夏時間 〜喪失編〜21コメント

1 ‘‘理文” id:5Abp1J0.

2011-07-01(金) 19:18:22 [削除依頼]
プロローグ

 夏というのは、時として永遠の時間に思えることがある。
 凜とした季節の中で、いろいろな出来事があるからだろう。
 それは、子供達にとっても大切な時間で、大人にとっても大切な時間である。
 夏時間は、永遠に。失われること無く、繰り返される。
 永遠の時や記憶と共に……。
  • 2 ‘‘理文” id:5Abp1J0.

    2011-07-01(金) 19:23:05 [削除依頼]
    はじめに

     皆様、こんにちは。理文です。
     この作品、長編になる予定ですので、付き合ってくれる方は今期よく見守ってあげてください。
     平行して、Soldiers of recal 〜召還されし意思〜 も書きます。
     そちらもよければどうぞ。
     こちらもかなりの長編になる予定です。
     では、楽しんでいってください。


    作品概要
     タイトル:夏時間 〜喪失編〜
     ジャンル:終わり無き日常の中で大事なものを失う物語
    現在完成度:プロットのみ完成
  • 3 ‘‘理文” id:5Abp1J0.

    2011-07-01(金) 19:59:43 [削除依頼]
      一章 〜始まりの夏〜

     七月の強い日差しの中、頑丈に構え建つ高校の体育館で終業式が行われていた。
     堪えなくても暑い中で、さらに人口密度が大幅に高い体育館に校長の、マイクを通した少し早口な声が響き渡る。
     普段ならだらだらと続く校長の話も、今日はやけに早く切り上げて演台から降りる。
     そんな光景を赤瀬奏師(そうし)は呆然と見ていた。
     こういうさっさと終わってほしい行事は、何も考えずに呆けておくのが一番だ。そういう考えから出た意図的なものである。
     高校三年にもなると、他の同級生達は進路のことで頭が一杯なのだろうが、奏師は他とは少し違う。
     奏師はどんな学校にも毎年必ず存在する、少数派の未だに進路が決まっていない類の人間なのだ。
     とはいえ、彼自身決して成績が悪いわけではないのは、他の同類達とは違うところだろう。
     考査で常に学年トップ20に居る生徒で、進路が決まっていないというのは学校側も相当困っていた。
     奏師は、進路調査プリントがまだ提出できる状態じゃないことを知ったときの担任の顔を思い出し、一人笑顔になる。あれは、さっきの自分以上に呆けた顔をしていた。
     しかし流石にそろそろ本気で進路を考えておかないと、後々大変だとは思い始めている。が、思ってはいても、それで進路が決まるわけではない。
     夢の無い奏師には尚更難しい話だった。
     そうこうしている内に、解散の合図が教頭よりなされる。途端に体育館のあちらこちらから大きなため息が洩れた。
     後ホームルームにだけ出れば、今年も夏休みに入ったことになる。
     最も、進路の決まっている受験生たちの一部にとっては、憂鬱な時期になるのだろうが……。
     奏師も他の生徒達と共に体育館から出ようと出口へ向かう。その途中、担任から声をかけられた。
  • 4 ‘‘理文” id:sccf7EJ/

    2011-07-02(土) 10:52:51 [削除依頼]

     そのまま腕を引っ張られ、体育館の隅へとつれてこられる。ある意味見せしめのような感じで、校舎へと急ぐ生徒の中の何人かがこっちを見てひそひそと話をしていた。
     奏師は眉をひそめる。
     大体何のことかは分かっているが、こうも目立つときに話さなくてもいいじゃないか。そんな抗議の目を担任へと向けた。
     担任はそれに気づいていて、だがそれを無視して話を始めた。
    「良いか? もうお前だけなんだ。進路も決まってないのは。大抵の生徒は二年の時には決めてるんだ。そうでないやつもこの一学期で決めている」
     奏師は適当に頷く。さっさと終わらせたかった。こういう意味のない説教をしたがるのは教員達の癖だろう。
     どう説得したところで、夢も願望も趣味も無い奏師には進路の決めようが無い。
     最も、決められるものならとっくに決めていたはずだ。
     奏師はじっと担任を睨むが、慣れているのか担任はそれも無視して続ける。
    「良いか? もう一度言うぞ。これはお前の未来に関わることなんだ。重要なことなんだ。分かるな」
    「分かる」
    「なら早く決めなさい。君なら夏休み明けからでも勉強すれば良い大学にいけるんだ。どんな大学でも良い。夏休み中にちゃんと進路を決めてくるんだ」
     やはりそっちが本音かと、奏師は一人納得する。
     奏師の通うような知名度の低い新学校は、得てして生徒にレベルの高い大学に行かせようとする。勿論、理由は高校の知名度を上げるためだ。
     奏師は余計なことは言わず、じっと担任の言うことを黙って聞く。こういうときは、黙っているほうが早く終わるのだ。
    「親御さんともきちんと相談して、進路を決めるように。分かったな」
     奏師は担任の言葉に黙って頷いたが、内心、そんなことが出来るはずも無いと否定していた。
     親と相談して進路を決める。本来あるべき進路の決め方だろうが、奏師は例外中の例外だ。
     それをなすことは難しいだろう。
     担任は奏師の内心を知ってか知らずか、奏師のうなずきに満足したようで自身も一つ頷くと奏師を開放した。
    「それじゃあ、あとでプリントを渡すから、それに書いて夏休み明けに持ってくるように。それじゃ、行って良いぞ」
     奏師は担任が言い終えるか終えないかの内に背を向けて体育館の出口へと向かう。
     まだそこまで時間がたっていないようで、出口付近は教室に戻ろうとする生徒で混雑していた。
    「何が面白くて人生生きてんだかな」
     小さく、誰にも聞こえない大きさで呟く。
     怠惰に生きてきた奏師にとっては、自らのやりたいことをやろうとする人間が理解できない。理解しようとも思わなかった。
     人間も動物。ただ生きて、子孫を増やしていれば良い。
     そんな考えが、奏師の思考の中にいつからか埋め込まれていたのだった。
  • 5 ‘‘理文” id:sccf7EJ/

