Before Under 兵器=少女4コメント

1 霧海 裂夜 id:jeLpu5y1

2011-05-31(火) 14:09:01 [削除依頼]
 闇。
 その空間を一言で表すのなら、その言葉が一番適しているだろう。
 一見するとただの大衆食堂にしか見えないその店のカウンター席には一人の老人と青年が座っている。二人のすぐ後ろの壁に飾られたダーツには矢が刺さっておらず、代わりに銀色のナイフが刺さっていた。
 店の扉には鍵がかけられ、ブラインドは全て降ろされている。外部とその空間を遮断しているかのようだ。
 横浜。
 この辺りは全国的に観光地として知られ、中華街や遊園地、大型ショッピングモールなどには連日多くの人が訪れる――――が、これはあくまでも表社会の話でしかない。
 殺しを生業とする殺し屋達にとってこの地は、血に塗れた裏社会の中心地でしかなかった。
 数年前、『行方不明者戸籍破棄法』という法律が施行された。五年以上行方の知れない者の戸籍を全て破棄し、存在そのものをなかったことにするという内容のものだ。
 確かに、この法律が施行されたことによって得られた利益は大きかった。見つかりそうにもない行方不明者を探す手間が省かれ、その分の時間を有効的に使うこともできた。
 だが、それと同時に犯罪者が増えてしまったのも事実だ。
 存在しない者を法律で裁くことはできない。
 この法律は、五年以上行方をくらませることに成功した者はどんな罪を犯しても良いと言っているようなものなのだ。
「この間は本当に御苦労だったな」
 白く色を失った髪の中に未だ僅かな黒髪を残す老人は、ねぎらうように声をかける。
「僕は……まだまだ未熟です。『虚人(コジン)』となってもう一年も経つというのに、僕は人を殺すことに対する抵抗感を完全にはぬぐい切れていないのですから」
 アイスブロンドの髪をした青年――――潤の右の頬にはうっすらと線が浮かびあがっており、微かに血がにじんでいた。彼の着ている黒いコートのポケットからは小型の銃が顔を出してしまっているが、本人は全く気付いていない。
 本当に、まだまだ未熟なのだ。
 戸籍を失った者は『虚人』と呼ばれ、その多くは殺人などの犯罪に手を染め、暗殺組織に所属する。潤もその一人だ。
 プロの暗殺者は人を殺すという行為に対して何の抵抗もない。いちいちそんなことを気にしていては身がもたないからだ。
 通常、暗殺者は標的に対して自らが暗殺者であることを悟られないようにするものなのだが――――これではすぐに暗殺者であるとバレてしまう。そうなれば、かなり厄介なことになりかねない。
「確かに君はまだまだ未熟だ。けれど、蕾はいつか必ず花開くものだよ」
「そうだといいのですが……」
 老人の言葉に、潤は曖昧な笑みを浮かべた。
 一見穏やかそうに見えるこの老人は、数多くの暗殺組織の中でもかなり有名な『Under』という組織のリーダー。そして、潤の上司でもある。
 それにも関わらず、潤があまり緊張していないのはこの老人の纏う優しげな雰囲気のおかげだろう。
「大丈夫さ、君なら――――ところで、君にどうしても頼みたいことがあるのだが……」
「頼みたいこと、ですか?」
「君には誰かを傷つけることよりも誰かを護ることの方が向いているような気がするんだ……君は優しすぎるからな。君には、これを護ってもらいたい」
 老人はそう言ってスーツの内ポケットから一枚の写真を取り出し、隣の席に座った潤に手渡す。
 新たな仕事の内容に若干の不信感を覚えつつも、潤は受け取った写真をじっと見つめた――――
  • 2 霧海 裂夜 id:jeLpu5y1

    2011-05-31(火) 14:11:07 [削除依頼]
     絶賛スランプ中の霧海裂夜です。
     一度全てを見直してみたらどうかな……と思いまして、書きなおすことにしました。
     すみません。
     すぐに元の小説に追いつくようにしますので……
     本当にすみません。
  • 3 霧海 裂夜 id:jeLpu5y1

