この真っ白な部屋で6コメント

1 アナログ人間 id:r0jtCV6.

2011-05-29(日) 00:26:20 [削除依頼]
僕は椅子に座っている。

僕がいるこの部屋には、窓が一つとドア一つ。

そのたった一つの窓からは、春の日差しが差し込んでいる。
光は白い壁をさらに白く見せて、まるで光っているようだ。

春風によって揺らされるカーテンの隙間からは、淡い水色の空と白い雲。
それだけだと味気ない風景だとも言えるが、桜の花のピンク色が春らしさを醸し出して美しいコントラストを描いていた。

焦茶色のドアの横には、同じ色をした大き目の机が置いてある。
机の上は整頓されているとは言えず、色とりどりで、大小様々な本が散乱している。
僕が座っている椅子も、この机とペアになっているものだ。

そして机と反対側の壁際には、木で作られたベッドが設置されている。
暖かいアイボリーの布団は、その色の通りとても柔らかい。


これだけ書くと、この部屋は何の変哲もないつまらない空間のように感じるだろう。

しかし、この部屋を何の変哲もないと言うには少しだけ無理がある。


――――コン、コン

少しだけためらいがちなノックの音。

「どうぞ」

返事をすると、軋んだ音を立ててドアが開く。

恐る恐る入ってきたのは、若い小太りな男だった。

「あのぉ、あ、すいません、何か何となく来ちゃったんですけど、その、何か」

恐る恐るを通り越して挙動不審になっている男。
なんだか見ていて可哀想だ。

「大丈夫です、どうぞくつろいでください」

――――この部屋には、僕も知らない人がたくさんやってくる。

大抵悩みを抱えていたり、心が不安定になっているような人だ。

なぜかこの部屋は、そんな人を引き寄せてしまうらしい。

……ほら、何の変哲もないとは言えないでしょう。
  • 2 アナログ人間 id:r0jtCV6.

    2011-05-29(日) 00:55:05 [削除依頼]
    とにかく、僕はいつものようにこの人の話を聞くことにした。
    話を聞いて、問題解決の手伝いをする。
    これで少しでも楽になってくれたら、というささやかな希望だ。

    ……というのは建前で。
    正直に言うと帰ってもらうきっかけがほしいだけ。
    自分の部屋に他人を入れるなんて、あまり楽しいものじゃないから。

    「ほんとごめんなさい、どうしても入らなきゃって気がしたんですよ」

    ビクビクしている小太りの男。

    この部屋に来る大体の人はこういう反応をする。
    でも当然だろう、曲がりなりにも自分の意志で他人の部屋に入ってきてしまったのだから。

    だから僕もまた、いつもの対応。

    「大丈夫ですって、ここはそういうところなんです」

    「そういうところって、どういうことです」

    あぁ、面倒くさいなぁ。
    僕だってどういうことかなんて解かっていないんだから。

    「……それはともかく、僕と話しましょうよ。なにか悩みがあるんでしょう」

    「はい?いや確かに悩みはありますけどどういうことなのか」

    「面倒くさいなぁ」

    「ぇえ?」

    やべ、本音でた。
    男の顔がさらに不安そうにゆがむ。

    怖いだろうなぁ。

    でも僕だって早くくつろぎたいんだよなぁ。


    「いいから悩みを話してください、カウンセリングみたいなもんですよ」

    「……わ、わかりました」

    ほんの少し、ほんの少しだけ強めの口調で言ってみる。
    脅しみたいになっちゃったけど、話してくれるなら結果オーライだ。

    「え……っと、ちょっと長くなりますが、話させてもらいます……」

    椅子から立ち、ずっと立ったままだった男を座らせる。
    そして僕はベッドに座りなおして、続きを促す。

    ――――春風が、僕の髪と冷や汗をかいた男の顔を撫でた。
  • 3 アナログ人間 id:TVnmywU.

