-夕闇の鬼と夏の夜-15コメント

1 玄冬 id:r1bHRp50

2011-07-13(水) 00:30:31 [削除依頼]
■夕闇の鬼と夏の夜  氷、風鈴、蝉の声。  君に出会った、一夏の思い出。  優しく、悲しい、鬼の御噺。       ■挨拶>>2 ■本編>>3-1000
  • 2 玄冬 id:r1bHRp50

    2011-07-13(水) 00:36:50 [削除依頼]

    こんにちは、それともこんばんは? スレ主の玄冬(くろと)です。
    最近昔の没作漁ってアイデア拾ってます。がさがさ。

    今回、掘り出したこの作品を新しく書き出した次第です。
    鬼、夕暮れ、夏、郷愁。キーワードはこんなものかな?

    荒らしはスルーの方向で。
    コメントはしてくれたら嬉しい。

    宣伝とかはやめて下さいね。

    それでは始めます。いえい。
  • 3 玄冬 id:W3ZMxQx1

    2011-07-15(金) 18:20:13 [削除依頼]
    -始-

     鎮守の森に吹く風は生暖かく、それでいて薄ら寒いように思われ、秋の嵐が訪れたときのようにざわざわと不穏に木の葉を揺らしていた。烏の鳴き声はいつもより一層不気味に響き渡り、いつもは騒がしい小鳥たちのさえずりも、今日は一度たりとも聞こえてきてはいない。天には重く鉛のような灰色の雲がたちこめ、低い気圧が息苦しさを誘う。森が、山が、何かにおびえているようだった。
     山地にある谷間の町のそばに、ちいさな祠がある。人の頭が一つ入ればいっぱいになってしまいそうなその祠は、誰も参られず、ただひっそりとそこにあった。大きさから、一頭社という呼び名がついたその祠の本当の名は、多くの人に忘れられてしまっていた。その存在さえ記憶されていないことの方が多かったのだから、当たり前と言ってしまえば当たり前のことなのだが。
  • 4 玄冬 id:W3ZMxQx1

    2011-07-15(金) 18:30:07 [削除依頼]
     祠の扉には、一枚の札が貼られていた。古びた和紙に赤黒い何かで文字が書かれた、おどろおどろしい札だ。それも、人の足を遠ざける一因となっているのだろう。察するに、なにやらの血で掠れた文字の書かれた札は、文字の並びから見て、封じの札である様子だった。
     一瞬降りた沈黙の中、ふわりと一陣の風が吹く。
     赤紫の紫陽花の花が一首、地に落ちた。
     鵯は猫に咬み.殺され、犬は執拗に遠吠えをした。
     びり、と、札に破れ目が走る。少しずつそれは広がっていき、遂に、静かに札は腐った落ち葉だらけの地面に舞い落ちた。何かを封じていた札だ。きい、と錆びた蝶番が鳴り、祠の扉がゆっくりと開いていく。
  • 5 玄冬 id:W3ZMxQx1

    2011-07-15(金) 20:46:51 [削除依頼]
     刹那、目映い光に祠は包まれる。光が収まるまでに瞬きの間もかからず、その後、そこに現れたものがいた。それについて説明すれば、闇夜を思わせる墨染の髪、夕陽を思わせる橙と紫の瞳、すらりとした立ち姿は鋭利な刃を思い起こさせ、一分の隙もないその雰囲気は零下の水よりも冷たいもののようだった。白磁という表現はあまりにも使い古されたものだけれど、それしか当てはまらないような綺麗な肌からは、にじみ出る艶やかな色.気が押さえきれていなかった。
     腐葉土に、何も纏わない素の足が降ろされる。爪は明らかに人のものではなく、例えるならば鷹や猛禽の類のような形状をしていた。黄昏の瞳は色彩こそ違えど虎のそれに良く似、堂々とした様は雄丑のようだった。
     ぺろり、と紅い舌が唇を這い、それは、ひとり呟いた。
    「変わらぬ、変わらぬものだな。人も、世も……」
     そうして再び風が吹き、次の間にはそれの姿は祠の前から消えていた。

