.bloody.25コメント

1 祈祷 彗月 id:QjKaw3D1

2011-06-17(金) 22:44:12 [削除依頼]

   勝ち残れば良い
  どんな手を使ってでも

   必要とされなければ
  愛されることもないのだから……

  
  どんなに血まみれになっても――……
  • 6 祈祷 彗月 id:TcMdVVF/

    2011-06-18(土) 13:28:49 [削除依頼]
    月の光に照らされ、一人、呆然と立ち尽くしている少女。
    暗闇の中に悪目立ちしている。飢えたようで、強い意志を持った赤い瞳。
    清楚な短い髪は黒いため闇に溶け込んでおり不気味な雰囲気をかもし出している。
    だらんと下がった左手には血の付いた小さな短剣。
    上を向き小さく息を漏らすと白く見えた。

    静まり返った深夜一時頃。
    少女の後ろには大柄な男達が血を出して倒れている。
    いや、正しくは死んでいるのだろう。
    どこの家も明かりがなく、黒い影としてあるだけだ。
    冷めた瞳で男達を見下ろし視線を左斜め下へと落とす。血だらけの左手に。

    気配を感じ、視線を闇へと向ける。正面だ。
    軽やかな足取りで近づいてくる少年。少女と同じように血だらけだ。
    だが、少女のように冷めて瞳ではなく、生き生きとした生に溢れた瞳。
  • 7 祈祷 彗月 id:JrzyxD..

    2011-06-25(土) 16:44:56 [削除依頼]
    仲間だと知っているため、少女はあえて何の反応もせず、近づいてくる少年を冷めた瞳で見つめている。
    「見つけた。いないから捜したよ」
    少年は呆れたように言った。
    「捜さなくてもよかったのに」
    無愛想に返すと少年に背を向け歩き出した。少年は慌てて歩き出し、少女の後ろをついて行く。
    二人はナイフを握り締めたまま夜の街を歩き出した。
    とくに会話はなく、無言でだ。

    「あ、そうだ。言い忘れるところだった」
    ワザとらしく言う少年。
    少女は歩くのをやめず、振り返らずに問うた。
    「何を?」
    「あいつらが動き出した……って、ね」
    真剣な声音で少女の背中へと、毒を吐くように言った。
    だが少女はとくに反応をみせず、小さく呟いただけだった。
    “そう……”と。
    少年は静かに続けた。
    「戦争かな? 楽しみだよ」
    紅い舌で唇を舐め、独り言のように言った。


     
     勝利を収めるのはどちらの獣か。
    血だらけの物語は始まりを迎えたのだった――……。
  • 8 祈祷 彗月 id:JrzyxD..

    2011-06-25(土) 17:06:36 [削除依頼]
    ■第一章■

    鬱陶しいほど長い廊下、いや迷路だ。
    天井にはシャンデリアがいくつもぶら下がっており、所々馬に羽が生えたような像が並んでいたりもする。
    真っ赤な絨毯の踏み心地は良く、いつまでも歩いていられそうだ。
    壁に掛かっている肖像画の数々。見たことのない人ばかりだ。
    だが全員に共通しているところは皆そっくり。誰もが偉そうだということ。
    いや、偉そうで当たり前なのだろう。
    この肖像画の人物は全員、暗闇の世界でトップを築き上げ、守り抜いてきた人達。
    すなわち、ここ“KARIA”の今は亡き支配者達だ。

    少女――蒼瀬 立亜(アオセ リツア)はその肖像画を一つ一つ丁寧に眺めている。
    とくに尊敬の眼差しもなく、本当に眺めているだけだが。
    赤い瞳は相手を射殺さんとばかりに煌き、意思の強さを表しているよう。
    眉間にしわを寄せ、もう一時間近くは同じ肖像画を見つめている。
    まるで長いにらめっこのようだ。
    だが、立亜のにらめっこもここで終わった。

    軽い足音が近づいてくる。
    瞳で確かめなくても分っている立亜は小さくため息をついた。
    その瞬間、赤い瞳から射殺すようなモノは消え、意志の強さだけが残った。
    「創牙、廊下は走らない」
    短く言い放つと、ここで視線を六星 創牙(ロクセイ ソウガ)へと向けた。

    「立亜、俺が廊下を走らないで誰が廊下を走ってくれるンだよ!」
    さも堂々と言う創牙。
    注意をしては大体この返事が返ってくる。
    分っていることだが、注意せずにはいられないのが立亜だ。
  • 9 祈祷 彗月 id:JrzyxD..