    2011-07-02(土) 12:13:12 [削除依頼]


     気だるいだけのホームルームも終わり、奏師は一人帰路へと付く。
     友人が居ないわけではない。だが彼のたった一人の友人は、今日はアルバイトで学校に来ていない。
     公立では確実に校則違反であるアルバイト。奏師の学校も例外ではないが、その友人は勉学に支障が無い程度なら許可されていた。いわゆる家庭に事情を抱えている生徒である。
     奏師とは違い、やるべきことをやっている彼。友人で合っても、そのやっていることはやはり奏師には理解しがたかった。
    『人ってのは個人個人の考え方が違うから成り立ってる。お前が俺達みたいなやつが馬鹿だと思うなら、それはそれで良いんじゃないの? お前はお前の世界生きてりゃ良いんじゃないかね』
     そういっていた友人の顔を思い出し、奏師は一人笑みを浮かべる。
     基本楽天家の友人は、特異な考えを持つ奏師に対しても普通に笑いかけてきていた。
     奏師の家は通っている高校から近く、歩いていける距離にある。今日も奏師は生徒の溜まるバス停を素通りし、まっすぐ向かう。誰も待っていない家に。
     ふと奏師は立ち止まり、制服の袖で顔を拭く。この行動自体に特に意味は無い。ただ汗が気になっただけだ。
     しかし、その行為により顔を右へと向けていた奏師はその動きを止めた。
     今奏師の居る場所から右にある場所。公園。公園は川に隣接しており、川と接触しているところには小さな堤防がある。水辺のすぐ近くのため、結構涼しげだ。
     かなり広い公園だが、今はあまり人の気配がしない。いや、一人だけ、堤防の上に人が居た。
     奏師は手を下ろし、そちらへと足を向けた。…………自分でも気付かないうちに。
  • 6 ‘‘理文” id:sccf7EJ/

