イルカと預言者2コメント

1 コーホー剤 id:/j6h8nu1

2011-05-20(金) 21:53:00 [削除依頼]

 梅雨が明けた初夏の、湿気強い空気が首筋から纏わりつくのがわかる。それに促されたように、また顎先から汗が垂れた。
 私は今、穴を掘っている。この作業を始めてからまだ一時間とたっていないが、自分でも驚くほど肌から噴出す汗と乱れた息を感じる。大学卒業後から職務に追われ、無意識の内に運動不足に陥っていたらしい。今は女性が前に居るというのに、格好の付かないことだ。
 救い上げた土を、恐らく後ろに立っているだろう彼女に掛からないよう注意しながら、投げる。そしてまた、鈍く銀色に光るスコップの先端を、大地に突き立てる。
 実に単調な作業だったが、底知れぬ緊張感と焦燥のおかげか、苦には感じなかった。
 そしてちょうど穴が私の腰ぐらいの深さになった時、左後方から彼女が声を掛けてきた。
「……ねぇ、躍起になっているところ悪いけど、ちょっといいかしら?」
 私は無言でスコップを地面に突き立て、振り返る。社会人らしくも無く、返事をするのが億劫なほど疲労を感じていた。
  • 2 コーホー剤 id:/j6h8nu1

    2011-05-20(金) 22:16:46 [削除依頼]
     彼女も無言の返事を了解したらしく、話し出した。
    「仮に……本当に、貴方の足元から彼の死体が出てきたとして……それが彼であることを、どうやって証明するの?まさか警察に通報、なんてわけ無いわよね」
     彼女はそのことが心配、というより、単純に疑問を述べたようだった。その口調にはどこか、相手の矛盾点を探る記者のような高揚した印象があった。
     私はスコップの取っ手を弄びながら返した。
    「大丈夫、だと思う。彼の死体がここから出てくれば、そのこと自体がその証明になる……なんと言っても預言者だったから、彼は」
     私は再び振り返り、スコップを引き抜くと、作業を再開する。
     彼女の相変わらずな、冷ややかな視線が、火照った体に悪寒を走らせた。
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