • 11 祈祷 彗月@ツキ id:r1M9Uk..

    2011-08-28(日) 18:21:01 [削除依頼]
     好奇心だけで悠々と飛びながらエレイが向かうのは“神の間”。
     例えるなら天宮の心臓部であり、最高神がいる場所。
     断定は出来ないが先程の傷ついた天使ももしかしたらそこにいるのではないのか。
     上手く風の流れにのり、満面の笑みで翼を羽ばたかせる。

     「よっ……と」

     適当に天宮へと入り込むと神の間へと走り出す。
     煌びやかで白をベースにした天宮の床を裸足で駆け出した。
     角をいくつか曲がると除々に大きな門と、見回りの天使が見えてきた。
     エレイに気づいたドアの両サイドの天使は持っている長槍を合わせ、門の前で×印を作った。
     仕方なく一度止まったエレイは仏教面で両方の天使へと言葉をかけた。

     「どいて、さっき目の前を天使が飛んでったからっ」

     適当に事情を話し、クロスされた長槍を手で突っついた。
     だが天使は顔を見合わせただけだ。
     困り顔なのが分り、眉を八の字に寄せるエレイ。
     
     「ねぇ、開けてよ。天使のこと殿下に伝えなきゃ」

     焦りが混じってきたエレイの声音。もしかしたら開けてくれないのではないだろうか。
     エレイの中に疑問が生まれる。
     今にも天使に掴みかかりそうなことに気づいた片方の天使は口を開いた。

     「それは傷ついた天使のことで?」

     天使の言葉に目を見開いた。もうここまで情報が廻ってきているのか。
     長槍に込めた力を緩めるエレイ。
  • 12 祈祷 彗月@ツキ id:r1M9Uk..

    2011-08-28(日) 18:37:50 [削除依頼]
     その様子に安心した両天使は合わせた長槍を戻そうと動かした。
     すると、その瞬間にエレイは長槍を押し退け門を開ける。
     天使はいきなりのことに驚き、動きが一歩遅れた。
     勢いよく神の間へと踏み込んだエレイは後ろを見ることなく駆け出す。
     もちろん、最高神に会うためだ。

     「殿下っ、先程天使がっ……」

     知っていようが知ってまいがそんなことエレイには関係ない。
     会えればいいのだ、最高神に。
     だがエレイの言葉は途中で途切れた。
     確かに、先程の天使のことは知っているらしく、正面に堂々と、凛々しく座る最高神の前には一人の天使がいた。
     エレイが驚いたのは他の天使。
     まったく予想もしていなかった、自分が一番だと思っていたのだがどうやら違ったらしい。
     横にはガランドウとダルフが立っている。
     二人ともエレイの登場に少々驚いているらしい。表情から読み取れた。
     
     そして視線を見知らぬ天使へと落す。
     何か悲しいことがあったのかすすり泣いているような声。
     いきなり登場したエレイに声をかけないのは今の状況からエレイも察することができた。
     まだ少し距離があるため声は聞こえない。
     最高神は口を閉ざし、怒気を含んだような空気を纏っている。
     エレイは先程のように走るのではなく、ゆっくり歩きながら前へと進む。

     「……そうか、悪魔によって冥界は制圧されたのか」

     やがて重々しく、怒りのこもった声で最高神は言った。
     最高神の声が、言葉の意味を理解したエレイは無意識に足を止めた。
     そしてこれから先、どうなるかを想像し、その場の全員は小さく唾を飲み込んだのだった。
  • 13 ミラ☆(*´・ω・`*) id:ez-TUnPJoP/

    2011-08-28(日) 19:39:08 [削除依頼]
    突然ごめんなさい!
    あの、この小説って、夜の ツキsが決めた
    メンバーしかリレーしたらいけないの?
  • 14 シュナイダー id:gAbBl/F/

    2011-08-28(日) 21:23:15 [削除依頼]
    「しかし、奴らの行為は我らとの約定を破ったのと同じ……。早急に対処すべきかと……」

     ガランドウは厳かに、そして堂々と最高神へ告げた。その場にいた天使たちも否定することなく、ゆっくりと頷いた。エレイもすぐに合わせた――現状がただ事ではない、と自分に言い聞かせながら。