    2011-07-02(土) 14:22:28 [削除依頼]
     正気に戻ったのは堤防の上に居る人物がはっきりと分かったときだった。
    (陽炎…………?)
     足を止めると同時にそんなことを考えてしまう。
     陽炎とは、空気の密度が高くなることで生じる光の屈折により、その場所がぼやけて見えること。
     奏師には一瞬、その人物の周りがぼやけて見えたのだ。
     奏師は頭を振り、もう一度その場所を見る。陽炎なんて現象は起こっていなかった。
     堤防には依然として人が……いや、奏師よりいくらか年下の少女が立っている。
     少女はどこかの制服の様なものを着ており、奏師と同じで学校帰りなのだろう、足元にはかばんが置かれていた。
     少女はゆっくりとその場に座り込み、川を眺め始める。奏師はじっとそれを見詰めていた。
     奏師と少女の間を一陣の風が通り過ぎた。奏師はふと、なぜここに足を向けたのか、自分で疑問に思い始める。
     今更だが、何故、彼女を見てここに来てしまったのか……。それを何となく、知りたくなった。
     再び、奏師は足を動かした。少女に向けて、ゆっくりと。
     奏師は堤防に登り、少女の横に立つ。少女はそれに気づいたのか、少し視線を奏師のほうへと向けたが、すぐに川へと視線を戻す。
     今度は熱と湿気を含んだ風が吹いた。その風と共に、少女の長い髪が揺れる。
     奏師の耳に小さな溜息の音が聞こえてきた。もしかしなくとも、少女のものだろう。
    「この川の上流を登って行くと、山があるらしいです。その山の頂上の空気が、とっても美味しいらしいですよ」
     奏師は自分に向けられた言葉ではない、そう判断した。その言葉は、彼に向けられたのではなく、彼女の元へ来た人間にかけられたのだ。そういう風に感じた。
     誰でも良いのだ。話相手になりそうな人が来たから、声をかけた。
     それぐらいのことなのだろう。
    「当たり前だろう。川があればその上流は山や湖、池だ。それに高いところは、空気も澄んでいる」
     奏師のそっけない返事は、風に煽られて川の上流へと向かう。
     少女が、小さく笑った。
    「そうですね。当たり前、ですよね」
    「ああ、当たり前だ」
     奏師は釣られて笑うことはない。ただ淡々と言葉を返した。
     それでも少女は嬉しそうに微笑む。
     奏師は横目にその明るい表情をみながら、一人、疑問を覚えていた。
     一体何故、今彼女は笑っている?
     何時もなら、会話の相手が笑っていても、こんな疑問は浮かばない。しかし何故か、今回はそんな疑問が思い浮かんでいた。
     少女は奏師の顔を一度も見ることなく、ずっと正面を向いている。その視線が何処に向けられているかは分からない。
    「一度行ってみたいなって思ったりするんですよ。よく」
    「行けばいいだろ。行きたいなら」
     少女の言葉に深く考えずに答えてから、何か事情があるんじゃないかと思い至る。
     しかしそれさえも少女は気にせずに続けた。
    「それは多分、両親が許してくれないでしょうね……。こうして外に出るだけでも結構うるさいんです」
     そう笑いながら言う。その様子に、両親への不満は一切感じられない。だが、それでも行ってみたい、そう思っているのだろう。
    「過保護なんだな」
    「はい、過保護なんです」
     奏師の適当な冗談に、少女は笑顔で返す。
     何となく、自分はここに居てはいけない存在なんじゃないか。そんな感じがした。
    「邪魔したな」
     それだけ言って奏師は堤防から降りて、公園の外へと向かう。
     結局、何故彼女の元へと足が向いたのか分からなかった。それに、彼女自体が不思議な存在に思えてくる。
     どうして、外へ出るだけでも親からうるさく言われるような子が、こんなところで一人で居るのか……。
     それさえも謎だった。
    「また、今度」
     聞こえてきた声に、奏師は振り返らずに手だけを振る。その様子が彼女に見えたかどうかは分からない。
     しかし、奏師はそれでよかった。
     また、会える機会があるとは思えないのだから…………。
  • 7 ‘‘理文” id:sccf7EJ/

    2011-07-02(土) 16:52:57 [削除依頼]

     新たな時間を刻みだした太陽光が、男の部屋にしては片付いている奏師の部屋へと入り込む。
     奏師は明るくなった部屋にゆっくりと目をあける。
     あまり、気持ちの良い目覚めとはいえなかった。
    「陽炎…………」
     小声でぼやく。
     昨晩、奏師はずっと少女のことを考えていた。ずっとこびりついていて消えない頑固なカビのように、今でも頭の中に張り付いている。
     要は寝付きが悪かったのだ。
    「どうかしてるよな」
     そういえば、友人に独り言が多いと言われたっけな、と思い至る。
     奏師は口を閉じるとベットからすぐ手の届くところへ掛けられている制服へと手を伸ばそうとし、途中で思い出してやめる。今日から一ヶ月間プラス一週間は休校だ。制服に着替える必要は無い。
     変わりに気だるそうに起き上がると、適当にクローゼットから服を取り出し、着替える。
     何時も通り、目立たず、地味過ぎずの極めて普通のファッション。
     家の中にいるにしろ、外出するにしろ、大体現在の服装に似たファッションで通す。
     奏師はまだ寝ているであろう肉親を起こさないよう、すぐに静かに家を出た。
     行き先はファーストフード店。朝はタイムサービスで安くなるところだ。学校があるときも、朝食は対外そこで食べる。
     理由、といえば、普段は両親が家に居ないからだ。しかし、居ないことの方が多かったため、いつの間にか両親が居るときでもこの店で食べることになっていた。
     それに、この店に行く理由はもうひとつある。
     奏師はまっすぐ行きつけのファーストフード店へと向かった。

     ファーストフード店に入ったところで、奏師に声が掛かった。友人――勝矢恵作。前途のアルバイト許可をもらっている生徒だ。
    「おはようさん。何時もので良いか?」
    「ああ」
     朝の友人との会話はこれで終わり。この二人の間ではいつものことだった。
     必要な言葉しか交わさない。
     無駄口を嫌う奏師にとっては互いを散策しないその居場所が、とても居心地よかった。
     奏師は一人何時も座っている席に座る。その席は一番窓際の隅で、何時も空いているところだった。
     適当に時間がたったのを見計らってカウンターへ行き、朝食をもらって戻ってくる。
     メニューは何時ものフライドセットだった。
     奏師は隅の方で一人黙々と食べる。そこへ手の空いた勝矢がやってくるのはいつものことだった。
    「最近一つアルバイト変えたんだけど、そっちの方が給料安くってさ。表示してた金額は一ヵ月後って言うから柄にも無くイラっときたよ」
     勝矢はいわゆる多角アルバイター。いろんなところでアルバイトを受けている。そのため、バイト先を変えることが多々ある。ここのアルバイトもその内の一つなのだが、彼はここのアルバイトだけは変えたことは無かった。
    「バイト先戻せば良い」
    「無理だよ。一度やめたら再起は不可能。本職なら可能かもしれないけど、バイトは無理だな」
     勝矢の愚痴を聞くのも何時ものことだった。奏師はすべて聞き流すのだが、勝矢自身はそれで良いらしい。取り敢えず誰かに話すことができれば良いのだ。
     彼は奏師とは違い、決して友達の少ないほうではない。寧ろ、彼が一声掛ければ学年全体が集まってくるような人望を持っている。
     しかしそれ故に、彼が他人に愚痴をいうことはない。
     勝矢にとって、奏師は唯一自らの真を話せる相手なのだろう。
     だがそれは、奏師にも同じことが言えた。
     奏師にとっても、勝矢は唯一自らの真を話せる相手なのだ。
     だからこそ、
    「そういえばさ。昨日……」
     昨日からの靄を勝矢に話した。
  • 8 ‘‘理文” id:sccf7EJ/

