SUMMON8コメント

1 明石 id:ez-dSx04ZI0

2011-07-03(日) 12:43:22 [削除依頼]
【Xちゃん】

 その朝、二年D組の教室を中心にして生徒達はざわざわと落ち着きがなかった。僕は大して興味は無かったものの、騒ぎの震源が自分の教室であるから、自動的に教室前の野次馬に加わるしかない。
 一緒に登校して来たテツは興味津々で、そのデカい図体をフルに発揮してぐいぐいと人混みを掻き分けて行く。その背中に張り付いて上手いこと教室に入る事が出来た。教室内はクラスメートとその友人位なので混んではいなかった。どうやら、様子見をしたいだけで関わりたくはない奴らが廊下に大量にいただけらしい。
 教室後方の入口付近でテツは立ち止まり、教卓の方を指した。

「お前、あんな子知ってるか?」
「あん?」

 テツの肩越しに指された方を見る。
 そこに居たのは主に白い少女だった。いや、主に白いってザックリし過ぎに聞こえるだろうけど、決して過言じゃないんだ、驚いた事に。まず髪が白い。透き通るようで……キザな表現になるけど、白百合の花びらを繊維に沿って細く裂いたみたいな髪だ。そんでもって肌も白い。おばちゃん達が羨む事受け合いな美白だ。更に耳が白い。しかも、それは猫や犬みたいな耳が頭にのっている。野次馬の注目は主にそこみたいだった。更にブラウスが白い。これは、うん、学校指定のブラウスだ。
 そんなスカートと靴下、靴の紺色以外が真っ白な少女は、頭の耳をピクピクと小刻みに動かしながら教卓に棒立ちしている。周りの視線も、野次馬の噂話する声も全く気にならないといった様子で。その小動物のような姿を可愛いなと感じると同時に、何となく凄みを帯びているように思えた。
  • 2 明石 id:ez-dSx04ZI0

    2011-07-03(日) 12:48:45 [削除依頼]
    コンニチワ。
    明石です。

    SUMMON=召喚
    ってことで召喚ネタのファンタジーモノです。やり尽された感がありますが、まぁ気にしません。

    ヨロシクオネガイシマス。
  • 3 明石 id:ez-dSx04ZI0

    2011-07-03(日) 13:31:43 [削除依頼]
     教室の後ろのロッカーを見ているようだが、イマイチ焦点が合ってない彼女に声を掛ける勇気がある奴はいなかった。
     校内でも見掛けた者が無いから違う学年でもない。どうやら転校生のようだ。というか、本当に人間なのか? そんな疑問がD組教室内を満たした頃、ホームルーム開始を告げる鐘がなり、少女の事を気にしながらも野次馬は各々の教室に戻って行った。入れ替わるように教室前方のドアが勢い良く開けられる。
     席に着く間際、隣のテツが「なんか変な子だな。可愛いが」と呟いた。僕は全面的に同意の頷きを返す。
     担任の稲田は見た目や話し方が温厚そうな割に、行動は色々と雑だ。今日も室内靴を忘れたのか来賓用のスリッパでのご登場だったりする。

    「席に着いて下さーい。さっさと着かないと殺人鬼召喚しますよー」

     あながち冗談でもないので皆は素早く着席する。女の子は稲田に気付くと、教卓から一歩窓際へ退いた。その時「あ、動いた」と思ったのは僕だけでは無いだろう。
     出席簿を起き、教室をざっと眺め、欠席者を軽く確認してから稲田は切り出した。

    「えー、皆気付いてるっぽいですが、このクラスに新しい仲間が増える事になりました。えー、名前は……アリ、なんだっけ?」

     オイ、名簿にでも書き留めて置けよ。

    「名前ありません……Xで、未確認生命体Xでお願いします」

     場の空気が凍てつく。だってその子、真顔でそんな事言うんだもの。最近暑くなってきたけどこんなのは全然有り難くない。
     普段は和やかな雰囲気を作り上げる我がクラスメート達も一斉に視線を四十五度下げた。

    「えー、というわけでXちゃんです。ちょっとミステリアスだけど仲良くするように」
    「いやいやいや」

     右手でビシッとツッコミながら一番後ろの席のナイスガイが立ち上がる。ごめん、僕のことです。
     クラス中の視線が僕へと集まる。そのどれもが「あーあ、ツッコんじゃいましたね」と冷ややかな笑みを含んでいる。やられた。こんなの僕が知ってる二年D組じゃないっ!
  • 4 明石 id:ez-dSx04ZI0