    2011-06-25(土) 17:27:06 [削除依頼]
    額に手を当て考え込む立亜。
    嗚呼、どうするべきだろうか……。
    いつものように受け流すか、正座でもさせたほうがいいのか。

    「なぁ立亜、北西様から聴いたか?」
    いきなり真剣な眼差しを向けてきた創牙。
    めったにないことなので思わず息を呑む立亜。
    「……何を?」
    意味が分らない立亜は問い返した。他にどうしようもない。
    腕組をした創牙はさも面倒くさそうに言い出した。
    「俺も直接聴いた話じゃなきからなんとも言えないけどさ……」
    「ふーん、なるほど盗み聞きってわけね」
    途中、創牙の言葉を遮り上から目線で立亜が言った。
    創牙の顔が“しまった!”とでも言っているようだ。
    一歩下がり、視線を彷徨わせる。
    ルール、規律を守る立亜は普段ならここで創牙を叱るのだが今回は続きが気になるので見逃すことにした。
    「言わないから。続けなさい」
    その言葉に多少安心したのか、声を潜ませて創牙は続けた。
    「実は……俺達、学校に通うらしいぜ?」
    立亜の顔が一瞬にして険しくなった。

    「……何かの間違いじゃなくて?」
    確かめるように、祈るように言う立亜。
    無論、二人とも学校に行きたくないのだろう。
    創牙は宥めるように、優しく言った。
    「俺も聴き間違いであってほしいよ。なんでいきなり学校なんだよ」
    乱暴に髪をかきながら吐き捨てるように言う創牙。

    「……知らなきゃよかった……」
    力なく言う立亜。
    創牙もそれに頷いた。
  • 10 祈祷 彗月 id:cthn3j51

    2011-06-30(木) 21:17:11 [削除依頼]
    「俺もだよ、右に同じ……」
    乱暴に髪をかくと立亜に背を向け歩き出した。
    両手を頭の後ろで組み、適当に歩く創牙に立亜は話しかけた。
    「創牙、どこに行くの? あと数分でミーティングだけど」
    腰に手を当てサボろうとする後輩に注意する上司のようだ。
    歩くテンポを変えず、軽く手を振っただけの創牙。
    ため息以外、何も出てこない立亜は創牙とは反対方向へと歩き出した。
    もちろん、ミィーティングルームへと向かうのだ。
    今、立亜がいる肖像画のコーナーを抜けるとすぐある。
    紅い絨毯の上だけを歩きながら真っ直ぐ前方だけを見て進む立亜。

    「あっ……」
    肖像画の廊下を抜けた十字路で人とすれ違った。
    「立亜じゃない。今からミーティング?」
    すれ違った人物はここの支配者である北西の秘書、女神(ミラ)だ。
    「女神様、はい。数分後にミーティングが始まります」
    素早く返事をする立亜は何とも忠実だ。
    女神は優しく微笑んだ。
    茶色のロングヘアからは僅かに甘い香水の香りがした。
    大人の女性の雰囲気をかもし出す女神はピッタリな香水だろう。
    手には幾つかの書類を持っていたので立亜は両手を出した。
    「女神様、お持ちいたします」
    立亜が書類を受け取ろうとしたが女神は差し出さなかった。
    「ダーメ。貴女はいまからミーティングでしょ? 遅れちゃったら申し訳ないもの」
    確かに、無遅刻無欠席の記録を誇る立亜は遅れたくなかったので後ろめたさが残る中、女神の言葉に甘えることにした。
    「分りました。では、私はこれで……」
    女神に軽く礼をし、左へと曲がった立亜。
    一分も歩かないうちに正面にガラスのドアが見えた――ミーティングルームだ。
  • 11 祈祷 彗月 id:cthn3j51