    2011-05-31(火) 23:13:12 [削除依頼]
    「僕は、恋をしていました――――」


    僕の最初で最後の恋、それは17歳、高校二年生のときだった。

    僕は見たとおり、あまり格好良いとはいえない。
    特別崩れた顔という訳でもないが、ぱっとしないし、何より太っている。

    太っているのは単に僕の生活習慣のせいなのだから自業自得なのだけれど、やはりそれが原因で恋をすることが出来ないというのは悔しいものだった。

    そんな恋愛に縁がない僕に、友達が何気なく放った言葉。

    「今恋しなきゃいつするんだよ。このまま高校生活を無駄にするつもり?」

    今思うと、それはいつもの馬鹿なやり取りの一部であって、特別な意味はなかったのだろう。

    しかしその時の僕にはそうは思えなかった。

    友達の言うとおり、恋をしなければ高校生になった意味がない。
    そう思えて仕方がなくなったのだ。

    まさに「恋に恋した」状態だったのだろう。

    それからというもの、僕は恋をする対象になりそうな女の子を探すことに必死になった。
    授業は全て聞き流し、クラスの女の子の動向に気を配る。
    廊下ですれ違う子は必ず凝視していた。

    今思うと素直に気持ち悪いのだが、女の子達の「恋バナ」には毎日聞き耳を立て、学校内の恋愛事情には随分詳しくなった。

    そんな生活を続けていたある日。

    道徳的に見るとどうなのかと思うが、神様はきっと僕の努力を評価したのだろう。

    すっかり出来上がった僕の恋愛観にぴったりの女の子が見付かったのだ。

    比較的長い髪に、バランスの良いスタイル。
    そして美しい顔立ち。

    一目ぼれとは、まさにああいう事を言うのだと思う。

    僕はその女の子に夢中になった。

    ここまでの話はだいぶかいつまんで説明したが、長くなるのはこれからだ。
  • 4 アナログ人間 id:TBTxNrs.

    2011-06-02(木) 13:07:25 [削除依頼]
    いくら「恋に恋した」状態の僕であっても、

    「あなたの見た目に惚れました、付き合ってください」

    なんていうのは最低な事だと分かっていた。
    僕自身が容姿にコンプレックスを抱いていたという理由もあるだろう。

    しかし彼女を見つけて、何日か経っても、僕は彼女の事をほとんど知らなかった。

    知っている事はといえば、どうやら文系の普通クラスであるらしいということ(僕の学校は理系普通と理系特進、文系普通と文系特進の4つのクラスに分かれており、僕は理系普通クラスだった。)と、

    それからいつも一人でいるらしいということだけだった。

    偶然かもしれないが、登校してクラスに向かうときも、授業が終わって帰ろうとしているときも、そして移動教室さえも、彼女は一人だった。
    まだクラスに馴染めていないのだろうか、それともあまり人付き合いが好きではないのだろうか。

    前者ならまだいいが、後者なら危ない。

    まずは友達になって彼女の事をよく知る、という段階を踏むことさえ出来ないからだ。

    人付き合い自体が嫌いなら、話しかけるという行動自体が彼女の苦痛となってしまう。
    気障な事を言うが、その頃の僕は彼女を苦しめるということだけはしたくなかったのだ。

    色々悩んだ末、僕は周囲の人に聞き込みをし、彼女の情報収集をすることにした。
  • 5 アナログ人間 id:dqjoo9k.

