雪うさぎ譚34コメント

1 よみ id:ZNSnYPM0

2011-05-28(土) 18:01:46 [削除依頼]
雪だるまと雪うさぎの違いはなんだろう。
大きさだと答えるひともいるだろうし、形だと言うひともいるだろう。
どちらも雪で出来ているとはいえ、作り方がこれだけ違えば別物だ。
  • 15 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 18:26:51 [削除依頼]
    夕方、部活が終わって帰ってくると、新しい文字が書かれていた。
    『ぼく、このあかいめがきにいりました』
    ずいぶんお気に召したようだ。深雪は嬉しくなる。
    『それはよかった。みみをつけてあげられなくてごめんね』
    燃えるような夕焼けが沈みかけていた。今夜は雪が降らないだろう。
    あんなに大きく堂々としていた雪だるまは、二回りも小さくなっていた。
    明日の朝までに雪うさぎが溶けてしまわないことを祈りながら、家に帰った。
  • 16 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 18:29:34 [削除依頼]
    翌日、深雪はいつもより早く起きた。
    空はまだ暗い。
    パジャマにコートだけ羽織って外に出ると、まだ朝刊も届いていなかった。
    灰色の雪が道路の端にだけ僅かに残っている道を、隣の家まで歩いてゆく。

    雪うさぎは殆ど消えかかっていた。
    ほんの一握りの雪の塊に、赤いふたつの瞳が乗っかっている。
    笠の代わりである葉っぱは、瞳のすぐ横に置かれていた。
    『らいねんもぼくのめをつけてください。できればこんどはみみも』
    最後の「も」はとびきり薄く小さな文字だった。
    まるで、身体が消える寸前の力を振り絞って、雪うさぎが書き残したような。
    どうしてだか手が震えた。
    深雪は、もはやひとつの雪玉だけになった雪だるまから木の枝を抜き取る。
    『もちろん。やくそくする』