    2011-07-03(日) 14:47:29 [削除依頼]
    「Xちゃん、じゃ適当過ぎるでしょう……」

     稲田は面倒臭そうな表情で眼鏡を指で押し上げる。
     僕だって転校生とそんなに関わりたいわけじゃない。ただツッコまずにはいられなかっただけなんだ……っ! という心の叫びを稲田が聞き取っている筈も無く、矢張り面倒臭そうに答えるだけだった。

    「そういう君の名前は?」
    「アキラ、辻岡 瑛です」
    「ほらな」
    「どーゆー意味だ!」

     こんな時だけクラスメートは元の和やかさを取り戻して笑っている。新入生のXちゃんも口元だけ笑っている。嗚呼腹立つ。
     僕は不貞腐れて乱暴に席に着く。いいさ、変な呼ばれ方をするのは僕じゃない。それに僕の席は最後尾の窓際なので、隣はテツだけだ。転校生は前列の空席に収まるだろうから、僕とお隣フラグは立ってない。僕の知らない所で勝手にイジられればいいさ。
     稲田はさっさとホームルームを終わらせたいらしく、Xちゃんの席を探し始めた。担任するクラスの座席くらい把握しておいて欲しいもんだ。

    「じゃあ、この前の席にしょうか……」
    「せんせー、俺最近黒板が見えにくいんで前の席がいいです」

     いやテツ、お.前みたいなデカい奴が前にいったら後ろの数人は見えないっての。つか黒板の字が見えても理解出来る知能が無いだろうが、阿呆め。と頭の中で毒いた。僕も鬼じゃない。クラスメート全員が聞こえる前で友達をおちょくる様な事はしないさ。

    「あそこでもいいか?」
    「えぇ、我慢します」
    「じゃあテツがこっちでXがむこうな」

     テツが鞄を持ってさっさと前の席に移動する。教科書もノートも机に入って無いとはとことん阿呆な奴だ。代わりにXちゃんが隣りに座った。心なしか僕を睨んでいるように見える。Xという名前を適当過ぎると言ったからだろうか。
     二人の着席を見届けると、稲田は「なんか用件ある奴いるか?」と「いないな。じゃあ終わり」を間を開けずに言い、教室から出て行ってしまった。それを合図にクラスメート達も席を立って友達同士でしゃべったりと、いつものリラックスした雰囲気になっていく。
     ……ってアレ?
  • 5 明石 id:ez-dSx04ZI0

    2011-07-03(日) 16:15:55 [削除依頼]
    「フラグガンッガンッじゃねぇぇえか!!」
    「フラグガンッガンッね」

     思わず立ち上がった。
     Xちゃんはというと、表情一つ変えずにちょこんと座っている。近くで見ると更に現実味のない顔付きで、なんだか人形みたいだ。頭にのってる耳はさっきより落ち着いて見えた。見れば見るほどXちゃんマジ天使……んな場合じゃないよ。なんぞこれ。なにこの変化球フラグは。
     僕は前例で和気あいあいと「宜しくなぁ」なんて微笑ましい挨拶を交わしているテツの所へ急行し、そのまま胸倉を掴んだ。ただし身長差から、僕が頑張ってテツを立たせているようにしか見えない。

    「なーにやってくれてんだ視力1.5野郎!」
    「お、落ち着けよ瑛。これにはワケがないんだ」
    「ワケ?……言ってみろ」
    「いや、ワケがないんだって。強いて言うなら面白いから」

     確かにテツらしい行動ではあるが、それ故に腹が立つ。そして周りでテツに同調するモブクラスメート達にも腹が立つ。担任を含めて面白い方に行動する奴らが揃っているこのD組に腹が立つ。腹を立ててる事に腹が立つ。以下エンドレス。
     殴り掛かろうにも簡単に腕を封じられ、僕は仕方無く席に戻る事にした。
     既にXちゃんの席はクラスメートに囲まれていて、お馴染みのどこから来たとか、何の部活をやってるかとか、何を召喚出来るのかとか、なんで転向して来たのかとかいった質問を浴びせられている。

    「さぁね」

     一通り質問を聞いたあと、Xちゃんはそう言った。そうなればさすがに「コイツは変だ」という共通認識が固まり、人混みはあえなく散ってしまった。
     あれだけ興味を惹く自己紹介をしておいて何がしたいんだろうと思ったが、出来るだけ関わりたくなかったので何も言わなかった。可愛い変人と関わらんでも、僕には夢中になれるモノがある。召喚術だ。
  • 6 明石 id:ez-ljDVZpS1