    「争いは避けられぬ……か」

     最高神は少々、残念がるように呟いた。だが、ダルフが進言する。

    「奴らがやったことは俺たちへの宣戦布告じゃねぇか!!!何を迷う必要があるんすか!?先手を打たねぇと俺たちまで冥界の二の舞だ!!!」

     彼は声を張り上げ、主張した。確かに、彼の言い分は道理がかなっており、否定する者はいなかった。

    「ふむ、致し方ない……。すぐに部隊を編成し、冥界へ送ろう――そして、魔王に勧告をし――」

     最高神は決断を下し、指示を出した。だが、同時に天井が轟音と共に粉砕され、多くの瓦礫が天使たちに降り注いだ。

    「な、何だ!?」
    「危ない!!!」

     ガランドウはすぐさま結界を繰り出し、最高神への被害を抑えた。ダルフは何とか回避していたが、エレイはまさかの出来事に足がすくんでいた。

    「な、なんなの……!?」

     すると、巻き起こる粉塵の中から女性の声が聞こえてきた――冷たく、鋭い、怒りの混じった声で……。

    「お前たちは昔と全然変わってない……あたしはそんなお前たちが許せない……許せないっ!!!」

     突如、粉塵の内側から円状に漆黒の衝撃波が放たれた。咄嗟にガランドウとダルフは防御し、エレイは物陰に隠れたが、その場にいた他の天使たちはあっという間に消されてしまった。
     そして、明らかになったその姿――天使の翼を持った悪魔。それはダルフの脳裏に呼び起こすものがあった。

    「ま、まさか……る、ルシフェル!?」
    「天使のすべて、あたしが叩き斬ってやるっ!!!」

     ダルフの言葉を聴かず、ルシフェルは大鎌をもってしてダルフ、ガランドウ、そして最高神へと狂気に満ちた紅い瞳を見せて襲いかかった。
  • 15 祈祷 彗月@クラウン M629 id:mTZ9VQx0

    2011-08-30(火) 11:58:05 [削除依頼]
    >13  決めたというよりは一度メンバー募.集を致しまして^^;  ですが全て決まってしまい、始まっているので追加募集はしておりません。  また機会がったときでもお願いします。  
  • 16 シュナイダー id:9aPHmHh1

    2011-08-30(火) 17:55:57 [削除依頼]
    「ちっ!!!」

     ダルフは刀を抜いた。あまりにも久しぶりすぎるその刃は未だに輝きを失ってはいなかった。一瞬だけ、自分の顔が刃に映った――何かに動揺しているような、情けない素顔が。
     そして、その刀を以てして、ルシフェルの鎌を受け止めた。凄まじい音と衝撃が神の間全体に響き渡る。

    「ガランドウ!!!早く、逃げろ!!!」

     ダルフは声を荒げ、ガランドウに叫んだ。彼女は特に気止めすることなく、最高神と共に姿を消した。

    「待てぇっ!!!逃げるなっ!!!あたしが斬ってやる!!!斬ってやるのよっ!!!」
    「うるせぇっ!!!てめぇの相手は俺だ!!!」

     不思議だった。戦いの場から身を引いていたのにこれほど好戦的になっているのが、自分でも分からなかった。だが、それは建前に過ぎない。目の前の、悪魔に堕ちた者に対する罪悪感が心の奥底にはあった。

     しかし、そんな彼の心情なぞ、ルシフェルには関係なかった。縦横無尽に鎌を振るい、ダルフを壁際まで追い詰めていく。

    「邪魔をする奴は容赦しないっ!!!消えろっ!!!消えろぉっ!!!」

     一撃、一撃が重すぎた――単なる力だけではない、彼女の心の内の“闇”がさらに圧し掛かっていた。
     その様に、ダルフは恐怖をも感じるようになった。何が起きているのか、という判断も付かなくなっていった。

    「はっ!?」

     刀が弾かれた。空中でクルクルと回転しながら、彼の手から離れていってしまった。そして、ルシフェルの大鎌が牙を剥く。

    「しねぇっ!!!」
    「だめぇーー!!!」

     ――ドンッ!
     ルシフェルが横に突き飛ばされた。ダルフが目にしたのは血相を変えたエレイ――親友ではあったが、この神の間にいたことに今更になって気が付いた。

    「え、エレイ!?何で、お前が!?」
    「そんなことより、早く逃げなきゃ!!!早く!!!」

     エレイはダルフの手を取り、急いで逃げ出そうとした。だが、ルシフェルは唸りを上げ、漆黒のオーラを放った。

    「お前たちから消してやるっ……!!!」

     先ほどとは違い、全身に黒の装甲が追加され、顔も黒の兜に覆われていた。しかし、紅い瞳だけは煌々と、殺気を放ちながら二人を捉えていた。
  • 17 hina id:zchWum60

    2011-08-31(水) 14:53:58 [削除依頼]
     ――神の間で壮絶な戦いが繰り広げられていたその頃。
     神の間の外、天界のいたるところでも、非情な攻防戦が勃発していた。
     三叉槍を手に突如なだれ込んできた悪魔たちに、天使の大半は満足な応戦ができずにいた。何せ天使と悪魔は長年対立してきたとはいえ、最近では目立った争いもなく平穏な日々が続いていたのである。いつもどおりの静かな朝を破った、悪魔側の奇襲。天界は大混乱に陥り、美しい景観はあっという間に変貌を遂げた。

