補習36コメント

1 name id:iIcvduK1

2011-07-27(水) 20:00:19 [削除依頼]
さて、ただ今の日付は8月1日。時刻は朝の7時。まだ、蝉は鳴いてないけど鳴き始めると僕は多分泣きたくなるに違いない。
 僕は高校生だ。そしてちなみに言うと僕は部活をやっている訳でもない。要するに帰宅部だ。帰るだけのシンプルかつ自由度の高い部活に所属している。
 
 えー、なら。夏休み、部活もしてねえ高校生がこんな朝早くからどこへ行くんだい。
 ちなみに、僕は虫を獲る趣味なんてない。朝早くから、ミヤマだのヒラタだのを狙って山に登りに行くガキのような真似はしない。
 
 えー、なら。夏休み、虫取りの趣味もなく、部活もしてねえ暇人がどこへ行くんだい。
 ちなみに、僕は今日の予定なんて物を考えてはいない、海に行くだとか、旅に出るだとか。夏を楽しむ事は一切考えてない。出来れば僕は、うるさい目覚まし時計を我が拳骨で叩き潰してやりたかった。
 
 僕は、玄関から外へ出た。まだ少し涼しい。朝なので車の音もあまり聞こえない。世界の空気が一新したような雰囲気。清々しい朝だ。
 
 なんて、補習を受けに、今から学校へ行く僕が思うはずもない。
  • 17 name id:0w7JCBE1

    2011-07-31(日) 10:02:35 [削除依頼]
    気まずいラインが壊れてからは幸か不幸か、時は少し早く動いた。僕は意識を山田君から、席に着いて教科書を眺めている長田さんへと変えていた。
     自慢じゃないけど、僕は多分何時間だって長田さんを眺めていられる。この時間がずっと続けばいいのに。
     だが、やはりそうはいかないのが世の常なのである。やはり時は動き、人も動く。
     教室の扉ががらっと音を立てて、開いてしまった。そこから教室へ入ってきたのは仲間ではなく敵だった。

    「おはよう」
     教室へ入ってきたのは補習の期間中ずっとお世話になる数学の先生だった。頭の勢力図ではハゲ地帯断然有利な先生である。

    「おはようございまーす」

     僕の元気のない声で返事をした。敵に対してはこんなもんだ。
     先生は靴を鳴らしながら、教卓の上に立った。それは、戦争開始の合図であり、僕を地獄へと突き落とす合図なのであった。

    「えー。どうも。これから五日間。よろしく。まあ大変だと思いますけど頑張って付いてきてください」

     大変だと思うなら来なくていいじゃないか。僕は教卓の上の先生を見やる。

    「はい、じゃあさっそくやっていきたいと思います。えーまずは因数分解の公式を確認してみましょうか」

     先生は、バッと構えチョークを手に取り黒板へ数式を書いていく。
  • 18 name id:0w7JCBE1

    2011-07-31(日) 10:33:45 [削除依頼]
     ずらずらっと白い文字で書かれていく数式。まずい、この時点で眠たくなってきた。
     思えば、あの白い文字はどうにも眠りを誘ってるような気がする。なぜ黒板という物を学校は採用しそこへ白い文字を書くことを義務づけたのだろうか。例えばホワイトボードを使用し、そこへ黒と赤を書き込むのなら僕は多分寝ることはないだろう。
     そうだ、僕の成績が悪いのはおそらく、ではなく確実にチョークが白いせいだ。僕は頭が悪い訳じゃない。

    「はい、じゃあこれ。どうやって分解できるか。うーんとじゃあ長田さん。どうぞ」

     敵は、長田さんへと攻撃を仕掛ける。頑張れ長田さん。僕は彼女の後ろ姿へ声援を送る。

    「えーと、(A+B)(A-B) です」

     長田さんは先生の攻撃をさらりと受け流し、しかもその攻撃を跳ね返してまで見せた。
     いや、これくらいどうとでもない問題なのかもしれないが、彼女がやると人類がかかえてきた難問をあっさり解いたというようにさえ見える。