    2011-07-02(土) 17:15:35 [削除依頼]

    「ああ、それなら知ってるよ。つい先日からよくあそこに居るんだってさ。結構あの辺り通る生徒が見てるよ」
     奏師の話を聞いた勝矢の第一声がそれだった。奏師はこれに驚くことなく、そう、と適当に頷く。
     勝矢の情報網が広いことは十に承知の上だ。
     だからでもある。彼に話したのは。
     しかし、流石に次の一言には驚いた。
    「けど、彼女、誰か近づいても何か話すなんてことはないよ。何人か面白半分に声かけたらしいけど、どれも玉砕。挨拶が返ってくる程度で深い話は出来なかったみたいだぜ」
     目を見開いた奏師に、勝矢は少し面白そうな顔で続ける。
    「まして、自分から話しかけるなんて無かったみたいだぞ?」
     暗に、向こうから声かけられたのはお前が初めてだ。そう言っている。
     奏師はあごに手を当てた。
     昨日、奏師は少女の隣に立っただけだ。特に何かをしたわけではない。
     しかし何故か、誰にも口を開くことの無かった少女が、奏師には口を開いた。
     ずっと頭の中にはびこっていたカビが一層頑固に頭に取り付く。靄はすでに霧と化していた。
    「まあ、わるいな。霧を濃くするようなことを言って」
     そういって、片手を挙げる。
     奏師は首を振ると、もう一度あごに手を当てた。
     少女の行動も気になるが、それ以上に少女を見たときに感じた陽炎の様なものが一番気になっていた。あの時はただの目の錯覚だと思ったが、今思い出すとどうしてもそうとは思えなかった。
     考え込む奏師に、勝矢はもう一言付け足した。
    「お前がそれが気になるってんなら、もう一度あってみたらいいんじゃないのか? それが一番の良策だぞ?」
     勝矢の意見は最もだった。
     もう一度あって話をしてみれば良い。そうすれば、大体のことは分かるし、踏ん切りもついて何時も通りの生活に戻れるだろう。
     だが、それをしてはいけないような気がした。自分が彼女に会うことは禁じられている。そんなありもしない規約のようなものを感じていた。
     だからこそ、このまま彼女の事とは忘れて、何時もの生活に戻ったほうが良いだろう。そういうふうに決めた。
     何も無理に忘れることは無い。時間がたてば、勝手に忘れるだろう。そう考えた。
    「いや、やめておく」
    「ま、お前がそうするってんなら俺はそれで良いぜ。無理に会う必要もないし、もう一回会えるとも限らないし」
     最終判断は本人任せるというのは、いかにも勝矢らしかった。
     奏師は勝矢に礼を言った。
     何の解決にもならなかったが、話しただけでもかなり気が楽になっていた。
     勝矢はふと腕と計へと目をやる。
    「おっと、もう休憩時間終わりか。じゃ、また明日な」
     そういいながら、勝矢は仕事場へと戻っていった。
     奏師も空になった容器や盆を片付けると、ファーストフード店を後にした。
     今日はもう家でゆっくりしておこう。そう考えながら……。
  • 9 ‘‘理文” id:7tZ0JDc0

    2011-07-03(日) 10:01:06 [削除依頼]