    「うわー、すごい眺め」

     天界の入口付近で事の成り行きを見守っていたグリスは呟いた。空中であぐらをかいているという、この場にそぐわぬ緊張感の無さである。グリスは指揮官なので、下っ端の悪魔に命令を下せば自らが戦いに赴く必要はないのだが、それにしてもリラックスしすぎている。これでは配下の者たちの信頼が得られないのではないか。隣でルイが、注意すべきかどうか迷ってそわそわしていた。そんなルイの様子には気づかないふりをしつつ、グリスは眼下の景色を見やる。
     すでに瀕死の状態にある天使がちらほら見える。しかし彼らを襲ったのはグリスたちの手下ではなく、ほとんどがルシフェルである。彼女は指揮官にも関わらず、天界奇襲の先頭に立って嵐のように神の間まで飛んでいってしまった。
     ルシフェル……。グリスは先の、大鎌を手に突撃していく彼女の姿を思い起こした。殺気に満ちた紅い瞳、狂気に歪む端正な顔、容赦も無駄もない一撃の数々。

    「美しい女には狂乱が似合うっていうのは、本当だよね」
    「……え?」
    「ルシフェルだよ。すごいよねー、彼女。僕らの部隊、いらなかったんじゃない?」
    「……はあ。まあ、確かにすごいですけど」
    「でもちょっと天界ぶち壊すの早すぎ。僕としては綺麗な天界も見ておきたかったのに、僕が来たころにはすでに惨劇の後だもの」

     グリスはさも残念そうに肩を落とした。
     今は、逃げ惑う天使もたまに見かける程度で、大方の天使が何とか悪魔の大群を蹴散らそうと奮闘していた。ぶつかりあっているのは下っ端同士、戦力はほぼ互角のようである。
     膠着状態に入る前に撤退したいな、とグリスは思ったが、こればかりは魔王の命令待ちである。第一、ルシフェルが帰ってこなければ引き上げられない。
     そのとき、奇襲の結果を見守る2人の背後から、3人の天使が不意打ちを狙って長剣を手に現れた。

    「戦において指揮官を狙うのは最も効果的な作戦。――悪魔め、覚悟っ!」
  • 18 遙 id:KfMPMvD1

    2011-08-31(水) 15:50:49 [削除依頼]
     風を切り裂く音が二人の耳を掠める。それは天使達にとって本気の攻撃であり、むしろ普段より磨きのかかった剣捌きであったが――黒い翼を持った二人は、実に滑らかな動きで攻撃をかわした。ルイはいつもの無表情なのだが、グリスとなってはまるで攻撃されたのを喜んでいるかのように笑っている。

    「綺麗な天界を眺めるのもまた良いものだけど、やっぱりここに来たら戦いたくなるんだよねッ!」

    「な……!」一人の天使が何かを悟ったように後ずさる。しかし、グリスはその隙を見逃さなかった。素早い動きで短剣を取り出し、慌てて剣を振り続ける天使の脇へ滑り込む。

    「駄目だよ。こんな弱っちい君たちが三人やってきたところで、僕たちに到底叶うはずもないのに」
     
     冷えた笑みを死に土産に、グリスは短剣で何の抵抗も無く天使の心臓を抉った。倒れ落ちていく天使の名を、二人の天使は必死に呼びかける。だが、グリスの一撃は致命的なものであった。

    「き、貴様らァ!」
     
     天使たちはグリス、ルイに対する憎しみの色を露にする。しかし二人の表情が変わることはない。
    「この穢れた悪魔めが!」残りの天使が、剣を持たないルイへと剣を振りかざす。幼い見た目もあってか、こいつなら倒せると思ったのだろう。
     しかしながら、ルイも立派な指揮官の一人である。天使の下っ端二人を相手に、早々死ぬ事はまず無い。長剣の剣戟を潜り抜け、その間に腰から数本短剣を取り出す。その様子を、グリスはまるで殺し合いではなくただの遊びを見守っているような表情で見つめていた。
    「思い上がるのも大概に……して下さい」そう言い捨て、ルイは二本の短剣で同時に天使の首をかき切った。こちらも致命傷だったらしく、二人の天使は飛ぶための力を失い落ちていった。ふう、とルイはため息をつく。彼の背後では、グリスがお疲れ様、と拍手をしている。
    「それにしてもさ」まるで先ほどの襲撃が無かったかのように、グリスはルイの隣で再びあぐらをかいた。