    「はい、そうですね。じゃあ次。これはどうかな。坂上くん」

     坂上って誰だ。
     一瞬僕は戸惑った。というより僕は完全に長田さんに見とれていたのである。
     坂上とは僕の名字だった。そう、それに気づくまで少し時間がかかってしまった。

     「坂上くん」
     「あ、ああ。はい、なんでしょう」
     「なんでしょうじゃないでしょう。これ。どうですか」

     どうですか、と言われましても。AやらBやらがただずらずらと並んでいる様にしか見えない。これを如何にするかなど、人間に必要なのだろうか。
  • 19 name id:0w7JCBE1

    2011-07-31(日) 10:49:11 [削除依頼]
     僕は、この世の真理を考え始めていた。人間はなぜ数式を使い始めたのか。論理的思考とは一体どういう事なのか。
     そんな事を考え始めればキリがないことも分かっている。しかし、どうにも僕はこう言うときは黙って考え込む癖があるようだ。
     しかし、これは端から見ればただのボーッとしている人だろう。

    「坂上くん? 聞いてますか?」
    「ああ、はい。聞いてます聞いてます」
    「じゃあ。これ。どうですか」

     先生は僕へ再び攻撃を仕掛けてくる。
     どうですか、と言われましても――――
     人間に必要なのだろうか。

    「……分かりません」

     僕は、仕方なく敵へ降参の合図を送った。
     先生は、一瞬ため息をついた。おそらく誰も気がつかなかっただろうが真っ正面に座る僕にははっきりと聞こえた。

    「えー、大事なのでね。これは是非覚えておいてね」

     先生はそう言って、黒板へ数式を書く。

    「こうです。分かりましたか?」

     僕は頷いた。仕方なくだが。
     
  • 20 name id:0w7JCBE1

    2011-07-31(日) 11:10:20 [削除依頼]
     仕方なく頷いたのを見て、先生は次の数式を書き始める。
     僕は、なんとも惨めな気分になった。そういえば、いつもなら間違えた途端に笑いを起こす僕の友達がいるのだが、今日はいないんだ。
     僕が、間違えても教室には僕と先生と長田さんしかいないので誰も僕を笑ってはくれない。
     ああ、そうだ。いつもは厄介であるあの嘲笑も今になって大事さが分かる。なくしてから気づく物の大事さ……か。

    「はい。次はこれ。山田君どうぞ」

     先生は後ろの方へ声を届ける。ああ、そうだ山田君もいたのか。僕は今になって思い出した。と、そこで僕は嫌な想像を始めてしまった。
     そうだ、ここで山田君がこの問題を正解してしまえば、長田さんの中で、彼の株は明らかに上がるのではないだろうか。いや、上がると言うよりは僕の株と山田君との株とでは絶大な差が開くのではなかろうか。
     僕は、首だけを曲げて後ろを確認する。何かの妖怪みたいな格好になっていることには気にもかけず山田君へ念を送った。山田君、どうか答えないでくれ。

    「(A+B)の二乗」

     僕の願いはむなしく、山田君はあっさりと、しかも冷静な顔で攻撃を返した。もしかしたら間違ってるかも、と思ったけどその可能性もむなしく消えた。

    「はい。そうですね。えーまあこの3つの分解パターンさえ覚えておけば、大抵の問題は解けるわけです。とりえあず、基礎が出来ていないと応用も始まりません。1を知らなければ10を知ることも出来ませんね。私は決して1を知ってから10を考えろ、とは言いません。基礎。基礎をしっかり固めて、1から順に数えていきましょう」

     なんだか、それは僕に対する嫌味にも聞こえるような気がしないでもない。
     先生は、嫌味ったらしい言葉を終えると、長田さん、僕、山田君の順番でプリントを歩いて手渡しで与えていく。
     僕はプリントを眺める。1から50数式がプリントに所狭しと並んでいる。まさか、これを全て解けという無理難題を先生は押しつけてくるのか。