     人間というのは、一度忘れていたことを急に思い出すことがある。それは大概、思い出してもすぐに忘れてしまうことで……。
     今回もそうだった。
     家に帰った途端、奏師は何か忘れていたことを思い出した気がしたのだ。しかし、思い出したのも束の間、すぐに忘れてしまった。とても、重要なことのような気がしたが……。
     奏師は首を傾げつつもリビングへと向かう。
     この時間帯、家には誰も居ない。奏師の他に住んでいるのは両親と兄だが、両親は共働き、兄は大学の宿舎で過ごし、夏休みの間も帰ってこない。
     実質、昼の間は奏師一人の家のようなものだった。
     リビングに入ると適当にクーラーを入れる。そのままイスに座った。
     何も無いリビング。あるのはテーブルと棚だけ。装飾の類は何も無い。
     頭の後ろに手を回して、イスの背もたれに体重をかける。特に何も考えずにただぼうっと天井を眺めるのみ。
     休みの間は何時もそうだった。特に何をするでもなく、体を休ませる。たまに出かけるときもあるが、今日は家でゆっくりしているのが一番良い。
     恐らく勝矢以外の同級生達は、今も勉強に励んでいるのだろう。だが、奏師にはそんな気力は無い。
     そのままの間で、どれだけの時間が過ぎただろうか。
     ポケットの中から急に振動を感じた。携帯電話だ。
     奏師は携帯を取り出すと、そこに書かれている表示を見る。勝矢からのメールだった。
     件名は、頼む、となっている。
    『学校に宿題忘れてきたんだけど、来週の日曜日までアルバイト溜まってて取りに行く暇ないんだよ。悪い、変わりに取りに行ってくれないか?』
     そんな内容だった。
     去年の冬休みにも同じようなことがあったことを思い出し、奏師は少し口の端を持ち上げる。
     二つ返事で分かったと返信してしまってから、思い出した。
     学校に行くということは、あの公園の前を通ることになる。もしかしたら、今日もそこにあの少女が……。
     奏師はすぐにその考えを首を振って払う。
     今日もまた居るとも限らないし、居たとしても素通りすれば良いだろう。
     そう考えて、学校に友人の宿題を取りに行くことにした。
  • 10 ‘‘理文” id:7tZ0JDc0

    2011-07-03(日) 11:12:23 [削除依頼]

    「暑い……」
     外に出た途端、そうぼやく。
     先ほどまでクーラーの効いた部屋に居たため、外が今朝よりも暑く感じた。立っているだけでも体力を奪われそうだ。だが、こんなのもまだ序の口。夏にはもっと暑くなるだろう。
     奏師はひそかにクーラーの使用を控えることに決めると、学校へ向けて足を進める。
     服装は勿論制服。夏服のため、半袖のカッターシャツだから見た目は涼しげだが、普通に半袖を着ているのと暑さは変わりは無い。
     学校へと進める足を少し早くする。さっさと用事だけ済ませて帰りたかった。
     ある程度進んでから、自転車で来ればよかったと公開するが、遅い。今からわざわざ取りに帰るぐらいなら、さっさと学校へ行った方が良いだろう。そう判断して止めてしまった足を再び動かす。
     途中、例の公園の前を通ったが、案の定、少女は居なかった。
     学校に着くとまっすぐ校舎へと向かう。
     運動場では元気な運動部がグラウンドを走っている。見ているだけで暑くなりそうな光景だが、青春の一ページと考えればそうでもない。但し、それは奏師にとって無縁の世界だ。
    「こんな暑い日によくやるよ……」
     特別教室のある校舎からは吹奏楽や軽音楽の練習が聞こえてくる。こちらは涼しいところで練習しているのだろう。休憩に入っている運動部員達が恨めしげに校舎を眺めていた。
     校舎に入ると、こちらはすごく静かだった。
     時々聞こえてくるのはチョークで黒板を叩く音や教師の声。補習、補充をやっているのだろう。
     それらを全部無視して自分の教室へと入る。メールで聞いた話だと、机の中に置きっ放しにしているらしい。
     奏師は勝矢の机により、そこから宿題と思われるノートやワークを取り出す。
    「馬鹿かあいつは……」
     思わず呟く。
     結構な量だった。数にして六冊。恐らく宿題全部をここに放置してしまっていたのだろう。
     それらを用意してきた空の鞄に仕舞う。先ほどまで重さの無かった鞄の重量が一気に増した。
     これで用事は終了。すぐに教室から出る。
     そして、思わず足を止めた。
  • 11 ‘‘理文” id:7tZ0JDc0

    2011-07-03(日) 11:28:56 [削除依頼]
     面倒な奴に会った。
     すぐにそう思ってしまう。
     奏師の目の前には、一人の男子生徒が立っていた。遅れて補習に来たようで、鞄を持っている。
     補習と分かるのは、この同級生が決して馬鹿ではないからだ。常に奏師の成績の上と下のほんの少しのところをうろうろしている生徒なのである。
     向こうも何故か居た奏師に驚いたようで固まっていたが、すぐに身を取り直すと、言った。
    「や、やあ、そう……、赤瀬君」
     名前で言おうとして、途中で苗字に変える。この生徒は何時もそうだった。奏師のことを呼ぶとき、必ず最初は名前で呼ぼうとしている。
     だが、奏師はこの生徒と仲が良かった覚えはない。
    「ああ、よう、江崎」
     奏師は適当に挨拶を返す。
     江崎小太郎というのが、この同級生の名前だった。
     江崎は奏師の鞄を見ると、少し笑顔になりながら言った。
    「あ、赤瀬君も補習?」
    「忘れ物を取りに着ただけだ」
     江崎の質問に間髪を居れずに否定する奏師。江崎の笑顔が固まった。
     江崎はよく、奏師と仲のよさそうなそぶりをするが、奏師自身は江崎と馴れ合う気はさらさら無い。
     中学校が一緒だったらしいが、奏師の記憶の中に、江崎という少年は居ない。
     それに関係してか、会うと、よく質問をしてきた。そして、今回もそうだった。
    「あの……、やっぱり、思い出せないの……?」
    「だから、何をだ」
     奏師は威圧感を含めて質問を返す。奏師の威圧感は確実に江崎を射止めていた。
     江崎は少し肩を震わせると、小さい声でごめんと呟く。
     奏師は溜息を付いてから、足を進めた。江崎を通り過ぎ、背を向ける位置で立ち止まる。もう、話すことは無いという意思表示だった。
    「じゃ、じゃあ、また」
     それだけ言って、江崎は自分の補習の教室へと向かう。
     ここで罪悪感とデジャブを感じるのは、いつものことだった。
  • 12 ‘‘理文” id:7tZ0JDc0