    2011-06-30(木) 21:40:07 [削除依頼]
    ドアを開けた瞬間、心地良いコーヒーの香りに包まれた。
    「立亜、いつも通りね。三分前到着」
    方目を瞑り、お茶目に言う永遠(トワ)はなんとも可愛らしかった。
    「永遠様、コーヒーなら私が入れましたのに……」
    不満げに言う立亜の頭を優しく撫でる永遠はまるで母のようだ。
    もっとも、母を知らない立亜には想像でしかない感覚なのだが……。
    「大丈夫。それに私にも仕事させて? 命令以外の仕事を」
    茶化すように言う永遠は双子の姉である女神とは性格が似ても似つかない。
    大人の女性のような女神に対し、お茶目な永遠はどちらかというと可愛らしいのだ。
    同じ茶色の髪であるのに違って見えるのは髪の長さのせいだろうか?
    ショートカットで、くせっけであるため先端が丸みを帯びている。

    「分りました」
    優しく微笑んだ立亜は自分のお気に入りである席へと座った。
    ここの部屋は永遠・立亜・創牙以外、ほとんど誰も使わないのだが、ダンスが出来るほど広い。
    いや、正しく言えばどこの部屋も広いのだ。
    部屋のイメージは“ガラス”。
    中心にある楕円形のガラスのテーブルの周りには同じくガラスであるイスがいくつもある。
    壁もガラスなのだが、濃い青のため外は見えない。
    「立亜、どうぞ」
    永遠が立亜にコーヒーを差し出した。
    お礼を言った立亜がコーヒーを口に含んだ。
    (甘い……)
    ブラックコーヒーを好む立亜はチョコレート以外の甘い物が苦手なのだ。
    だがそれを知らない永遠の顔は慈悲に溢れていた。立亜の笑顔の裏に隠された、眉間によったしわを知らないからだ。
    それに加え、立亜も言えるわけがない。
    自分のためにコーヒーを入れてくれる永遠に。
    なので少しでも回避するためコーヒーは自分で入れるようにしている立亜。
  • 12 祈祷 彗月 id:cthn3j51

    2011-06-30(木) 22:01:06 [削除依頼]
    「そういえば創牙は?」
    立亜の右隣にもう一つ、コーヒーを置くと左側へと座った永遠。
    ミーティングの座り方はいつもこうだ。
    立亜を中心に両側に永遠と創牙が座る。普通なら上官である永遠が真ん中であるはずなのだが。
    いつの間にか立亜が真ん中になっていた。永遠は特に気にしていないようなので立亜も特に言ったりはしない。
    周りを見渡し、耳をそばだてる永遠。
    創牙の場合、だいたいが時間ギリギリか遅れなので乱暴な足音で分るのだ。
    だが今日は時間を過ぎてもその足音が聞こえてこない。
    「あの、永遠様……創牙はサボる、ようです……」
    言葉を濁し、視線を彷徨わせながら言う立亜。
    途中、言葉を切るのがおかしくなっている。
    「なるほど、じゃぁ今日は二人かな?」
    特に気にした様子もなく言う永遠。
    立亜は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
    尊敬し、慕う上官に“サボる”など言いたくなかったのだ。たとえ永遠が気にしなくても。
    「えーと……。これとこれと……」
    テーブルの上にあるたくさんのプリントの中から何枚か抜き出した。
    それを立亜の前へとスライドさせる。
    (コレか……)
    プリントを見た瞬間、気分が重くなった立亜。どうやら創牙が言っていたことは本当らしい。
    目の前にある数枚のプリントは全て同じ学校の案内書や学校紹介などだった。
    「永遠様……。もしかして、これは……私が通う学校ですか?」
    引きつりそうな顔を必死に抑えながら問う立亜。
    「そうだよ」
    満面の笑みで頷く永遠。行くしかないと覚悟した立亜。
    「あの、ですがなぜそんな突然に?」
    もう承諾するしか道はないが一応理由は気になった。
    なぜなら今までは永遠に勉強を教わっていたのだ、立亜と創牙は。
    なのにいきなりの“学校に行け”だ。納得できなくて仕方ないはずだ。
  • 13 祈祷 彗月 id:Dg3THcG/