    「えー、では。まずこのプリントの問題を解いていってください。これは基本ですからね。えーと50分間集中して解いていってください。分からないところがあれば遠慮せず。どうぞ」

     押しつけてきた。
  • 21 name id:0w7JCBE1

    2011-07-31(日) 20:14:38 [削除依頼]
     僕は、プリントをじっと見つめる。アルファベットや、数字が一杯に詰め込まれている。それで、やはり催眠にかけられたように僕は眠りにつく。はなっから問題を解く気などなく、眠りながら過ごし、後で先生の説明を聞いて答えを写そうという魂胆なのだ。
     だけど、今日に限ってはそうもいかなかった。なぜうまくいかないのか。その理由として、このクラスに生徒は3人だけで、例えば僕が寝たとすると嫌でも先生にたたき起こされるからだ。いつもなら、大勢の生徒がプリントに向かって必死になっていて、僕が寝ていたとしても起こしてくる先生は珍しい。

    「坂上くん。起きて。どこかわからない所があるの?」

     全部。そう思った僕だが、さすがにそれを口に出来る度胸はない。とりあえず、黙って鉛筆を持ち取り掛かるふりをした。先生は多分知っていると思う。僕が問題に取り掛かる気が無いことを。
     だけれど、先生は僕の横を通り過ぎまた教卓の位置に戻った。

     時は、永遠に感じられる。永遠の時間があるなら、この目の前の50問など余裕で乗り越えられるはずなのだが、僕ははなから乗り切るつもりなんて無い。永遠の時間を楽しむ訳でもないし、永遠の時間を精一杯生きることもしない。
     僕はただ、ボーッと窓の外に移る木々達を見つめていた。
  • 22 name id:0w7JCBE1

    2011-07-31(日) 20:31:43 [削除依頼]
    「えーと30番の問題は、ちょっと応用がかかっています」

     先生が、プリントに書かれた問題の説明をしている。僕は半ば放心状態で、先生が板書していくのをただ写していく。
     とりあえず、文字だけ写していくという感じで、僕は必死に鉛筆をプリントの上で走らせた。やはり、何事にも必死になれば他のことは忘れるようだ。すっかり時間の事を忘れていた。

     キーンコーンカーンコーン

     あの、聞き慣れた音が教室に、学校全体に響き渡る。生徒の数が少ないからその鐘の音は、なんとなく寂しいように思える。
     けど、僕にとっては待ちに待った音だと言うことは間違いない。僕は、うんと背伸びをする。目立つな、とは思ったがそんなことはどうでもいい。まずは補習一日目午前中の部終わり。昼休みを挟んで、午後の部。これを5回繰り返せば、僕の夏休みだ。

    「はい。とりあえず午前中はここまで。午後もよろしくお願いします」

     先生は、はげた頭をこちらに下げる。そして先生は、足早に教室を立ち去っていった。
     敵の戦場退却。僕は、開放感に包まれた。

     さあ、楽しい昼飯の時間だ。
  • 23 name id:0w7JCBE1

    2011-07-31(日) 21:38:49 [削除依頼]
     僕は、バッグの中をゴソゴソと探る。夏休みだというのに僕の親が作ってくれた愛情一杯のお弁当。なんだか、とても特別で輝いているように見える。
     どしっと、風呂敷と愛に包まれた弁当を机に置く。ここで、僕は重大なことに気がついた。

     誰とご飯を食べようか。

     そうだ、僕のいつものメンバーはここにいない。この3人だけの空間。例えば僕が長田さんを誘って、二人で食べる。いや、無理だ。僕なんかが誘える訳がない。ならば山田君を誘って、男二人のランチタイムか。だけれど僕の左斜め後ろにはまた、気まずいラインが発生しているような気がする。
     結果、僕は教室のど真ん中で一人弁当の包みを開こうとした。と、その瞬間、それはもう太陽の様な声が教室に響いた。声の主は長田さんだった。彼女は何か魔法でも使えるのでは、と思ったほどにその声はひどく明るかった。