    2011-07-03(日) 13:08:39 [削除依頼]
     途端、昨日のことを思い出していた。
     罪悪感……。その感覚が、あの少女の隣にいたときに感じた罪悪感と似ていた。
     だが、奏師はそれをすぐに振り払い、校舎の出口へ向かう。
     勝矢からは明日の朝、ファーストフード店で渡すように言われいる。だから、まっすぐ帰るつもりだった。
     校舎を出て、校門をくぐる。
     何時も生徒の溜まっているバス停には今は誰も居ない。学校が無いのだから当たり前だろう。が、部活や補習が終わる頃になれば生徒達が増えるはずだ。
     奏師はそこも素通りし、家へと向かった。

     たまにはバスを使ってみても良かったのかもしれない、と奏師は後悔することになる。夏の終わりに。
     しかし、奏師はその先にある運命も知らず、あの堤防のある公園の前を通っていた。

     何か大きなものが落ちる音が耳に届き、奏師は振り返っていた。
     場所はあの川辺の公園。
     奏師は何かに導かれるかのように、すぐにある一点に視線を向けた。
     堤防の上。昨日、少女が居た場所だ。しかし、そこには誰も居ない。
     何気なしに視線を向ける、そこに、彼女はいた。
  • 13 ‘‘理文” id:7tZ0JDc0

    2011-07-03(日) 13:09:40 [削除依頼]
     倒れていた。堤防のすぐ下で。
     堤防に登ろうとして落ちたのだろうと、奏師はすぐに理解する。少女の持ち物である鞄も、すぐ近くに落ちていた。
     奏師はただ、何も考えず少女のもとへと歩く。そうするのが当然とでも言うように。
     少女の下へ辿り着くと、当然のように手を差し出す。不思議そうな顔をして、なかなか手を借りようとしない少女に痺れを切らし、大きく溜息を付いて手を引っ込める。
     そこでようやく奏師の意図に気付いたのか、少女は慌てて起き上がって言った。
    「す、すみません。すぐに分からなく……て?」
     最後が疑問系になったのは、急に体が崩れ落ちたからだろう。据わった上体で首をかしげている。どうやら先ほど腰を抜かしたらしかった。
    「俺は何でこんなことをやってだろうな」
     少女にも聞こえない程度の声量で呟きつつ、少女の隣に腰を落とす。
     この状況に、奏師は一人、デジャブを感じていた。前にも同じようなことがあった気がする。だが、それを思い出せないでいるのだ。
     多分、このデジャブが原因なのだろう。今、何故自分が当然の様にここまで来て、手を貸そうとしたのかの。
    「こんなところで何やってんだ。制服なんか着て。夏休みだろ」
     奏師は知らずのうち、極めて自然に質問していた。
     その質問に、少女は少し考えてから、答える。
    「単位があぶなかったので補充を……」
    「ふーん」
    「欠席が多かったんですよ」
     最近は単位制の高校も増えて着ているため、奏師も単位制の仕組みは知っていた。
     だから、特に聞き返すことも無い。
     しかし、少女は少し何か考えた後、こう言った。
    「どちら様……でしたっけ。昨日話したのは覚えてるんですけど……」
     少女の質問に、奏師は少し考えてしまう。質問に違和感を感じたのだ。
     が、その違和感もすぐに消えうせ、適当に答えることにした。
    「赤瀬奏師。高三だ」
     言いつつ、少女の鞄へと手を伸ばす。少女はいまだ腰を抜かしているようで、起き上がる様子が無かったからだ。
     少女の隣に鞄をおくと、少女は軽く頭を下げて礼を言った。それから、続ける。
    「高三、ということは、私と同い年なんですね」
     これには奏師は驚いた。見た感じでは、自分より年下かと思っていたのだから当然だろう。
     奏師は失礼を承知でつい少女の体型を見てしまう。やはり、どうしても年下に思えた。
    「よく年齢を勘違いされるんですよ。発育が遅れていて、一昨年からやっと身長も伸びてきたんですよ」
     そう、楽しそうに説明してくれる。
     奏師は戸惑いながらも、そうか、とそっけなく返していた。
     奏師のそんな様子を少女は気にした風も無い。
     しかし、やはり違和感を感じていた。何か、何か忘れているような気がするのだ。
  • 14 ‘‘理文” id:7tZ0JDc0