     忘れられた名、それこそは隠弐社。
     記す言葉は異なれど、同じ音に意味を込めて。

     隠弐社、おにはらのやしろ、鬼ノ社。

     人を愛し、人を憎み、人と愉しみ、人と敵対した。

     暮れ時の鬼の封じられた祠での、出来事だった。
  • 6 玄冬 id:W3ZMxQx1

    2011-07-15(金) 20:49:05 [削除依頼]
    >>5 訂正 おにはやのやしろ→おにのやしろ 隠弐原という名前を隠弐に変えて、直すのわすれてました。
  • 7 玄冬 id:W3ZMxQx1

    2011-07-15(金) 21:06:15 [削除依頼]
    -逢-

     生き物の最終的な目的はやはり自分が居た証を残すことなのだろうと、吉良正宗は常々考えていた。個体は個体と交わり、または個体自体が分裂し、子々孫々へと自らの遺伝子を繋いでいく。子というものは親無しでは生まれない。単細胞生物でもしかり。だからこそ子というものはそれの親の存在を証明するものに成りうるのだ、と。親が子を愛するのは、本能に仕組まれた生物としての機能の一分。子をより生かすための手段なのだ。
     なら、自分の親は生物として破綻していたのかなんて、正宗は夏の暑さに沸騰しそうな脳味噌で考える。両親は、おそらくは自分を愛していなかったのだろうと、正宗は考えていた。共働きの父と母は家にいることが少なかったし、お金だけはあったせいか正宗の世話は雇ったお手伝いに任せきりだった。この夏、ついには離.婚するらしい。正宗は人事のように、その事実をただ淡々と受け止めていた。
     道ばたに蝉が潰れて死.んでいたよ。と。
     まるで、そんなことを聞かされたときのように。
     それは悲しいね、ということを感じないようで。
     ああ、そうなのか。と、ただ受け止めるだけ。
  • 8 玄冬 id:W3ZMxQx1

    2011-07-15(金) 21:41:10 [削除依頼]
     両親どちらも子供の養育権を譲り合い、どうにも肩身の狭い正宗は行き場をなくし、みかねた父方の祖母が正宗を引き取ってくれたという次第があった。今現在、都会育ちの正宗は、高校一年にして、今まで住んだこともないような片田舎にいた。祖母の家、つまりは父の実家のある自然豊かな山間の町だ。
     御荷原町というこの町は、妖怪の町として、その手の業界では広く知られている。古くに妖と交わった旧家だとか、陰陽師のある流派の宗家だとかが多く在るのも特徴だろう。ゆえに町の住人は不可思議な出来事に割と寛容で、逆にそれらを受け入れられない外部の者を排する排他的な一面も持っていた。
     正宗は、転校する予定の高校に、一学期の終わりに少しだけ顔を出していくつもりだった。そこで受け入れられようがそうじゃなかろうがどうでもよかったが、面倒事は早い方がいいだろう、といった考えからの措置だ。
  • 9 シトラス* id:0XhlB1..

    2011-07-16(土) 00:52:31 [削除依頼]
    いれてください*玄冬sの小説って大人が書いたみたい!すごいですね
  • 10 玄冬 id:4sZ/7SS0

    2011-07-16(土) 13:10:06 [削除依頼]
    シトラスs
    いえいえ、まだ未熟者ですよ。
    でも、褒めて貰えて嬉しいです。
  • 11 玄冬 id:4sZ/7SS0

    2011-07-16(土) 13:45:58 [削除依頼]

     やかましい蝉の鳴き声と蚊取線香の匂いに包まれて、正宗はごろりと縁側に転がる。くわえたアイスは水色で、どこにだって売られていそうなものだ。
     正宗の祖母の家、これからは正宗自身の家ともなるわけだが、それは田畑の中に良く似合う平屋の日本家屋だった。所々に洋風なデザインも取り入れてある、なかなかモダンな昭和の建物だ。松の生えた庭には鯉のいる池があり、玄関先には寅柄の犬がいる。猫はどこへやらに散歩中だ。

