紅い道化者の孤独171コメント

1 夜のツキ id:2ivdbEw0

2011-06-06(月) 14:52:00 [削除依頼]


  道化師になれない道化者は生きる価値もない
  • 152 祈祷 彗月@ピエピエロ id:06w6RL41

    2011-11-17(木) 17:38:33 [削除依頼]

     「……なんだよ、これ……」
     全てを読み終えた。
     否。
     全ての真実を知ったのだ。
     思っていたほどグルフェルトは偉大ではなく、理想は結局理想でしかない。
     そして、なんならか影響でグルフェルトの中に居た“獣”がグルスへと移り変わった。だからあのとき、知らない“強さ”を感じた。
     おそらく、この本はグルフェルトの記憶だと言ってもいいのだろう。記憶だからこそ、時代をさかのぼるように引き込まれ、集中できた。
     意思に反して小さく震える己の手を見つめるグルス。
     知りたかったことは知れた。
     だがそれが本当に良かったのかと問われれば正直、迷ってしまうだろう。
     知らないほうが良いこともある。少なくとも、このことは誰にも言うべきではないだろう。たとえ、デットでさえも……。
     (この真実を知っているのは俺とネオだけか?)
     自分に聴いても答えなど分かるはずもない。
     だからといって今からネオに会えば罵倒してしまうかもしれない。
     その恐怖心に似た感情からグルスは動けずにいた。
     
     「グルス……? 今、いいかな」
     いきなりのドア越しに聞こえた声。
     グルスはいつの間に眠っていたのだろうか。聞き覚えのあるその声に弾かれたように目が覚めた。
     「……何だ?」
     冷静を装いながらも声はどこか不自然に聞こえた。それはグルスはもちろん、ドア越しの相手――デットにも分かっただろう。
     小さなきしむ音を立て、開いたドアからはグルスが思っていた通り、デットが現れた。
     何処かよそよそしい、いつもとはちょっと違うデットだ。
     まるでそれがうつったかのようにグルスも逃げるように視線を漂わせた。
     ゆっくりとグルスへ近づくデットの瞳は困惑と迷いが手にとってわかっるようだ。とても重大なこと、知らなくていいことを知ってしまったかのような罪人のようながものが感じられる。
     だがそれは、デットだけに限ったことではなく、今のグルスも同じである。
     沈黙。
  • 153 シュナイダー id:eYBRj.v0

    2011-11-19(土) 21:47:39 [削除依頼]
    ツキ、おひさ(´・ω・`)ノ
    執筆頑張ってるのぅ^^

    うん、段階を追って上手くなってるで
    これからも頑張りぃや!

    と、言うのも来月から俺来れへんからさ
    ホンマ、応援してるからな!
  • 154 祈祷 彗月@Der Mond id:m0ca18s.

    2011-11-19(土) 22:01:30 [削除依頼]
    上がってておんりゃビックリw
    頑張るZE☆
    自分では成長してるのか分らないから素直に嬉s((蹴

    そして…これない、だとぉ!?
    受験、受験を呪ってやる・・・・!!
    お元気でな´`!
    シュナイダーの受験はもちろん、執筆も応援してるぞッ!
  • 155 祈祷 彗月@Der Mond id:8C3mtkl1

    2011-11-20(日) 14:12:10 [削除依頼]
    >152  いすに座るグルス。  その正面に立つデット。  開けっ放しの窓から入り込む風が二人の髪を揺らし、何事も無かったかのように去る。空はどこまでも青く、何も知らない平穏な暮らしをする道化は今日も笑顔のはずだ。本当の歴史を知らず、それが幸せなのかもしれない。  ならばその幸せが無い、不幸な道化達はどうすればいいのだろうか?  そしてその中心にはネオがいることを分かっている。黒い歴史を知っていた最初の、生み出した道化だ。  グルスは知らない。デットがグルフェルトの真実、そして、サースの秘密を知っていることに。  デットは知らない。グルスが同じく、真の歴史を知り、しかもグルフェルトの獣を受け継いでいることに。  両者とも迷っている。話すべきか、話さざるべきか。    「……なぁ……」  風が幾度も通り過ぎ、そろそろ足元の感覚がなくなってきたデットは小さく声を発した。  視線を上げることなく、グルスの返事を待たず、間を空けて再び口を開いた。  空気を吸い込み、一言、言った。  「俺、ネオ様が好きだよ」  それは紛れも無いデットの正直な気持ちだ。変わることの無い、揺るぐことなどない、絶対に割れない気持ち。  デットはグルスに言ったつもりだったのだが、言い終えてみれば自分に強く言っているように感じた。確かめるように。そうだ、と忘れないように。  「……ああ、俺もだよ、デット」  とても短いけれど、とても長いように感じる間をあけ、グルスも言った。デットと同じ言葉だけれど、それに込められた意味は違う。  その言葉を聴いて、確かにデットは微笑んだ。  目を瞑り、最後まで顔を上げなかったグルスが直接見たわけではないが、たしかにデットは微笑んだと確信できる何かがあった。  しいて言うのならそれは“家族”だからなのかもしれない。
  • 156 祈祷 彗月@Der Mond id:8C3mtkl1