    2011-07-03(日) 13:09:53 [削除依頼]
    「私の名前は、荒崎美杉と言います」
     荒崎は丁寧に名乗る。それから、ゆっくりと腰を浮かそうとして、すぐにおろす。
     どうやらまだ腰は治らないらしい。
     奏師はまた、ここに居てはいけない、そんな感情にさらされていた。だが、今回はそれを胸の内にとどめ、無視する。流石に、目の前で倒れられ、腰まで抜かしている少女を置いていくことは出来ない。それは人としてやってはいけない事と思われた。
     そんな奏師の考えを知ってか知らずか、荒崎は言った。
    「すみません。倒れたところを助けに来てもらった上に、腰まで抜かしてしまって。大丈夫です。その内治りますから行って大丈夫ですよ」
    「いや、ここで置いていくと、俺の世間体が悪くなるんだよ」
     それだけ言って奏師は空を見上げる。不思議な感覚だった。まともに話しているのはこれが初めてのはずだ。だが、普通に自然体で居られている。そして心地よさまで感じている。
     そして、先ほどから感じていた違和感が、いつの間にか消えていた。
     荒崎も奏師と同じように空を見上げる。
     何を思ったのか、静かに口を開いた。
    「昨日、赤瀬さんが隣に来たとき、なんだか懐かしい感じがしたんです。気付いたら、話しかけてました。もしかしたら、会ったことがあるんじゃないか、そんな期待もあったんですけど、違ったみたいですね」
     荒崎の少し寂しそうな言葉に、奏師は頷く。
    「ああ。俺とお前は昨日が初対面のはずだ」
     はず……、本当にそうなのか?
     気付いたら、自分に問いかけていた。
     荒崎は奏師の返事を聞き、続ける。
    「もしかしたら、私の知らない私を知っている人なのかな、そんな風に思ったんですよ。でも、何か今、違っても、それでよかった気がします」
    「何でだ?」
    「今を見てみようかなって思いました」
     少女が何を見ているのか、奏師には分からない。だが、そう言っていた荒崎の顔を見ると、何か、良かったのだろうとそんな風に思った。それだけ、清清しそうな顔をしていたから……。
    「そうだな。今を見てりゃ良いんだ」
     だから奏師も、自然とそう返していた。
     それに、荒崎は頷く。

     それが、スタートだった。
     永遠に繰り返されるはずだった夏時間の、始まりだった。

       一章 〜夏の始まり〜 fin
  • 15 ‘‘理文” id:7tZ0JDc0

    2011-07-03(日) 13:15:44 [削除依頼]
    脅威の一日5レス投稿。一人歩き以来ww ここまで読んでくださった方、感想やコメント、ご意見、幾らでもお待ちしております。 誤字なども指摘してくれるとありがたいです。 質問も、物語の核心に関わらないところなら受け付けます。 >>14 すみません。訂正です。 一章のサブタイトルが夏の始まりになってしまってますが、正式名称は夏の始まりです。 申し訳ありません。 目次 はじめに・作品概要・・・・>>2 プロローグ・・・・・・・・>>1 一章 〜始まりの夏〜・・・>>3-14
  • 16 ‘‘理文” id:7tZ0JDc0

    2011-07-03(日) 13:26:56 [削除依頼]
    >>15 申し訳ありません。訂正出来てませんでした。 >>14で一章のサブタイトルが〜夏の始まり〜になってますが、正式名称は〜始まりの夏〜です。 何度もすみません。
  • 17 ‘‘理文” id:06fUxg8/

    2011-07-05(火) 17:50:56 [削除依頼]
    あげます。
  • 18 紫音(ミサカ)@懐かしみを込めて id:7M.39YF1

    2011-07-12(火) 20:28:25 [削除依頼]
    評価にやってきました、御坂です。
    遅くなってしまったのはあしからず。早速評価に移ります。

    最初に思ったのは、理文が恋愛? です。
    ですが読み進めていくうちには流石だなと。
    べたべたな感じではなく、本当にさらっと描かれている人物がとても素敵です。
    キャラの設定も面白く、主人公のいろいろな事に対する気だるさが描写にも見えて腕は相変わらずです。
    おそらく伏線なるものもたくさん張られているんだろうな、と感じました。
    テンポ良く読み進めれて、読み終わったあとに再度読みたくなる。
    相変わらずの理文の文章の巧みさに驚かせるばかりでした。
    本当に私から指摘をさせていただく部分はありません。

    評価:SA

    これからも頑張ってノ
    何か、感想になって申し訳ありません。
    質問中傷等ありましたら、準備版にて。
  • 19 ジョバンニ id:wikkdWp1