    2011-07-01(金) 23:39:18 [削除依頼]
    ため息を一つつくと残念そうに言う永遠。
    「私も思ったわ。でもね、北西様直属だし……」
    頬に手をあて、言葉を濁す永遠。
    これ以上聴いては永遠を困らせるだけだ。
    瞬時に判断した立亜は納得していながこれ以上言うのをやめた。
    「分りました、では学校に行きますね」
    精一杯の笑顔で言った立亜己の顔が引きつっていないか少々不安だった。
    だが問題ないようだ。
    永遠はほっとしたように微笑んだだけだ。
    「では、この資料は創牙に渡しておきます」
    テーブルの上に置いてあった創牙の分のプリントも持った。
    「じゃぁお願いするわね」
    ここで会話が終わり、永遠も自分の書類を軽くまとめると、手に持った。
    永遠は軽やかな足取りでミーティングルームを出て行った。

    ドアに向かったところで一度振り返る立亜。
    (コップ、どうしよっか……)
    いつもなら気にしないのだが、気持ちが憂鬱なためいろんなものに気をとられてしまうのだろう。
    迷った立亜は嫌々ながらも創牙の分のコーヒーを一気飲みするとコップを三つ重ねた。
    左手にはプリント。右手には三段のコップだ。
    結局、コップは調理場へと持って行くことにしたようだ。
    両手が使えない立亜は器用に腰でドアを押し開け、廊下へと出た。
    すると冷たい風が全身を通り抜けたようだ。
    軽く身震いし、コップを調理場へと向かう。

    ミーティングルームを北側とするなら調理場は南側だ。
    正面を見て、思わずため息を吐いた立亜。
    (誰か手伝ってくれないかな……)
    ここは広い割には使用人が少ないのだ。 
  • 14 祈祷 彗月 id:Dg3THcG/

    2011-07-01(金) 23:50:13 [削除依頼]
    その理由は分らない。幾つか説はあるのだが……。
    多く言われるにが二つ。
    一つは注文が多い北西様が気に入る使用人が見つからない。
    そしてもうひとつは広すぎて使用人が掃除などをする気になれない。
    立亜としては前者だろうと考えている。
    北西様はなにかと五月蝿いからだ。特に人は外見と中身の二つを要求するからだ。

    仕方なく一人で行こうと歩き出した立亜。
    「あ……」
    創牙が正面から歩いてくる。暇そうな顔をしている。
    細く微笑んだ立亜はワザとらしく創牙へと話しかけた。
    「あっれ〜? 創牙君じゃないですかぁ。今日はなんでミーティングに来なかったのかな?」
    あからさまに顔をしかめた創牙。
    面倒くさそうに呟いた。
    「ゲッ……、立亜。……だってどうせ学校のことだろ? 俺やだよ」
    創牙は舌を出して言った。反抗期の子供のようだ。
    立亜は先ほどひらめいた言葉を並べるように言う。
    「そうなの? でも今回は北西様も来ててさぁ、“創牙は?”って聴かれたンだよね」
    もちろん嘘八百だ。
    ミーティングに北西が来たことは一回もない。
    だがどうやら創牙はこの嘘を信じたようだ。顔が焦っている。
    「おい、マジかよ……。ンで立亜はなんて言ったんだ?」
  • 15 御坂紫音@病みドロイド id:FyoOwTp.