    「ねえ。せっかくだから3人で食べましょう」

     長田さんは、僕の隣の机を動かすと、僕の机に横向きでくっつけた。そうして、教室の隅の山田君を手で招く。山田君は、既に弁当の蓋を開けていたが、無言で長田さんに従った。山田君も自らの席を立ち、僕の左隣の席を動かして、僕の机にくっつけた。
     ちょうど僕をはさんで、山田君と長田さんが向かい合う形。これで、補習トリオ、ランチフィールドが完成したのである。
     僕は、右に長田さん、左に山田君がいるという状況に緊張した。しかし、新鮮さも合ってか、楽しい感じもする。二人は食事の際一体どんなトークを繰り広げるのか。僕の友達は大抵、漫画とかの浮世じみた話ばっかりだけど、この二人はどうなのか。
     僕は、期待を込めて「いただきます」と合唱する。二人もそれに続いた。
  • 24 name id:foRIa5X/

    2011-08-01(月) 17:19:44 [削除依頼]
    2人とも最初は黙って箸を動かすだけだった。いや、というより"僕の横にいる二人は元来食事中喋らない生き方"をしているのかもしれない。
    僕は、横目で優雅にランチを口へ運ぶ長田さんを見た。例えば、僕がここで長田さんに不躾にも喋りかけたとしよう。もしかしたら長田さんは「食事中に喋る男なんて最低です。私やっぱ明日から一人。いや。山田君と食べることにします」なんて事を言ってくるかもしれない。
     でも、確か。長田さんは親しい女子とランチを嗜む最中、お喋りをしていたような気がしないでもない。ここはやはり何か話題を提供してみるべきだ。

    「ねえ。期末の数学のテスト。何点だった?」

     僕は、一旦箸を置き二人に問いを投げかけてみた。しかし、箸を置いた瞬間「この質問はあまりにも失礼な事なのではないか」と僕は思った。
     案の定、二人は固まって僕を見ている。
     あれ、どうしようか。と、僕は思った。いつもの友達と喋る感覚で言ったのがまずかったのだろうか。
     ―――と、とりあえず何とかして解凍する方法を見つけなければ。いや、まずはそうだな。「名を聞く奴から名乗れ」とよく言われるように訊ねた奴から答えておけばいいんだ。

    「あ、僕はですね。その……12点。でした」

     僕は、自分のあまりにも悲惨で笑えない点数を持ち出してみた。この点数は少々引かれる具合の点数かもしれない。0点なら笑いをとれるだろうが、12点の場合もしかしたら二人の内、誰かがこの点数を下回っているかもしれない。もしそうなった場合、この食事の場は永遠に凍り付くこととなるだろう。
     だけど、大丈夫だったようだ。僕の右隣。つまりは長田さんが、箸を置き、口に手を当て吹き出さないように我慢をしている。

    「……ぷっ。あは。あははは。あはははははは!」

     長田さんは、口に合った物を全て飲み込んでから、腹を抱えて笑い始めた。僕は呆気にとられた。これは本当に僕のイメージだったのだが、彼女の笑い方はもっと優雅で華麗なイメージだった。極端に言えば、フランスの王宮。舞踏会の席で「おほほほほほ」なんていう笑いを彼女はするかと思っていたのだ。
  • 25 name id:foRIa5X/

    2011-08-01(月) 17:36:25 [削除依頼]
     僕は、爆笑している長田さんをずっと見つめていた。どうやら、相当ツボに入ったようで僕が見詰めてる間も尚、笑いは衰えることがなかった。

    「ちょっと……いい?」

     長田さんが、腹を抱えたまま僕の方を見つめる。

    「失礼だけど……ぷっ。ああ、ごめんなさい。あの……何でその点数で私と山田君に点数を聞こうと思ったの?」
     
     えっと……
     僕は考えてみた。長田さんが笑っているのは要するに「僕の点数があまりにも低い」ということと「よくその点数で勝負を仕掛けてきたな」ということが合わさって大爆笑へとなっているのだろう。
     だけど、よく考えても理由なんて無い。ただ、何か言おうとしたら出てきただけだ。
     僕は、先ほどよりは弱いがまだ大爆笑の域を脱してない長田さんにこう答えた。