    2011-07-15(金) 01:06:38 [削除依頼]
    評価に来たジョバンニです。どうぞよろしく。

    遅くなってしまい申し訳ありませんでした。未熟者ゆえ至らない点があると思いますが、どうか温かい目で見てくれると助かります。
    それでは始めますね。
    文体からして硬い文章かと思っていましたが、読んでいくうちに柔らかくて爽やかなイメージの方が強くなりました。描写の方も、少しくどい文章も個人的にはありましたが、技術は間違いなく素晴らしいものです。描写のアングル・視点・自然な展開など細かなポイントも難なくできているかと。ストーリーとしての主題や伏線もちゃんと分かりましたので、物語としても楽しませてもらいました。俺の方からは指摘らしい指摘はないです。
    <アドバイス>
    未熟者ながらアドバイスさせていただきます。
    まずは五感表現。というか前にも言いましたね。別にやれとは言ってませんし、個人差があるでしょう。しかしあなたの文体は少々硬い程度で、それにより単純な文章で読者の心を揺さぶるにはかなりの腕が要る。そして現代という世界観は、一見、臨場感が分かると見せかけて、実は一番読者がスルーする世界観です。毎日見ているので、無意識に「まあイメージしなくていいだろ」と思って曖昧に読む読者が意外と多いのです。このように「読者の心を高鳴らせ、臨場感を与える」には五感表現が効果的かと。ライトノベルによくある文体よりも、通常の純文学のような文体は自然と平坦になるのが弱点でもあるので。五感表現に限らず、読者を驚かせる表現方法を考えるのは面白いです。
    そして描写について。というかアドバイスじゃなくてお節介で個人的なポイントですね。たとえば「風が吹く」と書いたとする。これは情景描写として考えると、かなり曖昧な普通の描写という感想くらいしか求められない。ですが、この描写がもし、「ロードレースが好きな主人公の小説の最後の情景描写」という状況だったらどう思いますか? たかが「風が吹く」というだけの情景描写が、心理描写も混ざったかのような感動を呼び起こす気さえしてきます。最後の文章だから当然ですが、これが描写の腕ですね。つまり、単純に描写は意味が多い方が良い。無駄な描写を書く余裕は、上達すればするほど消えていきます。その領域に入った人は描写一つ一つの意味もよく考え、書いていく。最終的には情景描写にですら心理描写が入り込んだかのようなトリッキーで感動が凝縮された小説ができる。お節介極まりないアドバイスですが、このくらいの気持ちで書いていけば確実にこれからも上達するでしょう。
    <総合評価A>
    これで評価終了です。上から目線すいませんでした。
    ハッキリ言ってアドバイスらしいアドバイスはもう言えないでしょう。プロットなどは分かりませんが、俺からは基本は言うことありません。応援しております。
    質問などは遠慮なく準備板にて。では失礼しました。
  • 20 ``理文" id:akFv10d1

    2012-02-05(日) 14:49:21 [削除依頼]
      二章 〜二回目の一週間〜

     心の中に、ぽっかりと抜け落ちている部分がある。それも小さな部分ではなく、大きな部分が。
     中学生の頃、何時も一人で居る奏師を見兼ねて話しかけた教師は、奏師の口から思いも寄らない言葉を聞いた。
    「一人でいても、友人がいないわけじゃないし、一人じゃなくても、友人がいるわけじゃない」
     まだ小学生からあがったばかりの少年にしては、ひどく思い言葉だった。
     そしてその言葉は、学校中で噂となって広がり、奏師はさらに完全に孤立するようになった。


     夏休みの二日目、奏師は何時もの様にファーストフード店へ来ていた。無論、昨日勝矢に頼まれた忘れ物も忘れずに持ってくる。
    「よう、奏師。おはようさん。……お、宿題。ちゃんと取って来てくれたのか。サンキュー」
     言いつつ、勝矢は奏師の返事も聞かずに奏師が手に持っていた宿題の入ったビニール袋を奪うように取ると、厨房を通って更衣室へと行こうとする。が、途中で足を止め、「何時もので良いよな」と確認を取ると、更衣室に入っていった。
     ちなみに、開店後すぐ、つまり六時半ごろに奏師はこのファーストフード店へ入るため、客はほとんど居ない。居たとしても二、三人程度だ。
     それだけ早く入るのは、勿論、普段は学校があるからだ。別に、学校に行く用意をしてから来ても良いのだが、勝矢がいるのは開店前の五時半から七時の一時間半。そのため、何時も奏師は騒がしい友人の居るその時間帯にここに来るのだ。
     無論、奏師は静かに食べるほうが好きなのだが、勝矢とよく話しているうちに食事の時も、彼と一緒の事が多くなったのだ。世間ではそれを人と食べるのが好きだ、ということなのだが、奏師自身に自覚はない。
     奏師は何時ものように窓際の席に腰を下ろした。
  • 21 ``理文" id:akFv10d1

    2012-02-05(日) 14:54:18 [削除依頼]
    >>20 ミス。9行目、思い→重い
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