海の底の君に告ぐ8コメント

1 ももくり id:y/Sfc.j/

2011-07-04(月) 13:43:52 [削除依頼]
置き去りにされた白い難破船。
嵐の夜に沈んでいったの。

海はこんなに広いから、君がなかなか見つからないよ。
ずっとずっと探しているのに。

一緒に沈もうか。

君の海に、私は還りたい。
  • 2 ももくり id:y/Sfc.j/

    2011-07-04(月) 13:59:08 [削除依頼]
    「ばーか。早く沈めよ!」

    冷たい水。
    澄んだ水。
    ギラギラと熱い太陽の光を反射させて、無駄に眩しく舞っている。

    初夏、校庭の隅のプールにはすでに水が張られていた。
    明日から体育で水泳が始まるということで、プールサイドも綺麗に磨かれてある。
    そんな清々しい光景の中に、実に綺麗に溶け込んだ残酷な笑い声。
    一見、楽しそうな少女達の声に聞こえるのだが――違う。

    「うっわ!こいつビショビショじゃん!気持ち悪ーいっ」
    「暑そうだったから、一足先にプールに入れてあげてんのっ」
    「もっともっと沈めちゃいなよっ」
    「強がって抵抗してこないの、こいつ。人形みたいっ」

    ゴリゴリ、バシャバシャ。
    モップが私の頭を力一杯に押し捻っている。
    プールサイドから私を見下している四人の女子達。
    彼女達はまるで罪悪感など持ち合わせずに、私を沈める遊びを繰り返している。

    息、できない。
    目も鼻も全部痛い。
    モップが気持ち悪い。

    それらを全部声にできずに、私は今日も彼女達の玩具となる。
  • 3 ももくり id:y/Sfc.j/

    2011-07-04(月) 14:05:54 [削除依頼]
    「あ、チャイムだ」

    ポニーテールの少女がそう言うと、彼女達は一斉にモップを放り投げた。
    カラン、と地面に落ちる音がする。
    そしてモップはしばらく転がって、やがて静止した。

    上からの圧力が無くなり、私は勢い良く水面から顔を出した。
    それと同時に、肺に空気を収納する。
    反射的に咳き込んで、目に涙が浮かんだ。
    燃えるように熱い胸が苦しい。

    「柑橘(カンキツ)ちゃーん。また明日に遊んであげるわねー?」

    セーラー服が振り向いて、不自然な笑みを顔中に広げる。
    どきん、と心が響いた。
    それでも、やっぱり何か言い返せるわけでもなく。
    遠くなって行く彼女の背中を、ぼんやりと見ているだけだった。
  • 4 ももくり id:y/Sfc.j/

    2011-07-04(月) 14:16:17 [削除依頼]
    世間で言ういじめが始まったのは、高校に入学してすぐの時だった。
    普段はロッカーに閉じ込められたり、物を捨てられたり。
    プール沈めは、夏恒例の限定の行事のようなものだった。

    もう、いいや。

    チャイムの音が鳴り終わった頃、私はようやくプールサイドに上がった。
    水浸しの制服で授業を受けるわけにもいかないし。
    教室に戻ってもクラスメイトの視線が痛いだけだし。
    女子高には酷いいじめが存在するというのは、どうやら本当だったらしい。
    中学は共学だったが、あまり目立ったいじめは無かった。

    ピチャン、と制服から水が滴り落ちる。
    残酷なほどに冷たくて、直に体温を奪っていく。

    こんな歪んだ世界で長い間生きていける自信がない。
    毎日辛くて苦しいだけなら、存在価値はもはや無いのだ。

    ――君に会いたい。

    水の音が君の思い出を引き連れてきて、苦しかった。
  • 5 ももくり id:n9ZyBqS.