    2011-06-03(金) 14:09:37 [削除依頼]
    まずは初めに、文系普通クラスに進んだ僕の中学校からの友達に話を聞くことにした。

    授業の合間の5分休みに、2つ離れた文系普通クラスに走る。
    その途中、彼女に似た髪の長い女の子を見たが、残念な事に人違いだった。

    少しだけ沈んだ気分のまま、文系普通クラスの教室をのぞく。
    必死で探したが、彼女は席を外しているようだった。

    僕に気がついた友達に手を振る。
    友達がこっちに駆け寄ってくると、僕は周りを気にしながら小さな声で言った。

    「このクラスにいる女の子の事で聞きたいことがあるんだ。放課後時間取ってくれない?」

    「えー、いいけど。それって誰?」

    「知らない。それを聞きたいんだよ」

    「言ってる意味が分らないわ。じゃあとりあえず放課後はここで待ってるから」

    「さんきゅ。悪いね」

    ヒソヒソ声で交わされた短い会話を終え、ふと時計を見ると、授業開始まで残り1分を切っていた。
    あの時は移動教室で、殊更時間がなかったのだ。

    その事実に急かされ、またも廊下を疾走する。

    しかし、無常にも間延びしたチャイムが鳴って、授業開始と僕の遅刻確定を告げた。

    授業の行われている生物講義室までの道のり、僕は誰ともすれ違わず、それが少し寂しかった。


    ――――気づいたのは、その生物の授業中のことだったと思う。

    僕が文系普通クラスにいたとき、彼女はあの教室にいなかった。
    それこそ目を皿のようにして探したのだから間違いない。

    そして僕が理系普通クラスに戻って教科書類を持ち、生物講義室に向かったときにも、誰ともすれ違わなかった。

    一体いつ彼女は教室に戻ったのだろうか。
    僕が教室を出発してすぐチャイムが鳴ったのだから、多分彼女は授業に間に合わなかっただろう。

    教室に戻ったところを見逃していたという可能性も無くはないが、教室の出入り口は僕の視界に入るし、廊下は一本で、広く、見通しも良いと言う理由からそれも考え難い。

    ならば素直に遅刻だったと考えればよいのだろうが、彼女と遅刻と言うイメージはどうにも結びつかなかった。


    あの時は深く考えなかったこの事実が、後々重大な意味を持つとは、僕は気づいていなかった。
  • 6 える id:c5J/cE70

    2011-06-11(土) 11:09:35 [削除依頼]
    感想・評価屋から来ました。 ご依頼有難う御座います。 遅れをとってしまい申し訳ありません。 +感想・評価+ まだあまり物語が進んでいないようなので、大した評価・感想は書けませんが、描写や文の組立ての悪いところを指摘してほしい、というご要望なのでそれに沿って言わせていただきます。 そうですね……。描写も文章も安定してると思います。>>1でも丁寧で濃く描写が描かれていますし、この部屋というのは物語の中で重要なものになってくると思うので、あのぐらいの情景描写の濃さはすごくよいと思います。そしてなにより感心したのが、文章に描写が馴染んでいる、ということです。よく「描写は濃くて綺麗だけど、文章に馴染んでいない。文章から描写が浮いている」というかたがいますが、アナログ人間様の描写は自然と文章に馴染んでいて、読みやすく、なおかつ情景を浮かべることができる素晴らしい描写だと思います。今は特に目立たないのですが、描写は取り入れすぎると、しつこくて鬱陶しいものとなってしまう場合があります。印象付けたいシーンや目立たせるシーンは描写を濃くし、あまりストーリーに支障がない場面は、それなりの描写を取り入れれば十分だと思います。描写の取捨選択をするようにしましょう。今後も描写には力を入れてもらいたいです。そしてアドバイスとは言ってはなんですが、ちょっとしたことを言わせていただきますと、情景描写は五感で描写するとよいですよ。視・聴・嗅・味・触。この5つを常に頭に入れて描写すると描写もスムーズにできます。 そして気になったのが改行について。アナログ人間様はどういったときに改行をしていますか? 私の勝手な思い込みかもしれませんが、やたらめったら改行して、文章とのあいだにスペースをあけているような気がしました。改行は「主題が変わる、カメラアングルが変わる、時間の流れが変わる、視点が切り替わる」などといったときにします。必要以上にはしないようにしましょう。さらに強調したい部分をあえて改行して、目立たせるという技法もありますので、そのあたりはご自分で試してみてください。 【総合評価:-A】 ご不満などは準備板で。 乱文失礼致しました。
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