『 新月刀 』(改)4コメント

1 ‘‘華那夜(理文)” id:lDn58Sq0

2011-06-12(日) 12:50:32 [削除依頼]

 新月刀。それは真に人を斬るだけのものではない。
 それは寿命、魂、霊など、人のみで操る事の出来ないものをも斬る。それが、新月刀。
 この刀を人の身で扱おうとするれば、扱い手は狂わされ、狂人となす。
 が、この刀を真に操れる人間が現れたとき、その人間は、全てを救い、全てを統べる王となるだろう。
 そう、人ならざる者たちの王に……。
  • 2 ‘‘華那夜(理文)” id:lDn58Sq0

    2011-06-12(日) 13:09:57 [削除依頼]
    【0.00】静鈴

     人が、決して足を踏み入れない世界。いや、世界と切り離された空間、とでも言うべきか。そんな人のいないはずの空間に、なぜか十五、六歳くらいの少女がいた。
     その少女はどこからどう見ても人間で、この空間にいるべき存在ではないと思われた。
     彼女はここの世界に自分から入ることなど出来ない存在。ならば、誰かに入れられた……、いや、閉じ込められたのだろう。どれだけそこにいたのか、彼女の目には人間のような喜怒哀楽と言うものが浮かんでいなかった。
     少女はふと、顔を上げる。どこからか、この誰も入れないはずの空間に、物音が聞こえたのである。
     コツッ、と革靴がコンクリートを踏むような音がした。
     それに、少女は畏怖を覚える。この空間には、コンクリートなどない。そもそも“足音”などなるはずもない。地面など、ないのだから。
     このとき、少女には人間らしい感情が浮かんでいた。
    「あら……?そろそろ人の感情は忘れたかと思ってたけど……。まだ、早かったかしら」
     それはとても甘い声で、独り言にしては人を食らうような声音だった。少女は彼女らしいと思った。思って、気づいた。
    (この人のこと、知ってる……?)
     少女はそっと顔を上げる。それを見た彼女は、また恐怖を覚えた。
  • 3 ‘‘華那夜(理文)” id:lDn58Sq0

    2011-06-12(日) 13:10:10 [削除依頼]
     そこにいたのは女性。いや、女性と言って良いのだろうか、女性の姿をした何かが立っていた。
     それはどこかのOLのような黒いスーツを着ていて、靴は低めのハイヒールをはき、漆黒の髪は鎖骨の辺りまで伸びている。その髪は人にしては綺麗に整いすぎていた。そしてその瞳は、見た者をすべて飲み込んでしまいそうな漆黒の色をしていた。
     その姿を見た瞬間、少女に頭に思い浮かんだのは四年前の記憶。赤く燃える街中を背景に、ただ一人生き残った人間として佇んでいる自分と、そっと人ならざる雰囲気をかもし出して自分のそばに降り立った彼女を。
     少女は、彼女の目をしっかりと見据え、問いかける。
    「何、しに来たの……?」
     それを聴いた瞬間、女性はあざけるように笑った。さも、人間を見下しているかのように。
    「まだ、人間らしい言葉を覚えてたんだ?それだけの丈夫な精神を持っていたんだね」
     その最後の方の声音には母親が子供を見るときのような、そんな母性に満ちた優しい声をしていた。
    『私はね、すべての母親なんだよ』
     少女は、彼女がそういっていたのを思い出し、また、恐怖に身を震わせた。今になっても分からない、彼女の正体に。
     女性は優しそうな目と声音を崩さずに、さらに言葉をつむいだ。
    「それじゃ。……あの子は一体、どうしてるのかしら?」
     その声音はやはり人とは思えないもので、そしてその指されたものの正体に、更に身を震わした。
     あの子……、それが指しているのはあれしかいない。
     少女はずっと声を出さなかったせいか、簡単に言葉を発することが出来なかった。さっきは何とか振り絞る事は出来たが、そう簡単に何度も出来るわけではない。
     しかし、少女は何とか、声を絞り出すことに成功する。
    「彼女は、私の中で、……一生、ねむ……らせる」
     それを聞き、女性はまたあざ笑う。人をどん底に陥れるような笑顔で。
     少女はそれをずっと目を離さず見る。ここで目を離したら負け。そう、記憶の中に残っているものが言っていた。
     さっきから、女性は少女の質問には答えていない。少女はもう一度、しっかりと言葉にして、文章にして、問うた。
    「あなたは一体、……ここに、何しに来たの……?」
     それを聞くと、女性は笑うのを止め、そして、じっと少女を見た。そして静かに、最初の、甘い、喰らいつくような声で言った。
    「外に、出してあげようと、思ってね」
     少女はそれを聞いて目を開く。それは、いままでずっと望んできたことだった。外に出たい。そう、ずっと思っていた。
     だが、そんなことをすれば……。
    「だめ。絶対にだめ。そんなことをしたら、また……、また……」
     あんな目に……。そこまで口にしようとしたが、声にならなかった。それだけの恐怖が彼女を支配したのだ。
     少女は、遂に視線をそらしてしまう。頭をうつむかせたのだ。
     そう、少し、体を預けただけだった。それだけだったのに……。思い出すことさえ拒んでしまう恐怖。それを思い出してしまえば、少女の目から流れだす涙が止まる事はない。
     だが、そんな少女を妖艶に微笑みながら見詰め、女性はそっと声をかけた。
    「あなたの意思を聞きに来たんじゃないの。私は、あなたを外へ出すために来たのよ?問答は無用よ」
     それはまた、優しい声だった。それを聞いて、少女は思わず頭を上げてしまう。そして、そこにあったのは……。