    2011-11-20(日) 14:17:23 [削除依頼]
     同じ師匠をもつだけというちっぽけな接点だが、同じ屋敷に住む者同士、それくらい良いではないか。
     「……変なこと考えてるんじゃねぇだろうな、デット……」
     だから余計、グルスに付きまとって離れない悪い予感。デットは何かする。それも、ネオにとって良くないこと。
     低く唸るようなグルスも声にも怯むことのないデット。何も言わず、静かにグルスの部屋を出た。

     扉を閉め、背中を預け、肩から大きく息を吐き出す。
     まるで先ほどまで息を止めていたかのようだ。出した息はどことなく震え、今でも自分の決意に迷いがあるのがよく分かる。
     (俺は、もう戻れないんだ。承諾してしまったから、諦めてしまったから)
     懺悔するかのように言ったデットは顔の前で両手を硬く握る。
     もうここに来ることはないと、自分へ強く言った。

      
     「関心しないねぇ、サース?」
     そう言ったネオの口調には怒りが含まれている。
     木で出来ている一人用のシンプルな椅子。それに乗っているネオは紅茶を左手に浮いている。
     たくさんの本、書物が無造作に置かれ、古代の図書館を創造するような場所。
     ネオは正面で不敵な笑みを浮かべるサースに殺意を向けていた。
  • 157 祈祷 彗月@Der Mond id:cUGAd5b0

    2011-11-21(月) 16:29:22 [削除依頼]
     手に持ったカップに僅かな亀裂が入る。
     パキッ――と音を立て、中の紅茶が僅かに跳ね上がった。
     両手を胸の高さに上げたサースは僅かに笑いを含んだ顔でネオを見返した。 
     「俺が何かしたのかい? ネオちゃんに怒られるようなことした覚えはないはずだけど?」
     「だまりな。私が気づかないとでも思ってんのかい? それほど愚.かじゃないだろう?」
     あくまでもとぼけるサース。 
     ネオはどんなに小さいことでも見逃すまいと、瞳を鋭くサースを見つめたままだ。
     「……俺はお前にはまったく信用されてないらしい」
     目を瞑り、まるで悲劇のヒロインのように言うサース。
     だがその口ぶりは最初から信用されていないことを知っているような、分かりきっていたような口ぶりである。
     その見透かしたような口調が気に入らないネオは次第に苛立ち始めていた。
     「今さらだろう? そんなこと。デットを引き込んで何やらからすつもっっりぃ!?」
     ネオの言葉が不自然に切れた。
     しかもそれだけでなく、余裕のあったはずのその顔は僅かながら蒼白したように見える。
     コップを床へと落とし、左腕を押さえた。
     その腕からは僅かだが血が滴り落ちている。一滴一滴、絶妙な間を空けて、その赤は落ちていった。
     「何驚いているんだい? ネオ。まさか本当に100パーセント死なない、だなんて思ってないだろう?」
     「っ……! 貴様、いったい何をしたっ」
     いつの間にか、サースの足元を囲むように紫の炎が小さく出ているではないか。綺麗な弧を描くそれは、ゆらりゆらりと漂っているようにも見える。
     完全に不意を突かれたネオは傷を負った左腕を強く握る。感じるのは先ほどまでなかった殺意の無い殺気だ。暗殺を命じられた暗殺者のように相手に対し、これといった恨みの無い殺し。
     その殺気が今、自分に向けられているのだと思うと背筋がぞぞっと震える。
     やっと死.ねるのだ。長かった生が、ここで終わるのだ。
     一瞬安堵のようなものを感じたネオ。
     それに自分で戸惑った。まるでこれでは死.ぬことを望み、喜んでいるようではないか。グルフェルトから託された、守らねばならない歴史を放棄しようとした。
     「私は……私は、死ねない!!」
     自分を叱咤し、グルフェルトに詫びるように叫んだ。
     この声はグルスにも聞こえているはずだ。別に助けとして呼んだつもりは無いが、そう聞こえてしまうだろう。
     ネオへと一切感情のない瞳を向けるサースは本を朗読するかのように何気なく言葉を発した。
     
