漆黒の金色6コメント

1 夏風 id:iqKKdg40

2011-07-08(金) 22:20:35 [削除依頼]



漆黒の羽に身を包み、
夜空を翔けていく。

金色の模様が夜空に反映し、
キラキラと踊る。

その名は

――漆黒の金色


*
  • 2 夏風 id:iqKKdg40

    2011-07-08(金) 22:25:50 [削除依頼]

    1*


     窓から外を眺めれば、真っすぐな太陽が見える。太陽は、運動場を明るく照らしている。……焦げるほどに。
     
     あの日差しの中に飛び込んでいけたら、どれだけいいだろう。

     飛びこめるはずもないけれど、ふいに思ってしまう。ギラギラの日差しの中に飛び込んで、太陽を直視したい。太陽からエネルギーを受け取って、思いっきり体を動かしたい。

     何もかも、叶わないけれど。

     いや、いつか叶う日はきっと来るだろう。でも、それをあきらめているだけ。諦めては、いけませんか? 見えない希望に身を包んで生きていかなければ、いけませんか? そんなことできない。

     どうせ私は、臆病者だから。
     一日一日が、怖い。それが、私だから。


    *
  • 3 夏風 id:iqKKdg40

    2011-07-08(金) 22:39:37 [削除依頼]

    2*


     堀内秋乃。ほりうちあきの。それが、私が親からもらった名前。漢字を見ればわかる通り、秋生まれ。私は、秋――11月4日――に、秋田県で生まれた。「秋」という字と深く運命で結ばれてるかのように――。
     秋生まれとか、秋田県とかそんなの関係なしにしても、私は暑いのが苦手だった。そして今、私は病院のベッドの上にいる。

     私は、太陽の下で動いていてはいけない体に育ってしまった。どんなに太陽に照らされたいと、焦がされたいと願っても、どんなに太陽の光を体いっぱいに受けたいと願っても、絶対にできない体に。
     当然、友達と外で遊べるはずもないし、体育も、運動会も、学活の時間のドッジボールもできない。人より早く走れるのに、人より運動ができるのに、体が弱いだけで全部ができない。
     将来はオリンピックに行けるほどの、有能なスポーツ選手になれるかもしれないのに、太陽の下で動くことを、私の体が、親が、医者が認めない。地獄の生活。

     こんな生活イヤだ。

     何度思ったことだろう。だけど、イヤだと思っても続けていかなくちゃいけない。それが、私の試練だから。

     いつか、みっちゃんがこんなことを言っていた。

    「いーい? 神はねぇ、こなせる試練しか与えないのよ」
    「こなせる試練?」
    「だから、できる試練ってこと。神様は、太陽の下で動けない試練を、秋乃に与えたの。秋乃だけに。それってどういう意味かわかる?」
    「神様は私が嫌いで、私も神様が嫌い」
    「ちがうっ!! それは、秋乃ができる試練ってこと。私には出来なくても、秋乃にはできるのよ。だから頑張って。私は塾があるから帰る」
    「えぇっ!? 早くない?」

     あの時は、すごくうれしかった。自分のことを、誰かにわかってもらえた気がした。いつか、太陽の下で動ける日がくると、そう言ってくれたようなものだった。

     それは、3年前の話――


    *
  • 4 夏風 id:Xx98bVY0

    2011-07-09(土) 11:00:21 [削除依頼]

    3*


     今、私の周りにはだれもいない。みっちゃんでさえも。みっちゃんは去年、東京の超難関私立名門校に合格し、さっさと行ってしまった。しかも、私への別れの挨拶はおざなりで、「いつか帰ってくるから」だけで済まされてしまった。
     私としては、もっと感動的な別れを期待していたのに……。でも、みっちゃんはそういう人だ。いつも私より遠くを走って、私に希望を見せてくれる。だから、どこへ行かれても私はさみしくない。みっちゃんは、約束は守る人だから。

     けど、今の私は不安でたまらない。

     だって、3年たっても退院できないのだから。本当は、3日で退院できるはずだったのに……。

     3年前のあの日、私は内緒で動いてしまった。太陽の下で……。何も起こるはずがないと思っていた。だって、私の体は健康そのもので、何か起こるのがおかしいと思っていたから。それに、後悔してもいいから一度ぐらい太陽の下で動いてみたいと思ったから。
     太陽の下で動くのは、とても気持ちがよかった。ずっと、夢に描いていたものより、はるかに気持ちがよかった。気持ちよすぎて、本当は30分でやめようと思っていたのに、2時間も動いていた。何をするわけでもない。ただ、黙々と走るだけ。走るのは大好きだから。大好きなものを、一番にやりたかった。そして私は、太陽の下で倒れた。