    2011-07-02(土) 00:25:33 [削除依頼]
    評価にやってまいりました、御坂紫音です。
    いや、実はこの作品読もうと思ってたんだ!!←

    それでは早速評価の方に映ります。

    物語としては、ダークファンタジー系統が好きな方々にはとてもいける口のものがたりだとおもいます。
    本当にひきつけられる世界観で、最初の1レス目でぐっとひきつけられました。
    プロローグもソレに準じたもので、ひきつけられて。
    でも一章に入るとがらりと感じが変わっているのも、また良いなと思います。
    ただ、幾つか注意点なるものをあげさせていただきます。
    現時点での後半の方に、特に目立つのですが、〜だ。〜い。〜る。〜た。が連続して文末に来ているのが、ちょっと単調すぎるなと思いました。
    あえてそういった表現をしたい場合にはいいのですが、あまりみも、〜だ。〜だ。〜い。〜た。〜い。のようになっていると、逆に読みにくくなってしまうので適度に体言止なども利用していった方が良いかと思います。
    そして描写が安定していないです。
    あるところはぎっしりされているのですが、ないところは皆無。
    難しいとは思いますが、何処も最低限には取り入れられるように頑張ってください。

    貴方の実力なら、絶対に出来ると思いますので頑張ってください。


    評価:BA

    質問、中傷等ありましたら準備版にて。
  • 16 夜の ツキ id:zdpq1z8.

    2011-07-03(日) 18:42:18 [削除依頼]
    御坂紫音様、
    評価有難うございました。
    お礼は拠点のほうに。
  • 17 祈祷 彗月 id:2m4RBa4/

    2011-07-04(月) 19:23:22 [削除依頼]
    >14 不安そうな顔をする創牙をよそに密かに微笑んだ立亜。 (さて、続けますか……) 両手がふさがっているまま無理やり腕組をすると淡々と話し出した。 「“腹痛でトイレにこもってます”って言ったかな?」 「はっ!?」 創牙の目が見開いた。口は半開きになり眉は八の字になっている。 あからさまに反応する創牙を面白く思った立亜は続けた。 「だって普通に創牙を庇ってもつまらないでしょ?」 堂々と、当たり前のように言う立亜。まるで鬼のようだ。 だが立亜の嘘八百にまったく気づけない創牙は真剣な瞳になった。 「おいっ! それじゃぁ俺の面目丸つぶれだろっ!!」 立亜に詰め寄った創牙は追い込まれているようだった。 さすがに可哀想だと感じた立亜はここら辺で本題へと入った。 「取り消して欲しい?」 「当たり前」 即答する創牙。よほど必死なのだろう。 「じゃぁこのコップ調理場に置いてきて」 ここでコップを創牙へと押し付ける立亜。全て計算されていたことだ。 しぶしぶコップを受け取る創牙の顔は沈んでいる。 「ヨロシクね」 創牙へ笑顔で手を振る立亜。 笑顔は素敵なのだが有無を言わせない瞳と声だ。 長年立亜と一緒にいる創牙はしかたなく承諾するとコップを持って歩いていった。 肩が下がりだらんとしている。 「相変わらず創牙は面白いね」 上機嫌の立亜は180度向きを変え、自室へと向かった。
  • 18 祈祷 彗月 id:2m4RBa4/

    2011-07-04(月) 20:07:45 [削除依頼]
    相変わらず長い廊下は歩く気をなくさせるのが得意らしい。
    いつもの事ながらこの廊下にはうんざりしていた。
    「短くなんないのかよ……」
    毒を吐きながら仏教面で歩く立亜。
    一歩道を間違えるだけで北西特性の螺旋階段式廊下へと入ってしまう危険性がある。
    一度もその螺旋階段式に入ったことのない立亜は少々興味があった。
    捜したこともあるのだがそう簡単に見つかるものではないらしい。
    ほとんどの人がその廊下をみたことがないのだ。
    もちろん、創牙も見たことはない。
    (螺旋階段式廊下は後で捜すか……)
    何もかも、やる気を感じなくなった立亜は部屋へ向かうことだけに専念した。
    手に持っているプリントは汗のせいか若干歪んでいるように感じる。
    歩き続けること約20分。
    やっと自室へとたどり着いた。
    正直、立亜の脳内にもここの屋敷の地図はインプットされていないのだ。
    全ては己の五感で行動している。
    把握できていれば近道なども見つけられるのだろうが……。