     「これは復.讐だ。紫の炎を操る道化――レグレウルのな」
     
     普通に口にしたその名は、死守しなければならない名だった。
     予想外だったためか、ネオはわが耳を疑い、小さく唇を震わせた。
     サースが知るはずの無い名。真の歴史を隠し、ネオが裏で作り上げた歴史には登場することのない名のはずだ。
  • 158 祈祷 彗月@Der Mond id:x0H4t201

    2011-11-24(木) 17:33:51 [削除依頼]
    ネオは歴史が破られていくのを感じた。
     心臓が高鳴り、サースを見つめていながら、その瞳は宙を見ている。
     「サース、お前はレグレウルの血を引くんだね。だから紫の炎を操れている……。どうやら私は致命的な見落としをしていたらしい」
     自嘲的に微笑むネオ。
     それを余裕の表情でかえしたサース。
     
     「俺は歴史になんて興味ねぇな。ただ、この血が騒ぐんだよ、グルフェルトを、その血を、獣を根絶やしにしろってなぁ!!」
     サースが叫んだのとほぼ同時、ネオの体は後ろの本棚へと飛ばされた。
     背中を打ちつけ、無残にも床へと倒れたネオはその痛みのあまり、声さえも出なかった。
     死ねない道化がここで死.ぬ。
     頭の回転が速いネオはやっと分かった。なぜサースがこうも余裕でネオへと攻撃を与えられるのか。
     死.ねないネオが死.ぬ方法。それは、グルフェルトを倒したとき、誕生した。
     紫の炎はレグレウルの武器だ。グルフェルトを倒すためにレグレウルと共に戦った炎だ。それがグルフェルトを怨.んでも不思議ではない。理由がどうであれ、自分を使う主を殺.したのだ。
     復.讐と化した紫の炎はネオを殺せてもおかしくはない。グルフェルトに関わった道化なのだから。

     「私もなめられたもんだな……」
     蹲りながらも独り言のように呟いたネオは、身を起こした。ゆっくり離した左腕は血が赤黒く固まっている。
     額から流れ落ちる血を拭い、それで唇を紅く染めた。
     本気で戦うのは何年ぶりだろうか。
     いや、ここ数年はずっと安定した平和だったのだから数十年かもしれない。
  • 159 祈祷 彗月@Der Mond id:x0H4t201

    2011-11-24(木) 17:35:54 [削除依頼]
    ネオは歴史が破られていくのを感じた。
     心臓が高鳴り、サースを見つめていながら、その瞳は宙を見ている。
     「サース、お前はレグレウルの血を引くんだね。だから紫の炎を操れている……。どうやら私は致命的な見落としをしていたらしい」
     自嘲的に微笑むネオ。
     それを余裕の表情でかえしたサース。
     
     「俺は歴史になんて興味ねぇな。ただ、この血が騒ぐんだよ、グルフェルトを、その血を、獣を根絶やしにしろってなぁ!!」
     サースが叫んだのとほぼ同時、ネオの体は後ろの本棚へと飛ばされた。
     背中を打ちつけ、無残にも床へと倒れたネオはその痛みのあまり、声さえも出なかった。
     死ねない道化がここで死.ぬ。
     頭の回転が速いネオはやっと分かった。なぜサースがこうも余裕でネオへと攻撃を与えられるのか。
     死.ねないネオが死.ぬ方法。それは、グルフェルトを倒したとき、誕生した。
     紫の炎はレグレウルの武器だ。グルフェルトを倒すためにレグレウルと共に戦った炎だ。それがグルフェルトを怨.んでも不思議ではない。理由がどうであれ、自分を使う主を殺.したのだ。
     復.讐と化した紫の炎はネオを殺せてもおかしくはない。グルフェルトに関わった道化なのだから。

     「私もなめられたもんだな……」
     蹲りながらも独り言のように呟いたネオは、身を起こした。ゆっくり離した左腕は血が赤黒く固まっている。
     額から流れ落ちる血を拭い、それで唇を紅く染めた。
     本気で戦うのは何年ぶりだろうか。
     いや、ここ数年はずっと安定した平和だったのだから数十年かもしれない。
  • 160 祈祷 彗月@Der Mond id:LUAIKBF/