    「分かりません」

     すると、おさまりかけた火事に油が注がれたかのように長田さんは腹を押さえきれないほどの大大大爆笑を始めた。
     僕は、さらに呆然とその姿を見ていた。まるで長田さんじゃないみたいだ。いや、それでもカワイイ。爆がついていても彼女は優雅で美しい。

     結局長田さんの笑いがおさまったのは、山田君の弁当の残りが野菜炒めになった時だった。
  • 26 name id:foRIa5X/

    2011-08-01(月) 20:11:44 [削除依頼]
     やっとこさ火が消えたのか、長田さんは腹を抱える手を元の位置に戻し、ようやく僕の質問に答えた。

    「私は35点。誇れる点数じゃないけど」

     長田さんは、それでもまだどこかに火をくすぶらせている感じで答えた。誇れる点数じゃないと言っても僕の倍以上、笑われてもしょうがないな。

    「山田君は?」

     僕ではなく、長田さんが山田くんに訊ねた。彼は野菜炒めに悪戦苦闘している最中だった。嫌いなのだろうか。

    「65点」

     えっ。
     僕は驚いた。驚いたついでに、口に入れた、ウインナーをものすごい勢いで吹き出してしまった。ウインナーは長田さんの弁当箱の中に入ったがそれどころではなかった。

    「65点? それなのに補習?」

     長田さんは、驚いた様に山田君を見つめている。僕のウインナーには気づいていないのだろうか。いやいや、それどころじゃない。
     65点。余所で聞けば、微妙に感じるかもしれないこの点数は、12点や35点をとっている人にとって「神の領域」であるに等しい。ちなみに僕の記憶では今回の数学の平均点は60ちょっとだったはずだ。つまり、彼は本当に補習を受けるような人ではないと言うことが今判明したのである。

    「俺、中間。風邪で休んでたから」

     山田君は軽く言い放った。そういえば確かに山田君は中間試験の時か、それ以前からずっと休んでいた。理由は忘れたが、「不幸だな」と先生から山田君の休校を聞いたとき僕は思ったのである。

    「それってすごい理不尽」

     僕は席を、立ちそうな勢いで山田君へ言う。

    「そうかな?」
    「そうだよ!」

     僕と、長田さんは声を合わせて言った。
     そうだ、僕の約5倍の点数を持つ山田君は、ここにいてはいけないはずだ。家族旅行、里帰り、海水浴。何だってやることはあるはずなのに。しかも65点という平均かそれ以上の点をとっておいて、夏を少しながらでも奪われるのは本当に理不尽だ。
     なんて言うか、今日の朝の僕がとても恥ずかしく思えてきた。山田君は、避暑地にいるような涼しげな顔でいるけどもっと怒っていいと思う。
     山田君は、その上箸を握り、苦手であろう野菜炒めに果敢にも挑戦しようとしている。