    よく分らない入れ込んだ浮き彫りのドアを開ける立亜。
    アロマオイルを炊きっぱなしだった立亜の部屋はお世辞にも良い香りとは言いがたい。
    「うっ……」
    思わず自分でも顔をしかめたほどだ。
  • 19 祈祷 彗月 id:2m4RBa4/

    2011-07-04(月) 20:49:16 [削除依頼]
    (やりっぱなしだったっけ……)
    鼻をつまみ、後悔した。
    素早く窓を開け換気をする。立亜の自室はビルの何階だろうか。
    下を見れば全てが小さく見えるほどだ。
    さわり心地のよいお気に入りのソファへと座った立亜。
    シンプルを好む立亜は部屋の物も全てシンプルだ。
    無地の白い壁と白い絨毯。
    出窓には小さな熊の人形が置いてあり、テーブルの上には武器と呼べるようなナイフや銃のカタログが置いてある。
    また、机の上には先ほど失敗したアロマオイルと数冊の本。
    そして唯一の血縁である妹――麗亜(レイア)との写真だけだ。
    「ふぅ……」
    プリントをテーブルの上に乱暴置くと同時にドアをノックするような音が聞こえた。
    「どうぞ」
    カタログに目をやりながら声だけで反応する。
    するとドアが開き、一つの影が入ってきた。
    「立亜、置いてきたよ」
    創牙だ。
    息が上がっているため走って来たのだろう。
    カタログを閉じ、視線を創牙へと向けた立亜。
    「お疲れ」
    適当に返事をするとプリントを創牙へ差し出した。
    「はい、コレ。永遠様から」
    「これって……。高校のじゃん!」
    悲痛な叫びに似た声で言う創牙。その場で立ち尽くしてしまった。
  • 20 祈祷 彗月 id:2m4RBa4/

    2011-07-04(月) 21:02:52 [削除依頼]
    バックで“ガーン”という音が流れてもおかしくはない。
    思わず立亜の顔から笑みがこぼれた。
    「しかたないじゃん創牙。私はもう諦めたし」
    カタログをテーブルの上に置くと立ち上がった。
    「そうだけどさぁ……」
    プリントを握り締める創牙を幼く感じた立亜。
    「諦めなさい」
    腰に手を当て厳しく言う立亜はまるで姉のようだ。
    駄々をこねてもしょうがない。
    創牙は納得はしなくとも嫌々ながら頷いた。

    「あっ!!」
    その瞬間、創牙は突飛な声を上げた。
    思わず手を引っ込めた立亜。
    「な、なにっ……!?」
    怪訝な顔をした立亜を見つめる創牙。
    立亜は思わず下がりそうになってしまった。
    「おい、ちゃんと北西様に言ってくれよな! 俺は“トイレに閉じこもっていなかった”って!!」
    真剣な瞳で言う創牙。
    「はっ? そんなの嘘に決まってンじゃん」
    真顔で迎え撃つ立亜。
    「はっ? 嘘?」
    真顔で問い返す創牙。
    「そう、嘘だよ」
    立亜は当たり前のように言った。
    「嘘……?」
    「だからそう言ってるでしょ?」
    「全部嘘だって?」
    「うん」
    鸚鵡返しだ。
    創牙の顔は間抜けだ、とい言わんばかりに呆けている。 
  • 21 祈祷 彗月 id:2m4RBa4/