    2011-11-26(土) 19:42:45 [削除依頼]
     「……さすがだな、ネオ。殺.すのが惜しいよ、まったく」
     闇から静かに現れ始める星空に感嘆の声をあげ、ネオを褒めた。ここまで出来るのはネオしかしらないサース。
     いや、捜したって見つかる見込みはないだろう。
     だからこそ余計に殺.さなければならないのかもしれない。理由はないが、ふとサースはそう思った。
     そして、それが最後――。
     何の合図もなしに、生き残るための殺.し合いが始まった……。

     身を低く、短剣の先端をサースへ向けたネオは迅速の速さで駆け抜けた。狙うのはサースの心臓だ。人間同様、心臓をやられれば死に至るほどの傷に。
     とくに驚きもしないサースは指を鳴らし、下から炎の壁をネオとの間に出現させた。鉄のように硬い壁は短剣を見事弾き返す。
     ネオは後ろに数歩下がっただけで転ぶほどではない。
     だがサースもこれで終わりというわけではなく、壁から無数に生え出した手がネオへと向けられた。物体としての形を持った炎の手の上に乗り、ぶら下り、掻い潜り。向かってきた手を短剣で切り落とした。
     特に大した攻撃力を持たない手を切り落としていくのは簡単なのだが、なんせ数が無限に増え続けていくのだ。これは体力勝負という形になっていく。
     切り落とされた手は床へと落ちた瞬間、紫の炎あげながら消えていく。心臓部といような急所がない壁だ。
     軽い音をたて、床を蹴り上げ向かってくる手を切り落としていくうちに、除々に体が重くなっていくのを感じた。
  • 161 祈祷 彗月@Der Mond id:LUAIKBF/

    2011-11-26(土) 19:43:13 [削除依頼]
     「……さすがだな、ネオ。殺.すのが惜しいよ、まったく」
     闇から静かに現れ始める星空に感嘆の声をあげ、ネオを褒めた。ここまで出来るのはネオしかしらないサース。
     いや、捜したって見つかる見込みはないだろう。
     だからこそ余計に殺.さなければならないのかもしれない。理由はないが、ふとサースはそう思った。
     そして、それが最後――。
     何の合図もなしに、生き残るための殺.し合いが始まった……。

     身を低く、短剣の先端をサースへ向けたネオは迅速の速さで駆け抜けた。狙うのはサースの心臓だ。人間同様、心臓をやられれば死に至るほどの傷に。
     とくに驚きもしないサースは指を鳴らし、下から炎の壁をネオとの間に出現させた。鉄のように硬い壁は短剣を見事弾き返す。
     ネオは後ろに数歩下がっただけで転ぶほどではない。
     だがサースもこれで終わりというわけではなく、壁から無数に生え出した手がネオへと向けられた。物体としての形を持った炎の手の上に乗り、ぶら下り、掻い潜り。向かってきた手を短剣で切り落とした。
     特に大した攻撃力を持たない手を切り落としていくのは簡単なのだが、なんせ数が無限に増え続けていくのだ。これは体力勝負という形になっていく。
     切り落とされた手は床へと落ちた瞬間、紫の炎あげながら消えていく。心臓部といような急所がない壁だ。
     軽い音をたて、床を蹴り上げ向かってくる手を切り落としていくうちに、除々に体が重くなっていくのを感じた。
  • 162 祈祷 彗月@Der Mond id:LUAIKBF/

    2011-11-26(土) 19:44:47 [削除依頼]
    うぉっΣ 同じのを二回もっ……!! ってことで>161はスルーの方向でお願いしますm(_ _)m
  • 163 祈祷 彗月@Der Mond id:LUAIKBF/

    2011-11-26(土) 19:45:41 [削除依頼]
     疲れだ。
     同じような動作を続けているうちに、足を中心に疲れてきている。手から少しはなれ、片膝を付いたネオは右足首を軽く触った。若干赤みを帯びており、無理をすることは禁物だ。
     