    「野菜炒め。僕が食べようか?」

     僕は、山田君に言った。すると山田君は、頭を少しだけ下げて野菜炒めのみが入った弁当を僕に渡してきた。

    「でもさ、やっぱ理不尽だと思う」

     長田さんは、ウインナーを口に入れながらそう言った。
  • 27 name id:foRIa5X/

    2011-08-01(月) 20:23:23 [削除依頼]
    すごくどうでもいい気がするけど。

    僕は席を立ちそうな勢いで山田君に言った。

    句読点はいらなかったかなー、なんて。
  • 28 name id:foRIa5X/

    2011-08-01(月) 20:45:57 [削除依頼]
     昼休みはものすごい速さで過ぎていった。多分世界記録だろうなと思った。
     そして始まるのは補習一日目午後の部である。補習トリオのランチフィールドは解体され、皆それぞれ元の席に戻って補習を受けた。
     外では蝉がいそがしく鳴いているように、この教室でも先生や生徒がいそがしく、黒板に文字を書いたり、ノートを写したり、問題を解いていたりする。
     僕は、いそがしいと言えない感じで、外の気をぼんやりを眺めたり、長田さんの後ろ姿をじーっと見つめたり、机に突っ伏しながら過ごしていた。
     昼休みとは、段違いに遅く進む時計の針。壊れているのかと思うほどに、動きがスローモーションだ。何でこの様な差が出るのか。僕にはどうしても分からない。いや、分かっているのかもしれないけど分からないんだ。
     
  • 29 ベイス id:UK08u2.1

    2011-08-02(火) 00:30:37 [削除依頼]

    突然押しつけられるプリントとかって、全然やる気しないですよね。
    それが数学とかだと、なおさら・・・汗

    長田さん!無意識に結構すごい事してるよ!
    と言いたくなってしまいました 笑 とても面白かったです。

    私事ですが、また新しく連載を始めました。「夏の面影」というヤツです。
    野球好きの私の趣味だけで書いていく、お話となるので、面白いかどうか全く自信はありませんが・・・。
    良ければ、目を通してみてくださいね^^

    それでは、更新頑張ってください。待ってます^^
  • 30 name id:vHfmgXt0

    2011-08-02(火) 22:00:39 [削除依頼]
    長田さんのウインナーは果たして、元々あったものなのかそれとも……
    永遠の謎なのであーる
  • 31 name id:vHfmgXt0

    2011-08-02(火) 22:44:22 [削除依頼]
     僕は、永遠の時間を何とか乗り切った。午前中より遙かに永く感じた気がする。時計を見ると、あと針が一つ右に回ればチャイムが鳴る時刻になっていた。
     まあ、そういう時に限って時間が進むのはさらに遅くなる。時計は壊れたかのように針を動かしていない。先生が何かを喋っている。僕は先生が何かを言っていることは分かっても、その内容までは分からない。
     分からなくていい、ただ時よ早くすぎろ。それだけだ。

    「あいうえおかきくけこ」
     
     先生は意味不明な何かを喋っている。と、先生が喋り終わった瞬間

     キーンコーンカーンコーン

     待ちに待った、チャイムが教室に響く。つまりは補習1日目終了の合図。すなわち、僕の夏が少し近づいてきた瞬間。

    「はい、では。明日も頑張りましょう。お疲れ様でした」

     先生は、本当に疲れた様子で頭を下げる。先生が教室から出て行ったとき、廊下から、おそらく先生のものであろう大きなため息が聞こえてきた。
     僕は、チャイムの余韻が始まる前から、さっさと教科書をバッグに押し込んでいた。僕はチャイムの余韻が消えると同時にバッグを背負って教室を出て行こうとする。

    「黒板、誰が消そうか」
     
     すると長田さんが、教室を出て行こうとする僕を堰き止めるかの様に言ったのである。
     見ると、黒板は先生の板書で埋め尽くされている。「別に残しておけばいいんじゃない」と言おうと思った僕だったが、長田さんが言ったのである。

    「僕が――」

     僕は、良いところを見せようと、手を挙げた瞬間だった。いや、それ以前からか。山田君が既に黒板消しを手にしている。山田君は、素早くそして的確に黒板の文字を消している。
     まずい、後れをとった!
     僕も負けじと、黒板消しを掴み山田君とは逆のサイドから文字を消し始める。
     僕なりに丁寧に急いでいたつもりなのだが、僕と山田君の黒板消しセンスには天と地ほどの差があった。
     僕の名字
     
  • 32 name id:kFbrRjj1

    2011-08-03(水) 19:58:13 [削除依頼]
    今気づいた。 >31の最後「僕の名字」は無視で。
  • 33 name id:kFbrRjj1