    2011-07-05(火) 19:41:17 [削除依頼]



    「えー、召喚術には大きく分けて二つあったが、我々が使う『目録召喚』ともう一つはなんだ? えー、今日は五日なんで出席番号五番、えー、辻岡」
    「いや、二十三なんだが、出席番号……」

     ちょっと目を閉じたのが一時限目のはずなのに、次の瞬間には四時限目になっていた。これまでにもこの現象には遭遇してるけど、何度体験しても不思議な現象だ。というわけで今は四時限目の『召喚術』の授業。
     授業担当は担任の稲田である。僕らD組は、彼の独断と偏見によってかなりの屈折した召喚術を授かっている。というのは言い過ぎだろうか。
     いいからさっさと質問に答えやがれ。と言わんばかりの稲田の視線を受け、僕はその場に起立して答える。

    「もう一つは『無作為召喚』です」
    「正解」

     黒板に『目録召喚』『無作為召喚』と書きながら稲田は続けた。

    「では『目録召喚』と『無作為召喚』の違いは?」
    「えっと……『目録召喚』は盟約して目録記載された対象を召喚出来る。で、『無作為召喚』は目録記載されてない対象をランダムに召喚する……かな?」
    「まぁ、概ね正解。ただ『無作為召喚』は全くのランダムじゃない。術者が大まかな検索ワードを浮かべる事で可能になる。例えば男か女か、とか何かに精通する者、とかな……じゃあ『目録召喚』にはどんなものがある?」
    「まだ質問!? ずっと俺のターンかよ」
    「いいから早よ」

     この大人は本気で面倒臭そうな顔をするので軽く傷つく。
     ともかく僕は質問に答えるしかない。一般教養科目でないのが幸いだ。

    「『盟約登録』と『服従登録』があります。盟約として目録に登録した場合はお友達状態みたいなもんで、服従の場合は文字通り術者に絶対服従です」
    「正解」

     そこまで答えてやっと着席を許されて僕は解放された。
  • 7 明石 id:ez-kQZUP2s.

    2011-07-07(木) 21:39:38 [削除依頼]
    「やるじゃねーかアキラ」
    「……」

     着席する僕に、小さくガッツポーズを送ってくるXちゃんは何故か僕を呼び捨てにした。
     教科書がまだ揃ってないという理由で、Xちゃんは机を僕の机にくっつけていた。悪い気はしない。むしろ転校初日の可愛い女の子とこんなにお近付きになれたのはかなりラッキーだと思う。これで普通そうな子なら文句は無いのに……と思いながらチラリと彼女を盗み見してみた。彼女は絵が上手い。白いルーズリーフに妙にリアルなキリンが描かれている。つまり、板書していない。
     そんな姿を見て、僕は授業とは全く関係ない方向で頭を回転させていた。ズバリ、Xちゃんと関わるべきか否か。である。

    「……それ本物?」

     この先仲良くなるかは別として、絶対に知っておきたい疑問を投げかけた。目線は勿論頭上の耳へ向いている。

    「勿論」

     得意気なXちゃんを見て、脳内会議では関わらないべき派が半数を越え始めた。
     でもちょっと待て。さっき、授業前にクラスメートに質問されてた時にはろくに返答しなかったくせに、僕とは会話してくれているじゃないか。つまり仲良くなるのは難しいことじゃないかも知れない。多少変わっていても、付き合ってみれば案外普通の子かも知れないし、今日は転校初日で緊張してるだけという事もなくはないだろう。
  • 8 明石 id:ez-FYB4exa.

    2011-07-08(金) 18:17:18 [削除依頼]
     僕はXちゃんの立場でイメージしてみる。そうする事でXちゃんの奇怪な挙動を説明出来そうだからだ。
     僕だってきっと緊張して変な自己紹介をしてしまうだろう。更には温かく迎えてくれたクラスメート達にも、素っ気ない態度で対応してしまうかも知れない。しかしどうだろう。座った席の隣が、話し易そうな爽やかイケメンだったら! 校内事情を知らないという好状態をフルに利用して仲良くするはずだ。彼女がさっきから僕にだけ馴れ馴れしいのはそういう事に違いない。考えてみると、頭の耳以外は普通の可愛い女の子だ。
     今や僕の脳内会議室は満場一致で「お友達から」派になっている。席を移動したテツに少しだけ感謝。
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