    その日は登校の時間をいつもより早めた。
    まだ隣の家の兄妹が出てくる前に、彼らの家に立ち寄る。
    雪うさぎは完全に溶けて、ふたつの赤いおはじきだけが残っていた。
    大きな緑の葉っぱをめくるも、そこに書かれているのは早朝に深雪が記した文字だけだ。
    小さく溜息を吐くと、正面から扉を開ける気配がした。
  • 17 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 18:30:50 [削除依頼]
    「あれ? 深雪お姉ちゃん、こんな時間にどうしたの?」
    大きな瞳を丸くして駆け寄ってきたのは真白だ。
    白いコートに白い帽子を身につけている。
    その後ろには不思議そうな面持ちでこちらを見つめる兄の朱彦のすがたもあった。
    「うん、ちょっと」
    曖昧に微笑んで、深雪は真白の目線に合わせるためその場にしゃがみこんだ。
    「真白ちゃんさ、この雪うさぎの気持ちになって私にメッセージをくれたよね」
    小さな少女は首を傾げた。何の事だか分からない、そんな顔で深雪を見ている。
    「メッセージ? 真白がお姉ちゃんに?」
    「そう、ここに観葉植物の葉っぱがあったでしょ。その下に文字を書いて」
    「文字ってどこに?」
    今度は雪うさぎの亡骸まで走って、真白はきょろきょろと塀の上を見渡す。
  • 18 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 18:32:43 [削除依頼]
    「ほら、ここ」
    ぺらりと葉っぱをめくって、深雪は雪に書かれた文字のやりとりを示した。
    もう雪うさぎからのお願いは時間が経って読めなくなっている。
    かろうじて残っているのは、深雪の最後の返事だけだ。
    「これ、お姉ちゃんの字?」
    「うん、見覚えないかな。昨日も一昨日も書いたんだよ」
    「ううん。初めて見た。真白、ここに字が書いてあるなんて知らなかったもん」
    一瞬、言葉に詰まった。絶句する深雪をよそに、真白は言葉を重ねる。
    「うさぎさんに赤いおはじきの眼がついてるのは、昨日の朝、気がついたの。そっか、お姉ちゃんがつけてくれたんだね」
    ありがとう、可愛くなってた! と無邪気に笑う真白を、深雪はただ見つめ返すことしかできない。
    ならば朱彦か? 彼に視線を移すと、同じく初めて知ったような新鮮な表情で葉っぱをめくっているところだった。
    そこで思い出したように妹を振り返る。
    「真白、もう行かないと遅れるぞ」
    「あっ、そっか。じゃあね、お姉ちゃん!」
    兄の背中を追って、パッと駆けだしてゆく真白を送りながら、深雪は呆然としていた。
  • 19 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 18:34:08 [削除依頼]
    「不思議なこともあるもんだねえ」
    「うわっ」
    突然、背後からかけられた声に飛び上がって驚いた。
    振り向いてみると、意外とすぐ後ろで、姉が腕組みをして立っている。
    スーツ姿で、髪も綺麗に巻いた姉は隙のないフルメイク。こたつで丸まってビールを飲んでいるときとはまるで別人である。完全武装の仕事モードだ。
    「お、お姉ちゃん、早いね……」
    「あんたが朝からガサゴソ動いてるせいで早起きしちゃったよ」
    ゴキブリみたいな言われようである。
    カツカツとハイヒールを響かせて、姉も雪うさぎのいた辺りに近寄ってゆく。
    「へーえ、積もった雪をホワイトボード代わりにしたってわけね」
    「そう、絶対に真白ちゃんだと思ったのに」
    「あの様子じゃ朱彦くんでもなさそうだね。わざわざ隠す必要もないだろうし」
    雪うさぎの痕跡をしげしげと眺め回していた雪音は、ふいに顔を上げた。
  • 20 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 18:35:47 [削除依頼]
    「あんた、雪うさぎと文.通してたんじゃないの?」
    「はあ!?」
    「ああ、この場合、文.通とは云わないかもね」
    「いや、問題はそこじゃない」
    たぶん、文.通で間違ってはいないだろう。しかし問題はそこではないのだ。
    「そんなファンタジーみたいな話……」
    「ほら、あたしの名前って雪音じゃん? だから雪の音というか、雪うさぎの声なき声も聞こえちゃうわけよ」
    「なにその特殊能力! 初めて聞いたけど!?」
    「うん、たった今思いついたからね」
    じゃあ結局冗談なんじゃない……と項垂れたとき、深雪は唐突に思いついたことがあった。
  • 21 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 18:37:15 [削除依頼]
    「もしかしてお姉ちゃん、私に黙って雪うさぎの振りしてたんじゃない?」
    それは十分に考えられた。
    このろくでもない姉のことだ。深雪のいないうちに子供の筆跡を真似た平仮名を残して、陰でくすくす笑っているところが眼に浮かぶ。
    「はあ? ばっかじゃないの。なんであたしがそんなしちめんどくさいことしなきゃいけないのよ」
    「そ、それは……私をからかうためとか」
    「はっ。あんたね、そりゃあ自意識過剰ってもんよ。そんなに暇なら、こたつに丸まって梱包のプチプチを一個ずつ丁寧につぶした方が有意義な時間の使い方ってもんだわ」
    思いっきり馬鹿にしたように鼻で笑って、姉は雪うさぎの残骸に向き直った。
    ……多分、雪音でもないのだろう。
    むしろここまで嘲笑されたのにも関わらず、姉の仕業だったりしたら、それこそ人間不信になりそうだ。深雪は姉を疑うことだけは止めにした。
  • 22 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 18:39:19 [削除依頼]
    「深雪」
    珍しく姉に名前を呼ばれた。
    なに? と視線を上げた瞬間、いきなり何かが飛んでくる。
    「わっ、ちょ、なに」
    なんとか両手で受け止めたものは冷たく硬い感触だ。
    「それ、大事に取っときな」
    掌を開くと、そこに収まっていたのはふたつのおはじき。雪うさぎの小さな赤い瞳だった。
    「来年もそれで雪うさぎ作れば、誰がメッセージ寄こしてたのか分かるかもしれないでしょ」
    「え、なにそれ。どういうこと?」
    「嬉しかったんだと思うよ。綺麗なガラスの眼をもらえてさ」
    くるりと背を向けて、そのまま家に戻ろうとする姉を、深雪はぽかんと見つめた。
    「……それって」
    「だから、あたしには雪の声が聞こえるんだって」
    それは冗談じゃなかったのか。突っ込みを入れようとしたが、止めた。
    きっとまたはぐらかされるだけだろうから。
    深雪はおはじきを鞄の中に仕舞い、すっかり雪の溶けた道を歩き出した。
    よし、学校に行こう。
  • 23 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 18:41:12 [削除依頼]
    これまでは押し入れで眠っていたおはじきが、今は深雪の机の抽斗にある。
    なかでも、雪うさぎの赤い瞳になったふたつのおはじきは、きちんと選りわけて保管していた。
    最近は道の至るところで木蓮の花が咲き、じきに桜も満開を迎える頃合いである。
    春が過ぎれば夏がきて、夏が終われば秋になる。
    秋の涼しさが紛れもない寒さに変わる頃、この街にもまた雪が積もるだろう。いや、積もってほしい。今の深雪はそう願っていた。
    雪が積もったら真っ先に、三軒隣の田中さんの庭から南天の葉をもらってこよう。
    そして、積もったばかりの白い雪でうさぎの形を作るのだ。
    緑の耳をつけたあと、仕上げに埋めるは赤い瞳。
    赤く透き通ったガラスの瞳の雪うさぎは、また白い文字のメッセージをくれるだろうか。