    「え……き?」
     朝の、通勤者や通学者で混雑している駅だった。少女は慌てて辺りを見回すが、あの女性はどこにもいない。
     ふと、遠くにハイヒールの音が聞こえた。少女は瞬時にそちらへと駆けようとする。だが、視界が反転した。
     少女はずっと狭い切り離された空間の中にいた。そう簡単に走る事など、出来るはずも無い。
     彼女は人目を気にしながらも、壁際に這い、ゆっくりと壁を伝って起き上がる。そこへ、心配そうに顔を覗いてきたおばさんに、大丈夫です、と伝えると、ゆっくりと音の聞こえてきた方へと歩きだした。
  • 4 ‘‘華那夜(理文)” id:lDn58Sq0

    2011-06-12(日) 13:34:02 [削除依頼]
    【1.00】一樹 part1

     剣道部の助っ人に呼ばれていた黒絵沢一樹は試合で圧勝すると、バックのそばにおいてあったジュースとタオルを手にとり、汗を拭き、ごくごくと喉を鳴らしながらジュースを飲む。
     そして、ゆっくりとベンチに座った。今日はありがとう、お疲れ様、と口々にお礼や慰労の言葉を言ってくれる部員やマネージャーに軽く手を振り、十分に体力が回復したと感じると、すぐにその場を立ち上がった。
     もう、用事は終わったからここに長居しても邪魔になるだけ、そう判断したのである。
     一樹は団体試合の会場となっていた体育館から出ると、足早に更衣室へと向かった。更衣室には、レギュラーからはずされた剣道部員達もいる。
     一樹はその部員たちに軽く会釈すると、借りていたロッカーに向かい、更衣を始める。
     ふと、一樹を助っ人に呼んだ彼の友人が、一樹に近づいてきて、お礼と共に、試合の状況を尋ねた。
     一樹は正直に五分五分だと答える。団体試合なので、自分が勝ってもほかの部員が勝たなければ負けになる。一樹が見た限りでは、どっちが勝ってもおかしくない、そんな状況だった。
     一樹は圧勝だったが……。
    「お前さ、何で剣道部入らないんだ?」
     友人が心底不思議そうな顔をしながらそう、聞いてくる。一樹は答える代わりに、肩をすくめて見せた。そうすると、よくわからん、と友人はあっさり引くのである。
     一樹のように特異な事情は説明したところで分からないだろうし、そもそも説明するわけにもいかなかった。
     一樹が胴着などを直すのを手伝いながら、友人は、そういえばさ、と話題を切り替えた。
    「昨日もまた、妖怪、でたらしいぜ」
     その言葉に一瞬、一樹の動きが止まる。だが、それに気づかれる前に否定の言葉を言う。
    「そんなもの、出るわけないだろう?」
     妖怪……。数百年前までいたとされる。流行語で言うと、ユーマというもの。それは日本の技術の発展と共にいなくなっていったはずだった。だが、八年ほど前になって、また怪異が起こり、妖怪と呼ばれる存在が確認されるようになってきていた。
     それは、昔の古来の妖怪などは少なく、文献にも載っていないような新しい妖怪が登場してきたのである。
     それも最初のうちはうわさ程度で終わっていた。しかし、四年前の街一つ破壊されるような事件で場合が変わってきていた。
     妖怪はいる、と一般の人たちの中で認識されるようになったのである。
     更にその妖怪のうわさを追うように、もう一つ、都市伝説のような話も浮かび上がってきていた。
     妖怪が人に知られる前に、妖怪を抹殺し、隠匿する組織がある、と言うもの。
     しかし、それも都市伝説どまり、実際にある、とはいえない状況だった。
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