     「くっ……。っ!?っ……ぅあ!!?」
     顔をあげた瞬間、硬いものが飛んできた。
     先ほどと同じ手だ。
     離れているからと少しばかり安心したのが仇となったのだ。
     「う……っ!!」
     真上に叩きあ上げられ、見えない天井にぶつかった。
     何の抵抗もなく、床へと落ちるネオ。うっすらと目を開け、床にぶつかるギリギリで短剣を床へと差込み、短剣を両手で持ったまま綺麗な逆立ちになった。
     そのまま背中へと迫る手を感じ、ぶつかる寸前に身を翻し、短剣を抜き、手を切り落とす。
     何もかも、危ない命の駆け引き状態だった。
     叩き上げられた時点で少しでも気を失っていれば死んでいたかもしれない。
     ネオは、痛む足のことを考え、少しでも早くこの戦いを終わらせたかった。そのため、再びサースとの間合いを詰めるべく駆け出した。右手で短剣をくるっと回し、握りなおす。
     変わらず向かってくる手を、邪魔になるものだけを切り落とし、壁へと突進した。
     
     「……」
     サースは走り向かってくるネオを見て何を思ったのか、無言で笑った。そして、右手を壁へと当てた瞬間に壁が砕け散った。
     いや、飛び散ったのだ。
     壁は鋼のように硬くなり、砕け、ネオへと飛んでいった。
     飛んでくる壁の欠片に備え、素早く短剣の形状を変化させるネオ。赤黒い光を帯びた短剣はすくざま細長く伸び、レイピアへと変形した。
     それを回しながらテンポよく欠片を粉砕していく。
     目の前にはサース。
  • 164 祈祷 彗月@Der Mond id:LUAIKBF/

    2011-11-26(土) 20:25:29 [削除依頼]
     壁の欠片がなくなり、ネオはレイピアをサースへと突き刺した。ずぶっ……と鈍い音をあげて見事サースの心臓部へと刺さったレイピア。
     だがいぜんサースの余裕の笑みは崩れていない。
     おかしく思ったネオは、刺さったレイピアを見て、不自然な点に気づいた。
     「っ……!?」
     危ないと感じ、ネオがレイピアを抜き取ろうとしたときにはもう遅かった。
     刺されたのにもかかわらず、サースは血を流してはいない。道化であろうと血は出るのに、だ。
     右から来るサースの平手打ちを横目で見たネオは間を見計らって体を伏せ、防いだ。そのままサースに次の攻撃をさせることなく、左足を蹴り飛ばす。
     防ぎきれなかったサースは体制を崩し、転ぶことはないが、体大きくぐらつき、後ろへ数歩下がる。
     だがネオの攻撃はここで終わりではない。サースの顔の位置まで高くジャンプするなり、右足で顔面を蹴り飛ばした。
     「うがっ……っ」
     床から数十センチ浮いたサースはそのまま壁まで吹き飛ばされるかと思えば、両足を地面につき、軽く下がっただけだ。
     肩で大きく息を吸いながらネオを静かに睨んだ。腫れた頬から血は出ていないものの、結構痛いはずだ。余裕の表情などもうどこにもなく、怒り任せに攻撃をしてきそうである。
     ネオはそれを危機的に危ないと判断し、レイピアを目で探した。蹴り飛ばされた反動でサースから抜けたレイピアは二人から少し離れたところに落ちていた。
     だがそれは二人から離れてはいるものの、サースよりだ。走ったところで間に合うとは思えない上に、もし掴めたとしてもその瞬間サースの致命的な攻撃を避けきれるとは思えない。
     
     「よくもやってくれたな……。顔を蹴り飛ばされたのは初めてだぜ」
     「あら? じゃあ私が初めてなんだね」
     「この屈辱……。お前はどうにも死に急いだらしいな」
     「それは気のせいだとおもうけど?」
     空間に響かせながら怒気を含んだ声で話しかけるサース。
     ネオは不安を隠すように余裕ぶって話してはいるが、内心どうしようか迷っいに迷っていた。
     唯一の救いといえば、サースがレイピアに気づいていないことだ。用心深いサースのことだ、もし怒りに震えていなければネオがレイピアを狙っていることに気づいているだろう。
     ばれぬよう、小さく息を吐き出したネオはつばを飲み込み、意を決してレイピアへと走り出した。
  • 165 祈祷 彗月@冬眠期デスネ id:LUAIKBF/