    2011-07-05(火) 14:26:30 [削除依頼]
    放課後のチャイムが鳴ったのと同時に、私はすぐに学校の外へと飛び出す。
    はぐれ者みたいに一人だけ先にはみ出して。
    そして、この田舎の小さな道を歩いて行く。
    背中に乗った孤独が寂しいけれど、あまりに暑いので何も考えられなくなる。
    その方が良い。
    蝉すら鳴き始めている木陰を踏んで、海へと続く道に出た。
    背中の遠くの学校が、部活動開始のチャイムを鳴らしている。
    雑音みたい。
    そんな事をふと思ったけれど、やっぱり暑くて思考が続かない。
    その方が良いけど。

    「……海の匂い」

    すん、と鼻を掠めた香りに、私は言葉を零した。
    脆いコンクリートの階段の下には砂浜が待っている。

    そして、その先には――海。

    真っ青で大きくて綺麗で。
    水平線と空の境目が美しくて、思わず此処で立ち止まった。
    放課後の私の心を癒すのは、いつでも海だけだった。
    今日もその力に頼ろうと、私はしばらくして階段を下りていく。

    今日も君に会いに来たの。
  • 6 ももくり id:n9ZyBqS.

    2011-07-05(火) 14:42:50 [削除依頼]
    鞄をどさりと砂の上に投げ出した。
    しかしその音は、波の音に容易く掻き消された。
    私以外に誰もいない砂浜が、やけに広く感じる。
    退いて、進んで、躊躇って、押して。
    単純な作業を繰り返している波が、小さな石をさらった。

    太陽の光は、容赦無く海の表面に刺し注ぐ。
    だけど、その海の大きさには太陽さえも敵わない。
    ざん、ざざざ、ざん、ざん。
    海の息吹をとても近くに感じる。

    私は、静かに腰を下ろした。
    この辺りは田舎過ぎて、海に遊びに来る観光客も少ない。
    住民達も忙しさのあまりか、此処に顔を出そうとしない。
    客と言えば――私だけ。
    それで良い、その方が良い。
    この場所だけは誰にも汚されたくないから。
    君と私の思い出を運ぶ海だけは。

    きゅ、と心が締め付けられた。
    痛い、というよりは、切ない。
    切ない、というよりは、愛しい。
    愛しい、というよりは、痛い。

    次は何時、君に会えるの?
  • 7 ももくり id:patBD7j/

    2011-07-10(日) 12:35:42 [削除依頼]
    ぼんやり、呆然。
    ただ、ずっとずっと虚ろな瞳で水平線を眺めていた。
    いつの間にか痛かった日差しも消えて、今は夜の香り。
    空気が綺麗なこの町では、沢山の星が見える。
    満点の星空と月と海。
    この組み合わせが何となく切なくて、冷めた砂を掴んだ。
    此処にいれば、時間は本当に一瞬で去って行く。
    まるでこの海だけ、他とは違う時間の進み方をしているみたいに。

    そろそろ帰ろうか。
    まあ、どうせ誰も待ってくれていないけど。

    お腹が鈍い音を立てて、何かを口に入れて欲しいと催促する。
    料理を作るのも面倒だし、今日は少し遠くにあるコンビニで買って行こう。
    ゆらり、と立ち上がる。
    手に付着した砂の心地がした。

    立ち去る前に、もう一度だけ海を見る。
    海は大きくて大きくて、私なんてどうしようもないくらい大きくて。
    ――飲み込まれそうよ。
  • 8 ももくり id:patBD7j/

    2011-07-10(日) 13:20:39 [削除依頼]
    名残惜しく海を見つめるのは、もう惨めだからやめよう。
    自分に言って、背中を向ける。

    ――その時だった。

    「ったくよー、何で俺がお前と行動しなくちゃならないんだよ!」
    「それは海王様が定められた事だよ。僕にはどうする事もできない」

    「え」と思わず声を漏らした。
    突然聞こえたのは、誰かの話し声。
    私だけしかいないと思っていたこの空間に、確かに聞こえた。
    ぐるりと360度を見渡してみる。
    しかし、不思議な事に人の影は見えない。

    「黙れ!やっぱり海狩は俺一人で充分だ!」
    「君は子供っぽい考え方をするね。大声を出すしか能が無い癖に」

    やっぱり、声。
    姿はないのに、声だけは堂々と存在している。
    この奇妙な感覚に、私はひどく動揺した。

    「黙れ!ああああっ、もう我慢の限界だ!俺一人で魂を運ぶ!」
    「勝手にどうぞ?僕は君が失敗する姿を遠くから見ておいてあげるよ」
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