    2011-05-31(火) 14:13:40 [削除依頼]
     ?、

         『不死者』


     不死者。
     刃物で心臓を突き刺そうと首を折られようと絶対に死なない人間など、この世界に存在するのだろうか?
     仮に存在していたとしてもそれを人間と呼ぶことは出来るのだろうか?
     潤はそんな疑問を抱きながら本を閉じる。
     『不死者』という短いタイトルのこの本で描かれているのは人間でもなく化け物でもない少女の話だ。
     少女は初めに、崖から落ちて死んだ――――いや、死んだはずだった。
     埋葬される直前に、どういうわけか彼女は息を吹き返したのだ。動きを止めていた心臓は再び動き出し、彼女は何事もなかったかのように起き上がった。
     そして、彼女のことを気味悪がった何人かの人間は彼女を殺す。が、彼女はその度に蘇ってしまう。
     こんな生き物が実際にいたとしたら、この世の中はどうなってしまうのだろうか――――?
     潤は心の中で呟き、顔をあげる。
     白い正方形をした部屋。その部屋は、酷く閑散としていた。
     家具と呼べるようなものは何一つなく、窓も天井近くに小さいものが一つだけ。
     潤はその部屋で一人、待っていた。
     『3月26日午前10時に本部13階に来るように』という最低限の言葉だけでつづられた文章が携帯のメールで送られてきたのは、今から約一週間前のことだ。 
     暗殺組織『Under』の仕事のほとんどは暗殺なのだが――――潤は今回の仕事が暗殺でないことを知っている。組織のリーダーから先日、直接話を聞いていたからだ。
    「皆川 潤<ミナガワ ジュン>ですね」
     ギイイ、という不快な音を立てながら白い扉が開き、潤のものと同じ黒いコートを身に纏った長髪の青年が現れる。
     彼の腰には、長い木刀があった。
     建物の地下1階から最上階まで、全てが『Under』のものであるとはいえ、武器を堂々と見せながら歩くというのはあまり良くない。
     一般人にその姿を見られたらどうするんだ? と潤は心の中で呟いた。
  • 4 霧海 裂夜 id:jeLpu5y1

    2011-05-31(火) 14:32:31 [削除依頼]
     青年は不気味な笑みを浮かべながら、壁に寄りかかった潤の方へと歩み寄る。
     その瞳はどこか悲しげで、それと同時に深い憎しみで彩られているように潤には感じられた。
    「あなたのような腰抜けにこんな大事な仕事……全く、リーダーは何を考えているのだろうか? 俺には分からない」
     青年は口惜しそうに話す。
    「あなたには、最強の『兵器』を護ってもらいます。本当は私が引き受けたかったのですが……どういうわけかリーダーはあなたを選んだ」
     黒く艶のある髪を腰まで伸ばした彼は悔しげに顔を歪ませる。
     そして、「いつか必ずお前をこの手で殺してやる」とだけ付け加えてその場を足早に立ち去った。
     あいつは一体何がしたかったんだ? という疑問を抱きつつ、潤はもう一度本を開く。
     しおりの様なものは何もはさんでいなかったうえ、どこまで読んだのかもわからない本。それをぼんやりと眺めていると何故だか様々な光景が頭の中に浮かんできた。
     助けてくれと何度も叫びながら血だらけで地面を転げまわる男、炎に身を焼かれた女。何も知らず死んでいった子供。
     彼らの命を奪ったのは全てこの右手。
     潤は深い溜息をついた。
     その時――――
    「あなたは、誰?」
     鈴の音のように軽快な声が、開きっぱなしのドアの方から聞こえてくる。
     潤は本を閉じ即座にドアの方へと視線を移すと、そこには少女が立っていた。
     白いレースの付いたふんわりとしたワンピースを身に纏ったその少女は不思議そうに首を傾けている。
     華奢なその少女の身長はかなり低く、潤には酷く幼げに見えた。
    「あなたは、誰なの?」
     少女は穏やかな声色で問う。
    「僕は……潤。皆川 潤だ。君……は?」
     潤の頭の中には二つの疑問が浮かんでいた。一つは、この少女が誰なのかということ。そしてもう一つは、何故こんなにも幼い少女がこんな場所にいるのかということだ。
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