    2011-07-04(月) 21:16:36 [削除依頼]
    もうちょっと捻れば漫才にもなるだろう。
    密かに立亜は思った。
    創牙の顔はだんだん怒りが現れてきた。
    「はっ……? 全部嘘!? お前俺を騙したのか!?」
    人差し指を立亜へと突き立てる創牙。若干唾がとんでいるが……。
    だが立亜は“想定内だ”とでも言うような涼しい顔をしている。
    そして冷静に創牙へと呟いた。冷めた瞳で。“くだらない”とでも言っているような態度で。
    「……騙されるから悪いンでしょ? そんなんじゃこの世界生きていけないよ?」
    哀れむように創牙へと言う立亜に抜け目はないようだ。
    創牙は反論以前に言葉さえ見つかっていないようだ。
    「創牙? この世界は甘くないでしょ? いつだって訓練してなきゃ」
    これを洗脳とでも言うのだろうか。
    立亜の言葉一つ一つに魔術のように信じさせる力があるようだ。
    そして止めの一撃。


    「そんなんじゃ生きていけないね」


    言葉自体は優しいがどこか刺があるような言い方。
    創牙の頭の中で木霊した。
    「……生きていけない」
    小さく呟く創牙へ微笑む立亜。
    (良い感じじゃん)
    今、立亜は心の中で爆笑中だろう。
    「でもそんなに卑屈にならないで。今から騙されないようにすればいいでしょ?」
    膝に手をつき見上げるように言う。
  • 22 祈祷 彗月 id:2m4RBa4/

    2011-07-04(月) 21:38:34 [削除依頼]
    聖母のように優しく言う立亜。
    創牙はいいようにもっていかれてしまった。
    「立亜、だよなっ!」
    すっかり笑顔になった創牙。
    「そうだよっ!」
    創牙に合わせて立亜も笑顔になった。
    そして創牙にばれないよう立亜は小さく微笑んだ。

    そのあとは簡単だ。
    ご機嫌麗しゅうな創牙を自分の隣へと座らせ、新しく通う学校について永遠から教えてもらったことを同じように話した。
    「それでね、ここが……」
    「立亜? 創牙もいる?」
    ドアをノックした音と優しさに満ちた永遠の声が聞こえた。
    「はい、創牙もいます」
    間を入れず応答をする立亜。
    先ほどの楽しそうな表情とは一変、真面目な顔だ。そいして創牙も。
    「北西様がお呼びよ」
    ドアに凭れ掛かった永遠は二人に優しく微笑んだ。
    「「はい」」
    二人の声が綺麗に重なった。
    その後は簡単。いままでの二人とは別人のように真剣な面差しで永遠の後を付いていくだけだ。
    そう、これが二人の“仕事の顔”だ。

    北西が愛用する部屋は他の部屋とは違いドアが真っ赤なのだ。ちなみにトッテも赤である。
    「北西様、二人を連れてまいりました」
    ドアを開け二人を中へと誘導する永遠。
    北西に会うのは数ヶ月ぶりだ。緊張しないわけがない。
    自然と冷や汗が流れた。
    創牙に限っては手に汗までかいているようだ。
  • 23 祈祷 彗月 id:1Lu7PmN1

    2011-07-19(火) 21:29:57 [削除依頼]
     「二人とも、久しぶりじゃないか」
     葉巻をくわえている北西はなんとも似合っていた。
     一見普通のどこにでもいるようなオッサンに見えるが。
     バックの巨大ガラスからは宇宙と月が見えている。初めて見た者ならここが宇宙だと信じるかもしれない。
     広い割りに何もないこの部屋。
     北西はいつも見ているのだろう。この偽りの宇宙を……。
     イメージが白であるこの部屋は壁と床、あらゆるものが白である。
     なので目を引くとしたら宇宙だけだ。
     なが所詮は偽者。本物になど勝てはしないのだ。

     「お久しぶりでございます」
     若干片言になっていはいるが丁寧にひざまずいた創牙。
     立亜も同じようにひざまずく。
     「永遠から学校の資料は貰っただろう?」
     イスに座ったまま北西が二人に問うた。
     すると返事をする前にドアが開いた。四人の視線がドアへと集中する。
     