    2011-08-03(水) 20:35:04 [削除依頼]
     僕の消し方が丁寧と言える方なら、山田君はおそらく丁寧のさらに上をいっている。あえて例えるなら、習字の最初の一筆みたいな丁寧さなのだ。
     山田君が丁寧にしかしさっと素早く、黒板消しを黒板にすべらせると文字は跡形もなく消える。僕の方はと言うと、すべらせるというよりはごしごしと拭う感じで黒板消しを扱う。だけれど、僕が消した後に文字はまだうっすらと残ってしまう。
     結果として、左半分。山田君が担当した方は、大理石の様に輝く黒板。右半分、僕が担当した方はうっすらと汚れの残る黒板となってしまった。当然、勝者山田君である。

    「おお。お二人とも手際がよろしいようで」

     明らかに、手際に差があったのに、長田さんは油と水の二相系になっている黒板を見てそう言った。僕は少し惨めな気分になった。男として「女に情けをかけられる」以上の屈辱などないのだ。
     僕へ情けをかけた長田さんはバッグを肩にかけ、僕と山田君に手を振りながら教室を出て行く。

    「お疲れ、さようならー」

     長田さんは、「お疲れ私の僕たち」と言うような感じの口調だった。僕自身のイメージだったのだが、長田さんは献身的に愛を捧げるタイプだと思っていたがどうやら違うようだ。まあ、僕は彼女へ献身的に愛を捧げる立場になってもいっこうに構わないけど。

     教室に二人残された僕と山田君。山田君は手についた粉を両手でパッパッと払いながら、自分の席のカバンを手に取った。そして、そのまま無言で教室を出て行こうとする。

    「ねえ。一緒に帰らない?」
     
     僕は僕自信の横を通り過ぎ、教室を出ようとする山田君へ声を掛けた。別に一緒に帰る理由なんてないと思うけど。山田君もそう思ったと思うけど。何でか声を掛けてみたくなった、掛けてみないといけないような感じがしたんだ。
     山田君は、僕の横でちょうど立ち止まり、コクリと頷いた。
     
     後で考えてみれば、僕はあの時既に山田君をライバル視していたのかもしれない。
     長田さんをとられたくない。僕は長田さんが好きだけど、山田君はどうなんだろう。仲良くなっておけば、友達になってしまえば。
     なんていう、最低な下心が無意識に僕の口へ働きかけたんだろう。
  • 34 name id:kFbrRjj1

    2011-08-03(水) 21:19:22 [削除依頼]
     窓から入ってくる夕日に照らされて紅く染まる廊下に、僕たち二人は歩いている。静かな学校はとても雰囲気が良い。
     腹痛で授業を抜け出したとき。教室からトイレへの間、その際に通る廊下は、とても静かで、爽やかで、清々しい。できれば、腹痛を忘れて、その静かな廊下に寝転がって見たいと思ったことが何回もある。

     僕と、山田君は静かな廊下を通り抜け、静かな階段を下りていく。その間僕は山田君に話を持ちかけようと思ったが、断念した。僕の少し後ろをついてくる山田君は話しかけんなオーラを放っているように思えたからだ。なんで誘いに乗ったのに、話しかけるなオーラを放っているのか。僕は少し山田君にいらついていた。
     静かな昇降口で靴を履くときも、静かな自転車小屋で自転車を探し出すときも。常に山田君は僕についてきてはいるのだが、その際一緒に、話しかけんなオーラまで引き連れてきているのである。

     僕は、山田君のオーラに押しつぶされつつも、自転車を押しながら校門を通り抜けた。だけど、山田君は自転車に乗ってペダルを漕ぎながら通り抜けた。そして、自転車に乗ったまま地獄坂へ突入しようとした。