    2011-11-26(土) 22:26:28 [削除依頼]
     サースが何かを叫んでいるようにも感じたが聞き取れなかった。今は一秒でも速くレイピアを掴みたかったのだ。
     紫の炎をあげた槍がネオへと幾本も飛んでくる。あえてそれを避けないネオは痛みを堪えながら、やっとの思いでレイピアを掴み取った。
     レイピアを掴み、力を送り込めばこんどは二つの黒い短剣へと変形させた。
     右手で持った短剣を空中で一回転させ、左手の短剣で勢いよく弾く。弾かれた短剣は高い音を発し、垂直にサース目掛けて飛んだ。
     避ける必要もないと判断したのか、サースはその場に立ったままだ。右手の人差し指に小さな炎を発生させ、大きく腕を回し、簡単な魔方陣のような物を描く。
     短剣は速さが落ちることなく魔方陣へとぶつかった。ぶれることなくぶつかった短剣は床へ落ちる前に黒い煙幕を発生させた。
     さすが驚いたサースは僅かに怯んだのち、魔方陣へと右手を翳した。それに反応した魔方陣は紫色の光を上げ、またたくまに煙幕をかき消す。
     「……あまいよ」
     「っ!?」
     煙幕にばかり気をとられていたサースは耳元で声がしたことに硬直した。
     急いで声がした方向へ顔を向けるが時すでに遅し。当然のようにネオの姿はない。
     
     微かにひゅっと風を切るような音を聞いただけだ。
     もしやと思ったときには遅く、心臓に何かが刺さったような感覚。痛みを感じた。激痛とよぶには小さい、それでも電気が走ったような鋭い痛み。
     サースの表情と滴り落ちる血からネオは確信した。効いた、と。刺した短剣をゆっくりと引き抜いたネオはゆっくりと一歩下がった。
     唖然とするサースは口からも血を流している。“信じられない”とでも言う表情で、ネオを見つめ、己の心臓を見つめた。そっと手を当てれば穴が開いている場所のところで指が凹む。
     何の反応もないサースにネオは不振の目を向けた。
     「……お、前も、死……ぬ」
     最期のサースの言葉。それは、遺言のようでもあった。
  • 166 祈祷 彗月@冬眠期デスネ id:LUAIKBF/

    2011-11-26(土) 22:33:44 [削除依頼]
    ネオが意味を問うまもなく、綺麗に後ろへ倒れたサースは静かに息を引き取った……。

     「サー……ス、さ、ま?」
     「っ!?」
     いきなり背後から聞こえた声。震えているその声には十分聞き覚えがあった。もしやと振り返った瞬間、突き飛ばされるような感覚。
     間一髪踏みとどまったものの、大切な短剣を落としてしまった。
     カランと、金属のような音をたてて落ちた短剣を拾うことも出来ないネオはそっと手で触れた。きっちり心臓部に刺さった濃い紫色の長い矢を。
     サースの放つ紫色とよく似た、けれどもそれ以上に黒に近いほどの紫。それは憎しみが宿っているようにさえ見える。
     ゆっくりと顔を上げ、矢の放たれた方向、すなわち声のした方向を向けば、デットがいた。
     大粒の涙を流し、子供のように嗚咽をもらすデットの姿。
     「ネオ様がっ、ネオ様が……サースっ様っ……を」
     肩で大きく息を吸い、吐き出し、涙を流すデット。それでも瞳だけは憎しみと、少しだけの後悔だけが黒く光っていた。
     だからだろうか、ネオはデットへ憎しみを向けることが出来ない。サースと同じように、殺してしまおうとは思えなかった。
     「お前……本当はずっとここに隠れていたんだね? サースと組んで、ここにいたんだね」
     「ネ、オっ様……」
     本当は今すぐデットを抱きしめてやりたい。
     ネオの中のその気持ちに反し、体は一歩も動いてはくれなかった。重くて重くて、体が自由に動いてはくれないのだ。
     デットも動かない。拳を握り、泣いているだけだ。
     
     空間がぐらりと歪んだ。
     それは、ネオが空間を保っているだけの力が残されていない証拠。おかげでいつのまにか短剣を姿を消している。
  • 167 祈祷 彗月@冬眠期デスネ id:YrOhSDQ/

    2011-11-27(日) 17:31:17 [削除依頼]
    小さく笑った。
     ネオは、朽ち行く己の両手を見つめ、悔しそうに小さく笑っただけだ。
     おそらく、今ネオの心臓部に刺さり、抜こうとしてもまったく抜けないこの矢はサースの炎から出来ている。でなければネオが死ぬなどありえないのだから。
     そして、もう一つ。これは憶測でしかないのだが、ネオは死の間際にふと、答えが分かったような気がしたのだ。グルスが道化師になれない理由を……。
     「悔しいもんだね。弟子のために何にもやってやれない師匠は……」
     それが、ネオの最期の言葉。足元から崩れ落ち、眠っているかのように静かに息を引き取った。
     デットはそれを見つめているだけだ。
     