     「北西、制服届いたわよ」
     妖艶な雰囲気の女神が現れた。北西を呼び捨てにできる唯一の存在。
     そのためか、部下も自然と一目置いている。
     「やっとか。二人に渡せ」
     ため息をつき、顎で指図をする北西。
     ヒールの高い踵で音をたてながら未だにひざまずいたままの二人へ近づき傍へと置いた。
     「もう顔を上げても良いんじゃない?」
     女神が北西へと聞いた。
     北西は左手で追い払うように手を動かしただけ。
     それを合図立ち上がった。
  • 24 祈祷 彗月 id:1Lu7PmN1

    2011-07-19(火) 21:43:24 [削除依頼]
     「もういい。用はすんだ。下がれ」
     用件だけ言うと満足したのかガラスへと体を向けた。
     制服を持ち上げた二人は北西へと頭を下げる。
     「「失礼しました」」
     
     ドアを閉めた二人は一気に溜めていた息を吐き出す。
     「はぁー……。つっかれたぁ」
     肩をだらんと垂らした創牙の顔はオーバーに言えばやつれている。
     それが可笑しくて小さく笑う立亜。
     「ん? なんだ?」
     怪訝な顔をした創牙に立亜は笑いを堪えながら話しかけた。
     「だって創牙、北西様に会うたびに言ってるじゃん」
     人差し指を突きたてながら言う立亜。
     少し考え込むようにしてから口を開いた創牙。
     「え? でもそんなに回数会ってないぞ?」
     「そうだけど分る人にはわかるのだよ」
     偉そうに言う立亜。なんだか楽しそうだ。
     「立亜、なんか上機嫌だな」
     笑顔で言う創牙。
     「そ? いつも通りだよ?」
     ピースをした立亜は先に歩き出した。この制服を部屋へと置くためだ。
     
     「立亜、お前麗亜ちゃんのとこに行くんだろ?」
     小走りで近づいてきた創牙。立亜へと片手を差し出した。
     「え? そうだけど」
     「だったら荷物置いてきてやるよっ! 先に部屋行っててっ」
     立亜が返事をする間も与えず創牙は制服を取った。そしてそのまま駆け出したのだった。
     反応が出来なかった立亜はその光景をしばし見つめ、小さく呟く。
     “ありがとう”と。

     そのまま立亜は創牙とは正反対の方向へと歩き出した。
     麗亜に会うためだ。
  • 25 祈祷 彗月 id:4fKJ3qP0

    2011-07-20(水) 16:03:48 [削除依頼]
     麗亜のいる部屋はミーティングルームへ行く道の途中にある。立亜の部屋とミーティングルームの間ということになる。
     「あ、立亜さんだ」
     ふいに背後から声をかけられた。
     「琥珀君。今から麗亜のところに行くの?」
     琥珀と呼ばれた男の子は創牙と同じ黒い髪と瞳をしている。それもそのはず、二人は実の兄弟なのだから。
     小走りで走ってくる琥珀は笑顔で答えた。
     「はい。麗亜ちゃんにコレを渡そうと思って」
     琥珀が手に持っていたものを立亜へと差し出す。
     丁寧に布が巻かれており、リボンで縛ってあるため中は見えないが正方形の堅いものだ。
     「これ、なぁに?」
     琥珀へと返しながら問う立亜。
     すると琥珀は照れくさそうに答えた。
     「麗亜ちゃん、今日が誕生日なので。そのプレゼントにって……」
     (あっ……)
     立亜は忘れていたことを思い出した。とても重要なことだ。
     そう、今日は大切な麗亜の誕生日である。
     琥珀は楽しそうに話すがもう立亜の耳には届いていなかった。
     誕生日を忘れていたことへの後悔しか今はない。
     (どどどどうしよう……。まさかこの私が忘れるなんて……)
     「り、立亜さん……?」
     立亜の様子がおかしいことに気づいた琥珀は名を呼んだ。
     下から顔を覗き込んでいる。
     ここでやっとそれに立亜が気づいた。
     「えっ!? ってあぁ、ごめんね、ちょっと急用思い出したからっ!」
     立亜は早口で言うと自室へと駆け出した。
     
     「え……?」
     立亜の背中を呆然と見つめたままの琥珀。何が何だか理解出来ていないようである。
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