    「え。危ないよ」

     僕は今にも地獄坂を下っていきそうな山田君に忠告をした。
     学校のきまりにより地獄坂を下るとき、自転車は押して下りなさいとなっているのだ。だが、普通は怖くて自転車に乗ったまま地獄坂は下れないはずなのである。この坂を自転車で下ろうとするときは誰もが恐怖を感じるはずなのだ。
     下へと、そこなしに続く坂道に、少しでも自転車の車輪が入ってしまえば一気に下へと落ちていく。ぐんぐんとスピードを上げていく自転車に恐怖を感じてブレーキをかけようと思ってももう遅い、ブレーキは地獄坂には通用しないのである。昔、というより結構最近僕の先輩に当たる人が地獄坂を自転車に乗りながら下ったそうな。その先輩も地獄坂に入るまでは良かったのだが、道の途中で怖くなってしまったらしい。
     
     まずい、このまま落ちれば……
     
     そう思って、その先輩はブレーキを強く握って自転車を止めようとした。次の瞬間、その先輩の体は宙へ吹き飛んでいたそうな。目撃者の誇張表現かもしれないけど、その先輩は実際骨をすこしやってしまったらしい。その先輩は、おそらくこの学校に永遠と語り継がれていくであろう格言を病院のベッドの上で作ったらしい。

    「中途半端な奴ほど地獄を見る。下るなら下りきれ。無理だと思ったら、無理だと諦めろ。俺みたいに未熟な奴が判断を誤れば、まさにその坂で地獄を見ることになる」
  • 35 name id:su/hTUU0

    2011-08-15(月) 22:24:49 [削除依頼]
    「俺は、中途半端なことはしないよ」
    「え?」

     山田君が、こちらを見て少し笑ったように見えた。すると次の瞬間には、その顔は僕の目の前から姿を消した。僕は慌てて地獄坂の方を見る。自転車に乗る山田君の後ろ姿がぐんぐんと小さくなっていく。木々のトンネルをくぐりながら山田君は何やら叫んでるみたいだ。
     
     恐怖か。

     いや、あれは興奮だ。

     微かに見えるのだが、山田君は両手を自転車のハンドルから離しているように見える。

    「え、ええ!? ど、どうなっても。知らないぞ……」

     僕はそう言って瞼を閉じ、耳を両手で覆った。自転車は道路に倒れる。少しすると山田君の悲鳴が聞こえてくるはずだ。いやだ、人の死ぬ所なんて見たかあないし聞きたくもない。もしかして、ここで山田君が死んで、それで、僕に「あの時何で止めなかったの」なんて言うお叱りがくるかも。違う。僕は止めたぞ…… 止めたからな!
     ヒグラシが鳴く中を、僕はポツンと一人目と耳を塞いで突っ立っていた。
     ――数分はしただろうか。校門から出てきた、他の補習生徒の「なにやってんの」という言葉が聞こえてくるまで僕はずっと目と耳を閉じていた。

     僕は呆れた顔でこっちを見つめる男子生徒にこう言ってみた。

    「ここをさ、自転車で。手放しで降りる事って出来る?」

     男子生徒は間髪入れずに「無理」と言って、自転車を押しながら地獄坂を下っていった。
  • 36 name id:o.48BBa1

    2011-08-20(土) 18:46:58 [削除依頼]
    ****

     真っ赤に染まる夕焼けの下。ヒグラシが唄う中で僕は家路についた。
     僕は自分の家の玄関のドアをガラガラっと開く。
     その時、僕のポケットから耳慣れた音楽が聞こえてきた。
     携帯の着信音だ。僕は、ポケットに手を突っ込んで携帯を確認した。どうやら誰かからのメールらしい。

     達樹。という文字が携帯の画面に映し出されている。
     僕は嫌々ながらにそのメールを開いてみた。

    「明日遊ぼうぜ! あ、無理だった。
     ごめんごめん補習お疲れ。明日も頑張ってねん^^」

     僕は、文字だけ見ると静かに携帯を閉じた。とりあえず、開けっ放しにしてある玄関の扉を閉める。すると、さっきまで聞こえていたヒグラシの声が遠くに感じられた。
     僕は、たたいまと声を張り上げて家へと上がった。

     明日も補習頑張りますか。僕はそう呟いて夕飯の匂いがする食卓へと引きずられていった。 
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