     ふと、足音が近づいてくるのが分かった。猛スピードで近づいてきた足音は、勢いよくドアをあけた。
     大きくデットの肩が跳ねた。
     おそるおそるドアへ目をやれば、目を見開いたグルスがいる。
     「……ネオ、様?」
     「……死んでるよ……」
     グルスがネオに近づき、静かに肩を揺する。
     デットは顔を背け、目を瞑り、静かに言う。
     だがそんな簡単な言葉でグルスが納得できるはずもなく、デットへと掴みかかった。
     「おい!! どーゆーことだよ!? なんでネオ様が死んでんだよっ!!!」
     「……こ、ろしたからだよ」
     「!?」
     デットからの予想もしない言葉を聴いたグルスは止まった。“殺された”ではない。“殺した”という言葉。それは、自分がやったと言っているのではないのか? 少し前に聞いた、ネオ様が好きという言葉は嘘だったのか?
     グルスの中にデットへと聞いたことが渦を巻いたようにぐるぐる回る。それでもなぜかどれも言葉として口から出てこない。
     仕方なく目で訴えかけるがデットは合わせようとはしなかった。
  • 168 祈祷 彗月@冬眠期デスネ id:YrOhSDQ/

    2011-11-27(日) 17:35:33 [削除依頼]
    ここでようやくサースにも気づいたグルス。掴んでいたデットの肩から手をどかし、用心深くサースへと近づいた。
     そして、ネオ同様死んでいることを確認。
     肩から大きく息を吐き出した。まるで、安堵しているようだ。サースが死んで良かったと、嬉しいのだと。
     だがサースはグルスのそのような態度が気に食わなかった。
     何も知らないデットなら、グルスと同じように安堵しただろう。
     だがもう何も知らないデットではないのだ。
     「なんでだよっ!」
     今度はデットがグルスへと掴みかかった。いつのまにか止まった涙が再び頬を流れた。
     視界が歪み、しっかりとグルスが見えない。
     「なんでだよっ! なんでネオ様だと悲しむくせにサース様じゃ喜ぶんだよっ!!」
     「っぅ!……デッ、ト……?」
     思うように力が入らない手でグルスを突き飛ばした。
     突き飛ばす、といってもその軽い力では十分にグルスを吹き飛ばすことができず、後ろに一歩下がっただけなのだが。

     デットは自分でも驚くほどグルスを睨んでいた。サースの死を悲しむのは、もしかしたら自分一人かもしれない。
     否定したくとも否定できないその考えはデットを怒らすのには十分であった。
     腰から一本の果物ナイフを取り出したデットは、極めて冷静な表情でグルスを見つめた。ゆっくりとナイフを持った手を上げ、グルスの首元にナイフを向ける。
     そして、一言。

     「俺は、もうネオ様もグルス、お前も信じない」

     心に刻む、心のはいった声で言ったデットはグルスの静止を聞かず、窓へと体当たりした。デットの体に耐え切れなかったガラスは砕け、外へと落ちていったデット。
     グルスが急いで窓へと駆けつけたときにはもう遅く、見下ろした先にデットの姿はなかった。
     
            ―END―
  • 169 祈祷 彗月@冬眠期デスネ id:YrOhSDQ/

    2011-11-27(日) 17:39:07 [削除依頼]
     あとがき⇒
     
     まず、お疲れ様でしたッ!!
     紅い道化者の孤独、無事(?)完結させていただきましたm(_ _)m
     鼓動に引き続き、なんだか釈然としないような終わり方ですね((
     まぁ…、連続でプロットナシだったのでw
     でも正直言って紅い道化者は筆跡していて楽しいですb
     なんやかんやら謎は残っているので第三弾! 行かせていただく予定でございます。
     あ、でも次(第三弾)はプロット作る予定ですよっノ
     さすがにここまで来ると本当にお先真っ暗な気がしますので。
     ですがちょっとお休みさせていただきます。プロットもきっちりかっちり練りたいので。
     もうそろそろ完成予定の初プロット作品(予定題:‐鬨-)がある程度進んだら道化者さんもスタートしようかなと。
     コメントをくれた方々、評価・感想を書いてくださった皆様、本当に有難うございました。
     祈祷 彗月、これからも頑張っていくのでどうぞよろしくお願いいたします。
  • 170 五月雨(元 ジョバンニ) id:LBab0Gi1