    「正宗さん」
     アイスが溶け、木の棒だけが口に残った頃合に。正宗の祖母、光江が台所から呼びかけた。台所、和室、縁側への襖は風を通すために全て解放されていて、声は良く通るのだ。のそりと顔をあげ、正宗は頭を掻く。
    「何、光江さん」
    「あの棚にね、小豆があるのだけど、取って貰えないかしら。いつもは慎也さんにやってもらっているのだけど……ごめんなさいね」
     屑かごに棒を捨て、正宗は立ち上がる。慎也というのは正宗の従兄弟らしい。高校二年で今は修学旅行に行っていて、祖母の家に来てから五日、まだ顔を会わせていないがもうすぐ帰ってくるはずだった。彼の両親は十年前に事故で亡くなり、正宗と同じく祖母に引き取られたのだという。
  • 12 玄冬 id:4sZ/7SS0

    2011-07-16(土) 14:12:09 [削除依頼]
    「別に、これくらいして当然ですよ」
     がらりと木の戸を引き、それらしきものを取って祖母へ渡す。「ありがとうね」と笑った祖母の笑顔は、遠い昔の記憶にある父と母の笑みと同じ優しさを持っており、正宗の胸をちくりと刺した。
    「……光江さん」
    「どうかしました、正宗さん」
    「明後日、学校に行きます」
     正宗はその痛みをはぐらかすように、さして重要ではない話題を持ち出した。なんの感情も込められていない言葉に祖母はまた優しく笑い、正宗に言う。
    「そう……今晩、慎也さんが帰ってくるから、一緒に行ったらいいわ」
    「今日帰って来るんですか」
    「ええ。九泊十日でドイツとイギリスとフランスに行ってるのよ」
    「それはまた、遠いところまで」
    「慎也さんは外国語科に通っているからだそうよ。普通科はイギリスだけらしいわ」
    「そうなんですか……」
     そういえば、通うことになる高校は私立だったな、なと、正宗は思い出す。修学旅行ごときで外国に行くなんて想像もできないが、行ってしまうものは仕方がない。正宗は、今までの常識とのギャップをあまり気にしないことにした。
    「俺は、イギリスですね」
     普通科に通うことになるのだろうと、正宗はそうこぼした。
  • 13 玄冬 id:4sZ/7SS0

    2011-07-16(土) 20:44:45 [削除依頼]
     だが、祖母の反応は正宗が予想しないものだった。祖母は頷き肯定を示すかと正宗は思っていた。しかし、祖母は少しばかり目を見開き、驚きの顔をみせたのだ。疑問に思った正宗は、首を僅かに傾げた。
    「……普通科じゃないんですか」
    「……言い忘れていたわ」
     では、何科なのか。そういう問いを含ませて、正宗は視線を送る。祖母は、砂糖と塩を間違えてしまったときのような表情で、手を、ぱん、と叩いた。
    「あたりまえすぎて忘れていたのよ。そう、そうだわ、正宗さんは普通科じゃないの」

     続けられた言葉に、今度は正宗が見開くこととなる。

    「正宗さんは、特進科よ」

    「……はあ?」

     余談だが。
     正宗は約九年ぶりに、語尾に記号をつけたこととなったということは、誰も知らない秘密である。


    * * * * * *
  • 14 玄冬 id:4sZ/7SS0

    2011-07-16(土) 20:50:22 [削除依頼]
    にゃんにゃんにゃーん。飼い猫が足元でうるさいのですよ。さっき餌あげたじゃん。
    なんだ、構ってほしいのか。可愛いやつめ。構ってあげないけど。

    なんか字が詰まってると読みにくいんで次からちょっと変えてきます。ご了承を。
  • 15 玄冬 id:Yoar6/G0

    2011-08-07(日) 00:51:49 [削除依頼]
     意味がわからない、意味が。

     正宗は混乱していた。消化の範疇を越え、既に特進科なにそれ美味しいの状態である。
     祖母と何故か正座で向かい合い、座ったまま。破られない沈黙が、益々正宗の混乱を煽った。
     正宗の混乱が収まるのを待っているのかただ沈黙しているだけなのか。祖母は口を開かず、困ったように微笑んでいた。

     耐えかねて、多少平静を取り戻した正宗が行動を起こした。


    「特進科っ……どういうことですか」


     
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