    *雪うさぎ譚  了.
  • 24 るせ☆ id:ez-Fl/5E7e.

    2011-05-28(土) 18:55:11 [削除依頼]
    ふっふっふー、リアルタイムでがっつり見てました(≧∇≦)b
    いやー、やっぱり良いね! 雪うさぎ^^
    登場人物みんな可愛いなぁー(´ω`*)
    番外編も楽しみにしてますv
  • 25 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 21:49:32 [削除依頼]
    ここまで読んでくださった方がいらっしゃったら、
    本当にありがとうございますm(__)m
    この小説は、冬をテーマにしたコンテストスレに投稿させていただいたものです。
    原稿用紙20枚程度の短編とはいえ、私にとっては初の完結作品となりました。
    この物語を最後まで書き上げたら、最初は考えもしていなかった番外編の構想や続編(本編の一年後の話)のイメージが浮かんできました。
    季節はそろそろ真逆の夏に向かっていますが、せっかくなので番外編も続編も書いていこうと思います。
    「雪うさぎ譚」に興味をもってくださる方がいらっしゃいましたら、
    どうぞ引き続きお付き合いください^^*
  • 26 楽々 id:g.lrpYB/

    2011-05-28(土) 21:54:24 [削除依頼]
    えぇ、初完結だったのか。以外です。おめでとう。
    とりあえず今は、続編をゆっくりと待ちたいと思いやす。
  • 27 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 21:56:51 [削除依頼]
    >24るせ☆ ぎゃあ、るせからコメントをもらえていたなんて!Σ(゜Д゜) ごめんね、>25を打ってるときは表示されていませんでした; そしてまさかのリアルタイム……(笑) 改めて、読んでくれてありがとう!  いつも嬉しい感想を本当にありがとね>< 番外編はやっと筆が乗り出したところです(笑) なるべく早く書き上げて、このスレに投稿したいと思ってますb 読んでくれるひとがいるって嬉しいなあ……。 今後もよろしくお願いします(´∀`*)
  • 28 よみ id:ZNSnYPM0

    2011-05-28(土) 22:03:59 [削除依頼]
    >26楽々さん コメントありがとうございます!m(__)m まさか楽々さんに見られているとは思わなくて レスが増えてることにえらく驚きました……。 そう、初完結なんです。ありがとうございます^^* 一年後の続編は、確かにゆっくりお待たせしてしまうかもしれません……(笑) 次に更新するのは、今書いている番外編になると思います。 いただいたコメントを励みに頑張ります!
  • 29 いづみ id:LWbdOsn/

    2011-05-28(土) 23:13:05 [削除依頼]

    はじめまして、いづみという者です♪
    作品、読ませていただきました(^ω^)