    「ルシフェルって凄いけど、僕は色んな面で心配なんだよなぁ」
     
     そうですね、とルイは小さく頷いた。
  • 19 シュナイダー@ココ・カーラ id:mITh5Wb/

    2011-09-02(金) 18:02:36 [削除依頼]
    「逃がさないっ!!!」

     ルシフェルの攻撃は激しさを増すばかり――ダルフもエレイも逃げること自体が困難であった。神の間は元型を留めないほど破壊しつくされ、空が見えていた。
     物陰に隠れては衝撃波が襲い、回避し、また走る。
     ルシフェルは坦々と歩いているだけなのに、二人は必死であった。それほど、彼女は殺意を剥き出しにしていた。
     すると、走る抜けた先に巨大な門があった――神の間の出入り口であった。

    「出口だ!!!走れ!!!」

     ダルフは九死に一生を得た気分でエレイをリードしつつ、彼女の手を引っ張って駆け込んだ。門番の姿はなく、門は半開き状態になったおり、外の光が差し込んでいた。

    「あ、あと少し!!!」
    「――っぐ!!」

     突如、ダルフは急に咳き込み、その場に崩れた。

    「だ、ダルフ!?」
    「クソっ!!!こんな時に――かはっ!!!」

     鮮血を吐き出しながら悶えていた――病がこの期に及んで彼の足止めをしてしまった。

    「しっかりしてよっ!!!あと少し――」

     エレイがダルフを支えながら立ち上がろうした途端、門が木っ端微塵に吹き飛ばされた。

    「アハ、ハハハハ!!!見つけた……逃がしはしないわっ……!!!」

     明らかにルシフェルは変貌していた。体中から邪悪なオーラが漏れ出し、大鎌二本を両手に手にし、彼らのすぐ目の前にまで迫っていた。その姿は悪魔そのものだった。

    「ひっ!!!」

     エレイは思わず硬直してしまった。逃げたいのに、逃げれない――。

    「お前たち天使はあたしに何をした……?すべてをあたしから奪ったじゃない!!!だから……だから、お前たちから全て奪い尽くしてやるのよっ!!!」
    「っ!?」
    「きゃああっーー!!!!!」

     二本の大鎌が左右から彼らを食いちぎろうと振り下ろされた。ダルフとエレイはどうしようもなく、互いを握り締めて終わりを悟った。

     ――しかし、痛みはなかった。もとい、何の攻撃も受けなかったようだった。
     夢か?違う――確かに“ここ”にいる。五体満足でうずくまっていた。

    「ジャンキス!?」

     ルシフェルの驚きの声が聞こえた。恐る恐る二人は顔を上げた。そこには白髪の悪魔――翼は片方しかない、黒コートを纏った青年悪魔が長剣を突き出して鎌を止めていた。

    「ルシフェル、落ち着けっ!!!」
    「どけっ!!!お前には関係ないっ!!!」

     だが、ジャンキスは長剣を駆使し、ルシフェルをダルフたちから引き離すように弾いた。

    「ルシフェル!お前は奇襲の目的を忘れたのか!?最高神への襲撃のはずだ!!私情に駆られて用もない者を襲ってる場合じゃないんだぞ!?」
    「うるさいっ!!!お前にあたしの何が分かるのよ!!!どけ……そこをどけぇっ!!!」

     ルシフェルはさらにオーラを強め、両鎌を振り回してジャンキスへ迫った。
     しかし、彼は軽々とそれを弾き、手薄になった彼女の腹部へと強烈な拳を入れた。

    「うがっ!!!」

     すると、ルシフェルは急に力尽き、その場に倒れた――先ほどまで身に纏っていた黒の鎧は消えていた。

    「世話の焼ける奴だ……」

     ジャンキスはため息を吐きながら、ルシフェルをサッと肩に担いだ。

    「勘違いするな……」

     彼は呆然とする二人にそう言い残し、ルシフェルと共に姿を消した。
  • 20 祈祷 彗月 id:j.a8s6X.

    2011-09-13(火) 18:42:18 [削除依頼]

     二人が消えた後も二人は動けないまま硬直した。
     お互いに顔を見合わせ、生きているのだと実感したりも。

     「ダルフ……怪我大丈夫?」

     震える声で労わるように問うエレイ。
     少し顔が青いが、心配ないとでもい言うかのように微笑んだダルフ。

     「最高神様は逃げたはず。宮殿の様子も気になる」

     言うなり立ち上がったダルフ。
     覚束ない足取りで救援として向かうつもりなのだろうか。
     先程のような騒がしさは消えたことから悪魔達はほとんどいなくなったはず。
     だが100%言い切れるわけではない。

     「ダルフ、今は休んで。私が天宮を見て廻るから。その体じゃ無理だよ」

     体のことを言われ顔を顰めたダルフ。
     エレイは立ち上がると逆にダルフを地べたへと座らせた。
     出来ることならエレイの手を振り払ってでも行きたいが確かに思うように体が動かない。
     ダルフは小さく毒つきながらも大人しく座り込む。
     その様子を見届けたエレイは丸腰で天宮へと羽を羽ばたかせていった。
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