     起きた時、目の前には白い天井があった。横を見れば白いカーテン。自分の寝ているところを見れば、白い布団、白い枕、白いベッド、白いパジャマ。世界がすべて白くなったんじゃないかと錯覚させるほど、全てが白かった。そして、カーテンからお母さんが入ってきたとき、ここは病院なのだと瞬時に理解した。
     お母さんは私を見るなり、ものすごい勢いで怒鳴り始めた。心配しているのはわかるけど、もうちょっと声をおさえてほしい。とはいえず、私はお母さんのお説教を1時間半も聞いていた。聞いているふりをしていただけだけど……。それでお母さんは満足したのか、いきなり恥ずかしくなったのか、病室から出ていった。

     あの時、たくさんの人が3日で退院できると言った。一日たてば、一日延び、また一日たてば、一日延びた。そして、3年が過ぎた。高校受験ができなかった。中学の卒業式に出られなかった。私は未だ、中学生だ。

     16歳の、中学生――


    *
  • 5 夏風 id:ID.1B0W0

    2011-07-10(日) 10:19:33 [削除依頼]

    4*


     突然、ガラガラッと音がして、誰かが入ってきた。どうせ、お母さんだろう。私はそう思い、無視を決め込んだ。だけど、聞こえてきた声は全然違うものだった。

    「へぇー、さすが1人部屋。広いね」

     男の声。ゾクッとした。何でこんな部屋に男が……。

    「誰かいるんでしょ? よかったら、話し相手になってくんない?」

     そいつは、私に話しかけているような口調で言ってきた。まぁ、この病室には私一人しかいないのだけれど……。

    「勝手に入ってきて、何?」

     私はベッドに寝転がったまま言った。顔なんて、見たくもなかった。

    「あぁ、ごめん。俺さ、はるきっていうんだ。春に、輝くって書いて、春輝!! いきなり入ってきたのは悪いと思ってるけどさ、そんなに怒る必要ないんじゃない?」
    「なっ!!」

     あまりに理不尽なその言い方にカッときて、私は力任せに飛び起きた。

    「あっ……」

     そこにいたのは、真っ黒に日焼けした少年。二重で、クリクリした目で、ニッと笑うとできるえくぼに、白い歯。髪の毛は短くて、日本男児っぽい黒。明らかに、病気ではない。

    「よっす!! 久しぶり」
    「春輝!! 何で春輝って言わないのよ」
    「いや言ったよ!!」

     私の幼なじみ。黒原春輝。

     別名、

     ――漆黒の金色


    *
  • 6 夏風 id:ID.1B0W0

    2011-07-10(日) 10:32:41 [削除依頼]

    5*


     春輝とは、6年ぶりに会った。だけど、春輝の外見はそんなに変わっていなかった。黒のタンクトップに、黒の半ズボン。そして、金色の縦線。春輝が漆黒の金色と呼ばれていた由縁のものは、まだ残っていた。
     おまけに性格まで昔のままだ。すごく失礼なところとか、めちゃめちゃ元気なところとか、時折見せる優しいところとか、全部昔のまま。

     もしも暗闇の中にいても、お前がいるだけで周りが明るくなる。だから、漆黒の金色だ。

     そう言われたのが小2の時。だから、漆黒の金色は春輝の服装と春輝の性格、両方から生まれたことになる。

    「お前、何でこんなとこにいんだよ」

     ふいに、真っすぐな視線をして春輝が言った。
     
     この顔だ。

     昔から、春輝のこの顔が好きだった。いつもは元気いっぱいの明るい笑顔なのに、真面目な話をするときだけ、こういう風になる。私だけを見つめる、真っすぐな視線。他のものは目に入らないと言ったような感じの目。この目が、好きだった。

    「遊んじゃったの。太陽の下で」
    「後悔、してないか?」

     いぶかしげに問うてくるその目を見て、私は素直にうなずいた。

    「うん」

     とたんに春輝は顔をほころばせ、いつもの笑顔になった。

    「ならいいんだ。俺はもう帰る」
    「早くない!? もうちょっといてよ!!」
    「いやダメなんだ。あっ、そうだこれ」

     春輝はポケットからネックレスを取りだした。金色のネックレスは、太陽に反射してキラキラ眩しい。

    「これ、金色じゃん。俺のは黒な。同じアゲハ蝶のネックレスだけど、この部分が違う」

     春輝は“この”のところで、チェーンの所を触った。

    「ここが金色のがお前の、黒いのが俺の。なっ!!」

     ニッと笑った春輝から、そのネックレスを受け取って、私も最高の笑みを見せた。

     ――その時は、幸せだった


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