    ふわっとしていてどこか温かみがある優しいおはなしで、読んでいる私自身、心があったかくなりました(つω`)*
    もうすぐ夏ですが、私の頭の中は今、完ぺきに冬です(笑)
    私はなぜか雪がすごく好きなんです、なぜだか雪が恋しいです(ω`*←←
    私は雪が降ると超はしゃぎますが、いつかは雪だるまをつくったりすることなんて、「どうでもいいこと」に感じてしまうのかなぁと思いました。なんだかそういった感情がなくなってしまうことを想像したら、少し寂しく感じます(∵`)

    続編も番外編も楽しみに待ってます!!!
    素敵な作品、ありがとうございました^^*
  • 30 よみ id:Izrxdgi0

    2011-05-29(日) 11:25:46 [削除依頼]
    >29いづみさん いづみさん、はじめまして。 読んでくださってありがとうございます!m(__)m 心があったかくなっただなんて、なにより嬉しいご感想です。 頭の中は完璧に冬だなんてまた嬉しい(笑) 雪好きないづみさんに、雪うさぎの小説を読んでいただけるなんて光栄です^^* なるほど、そういう考えの方もいらっしゃるのですね。 そうですね。その想像は、確かにすこし寂しい気持ちになります。 でも、それを寂しいと思うあいだは、けしてそうはならないと思いますよ^^ 私ひとりでは感じ得なかった気持ちなので、とても新鮮なご意見でした。 これは絶対に書き上げなければいけませんね><* こちらこそ、本当にありがとうございました! 今後もよろしくお願いしますv
  • 31 憂理 id:SGT4IWu0

    2011-05-29(日) 11:35:17 [削除依頼]

    キレイな題名だと思ってクリックしたらよみでした(*´ω`)
    読むのが止まらなくて一気読み!笑
    コメは残せなかったけど多分リアルタイムで見てたと思う(笑)(*´`)

    どの登場人物も可愛くてなんだかほっこりするお話しだったな(´・ω・`)読めて嬉しいよよかった(∵´)!
    冬が恋しくなったよ何故か(∵`)←

    番外編もやるのかな(・∀・)
    絶対見に行きます見逃さないようにするよ(`・ω・´)
  • 32 よみ id:Izrxdgi0

    2011-05-29(日) 13:01:38 [削除依頼]
    >31憂理 わお、憂理!Σ(・∀・) 読んでくれてありがとうv うわー、タイトルセンスのいい憂理にそう言ってもらえると なんだか誇らしい気分になってしまうw(待て 一気読みですと……って、しかもリアルタイム!?(笑) せっせと更新していたところを見られていたとは(∀) 登場人物が可愛いなんて言ってもらえると思わなかったから びっくりしているところです(´`*) この小説は書いてるときから予想外なこと続きだなあ。 冬が恋しくなったってすごく嬉しいv  ほぼ真逆の季節に立てた甲斐がありました(笑) 今、番外編を書き進めているところ^^ このスレに投稿するつもりなので、また覗いてもらえるとよみが狂喜乱舞します← コメントしてくれてありがとう! 張りきって続きを書くね(・ω・´)
  • 33 夢梅 id:ZTBdwT/.

    2011-05-29(日) 18:54:49 [削除依頼]

    お邪魔致します*

    題名を見て、

    「あれ、これって……」
    と思わずクリックしちゃいました(^ω^)

    あのおはなしの関連話が読めるなんて、
    とっても嬉しいです!

    頑張って下さい、応援してます(´ω`)
  • 34 よみ id:pGZrXV41

    2011-05-31(火) 00:41:26 [削除依頼]
    >33夢梅さん コメントありがとうございます! 初の完結作ということでつい浮かれてしまい、スレ立てしちゃいました(笑) ずっと雪うさぎの小説を書きたいとは思っていたものの、やはりああいった厳格な投稿期限のあるコンテストでないと、こうして完結させることはできなかっただろうな、としみじみ思っています。 なので、主催者の夢梅さんにはとても感謝しているんです^^* わー、ありがとうございます!><* こんなに沢山のコメントをいただいたことがないので、 近頃は心拍数が上がりっぱなしです^^;(笑) 夏のコンテストの受付がもう始まっていますね。 今回も、ぜひ参加させていただきたいと思っています。 この文章を投稿したら、エントリーに伺いますm(__)m 本当にありがとうございましたv
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