    2011-12-12(月) 22:13:22 [削除依頼]
    評価に来たジョバンニです。お久しぶりです^^

    まずは、完結おめでとうございます。しかし本当の完結という意味ではこれからだと思いますので、第三弾を楽しみにしております。
    未熟者ゆえ至らない点があると思いますが、どうか温かい目で見てくださると嬉しいです。

    それでは始めますね。
    前回アドバイスで言わせていただいた描写の取捨選択・分かりやすさの二点については、俺が見る限りそこまで上達してはいませんでした。特に描写の取捨選択はもう少し意識を強めた方がよいでしょう。回りくどく、そこまで必要性のない表現が点々とあったように思えるので、注意が必要かもしれません。しかしながら、戦闘描写などを見ればテンポの取り方や見せ場を作る努力が分かり、実際にその努力は小説を輝かせています。評価ということも忘れグルフェルトとレグレウルの話を読んでしまったくらいですから、俺としてはファンタジーらしい魅力を十二分に持っていると確信できます。確実に技術は上がっているので、基本を大切にこれからも頑張ってほしいです。
    <アドバイス>
    未熟者ながらアドバイスさせていただきます。

    まずは「具体的」について。小説とは曖昧なものです。世界観ですら形は見えず、全て文章で表わさなければなりませんから。ということは、小説はどういったところで、具体的な、細かいものを書いていくかがポイントなんだと思います。まあ描写の取捨選択と同じようなものですが、具体的な描写というのに重点を置くという意味です。特に戦闘シーンなどでは「具体的」がポイントになります。例えば、剣と剣が入り交じる斬撃の嵐を描写する時、その一撃一撃を細かく描写するわけありませんよね? 普通は雰囲気などを描写して終わります。スピード感が減りますから。俺が言いたいのは、曖昧な描写と具体的な描写の区別を意識する、ということ。どんな戦闘であれ、具体的な動き……「A君は走った。土塊が散ると同時に消え、刹那にBの上へ出現。風よりも速く剣を振り下ろす」くらいの細かな描写を入れないと素っ気ないものとなります。そして、細かな描写ばかりだと読者も疲れ、テンポも平坦になるから曖昧な描写「二人が舞う。それは無数の斬撃を感じさせないほど滑らかに」のようなものも混ぜる。こうして小説は全体のバランスを保ちます。どこで具体的な文章を書いて勝負に出るか、そこが腕の見せ所です。それを意識すれば、更にあなたの文章は安定するのではないでしょうか。

    次にアングル。三人称とはいえ、決して「神からのアングル」というわけではありませんよね。一人を中心とした三人称、全体を見る三人称、そうやってアングルは三人称の場合、くるくる変わります。あなたの書き方はこうした「アングル」にムラがあるように思えます。戦闘を見ると、一人を中心としてるのか全体を見ているのかハッキリしていない気がしました。余裕があれば、どこから何を描写するか明確にするため、確認してみましょう。慣れるとアングルを利用した描写が出来るので、面白いですよ。

    これで評価は終了です。
    素晴らしいお話で、参考になりました。個人的には道化者の能力がとても個性豊かで面白い……特に四季を操るというものに、純粋にセンスを感じました。
    質問などありましたら遠慮なく準備版にて。では失礼しました。
  • 171 祈祷 彗月@冬眠期デスネ id:siVW62Y/

    2011-12-13(火) 17:19:29 [削除依頼]
    五月雨(ジョバンニ)さん
     評価有難うございました。
     詳しくは準備板で。
コメントを投稿する
名前必須

投稿内容必須

残り文字

投稿前の確認事項
  • 掲示板ガイドを守っていますか?
  • 個人特定できるような内容ではありませんか?
  • 他人を不快にさせる内容ではありませんか?

このスレッドの更新通知を受け取ろう!

ログインしてお気に入りに登録すると、
このスレッドの更新通知が受け取れます。

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません

閲覧履歴

  • 最近見たスレッドはありません

キャスフィへのご意見・ご感想

貴重なご意見
ありがとうございました!

今後ともキャスフィを
よろしくお願い申し上げます。

※こちらから削除依頼は受け付けておりません。ご了承ください。もし依頼された場合、こちらからの削除対応はいたしかねます。
※また大変恐縮ではございますが、個々のご意見にお返事できないことを予めご了承ください。

ログイン

会員登録するとお気に入りに登録したスレッドの更新通知をメールで受け取ることができます。

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません
閲覧履歴
  • 最近見たスレッドはありません